2019年11月27日(水) 参議院 東日本大震災復興特別委員会「田中復興大臣の所信的挨拶への質疑」
「期限区切らず必要な対策を」
生活・生業再建まで 東日本大震災復興支援強化を
岩渕友議員は、11月27日の参院東日本大震災復興特別委員会で、政府が復興推進委員会で示した2021年度以降の復興の基本方針骨子案について「期限を区切るのではなく、実態にもとづき生活と生業(なりわい)が再建できるまで支援を強化すべきだ」と求めました。
同7日に示された骨子案では「原子力災害被災地域は、当面10年間、本格的な復興・再生に向けた取組を行う」としている一方で、「地震・津波被災地域は復興の総仕上げに入っている。復興・創生期間後5年間で取組を着実に実施する」としています。
岩渕氏は「医療費や税制など被災者支援は継続してほしい」「地域間格差もある。きめ細かく対応してほしい」との切実な声を紹介。岩手県の災害公営住宅での孤独死が18年に前年の3倍に急増しており、要支援者・1人暮らしの高齢者の見守りとコミュニティー確立は緊急で重要な課題であると同時に、長い期間を必要とする対策であると指摘。商店街の再建とまちづくりについて、9月末時点で111店舗が仮設で営業、そのうち88店舗が本設移行を希望しており、グループ補助金の活用など持続可能な地域をつくるために最後まで支援を強化することが必要だと強調しました。田中和徳復興相は「5年間で目指すとしているが、個別の事業について丁寧に状況を把握して対応する」と答弁しました。
除染土保管 点検せよ
岩渕友議員は11月27日の参院東日本大震災復興特別委員会で、福島原発事故後の除染で生じた汚染土壌を詰めた袋が台風19号で流出した問題で政府の対応をただしました。
同台風で福島県内の飯舘村内の国管理の仮置き場や田村市、二本松市、川内村が管理する仮置き場から合計90袋が流出しました。
岩渕氏は、岩手、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉の7県の現場保管と仮置き場計2万8774カ所で除染土壌を、計9315カ所で廃棄物を保管していることを示し「4年前にも飯舘村で448袋が流出したが、同様の問題を繰り返している」と指摘。全国の現場保管箇所と仮置き場の総点検を求めました。環境省の森山誠二環境再生・資源循環局次長は、総点検の上で「管理の徹底、再発防止に取り組む」と答弁しました。
岩渕氏は、福島県議会が日本共産党の反対を押し切り、避難指示区域外から国家公務員宿舎に避難中の未契約者の立ち退きなどを求め提訴する議案を可決した問題に言及。「健康を損なっている人、公営住宅に10回以上申し込んでも落選した人もいる。5世帯中4世帯は行くところがない」「国が期限を区切るよう迫ったのが実態だ。避難者を訴えることは国がやめさせるべきだ」と迫りました。
田中和徳復興相は、「直接の当事者ではない」と無責任な答弁に終始しました。
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質問資料 汚染状況重点調査地域(福島県外)における保管場所の箇所数及び除去土壌等の保管量【PDF版】【画像版】
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2019年11月27日(水) 参議院 東日本大震災復興特別委員会
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
東日本大震災津波と東京電力福島第一原発事故からの復興をめぐって、政府は、今月七日に行った復興推進委員会で、二〇二一年度以降の基本方針の骨子案を示しました。
骨子案が復興庁の設置期限を延長すると示したことに安心したという声が上がる一方、地震・津波被災地では、復興の総仕上げの段階に入ったとして五年間という期間を示したことに対して、宮城県の村井知事は被災者に向けて余りに厳しいメッセージだというふうに述べて、岩手県の達増知事は、被災地や市町村の実態を踏まえるべきだ、終わってもいないのに五年で終わったようなことにならないようにしてほしいと、こういうふうに述べています。
さらに、岩手県宮古市の方からは、医療費や税制など被災者支援の継続をしてほしい、岩手県釜石市の方からは、被災地には自立したくてもできない現実がある、持続可能な地域をつくるため、今後も伴走をしてほしい、宮城県南三陸町の方からは、復興の地域間格差が心配、国は事業が思うように進んでいない地域に目を向けてきめ細かく対応をしてほしい、こういう声が上がっています。
