2020年6月3日(水) 参議院 東日本大震災復興特別委員会
「復興庁設置法等改正案」
原発推進 勘定を圧迫
日本共産党の岩渕友議員は3日、参院東日本大震災復興特別委員会で、特別会計法改定案が福島第1原発事故を起こした東京電力を救済する新たな仕組みづくりに結び付く点を指摘し、「断じて認められない」と訴えました。
同改定案は、電源開発促進勘定(電促勘定)の逼迫(ひっぱく)を理由に、再生可能エネルギー普及などに使い道が限られるエネルギー需給勘定から資金を繰り入れることを可能とするものです。
岩渕氏は、電促勘定からエネルギー需給勘定に資金を繰り戻す際に国民負担が生じるのではと質問。繰り戻しの方法をただしたものの、松本洋平経済産業副大臣は「現時点で見通しがなく、時期や金額、方法など示すことは困難だ」などと答弁。何も決まっていないことが浮かび上がりました。
岩渕氏は、電促勘定は原子力損害賠償・廃炉等支援機構交付金などに使われる電源立地対策費や日本原子力研究開発機構運営交付金など原発関連の分野に使われていることを指摘。「原発事故の処理費用が膨らみ、事故後も原発を推進していることが電促勘定を逼迫させているのではないか」と主張しました。
松本氏は「支出の合理化を図り、無駄をなくしていく」と答弁するだけでした。岩渕氏は「原発事故は国と東京電力の責任だ。本来は事故を起こした東京電力が処理費用を負担すべきだ」と主張しました。
(赤字部分のリンクから別ウィンドウで開きます)
質問資料 エネ特会電源開発促進勘定の内訳の概要【PDF版】【画像版】
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○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
初めに、二つの問題について述べます。
今朝の朝日新聞が、東京電力福島第一原発事故の避難指示区域について、政府が除染をしていない地域でも避難指示を解除できるようにする方向で最終調整に入ったと報じました。
政府は、たとえ長い年月を要しても、将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除すると繰り返してきました。これ、先ほど大臣も答弁されていましたけれども、これは県民との約束です。そのための除染は当然のことであり、県民との約束をほごにするものです。地元からの要望だというんですけれども、問題は、国による除染が遅れている、ここに問題があります。国が責任を果たさないなどということは許されないと強く述べておきたいと思います。
そして、もう一つなんですけれども、原発事故によって生じた損害賠償請求権が事故から十年で順次時効を迎えます。けれども、請求をしたくてもできない方々がいらっしゃいます。
例えば、独り暮らしの高齢者の方で、避難生活の疲れから脳内出血を発症して寝たきりの状態となった、御本人に身寄りが少なく、賠償を手伝うことのできる親族もなかったために賠償請求ができなかったという方など、病気であるとか高齢化を理由としたもの、後から枠組みができた賠償ほど周知が行き届かず、請求可能だと知られていないなど、請求できない様々な事情がありますし、考えられるということなんです。避難指示が出ていた自治体では、これから帰還しようとする人が賠償請求できない事態になってはならないと、こういった声も上がっています。
東京電力は、時効完成後も損害がある限り最後の一人までしっかり賠償すると言っているんですけれども、これまでの東京電力の賠償どうだったかということを見ていきますと、集団ADRの和解案受諾を拒否する、個別の事案についても合理的な理由を示さずに和解案を拒否するなど、損害賠償の打切りを進めてきました。
被害者が漏れなく賠償されるよう求めるとともに、東京電力が損害賠償を打ち切ることがないように国がしっかり指導する、このことを強く求めておきたい思います。
それでは、法案の質疑に入ります。
まず、特別会計法の改定案についてお聞きをします。
今回の改定で、エネルギー特会のエネルギー需給勘定から電源開発促進勘定に資金を繰り入れるということになります。その理由について、福島復興再生に関する施策の財源確保に万全を期すためだと、こういうふうにしているわけなんですけれども、一体何のために財源を確保するのか、その具体的中身、その使途や繰戻しの方法などについては、この間審議聞いていても分からないままなんですよね。
それで、参議院の本会議の質疑の中で、繰り戻すための財源は結局国民負担になるのではないですかと、こういうふうに聞いたところ、経産大臣は、既存の電源開発促進税の税率引上げによって繰り戻すことは想定しておらず、新たな国民負担にはならないというふうに答弁をしました。だったら、どうやって繰り戻すのか、松本副大臣、お願いします。
