2020年5月19日(火) 参議院 経済産業委員会
「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律案」「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律案」一括議題
禁止行為明記求める
日本共産党の岩渕友議員は19日の参院経済産業委員会で、インターネット通販大手の楽天が「楽天市場」の出店者に負担を押し付けている実態を取り上げ、デジタルプラットフォーム透明化・公正化(DP)法案に取引業者に対する「一方的な不利益変更」などの禁止行為を明記するべきだと求めました。
岩渕氏は、出店者らでつくる「楽天ユニオン」が15日までに行ったアンケートに、送料無料ラインを導入しなかったために検索順位等で不利益を被っているといった声が寄せられていることを紹介。「これは事実上の強制だ」と迫りました。
公取委の杉本和行委員長は「実際に出店者が参加を強制されていないかを含め、引き続き本件違反被疑行為について審査を継続している」と答えました。
米政権にくみする
日本共産党の岩渕友議員は19日の参院経済産業委員会で、5G(第5世代移動通信規格)促進法案について、5Gをめぐる米中の覇権争いが続く中、法案の目的に安全保障への寄与が盛り込まれたことをただしました。
同法案は、通信基地局の早期開設に設備投資額の15%の法人税減税を行うなど5Gの普及を後押しします。その目的に「わが国の安全保障に寄与すること」と明記し、5Gの指針・認定基準を通じてサイバーセキュリティーを確保するとしています。
岩渕氏は、米トランプ政権が安全保障上に懸念があるとして、中国通信機器大手ファーウェイ等の通信機器などの政府調達を禁止し、同盟国にも同様の措置を取るよう要請していると指摘。「法案が経済的な覇権政策を強めるトランプ政権にくみするものになりかねない」と述べました。
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○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
まず大臣に、新型コロナウイルスの問題について質問をします。
昨日、持続化給付金対象外の所得区分を対象に求めるフリーランスの会の方々から、雑所得、給与所得申告の方も対象にと求める署名を議員団で受け取りました。短期間に約三万八千人分の署名が集まったということで、それだけ強い声があるということなんですよね。
中企庁への要請に大門実紀史議員と同席をしました。早く給付を受けなければ明日の生活が成り立たないなど、事態は非常に切迫をしております。申告は雑所得であっても、実態は事業所得です。例えば、契約書はないけれどもメールのやり取りはあるだとか、実態を把握する方法を含め、いろいろできるんだというふうに思うんですね。昨日、要望を踏まえて検討中ですというふうに言っていただいたんですけれども、もう是非ともこういう現場の声に応えていただきたいと。
さらに、二次補正でというふうになれば、給付は七月になるという話もあります。これ、余りにも遅いと。迅速な給付をしてほしいということです。
大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 先週、失礼、五月八日に第一陣の給付が始まりました。その際に、コールセンターやSNS等で雑所得の取扱い、また給与所得の取扱いということもいろいろ御指摘をいただきました。
そういった中で、救済方法を考えましょうということで、先週、できれば先週いっぱいで結論を出したいということを私も申し述べておりましたけれども、今詳細の検討を詰めのところでしているところであります。ですから、この方たちは、事業性のある方、継続性のある方はしっかりと救っていくという方針で今議論、最後の詰めをしているということであります。
雑所得については様々な種類の収入が計上されております。所得法で分類される九種類の所得以外のものが雑所得ということで計上されますので、その中で、いかに事業性があるのか、また、給与をもらった方たちも、その給与の支払先との関係性ということをどう設計していくかということで最後の詰めをしているところでありまして、更なる具体策についてはできるだけ速やかにお示しできるように、引き続き全力を尽くしてまいりたいと考えております。
○岩渕友君 是非ともお願いしたいというふうに思います。
それでは、5G法案についてお聞きをします。
近年、進展著しい5Gは、今後の経済活動の発展にとって重要な産業基盤、社会インフラとなり得るものであって、5G及びドローン技術が生活と産業の公共公益インフラとして発展をし、それらの多様かつ平和的な活用が図られなくてはなりません。
本法案は、その目的に我が国の安全保障に寄与することを経産省主管の法案で初めてうたう法案となっていて、5Gの指針、認定基準を通じてサイバーセキュリティーを確保するとしています。
衆議院の審議で大臣は繰り返し、特定の国の企業や製品の排除ありきではないんだと、こういうふうに答弁をしているんですけれども、二〇一八年十二月十四日に開催をされた総務省の第千六十回電波監理審議会では、5Gの導入に当たり、セキュリティーリスクの問題に関わってどのような意見が寄せられているでしょうか。その意見に対してどう考えるというふうに書かれているか、その該当部分を確認します。読み上げてください。