そこで、大臣にお聞きします。
こうした声や実態に応えることが必要です。五年間と期間を示したことが住民の皆さんの不安となっています。これ、期間を示すべきではないのではありませんか。
○国務大臣(田中和徳君) 先般公表しました骨子案では、地震・津波被災地域においては、復興・創生期間後五年間で復興事業がその役割を全うすることを目指すという考え方をお示しをしたところでございます。この点に関して、一部の被災自治体からは、実態を考慮することなく全ての事業を一律に終わらせる誤解を招くとの懸念が示されたということも承知しております。
復興庁としては、被災地の一日も早い復興に向け取組を着実に推進をするため、過去の大規模災害の取組事例を踏まえて一定の期間を設定することは必要だと認識をしておるところでございます。その上で、個別事業の取扱いについては、個別の事業を丁寧に把握し、適切に対応をさせていただきたい、このように思っております。
○岩渕友君 岩手県では、災害公営住宅の孤独死が二〇一八年は十八人で、前年の三倍に急増をいたしました。今年は九月までに既に十一人の方が亡くなっていらっしゃって、要支援者、独り暮らしの高齢者などの見守り等コミュニティーの確立は緊急で重要な課題であると同時に、長期に必要なことにもなっています。
商店街の再建と町づくりについては、仮設店舗は、ピーク時で七百三十一店舗、本設移行は四百七十六店舗、廃業などで撤退をした事業者は百四十四に上っています。九月末時点で百十一店舗が仮設で営業をしていますけれども、そのうち八十八店舗の事業者が本設移行を希望をしていて、グループ補助の活用など、持続可能な地域をつくるために最後まで支援を強化するということが求められています。期限を区切るのではなくて、期限ありきということではなくて、現場の実態や声をつかんでその声に応える支援、これを強く求めるものです。
東日本大震災、津波、そして東京電力福島第一原発事故から生活となりわいの再建を進めてきたところに、今回、台風とそして豪雨による甚大な被害が発生をするということになりました。二重に被災をされた方、大震災のときよりも被害が大きくなったという方もいらっしゃいます。
台風十九号によって、除染などによって生じた除去土壌等が仮置場などから流出をいたしました。福島県内の国管理の仮置場二百三十六か所のうち飯舘村の一か所から一袋、自治体管理の仮置場七百十六か所のうち田村市、二本松市、川内村の三か所から八十九袋、合わせて九十袋が流出をしました。さらに、栃木県の那須町で現場保管をされていた大型の土のう袋が一袋流出をしております。
今回の流出を受けて、どのように再発防止を行っていくのでしょうか。そして、資料を御覧いただきたいんです。福島県だけではなくて全国にこれだけの現場保管箇所、そして仮置場があります。再発防止の前提として、全国の現場保管の箇所と仮置場も含めて総点検が必要ではないでしょうか。
○政府参考人(森山誠二君) お答え申し上げます。
二〇一五年九月の関東・東北豪雨では、除染現場に一時的に置いていた除去土壌が流出する事案が発生し、これを受けて環境省では除染関係のガイドラインを改正しまして、国直轄の除染工事では自らの浸水注意エリアを設定する等の再発防止を行ったほか、市町村除染地域の自治体に対して管理の強化の要請や再発防止対策の共有を行ったところでございます。しかし、今回の台風十九号の接近では、想定浸水区域等に該当しない仮置場にまで浸水が発生したこと等により本件事案が生じたと考えているところでございます。
今後の再発防止策につきましては、まず第一に、仮置場から除去土壌等を搬出し、仮置場を早期に解消することにより地域の皆様の安心につなげていく必要があると考えており、被災仮置場につきましては、流出リスクが想定される大型土のう袋を計画を前倒しして本年内を目途に搬出する予定でございます。このうち、田村市の当該仮置場につきましては、十一月十二日に全ての大型土のう袋の搬出が完了してございます。
また、ほかの全ての仮置場につきましては、仮置場の管理の実態や水害リスク等に関する総点検を本年内を目途に実施する予定でございます。その結果を踏まえまして、除去土壌の保管に関するマニュアルの見直しや個々の搬出計画の見直し等、追加的対策に関する技術的支援などの仮置場管理の抜本的な強化策を来年の梅雨の時期が来る前に実施する予定でございます。