○副大臣(松本洋平君) 御指摘いただきました大臣の答弁でありますけれども、今般の措置が仮に電源開発促進勘定に一時的な財源不足が生じた場合の融通を可能とするものでありますから、現時点において電源開発促進税の増税のような恒常的な対応が必要になることは想定していないという考えをお示ししたものだと理解をしております。
他方で、万が一に備えたものであることから、現時点で将来における電源開発促進勘定の財政状況などを見通すことはできず、繰入れの時期や金額、御質問の繰戻しの具体的な方法などをあらかじめお示しすることは困難であります。
いずれにいたしましても、今般の措置は、電源開発促進勘定からエネルギー需給勘定へ繰り戻さなければならない規定を設けることによりまして、仮に繰入れを行った場合には、後日必ず繰り戻すことを制度上明確にしているということであります。
以上です。
○岩渕友君 今御答弁いただいたわけですけれども、あらかじめ決めることはできないんだと、後日繰り戻すということは決めているけれども、事前に申し上げることはなかなか難しいんだという答弁で、今のを聞いた限りで言うと、結局何も決まっていないということなんじゃないかと。これ自体が問題だというふうに思うんですね。
それで、財源をつくろうというふうに考えると、単純に、歳入を増やすのか、それとも歳出を減らすのか、まあどっちかだということだと思うんですよね。これ、どんなふうに考えているんですか。
○副大臣(松本洋平君) 先ほど答弁をさせていただきましたとおり、まだ電源開発促進勘定の財政状況などを見通すことができませんし、また、繰入れ時期や金額、御質問の繰戻しの具体的な方法などをあらかじめお示しすることは、ゆえになかなかできないという状況の中で、具体的にどのようなことを考えているのかということに対するお答えというのは大変難しいわけでありますけれども。
例えば、電源開発促進税は電力の販売量に応じて課されるものでありますので、仮に電化の進展などによりまして電力消費量が増えた場合には、税率を変えずとも増収となりますし、また、その時点における税収と政策ニーズにもよりますけれども、歳出面でのプライオリティー付けを適切に行うなどの工夫を更に行うことも考えられると存じます。こうした増税以外の方法によって、後日必ず繰り戻すための財源を確保することが可能であると考えております。
○岩渕友君 実は、事前のレクで、今副大臣が答弁いただいた中身の一部を私も説明受けたんですよ。その歳入の面については、今副大臣話しされたように、電化が進んで電気を使う人が増えれば、要するに電促勘定の財源となるその電促税の税収も増えるじゃないかと。これ事前のレクでもそういう話があって、そういう可能性があるというふうに説明受けたんですよ。
けれども、今、経産省自身が省エネやろうじゃないかということを呼びかけていて、これに国民も応えて省エネ進めてきているわけですよね。それで、歳出について、事前のレクの中で、廃炉が決まった原発もあるんだと、だから歳出減っていくんだというふうに、そういう説明もあったんですけど、一方で、原発の新増設進めようとしているわけですよね。どうやって財源つくるかがやっぱり分からないままだし、その電促税率の引上げについても、想定していないとは言うけれども、やらないとは言っていないわけなんですよね。これ、全く不透明だということなんです。
電促勘定が逼迫をしているというんですけれども、じゃ、その電促勘定が何に使われているのかということで、資料を見ていただきたいんです。
この中で額が大きいのは電源立地対策費なんです。この赤字で書いてある原子力損害賠償・廃炉等支援機構交付金でいわゆる中間貯蔵施設の整備費用相当分を措置しているわけなんですね。今は四百七十億ですけれども、以前は三百五十億円で、これが増えてきたわけですよね。額が膨らんだというだけじゃなくて、約三十年間交付されるということになるんです。
次に多いのがJAEAの運営費交付金ということになるんですけれども、原子力規制委員会が青森の六ケ所村の再処理工場について事実上の合格だというふうにしているわけですけれども、使用済燃料からプルトニウム取り出しても、「もんじゅ」は既に廃止になっているし、核燃サイクル自体が成り立たないと、こういう今状況になっているわけですよね。
そう考えると、結局、この財源を逼迫させている事情というのは、原発事故の処理費用がもうどんどん膨らんでいると、そして原発事故後もなお原発を推進していると、このことが電促勘定を逼迫させているという原因になっているんじゃないでしょうか。副大臣。
○副大臣(松本洋平君) お答えいたします。
福島第一原発の事故から九年余りがたつわけであります。本当に地元の皆様方を始めといたしまして、御迷惑をお掛けしている皆さんに心からおわびを申し上げたいと思います。