○政府参考人(田原康生君) お答え申し上げます。
委員御指摘の件で、パブリックコメントで、まず個人の方から、セキュリティーリスクの問題で諸外国で使用禁止になっているファーウェイ、ZTEの二社の設備は使用禁止にすべきとの御意見がございました。
これに関連しまして、平成三十年十二月十四日開催の電波監理審議会において、総務省の方からは、サイバーセキュリティー対策が現在非常に重要であるということに加えまして、去る十二月十日に政府調達に係る政府申合せが申合せされたことを踏まえまして、こちらについても留意すべきと修文させていただくことを予定しておりますと御説明申し上げたところでございます。
○岩渕友君 今答弁の中にあった申合せというのは、二〇一八年十二月十日のIT政府調達に関する関係省庁申合せのことです。総務省は、この申合せに留意をして中国製のファーウェイであるとかZTEの設備を使用禁止にしたということです。
総務省の認識はこういう認識なんですけれども、大臣もこういう認識を踏まえて、本法案の目的である我が国の安全保障に寄与する指針を作るということでいいんですよね。
○国務大臣(梶山弘志君) 5G等のシステムを基盤とするソサエティー五・〇においては、サイバー攻撃等による影響が経済のみにとどまらず安全保障を始め社会のあらゆる分野に大きな影響を及ぼすため、セキュリティーの確保が何よりも重要であると考えております。例えば、重要インフラの運転が困難になるとか、そういうことも含めると、生活にも大きい、国民生活にも大きな影響がある。そういったことも含めて、サイバーセキュリティーというのは非常に重要であるということであります。
このため、5G、ドローン法案においては、安全、安心な5Gシステムの早期普及を後押しすることとしておりまして、先ほど総務省の答弁にありましたIT調達に係る国の物品等又は役務の調達方針及び調達手続に関する申合せは、各府省庁がIT調達を行うに当たって、特定国の企業や製品の排除ありきではなくて、サプライチェーンリスク対応を含む十分なサイバーセキュリティー対策を講じることを確認をしたものであります。
5G、ドローン法案に基づいて今後策定します指針においても、特定国の企業や製品の排除ありきではなくて、サイバーセキュリティーの確保等の観点から、安全性、信頼性等の基準を盛り込んだ上で、事業者から申請される計画を適切に審査、認定することを考えているところであります。
○岩渕友君 米国は、安全保障上の懸念があるとしてファーウェイやZTEなどが生産をする中国製の通信機器などの政府調達を禁止をして、同盟国にも同様の措置をとるよう要請をしています。本法案が経済的な覇権政策を強める米トランプ政権にくみするものになりかねない、このことを厳しく指摘をしておきたいと思います。
次に、デジタルプラットフォーム法案について質問をします。
この間取り上げてきた楽天をめぐる問題について、楽天市場では三月十八日から、三千九百八十円以上購入した場合、送料込みとなる送料込みラインを導入しています。これを全店に強制をするということは独占禁止法上の優越的地位の濫用に当たる疑いがあるということで、公正取引委員会は東京地方裁判所に緊急停止命令の申立てを行ったんだけれども、楽天が参加をするか否か選択できるようにするということを公表したということで申立てを取り下げて、引き続き審査を継続するとしました。
楽天は五月をめどに改めて通知をすると言っていましたけれども、もう今五月です。その後、審査、どのようになっているでしょうか。
○政府特別補佐人(杉本和行君) お答えさせていただきます。
公正取引委員会は、委員御指摘のように、楽天の施策が独占禁止法の規定に違反する疑いがあることから調査を行っていましたが、その実施を一時停止することに緊急の必要があるため、本年二月二十八日に東京地方裁判所に対して緊急停止命令の申立てを行ったところでございました。
その後、楽天から三月六日に出店事業者が参加するか否かを自らの判断で選択できるようにすること等を公表しまして、地方裁判所、東京地方裁判所における緊急停止命令の申立てに係る手続においてもその旨を表明したところでございます。
これを受けまして、公正取引委員会は、出店事業者が参加するか否かを自らの判断で選択できるようになるのであれば、当面は一時停止を求める緊急性が薄れると判断いたしまして、三月十日、東京地方裁判所に対し行っていた緊急停止命令の申立てを取り下げたものでございます。
公正取引委員会といたしましては、緊急停止命令の申立ては取り下げましたが、引き続き、本件違反被疑行為について必要な審査を継続しているところでございます。
○岩渕友君 まあ審査継続中ということなんでしょうかね。
三木谷氏は、全ての店舗に適用するかは考えるとしながら、全ての店舗が自発的に導入するよう説得を進めていくんだというふうにその後述べているんですね。これ、説得というんですけれども、導入をせざるを得ないというのが実態となっています。
楽天のホームページには、送料無料ライン対応ショップ、三九ショップ専用の検索コーナーが開設をされています。十六日と十七日には三九ショップ限定のポイント三倍キャンペーンが開催をされていました。送料込みラインを導入をすれば優遇をされるということなんですね。