それから、現場保管についての御質問がございました。
現場保管につきましては、除染を行った現場に除去土壌の大型土のう袋を保管しているものでありまして、総数は配付資料のとおり八県で約十万か所ございます。これらの多くは地下に保管されておりますが、一部は地上の保管もございます。日常的な管理は、土地所有者の協力を得ながら市町村が行い、異常があった場合には、土地所有者からの通報を受けて、市町村が補修等の対応を行っているものでございます。
今回、台風十九号による現場保管からの流出事案を踏まえまして、環境省としましては、関係自治体に対して、現場保管箇所についても、台風十九号による被害が発生していないかどうかを確認し、流出があった場合には速やかに報告するように依頼したところでございます。その結果、現場保管のある全ての自治体から報告がありまして、那須町の現場保管の箇所以外には除去土壌が流出したとの報告を受けているところではございません。
こういったことを踏まえながら、今後行います総点検をやった上で保管に関するマニュアルを見直すことにしておりまして、そのマニュアルの見直し内容を関係自治体にも周知しながら、現場保管につきましても管理の徹底や再発防止に取り組んでまいりたいと考えてございます。
○岩渕友君 今答弁にあったように、災害で除去土壌が流出をしたのは今回が初めてじゃないわけですよね。二〇一五年の九月の水害のときに、飯舘村で四百四十八袋ものフレコンバッグが流出をしたわけなんです。それなのに今回また流出するということになったわけですよね。それで、仮置場の総点検はするということで、現場保管についても是非とも総点検しっかりこれやってほしいということを重ねて求めたいと思います。
台風十九号によって、福島県内に設置をされている放射線監視装置であるリアルタイム線量測定システムが三十台、そして可搬型のモニタリングポスト三台が水没をして測定不能となっています。台風とその後の豪雨で、除染が行われていない山から大量の水が宅地や農地などに流れ込みました。さらに、川底に堆積をしていた土砂も攪拌をされて流れ込んだことで放射線量が心配だと、こういう声が上がっています。このままモニタリングポストがなくなっちゃうんじゃないかと、こういう心配の声も上がっています。一刻も早く修理、修繕を行う必要があります。どのように対応するんでしょうか。
○政府参考人(山田知穂君) 東京電力福島第一原子力発電所事故の影響を把握するためのモニタリングポストについては、三千五百六十一基ございまして、台風十九号の影響により測定できなかったものについては、今先生から御指摘がございました三十三基となってございます。
現在、福島県を通じて、被害を受けたモニタリングポストを設置する自治体に設置場所の状況を確認していただいているところでございまして、確認が取れたところから順次修理等の対応をすることとしてございます。
○岩渕友君 測定不能となったリアルタイム線量測定システムが置かれている場所には、学校の敷地の中だったり、公園もあるんですよね。だからこそ早く直してほしいという声が寄せられています。一刻も早く修理、修繕を行う必要があります。
除染をしていない山からの大量の雨水や川底に堆積をしていた土砂が攪拌をされて宅地などに流れ込んだということで、住民の方からは自宅などについて改めて除染してほしいんだという声が出ています。必要であれば当然除染は行うということでいいんですよね。確認をしたいと思います。
○政府参考人(森山誠二君) お答え申し上げます。
福島県が公表しております環境放射能モニタリング調査結果によりますと、台風十五号に伴う大規模な浸水被害があった地域の空間線量は、台風十九号前と同程度だったというふうに発表しているところでございます。
今回、土砂の流出が生じた地域を含む空間線量率につきましては、原子力規制庁においてモニタリング結果を公表してございまして、福島県浜通りを中心とした約八百か所において、おおむね台風十九号前と同程度になっているところでございます。
環境省としましては、土砂の流出等により除染を実施した場所の再汚染が確認された場合には、個別に状況を確認の上、フォローアップ除染の実施可能性も含め必要な対応を検討していきたいと考えてございます。
○岩渕友君 住民の方々が必要だと求めたところ、要望にあったところについては、除染、これしっかりやってほしいということを重ねて求めておきたいというふうに思います。