その上で、まずはこの地域がしっかりと再び生活を取り戻すことができるように、廃炉作業を始めとした様々な事業というものをしっかりと国が責任を持って着実に進めていくということは極めて重要な事柄であろうかと思いますし、そしてそのための財源を確保するということは大変重要な事柄だと理解をしております。
御指摘をいただきましたとおり、電源開発促進勘定でありますけれども、当然、これの支出の合理化を図ることによってできる限り無駄な支出というものをなくしていく、こうした努力というものを継続をしていくということはまず第一義的に我々がしっかりとやっていかなければならない課題であるというふうに認識をしているところであります。
経済産業省といたしましては、これまでも福島向け以外の立地対策予算について、東日本大震災のあった平成二十二年度に比較をいたしまして、令和二年度予算では五百五十億円の減額をするなどの最大限の合理化を講じているところでありますが、これで満足することなく、我々といたしましても、今後も不断の見直しを継続をすることによって、この支出の合理化というものを図ってまいりたいと存じます。
○岩渕友君 支出の合理化進めるということなんですけれども、同時に、歳出の面で、この間、答弁の中では、福島に関わる費用がいろいろ増えてきているんだという話もあったんです。これ、福島の費用、関わる費用が膨らんでいると、増えているというふうにも言うんですけれども、誰の責任でそもそも事故が起きたのかということをやっぱり考える必要あると思うんですよ。これ、国と東京電力の責任でこうなっているということなんですよね。原発事故の処理費用は、本来は事故を起こした東京電力が負担するべきものをこれまで国民負担にしてきている部分もあるわけですよね。今回の改定というのは新たな東京電力救済の仕組みづくりだと、これは断じて認められないということを述べておきます。
最後に、なりわいの再建についてお聞きをします。
福島のイノベーション・コースト構想の一環として浜通りに整備をされる国際教育研究拠点について、復興庁の有識者会議が、研究者や学生ら約六百人が拠点で活動するんだと試算をして、五千人規模の雇用創出目標に掲げてやっています。
でも、一方で、地元の雇用を守っている中小業者の営業がどうなっているかということで、避難指示解除に伴って地元に戻って商売を再開させた事業者が結局はやめざるを得ないという実態があるんですね。浪江町で板金屋を再開させた方は、官民合同チームの支援も受けて、ホームページも整備をするし、チラシの新聞折り込みを近隣の市町村にも広く行うなど様々な努力をしてきたんですけど、売上げが事故前の三分の一ということで、東京電力からの賠償は既に切られているし、もう赤字が出て結局は商売続けられなくて避難先に戻るということになったんですね。
こういう地域を支えて雇用を守る地元の業者こそやっぱり営業を継続できるようにするべきだと思うんですね。大臣に、最後。
○国務大臣(田中和徳君) お尋ねの件についてお答えします。
復興庁といたしましても、復興・創生期間後の基本方針を踏まえて、事業の再開、継続に必要な住民の帰還を進めるために、魅力ある町づくりやコミュニティー形成、あるいは医療、介護、福祉、教育、交通などの生活環境整備をハード、ソフトの両面から取り組んできたところでございます。これらの取組もあって、避難指示が解除された区域においては、居住者数は、平成二十九年四月時点で約〇・四万人、平成三十年の四月で約〇・九万人、令和二年四月で約一・四万人と徐々に増加をしておるところでございます。
いずれにしても、復興庁としては、引き続き官民合同チームとも連携をして福島の本格的な復興再生に向けて全力で取り組んでまいりたい、帰還をして安心して生活ができるように頑張ってまいりたいと思います。
○岩渕友君 以上で質問を終わります。
○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
私からは福島の農業についてお聞きします。
復興・創生期間後の基本方針では、農業分野では原子力災害被災十二市町村において営農面積が三割弱にとどまると述べています。なぜこの営農面積が三割にとどまっているのか、復興大臣にお聞きします。
○国務大臣(田中和徳君) ただいまのお尋ねでございますが、原子力被災十二市町村のうち避難指示解除の時期が遅い市町村では、農業の担い手不足に加え、営農再開に向けた農地集積をサポートする体制や人材も不足をしておる状況でございます。被災十二市町村における営農再開面積が約三割弱にとどまる原因はこうしたことがあるのではないかと、このように思っておるところでございます。