一方、除外申請すればどうなるか。楽天ユニオンが四月二十九日から五月十五日まで行ったアンケート調査によれば、同じ商品を扱っているほかの店舗が上位に表示をされるようになった、三九ショップは楽天ポイントのキャンペーンをするなど、除外申請をした店舗とのサービスの差を前面に出しているのでライバル店舗に顧客が流れていくなど、検索順位などで不利益を被るということになるんですね。現状、差別しての検索となっているようで、当店も導入には反対でしたが、検索されなくては楽天に入っている意味がないので商品代金を上げて送料込みラインに入ったという事業者の方もいらっしゃるんです。
これはもう事実上の強制ということになるのではないでしょうか。
○政府特別補佐人(杉本和行君) 先ほど申し上げましたけれども、公正取引委員会は緊急停止命令の申立ては取り下げましたが、実際に出店事業者が参加を強制されていないかという点を含めまして、引き続き、本件違反被疑行為について審査を継続しているところでございます。
○岩渕友君 弊社のような小規模事業者は急にはほかの売上げ確保先が見付からないので従うしかないと、こういう事業者の方もいらっしゃいます。また、送料込みラインを導入すれば採算が取れないという声が事業者からは上がっている。一方、消費者からは、商品価格そのものに上乗せをしているところが増えた、元々三千九百八十円以上の価格でも数百円値上げをされているという声が上がっています。事業者にとっても消費者にとっても負担になるということなんですね。
楽天は、売上額だけでなく送料や消費税などに対しても手数料を取る仕組みに変更をする、振り込み先を楽天の子会社である楽天銀行口座に統一をする、楽天が認定する違反点数に応じた制裁措置と罰金制度の導入、掲載している商品画像の背景色を白い色に変更することへの強制など、規約の一方的な変更や出店者への押し付けを繰り返してきています。けれども、独占禁止法違反にはなっていません。
本法案でこうした問題を事前にやめさせることができるでしょうか。大臣。
○国務大臣(梶山弘志君) 個別の件につきましては、今公取において審査中ということなので、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。
一般論として申し上げれば、ネットであっても一般の取引も同じであって、優越的地位の濫用は、これはいかなる場合にあってもあってはならないことだと思いますし、透明性、公正性というものが保たれるような仕組みづくりという中で今回の法案を提出をさせていただいたということであります。
○岩渕友君 公正取引委員会の立入検査があり、緊急停止命令の申立てがあっても、楽天は姿勢を変えていないんですね。一律導入についても延期ということであって、公正取引委員会の緊急停止命令の申立てに応じたものではないというふうにしているんです。プラットフォーマーの自主性、自律性任せでは、違法行為を抑止することできないと思います。
政府は、法案検討の最終段階で示していた不当行為の禁止規定、これ四項目あったわけなんですけれども、一月二十八日のデジタル市場競争会議で削除してしまいました。
これ、経産省として、削除に同意したのはなぜなのか、その理由について教えてください。
○国務大臣(梶山弘志君) デジタルプラットフォーム取引透明化法案は、独占禁止法に違反するような取引が生じにくい環境を整備するためのものであります。イノベーションとのバランスも考慮して、情報開示や自主的な手続、体制整備を超えて特定の行為を禁止する規定を設けることはしておりません。
特定の行為を禁止する規定については、昨年十月の内閣官房デジタル市場競争会議において、法案の検討内容に盛り込んでいたところであります。具体的には、デジタルプラットフォーム事業者による自社サービスの利用強制や、自社商品と競合する商品の取引拒絶等を禁止する旨の規定の必要について検討が行われました。
しかし、その後、法案の概要について意見公募をしたところ、イノベーションの阻害の懸念、独占禁止法の執行との二重行政の懸念といった理由から、特定の行為の禁止規定を設けることについては強い懸念の声が寄せられました。
こうした意見公募の結果、専門家で構成されるワーキンググループ等での議論を踏まえて、今年一月二十八日のデジタル市場競争会議において、事業者のイノベーションの阻害につながる懸念があることから、本法案に特定の行為の禁止規定は設けないという方針が示され、経済産業大臣である私を含めて、構成員によりその方針が決定をされました。
なお、公正な競争を阻害する行為については、独占禁止法に基づいて、公正取引委員会により排除措置命令や課徴金納付命令も含めた対処がなされるものと承知をしております。本法案でも、必要な場合には同委員会に対処を要請する仕組みを設けております。
いずれにせよ、本法案と独禁法の両制度が相まって、特定デジタルプラットフォームの公正かつ自由な競争を促進し、国民生活の向上と国民経済の健全な発展を実現をしてまいりたいと考えております。
○岩渕友君 違反行為の抑止力高めるためにも禁止行為の明記が必要だということを述べて、質問を終わります。