国は、原発事故被災地について、復興・創生期間後も引き続き国が前面に立って取り組むとして、当面十年間、本格的な復興再生に向けた取組を行うとしています。
東京電力福島第一原発事故によって今も避難を強いられている方の中には、避難指示区域外から避難をしている方もいらっしゃいます。
福島県の九月議会で、区域外から国家公務員宿舎に避難をしている方々のうち、未契約者に対して、調停不成立を理由として、立ち退きとそれまでの賃料支払を求めて提訴する議案が提案をされました。日本共産党県議団は反対しましたけれども、賛成多数で可決をされるということになりました。提訴されようとしている方の中には、長期の避難で健康を損なっている方、公営住宅に十回以上申し込んでも落選をしたという方もいらっしゃいます。また、対象となっている五世帯中、四世帯は追い出されても帰る家がないといいます。
この県議会の企画環境常任委員会で、二〇一六年八月二十六日に行われた国家公務員宿舎に係る打合せという資料が配付をされました。財務省と復興庁、福島県が参加する打合せです。福島県が期限を定めるのは難しいと考えていると言っているにもかかわらず、財務省の担当者は期限を決めた方が説得しやすいと述べています。国は福島県が決めたことだと言いますけれども、国が県に期限を区切るように迫ったというのが実態です。
避難者を訴える、こんなことを国がやめさせるべきではないでしょうか、大臣。
○国務大臣(田中和徳君) 福島県が、国家公務員宿舎にいらっしゃるいわゆる自主避難者の方々のうち、未契約世帯に対して住居の明渡し等を求める訴訟を提起予定でございまして、十月三日の福島県議会における議決以降も生活再建に向けた支援に努めていると、このように伺っておるところでございます。
この件については、国家公務員宿舎を借り受けている福島県と事実上の利用者の方々の間での訴訟に関することでありますので、直接の当事者ではない復興庁としてはコメントを差し控えさせていただきたい、このように申し上げる状況にございます。
以上でございます。
○岩渕友君 あの財務省と福島県のやり取り見ても、結局国が主導しているってことなんですよ。これ、国の責任で避難者を訴えるということはもうやめさせるべきだと、これ強く言っておかなくてはなりません。
九月十七日、福島県の区域外から群馬県に避難をされた方々が東京電力と国に損害賠償を求めた群馬訴訟控訴審の第七回口頭弁論が行われました。この中で、国が提出をした第八準備書面で、政府による避難指示区域外からの避難者について、二〇一二年一月以降の避難継続の相当性を肯定して損害発生を認めることは、避難指示区域外に居住する住民の心情を害し、ひいては我が国の国土に対する不当な評価となるから容認できないと主張をしました。余りにもひどい暴論だと、こういうふうに言わなくてはなりません。これに対して、そもそも誰が国土を汚したのか、避難の選択は憲法に保障されているじゃないかと怒りの声が次々と上がっています。この内容を撤回をして、謝罪をするべきです。
この日、福島県の本宮市から群馬県高崎市に避難をした四十代の原告男性が意見陳述を行っています。福島第一原発一号機の水素爆発を受けて、二〇一一年三月十三日に妻と二歳の長男を高崎市の妻の実家に避難させ、自分は翌年八月に福祉関係の仕事を辞めて避難をしました。男性は、原発事故は生活を一変させたとして、周辺住民にも様々な苦痛を与えたとして、自分よりも悲惨な思いをした人もいる、被害の現実を理解してほしいと訴えました。原発事故さえなければ、こんな思いをする必要はありませんでした。
ローマ教皇が来日をしたときに、東日本大震災の被災者との集いが開かれました。ここに、福島県いわき市から東京に避難をした高校二年生の鴨下全生さんが、原発は国策、維持したい政府の思惑に沿って賠償額や避難区域の線引きが決められ、被害者の間に分断が生じた、傷ついた人同士が隣人を憎み合うように仕向けられてしまったと、こういうふうに語りました。ローマ教皇は、東京電力福島第一原発事故について、人々がまた安全で安定した生活ができるようにならなければ福島の事故は完全には解決されないと述べて、原子力の継続的な使用に対する懸念、これを示しています。
原発ゼロ、そして加害者である国と東京電力は、被害者の生活となりわいの再建に最後まで責任を果たすべきです。このことを最後に強く求めて、質問を終わります。