このため、今般の福島特措法改正案による農地の利用集積の促進を含めて営農再開の加速化を図ってまいりたい、このように思っておるところでございます。
○紙智子君 今述べられたことだけなのかと、ちょっとそれは、表面的には、現象的にはそうかもしれませんけど、それだけなのかなということ。
次、農水大臣にお聞きしたいんですけれども、農林水産省は、福島県で農地土壌を採取して放射性セシウムの濃度を測定をし、農地土壌分布図を作っています。
これ、配付しております資料なんですけれども、御覧いただきたいと思います。
三百六十八地点あります。この調査というのは何のためにやられているんでしょうか。
○国務大臣(江藤拓君) 今復興大臣からお話がありましたように、やはり一日も早く福島の本格的な復興を遂げるためには、農地をもう一度農地として戻せるようにするためには、まず調査をしなければなりません。農地に入れば、農家の方々もちゃんと除染をしなければ被災するおそれもありますので、現在、地域の方々とお話合いをしながら三百数十地域での定点検査をさせていただいておりますけれども、それによって、どれぐらいその地域はいまだに放射性物質が残っているのか、それを調べることによって、施肥をする場合にカリウムをまきますとこれを減らすことができますので、どれぐらいの量を施肥したらいいのかということも知る必要がありますし、そういったものを調べるために検査をさせていただいている、そしてそれを毎年公表させていただいているところでございます。
○紙智子君 これ、三百六十八か所ということで、これ調査数は少ないし、データの分析も不十分だと思うんですね。
福島では、チェルノブイリの教訓を学ぼうということで、チームをつくって現地に行って調査したんですよ。それ見ますと、チェルノブイリでは詳細な土壌マップが作られている。農地は三ヘクタールから十ヘクタール、森林は七十ヘクタールのメッシュをつくって、それごとに土地の汚染度と土壌の質が調査をされて、データベース化されて四年ごとに更新して、それぞれの土地の資格書というふうになっているわけです。
そこで、もう一度資料を御覧いただきたいんですけれども、日本では測定の数が三百六十八か所と。これ、飯舘村でいいますと、農地面積が二千二百二十ヘクタールなんですけど、そこで八か所だけです。だから、三百ヘクタールに一か所だと。浪江町はどうかというと、二千三百九十ヘクタールあって八か所なので、やっぱり三百ヘクタールに一か所と。だから、チェルノブイリと比べると百分の一と、極めて少ないんですね。しかも、データベースにして、除染を通じてこの放射能汚染がどれぐらい下がったのか。セシウム137は半減期が約三十年です。九年たってどれぐらい低減したのかということは明らかになっていないんですね。
二〇一三年のときに農水省が農地土壌の放射性物質濃度分布マップ調査報告書を出しているんですけれども、それ以降は報告書は出されていないんです。この九年間でどう変わったのか、分析はされていないんでしょうか。
○国務大臣(江藤拓君) 今の先生お話ありました二〇一三年というのは、ちょっと調べてみたら、二〇一一年の年に農林水産省が調査分析方法それから解析結果を解説した報告書として原子力規制委員会に報告をいたしまして、委員会のホームページ上で公表されたものだということでございます。
その後は、二〇一一年以降は、農林水産省のホームページでは毎年、農地土壌、先ほど申し上げましたように三百六十八か所、数は少ないんでありますけれども、実測図それから分布図等は公表してまいりました。
しかし、今日先生から御指摘をいただきまして、やはり、ここで営農をもう一回再開しようとしている方々にとっては、このもうすぐ十年を迎えようとするその年月の中で、どのようにセシウムの、いわゆる放射性物質の残留濃度が変わったのかと、そういうことは非常に関心の高いところでもあろうと思いますので、今後は、放射性物質等の濃度の推移、それから経年変化、こういった検証、分析もしっかり行っていきたいというふうに考えております。
○紙智子君 これから経年の変化もやっていきたいというお話あったんですよね。
それで、これまでで言うと、経年的に分析して将来の見通しがどうなるかということも示されていないわけです。余りにもやっぱりそういう意味では安全に対する認識が薄いんじゃないかと言われても仕方がないと思うんですね。
政府がやっぱり本腰を上げてなかなかやらなかったということもあって、福島では、二〇一二年度から土壌スクリーニングプロジェクトが取り組まれて、JA新ふくしまの農地中の放射性物質の分布マップを作成し、福島生協連とか職員とか組合員も参加して、生産者、消費者が連携して全農地を対象に放射性物質含有量を測定して、汚染状況をより細かな単位で明らかにしてきたんです。福島市を含むJA新ふくしま管内では、十万地点ですよ、十万地点を測定をしてマップが作成されたんです。
