2025.02.26 参議院 外交・安全保障に関する調査会 参考人質疑
「包括的平和(Inclusive Peace)の実現に向けた課題と方策」について参考人質疑です。
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217-参-外交・安全保障に関する調査会-003号 2025年02月26日
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
今日は、参考人の皆様、ありがとうございます。
前回、ロシアによるウクライナへの侵略をめぐる問題がテーマだったんですけれども、引き続き緊迫した状況になっていますので、それに関わって伺っていきたいなと思っています。
侵略から三年がたった二十四日、先ほど紹介ありましたけれども、国連総会の緊急特別会合で、ロシア軍の即時完全な撤退、戦闘の停止とウクライナでの戦争の平和的解決などを求めた決議案が日本を含めて賛成多数で採択を、採決をされるということになりました。これに対して、過去四度の決議に賛成をしてきたアメリカが反対に回ったということは重大だというふうに考えています。
我が党は、ウクライナでの流血を終わらせるために、和平協議に道を開くあらゆる努力を行うこと、その和平は、国連憲章、国際法、国連総会決議に基づく公正な和平であるべきで、仮に停戦が実現したとして、公正な和平という目的を曖昧にしてはならないということを国際社会に呼びかけてきました。このことが非常に重要になっている下で、公正な和平実現のために日本政府の役割も問われているんだというふうに思います。
そこで、三人の参考人にまず伺うんですけれども、停戦交渉、非常に大事だというふうに思うんですけれども、大国が国連憲章や国際法、国連決議に反してウクライナの主権をないがしろにするようなやり方があってはならないというふうに考えています。公正な和平を実現するということの重要性について参考人がどう考えるか、細谷参考人から順番にお聞かせください。
○参考人(細谷雄一君) ありがとうございました。
今御指摘いただいた点は、いずれもごもっともかと存じます。やはり、力によって現状変更し、その領土が拡大するということは、国際社会が認めるということあってはならないと。それは、ウクライナとロシアの二国間の問題ではなくて、やはり戦後の国際秩序の根幹を大きく崩壊させてしまうかもしれないということは先ほど申し上げたとおりでございます。
しばしば指摘されるのは、今回の動きというものが、一九三八年のミュンヘン、これはチェコスロバキアの小国の意向を無視して大国だけで領土を変更した、あるいは一九四五年のヤルタ、これもまたロシアとアメリカがヨーロッパの運命を、まあイギリスが参加していたとはいえ、大国主導で決めていくと。こういったことを防ぐということが戦後八十年の日本の平和国家としての歩みだったんだろうと思います。やはり、これは戦争の反省に基づいて日本がそのような役割を担ってきた。
日本の役割として私が申し上げたいのは、やはり日本は国際社会で信頼されているというのはいろいろなところで感じております。つまり、国連の中でも何が正しいのかということがよく分からないような状況になっている、その中で多くの国々が恐らく日本の行動というのを見ているんだろうと思います。英語でインターナショナル・グッド・シチズンシップというのがありまして、良い市民というもの、国際社会で良識に基づいて正しい判断をすると。少なくとも日本は多くの世論調査でそのように見られているという結果もございますので、日本はやはり軍事力というものが限られていながらも平和国家として国際法に基づいて行動するという意味で、ヨーロッパの多くの国々と連携しながら、やはり法の支配、国際社会における法の支配というものを今後も擁護するために積極的な役割というものが重要になってくるんだろうというふうに考えております。
○参考人(相良祥之君) ありがとうございます。
まさに、委員御指摘のとおり、公正、永続的な平和を求める決議というものがもう何度も採択をされておりますので、日本としてもその方向に向けて着実な歩み、何が協力できるかということを考えていくというのは非常に重要なんですけれども、私、この一連の議論において停戦という話がよく出てくるわけですけれども、ここで本来必要なのは和平交渉であります。この和平交渉というのは、パッケージディールであります。これ、当然のことですけれども、軍事的な停戦ラインの設定、あるいはロシアが国家として認めておりますドネツクやルガンスクといった地域をどういうふうに取り扱うのか、あるいはウクライナの中立であったりとかNATOへの加盟の問題、あるいはEU加盟申請の維持、あるいは統治体制、捕虜の解放等々をどうするか、そして制裁をどうするかといったものを全てパッケージで交渉していくということになりますので、これは非常に緻密な交渉というのがどうしても必要になってまいります。
その中で日本として何ができるか。日本は、平和構築でもフィリピンですとか南スーダン等で貢献をしてきた経験もございますので、そういった復興について日本としてできることというのを国際社会に示していくというのは一案かというふうには考えております。
○参考人(市原麻衣子君) ありがとうございます。
この問題は非常に甚大な影響を国際秩序に与え得るというふうに考えています。ウクライナの主権を侵害された形で停戦というものを実現してしまった場合には国際秩序の維持というものが難しくなっていくと思っております。日本政府として何ができるかということに加えまして、日本社会として何ができるかということを考えるのもいいのではないかというふうに私としては思っています。
一つには、日本政府の役割ですけれども、バックステージでアメリカの政府と交渉する。それから、関係各国、そして特にウクライナですけれども、そういったところと交渉するというのが一つ重要かと思っています。
アメリカの現在の動きに関しては、トランプ政権内でもかなり足並みの乱れがある、実際にあるわけで、トランプをどのようにコントロールするか、影響を与えるかというところを考えたときに、議会の中の人々にできるだけリーチアウトをするということ、それから、面目を潰すのではなく妥協させる道を探すということが一つ必要なのだと思います。
ただし、それだけでは十分ではないと思います。実際にその主権、ウクライナの主権の重要性というものを前面に出している言説というものを国際社会に見せていく必要があると思います。そのためには、実際日本のメディアの領域においては既に非常に批判的な言説というものが見られますので、これをどのように国際的に開示していくことができるかというのを考えることもできるのではないかと思っています。
○岩渕友君 ありがとうございます。
続けて市原参考人にお伺いをしたいんですけれども、トランプ大統領が力による平和ということを言っているわけですけれども、この力による平和ではなくて、国連憲章や国際法や国連決議などに基づく、その公正で、今日テーマになっている包摂的な平和の実現に向けた努力というものが国際的にも行われていると思うんですね。そうした下で国際社会が連帯して取り組んでいくということが非常に重要だというふうに考えるんですけれども、参考人、どのように考えられますでしょうか。
○参考人(市原麻衣子君) ありがとうございます。
国際社会の連帯は本当に今まで以上に重要性が高まっていると思います。私としては、二つの領域に分けて連帯を形成していく必要があるのではないかと思っています。
一つはG7を中心とした連帯です。できるだけその国の数が、アクターの数が少ない方が意思決定が早いということもありますし、国際社会の中での意思決定の中心的なプラットフォームとしてG7が近年役割を大きくしてきました。日本としても、このG7でしっかりとイニシアティブを取っていくということが必要だと思います。
他方、もう一つのプラットフォームとしてやはり重要なのは国連だと思います。G7というのはどうしても民主主義のクラブというふうになってしまうわけでして、各国、まあ民主主義以外の国の賛同も得ていく、そしてそれらの国々にリーチアウトをする機会も維持していくということで、国連での動きも今後重要なのだと思います。
○岩渕友君 貴重な御意見をいただきました。
以上で終わります。ありがとうございました。