そういう努力をしないと安全、安心な農作物作れないと。農家は、田畑で長時間、農地で作業しなきゃなりません。田起こしをやれば、直接土に含まれている放射性物質が舞い上がって、吸い込んだりするわけですよ。だから、被曝の不安が付きまとってきた。線量が高いところではとてもできない、だから圃場ごとに測定してほしいという要望が早いときから上がっていました。この九年間、毎年福島の農民連の皆さんが、放射性物質の汚染から農民の健康を守れる対策を要求してきたんです。
ところが、厚生労働省は、原子力発電所などで働く労働者は除染電離規則でガイドラインを作ってやってきたと。だけど、農業者は労働者じゃないから所管外だといって受け付けなかったんです。環境省はどうかというと、線量は測るけれども健康調査は福島県に聞いてくれと、こういう態度だったんです。じゃ、農水省は対応するのかと聞いたら、農水省は農地の問題や農業経営に関してやるけれども、健康への影響は厚生労働省じゃないんですかということで、これ、たらい回しだったんですよ。
それで、私は二〇一四年の復興特のときに、当時、竹下復興大臣だったんですけど、大臣に質問しました。原発事故の責任は東電と国にあるんだから、たらい回しではなくて、どの省がどう対応するのかを決めるべきじゃないか、こういうふうに言ったときに、大臣が、おっしゃるとおりだと言ったんですね。復興庁が他の役所を叱り付けてもやっぱりこれやりたいというふうに答えたんですよ。そういうふうに答えていながら、もう六年過ぎたんですけれども何も変わっていないと。
それで、田中復興大臣にお聞きしますけれども、復興庁は何をされてきたんでしょうか。
○国務大臣(田中和徳君) 放射性物質に関する認識については、科学的根拠に基づいた正確な情報を発信していくことが一番重要であろうと思っております。
こうした考えの下、私が司令塔となって、原子力災害による風評被害を含む影響の対策タスクフォースを開催をさせていただいて、関係省庁に対して取組の強化を指示するなど、政府一体となって取り組んでまいりました。
委員御指摘の農作業における安全の確保に関しては、厚生労働省あるいは農林水産省が連携をして所要の情報の周知を図っているものと承知をしておるところでございます。
引き続き、関係省庁としっかりと連携をさせていただいて、現場に寄り添って丁寧に対応していきたいと思っております。
○紙智子君 あのね、もう九年たったわけですよ。それで、安倍総理の閣僚はみんなが復興大臣だと思ってやってくれと言っていたんですよ。だけど全然やっていなかったということがあるわけで、今日、実は農水大臣来てもらったのは、期待を込めて来てもらいました。是非、この問題、先ほどもおっしゃいましたけれども、是非これからでも対策に乗り出すべきだと思うんですけれども、大臣、一言お願いします。
○国務大臣(江藤拓君) ロシアのチェルノブイリ並みの面積単位で細かくという話についてはなかなか困難な部分もありますし、それぞれ農政連やJAの方々が一生懸命やっていただいたことについてはもう一度しっかり勉強させていただきたいと思います。
しかし、これまで何も農水省がしてこなかったのかということについては、そうではないということだけは申し上げたいと思います。
厚生労働省が定めたガイドラインは、しっかり農水省も協力してくれと言われましたので、このようなガイドラインを厚生労働省が定めておりますということを周知する努力は一生懸命してまいりましたし、それから健康面については、これは作るだけじゃなくて、そこで作業する人の健康を管理することもGAPの一部ですから、農林水産省としては、ほかの予算でもやれますけど、農水省の予算でもGAPの推進を進めて農民の健康管理にも一助となってきたというふうに考えております。
○紙智子君 GAPは私も知っているんですけれども、ちょっと今言われているその経過からいっても是非誠実に応えていただきたいということを申し上げておきたいと思うんです。放射能への不安があるから営農面積がやっぱり三割にとどまっているんじゃないかと。しかも、医療とか買物とか生活のインフラも整っていないということがあるので、そのことも是非踏まえていただきたいと思います。
こういう切実な問題をそのままにしたまま、新基本方針では、外部からの参入も含めた農地の大区画化とか利用集積とか、高付加価値の産地の展開とか六次産業化とか、これ加速化を図るというふうに言って、県が主導して農地の集約化をすると。それから、県民の八割は知らないと言っている農業のイノベーション構想も、県が主導して進めるということになるんですよ。これ、現場が置き去りにならないかという心配があります。
現行の農業経営基盤強化促進法に基づいて行われる所有者不明農地、これに関して、共有者の過半が明らかでない場合は、探索や公示は今までは市町村や農業委員会が行うことになっていたんですけれども、今回は福島県が単独でやれるようになるんです。市町村とかJAとか農業委員会が関与しなくてもよくなると、こういう仕組みにもなっていて、これが所有者不明地で公示の日から六か月以内に異議を述べなかった場合には、十七条の二十八項の規定でもって、福島県知事が定める農用地利用集積促進計画に同意したものとみなすと、賃借できるようになるということで。これは、住民としてみれば、避難を余儀なくされていたりいろんな事情で六か月経過して、終わった後に気が付くということだって出てくるわけで、そういう場合にどうするのかということも含めて慎重に扱わなきゃいけないというふうに思うんですけれども。
時間になりましたのでちょっと続けて言います……
○委員長(青木愛君) おまとめをお願いいたします。
○紙智子君 はい。
ということで、是非、復興の主人公、主体者というのは生産者であり市町村でありJAでありそこでやっている人たちだと思うので、加速化といってそこを置き去りにしないように心からお願いしたいと思いますけれども、最後に一言お願いします。
○委員長(青木愛君) 時間が来ております。簡潔にお願いいたします。
○国務大臣(田中和徳君) ただいまのお尋ねでございますけれども、今回の福島特措法改正案においては、共有者の過半が判明していない農地については、県が十分な探索を行ってもなお過半の共有者を確知できない場合には、県が当該農地を農地バンクに貸し付けることを内容とする計画を公示をして、六か月たっても異議がなかったときは計画に同意したものとみなして農地バンクへ利用権が設定されることとしておるところでございます。いろいろと慎重な手続を経て、その上で権利を設定するものでありまして、不明な共有者にも十分配慮した仕組みと考えておるところでございます。
いずれにしましても、私どもも実の上がる対応をしてまいりたいと思っております。
○紙智子君 置き去りにされないようにお願いします。
終わります。
○紙智子君 私は、日本共産党を代表し、復興庁設置法等の一部を改正する法律案に反対する討論を行います。
東日本大震災、福島第一原発事故から九年三か月が経過しました。今公表されているだけでも、四万人を超える方々が避難生活を余儀なくされています。被災地は、震災による直接的な被害に加え、昨年の台風被害や今回の新型コロナウイルス感染症の影響が打撃となり、重くのしかかっています。復興公営住宅では、居住者の高齢化や孤独死、心のケアや地域コミュニティーの形成、公的支援から取り残された在宅被災者の問題など、新たな課題に直面しています。なりわいの再建を含め、復興庁の設置期間を延長することは当然です。地震・津波被災地域に対する支援は、期限ありきで打ち切ることがあってはなりません。
法案に反対する最大の理由は、福島第一原子力発電所事故の原因者である東京電力の責任を免罪し、そのツケを国民、被災者に転嫁するからです。法案は、中間貯蔵施設の費用などを拠出する電源開発促進勘定に、再生可能エネルギーの導入などに使うエネルギー需給勘定から資金の繰入れを可能としました。中間貯蔵施設の費用は、本来、放射性物質汚染対処特措法の規定に基づき東京電力が負担するとされています。それを国が負担している上に、更にその財源が逼迫したから別勘定から繰り入れることは、東京電力の責任を免罪するものであり、断じて認められません。
後日、電源開発促進勘定からエネルギー需給勘定に同額を繰り戻すとしていますが、電源開発促進勘定は電源開発促進税を特定財源としており、電気料金の一部として被災者を含む国民から徴収しているものであり、原発事故の被災者を含む国民に東京電力の責任を転嫁するものにほかなりません。
加えて、福島イノベーション・コースト構想は、廃炉やロボット、ドローンなど浜通りの産業回復をうたう構想ですが、呼び込み型の巨大開発が中心となっているという問題があります。
福島の農業の再建も重要です。営農再開の加速化と称して県が主導し農地の大区画化、施設整備を進めれば、市町村やJAなどが置き去りになりかねません。再建に当たっては、農地の圃場調査や生産者の健康不安に応えるべきであるということを申し上げ、反対討論とします。
○委員長(青木愛君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
これより採決に入ります。
復興庁設置法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(青木愛君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。