2021年4月6日(火) 参議院 経済産業委員会
一般質疑(梶山経産大臣の所信的挨拶を受けて)
日本共産党の岩渕友議員は6日の参院経済産業委員会で、再生可能エネルギーを取り入れた新電力会社、消費者が電力市場価格高騰で損害を受けた問題で政府の責任を追及しました。
昨年12月中旬から約1カ月間の価格高騰で「電気代が通常の約5倍、数万円に跳ね上がった」「数千万円の損害が出る見通し」など自治体出資電力でも被害が出ています。
岩渕氏は「海外で前例がない異常事態だ。関西電力など大手電力9社が電源保有・情報など圧倒的な力で市場を独占し、必要な規制がなかった」と批判しました。梶山弘志経産相は「情報の透明化は必要。市場をできるだけ早く改善していく」と答弁。公正取引委員会の古谷一之委員長は「独禁法に違反する事実が認められた場合は厳正に対処したい」として、電力市場が新電力にとっても公正な競争の場となる必要があると述べました。
岩渕氏は「1カ月に1・5兆円超の資金、通常の5~6倍の取引額が送配電事業者に流れたとされる。市場の不備で受けた損害であり小売事業者に還元すべきだ」と主張。徹底した情報公開、大手電力の発電と小売部門の分離など、寡占状態から公正な競争環境を整えるよう求めました。
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質問資料1 関西電力、中国電力のグロス・ビディングの実施症状(2020年12月~2021年1月下旬)【PDF版】【画像版】
質問資料2 法的分離以降の電気事業者の会社分割状況【PDF版】【画像版】
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2021年4月6日(火) 参議院 経済産業委員会
一般質疑(梶山経産大臣の所信的挨拶を受けて)
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
昨年十二月中旬から一月下旬にかけて起きた電力市場価格高騰問題について質問します。
この問題は、電力システム改革の今後の方向性、再生可能エネルギーの主力電源化、エネルギー政策全体に関わるものです。
卸電力を取引する市場であるJEPX市場で、通常は一日平均キロワットアワー当たり十円未満の価格が、一月十三日の平均価格が百五十四・六円パー・キロワット・アワー、一月十五日には最高値の二百五十一円パー・キロワット・アワーを記録して、価格高騰が一か月にわたって続きました。
こうした事態は世界的に見てもなかったのではないでしょうか。そして、これは市場として正常とは言えないのではないでしょうか。
○政府参考人(佐藤悦緒君) 御答弁申し上げます。
委員御指摘のとおり、今冬のスポット市場における価格高騰は約三週間にわたり継続しておりまして、期間の長さで見れば海外の前例はないものと承知しております。
この期間におきましては、送配電事業者において需給逼迫に対応するため、緊急的に自家発に稼働を要請するなど、様々な通常ではない対応を講じざるを得ない状況となっておりまして、そうしたコストを考慮しますと、スポット価格が上昇したこと自体は合理的なものであったと考えております。しかしながら、一部においてはスポット価格はスパイラル的に上昇し、調整力のコストや需給逼迫状況といった、需給逼迫等を反映しない実態と異なる動きをしていた面もあったと考えています。
当然のことでありますが、価格が実態に合わせて動く仕組みとしていくことは極めて重要であります。
二二年度から導入予定の新バランス、新インバランス料金制度は、その時間帯で稼働した調整力の単価や需給逼迫度合いを基に決定される仕組みとなっておりまして、まさしく価格が実態に合わせて動く制度を考えております。このように、より望ましい仕組みへの改善はこれまで詳細な検討が進められているところでございます。
なお、二二年度から導入予定の新バランス料金の下では、今冬のような売り切れ状態が継続した場合においても需給の状況等を離れた価格高騰は発生しないと考えております。
諸外国の例を見ましても、自由化による新規参入を進めながら段階的により適切な市場の形成に向け不断の見直しを行っていくことが一般的であります。今冬の教訓も踏まえ、包括的に課題の検証を行い、あるべき市場の整備に向け引き続き取り組んでまいりたいと考えております。
○岩渕友君 三週間にわたってということで、期間の長さでいえば世界的にもないだろうという御答弁でした。
そういう意味では非常に異常な事態だったということになるわけですよね。これによって、市場連動型の料金プランを契約していた消費者が、通常月一万六千円程度の電気料金が一月は八万円に跳ね上がったとか、一月の電気料金が前年同月比で四倍の五万円を超えた、激変緩和のための特別措置で半額程度というが、それでも高いと、こういう高額な請求を受けるということになりました。
また、小売事業者、特に再生可能エネルギーの電気を供給している小売事業者が甚大な被害を受けるということにもなりました。こうした事態が起きるということは、規制がうまくいっていないということを示しているというふうに思うんですね。
今回の事態は市場の信頼にも関わる重大な問題で、このままだったら同じようなことがいつ起こってもおかしくないということです。どこに問題があったのか、それを明らかにして対策を取らなくてはなりません。
市場の価格が高騰した直接の原因は、旧一般電気事業者、いわゆる旧一電から卸電力市場への売り入札量が減らされて市場の電気が足りなくなったことで、市場から電気を調達していた小売電気事業者が電気を奪い合って価格がつり上がったというふうにされています。
電力を市場調達をする小売事業者は、電力の需要と供給に差が生じた場合に、先ほどちょっとありましたけれども、電力会社がその穴埋めを行う代わりに、電力価格より高い価格で精算払いを行うインバランス料金を支払わなければなりません。これ、電気が買えない場合もインバランスになるんですね。
経済産業省は、一月十七日、このインバランス料金の上限をキロワットアワー当たり二百円とする措置を適用をしました。この措置を発表しただけで、価格が下がって市場が落ち着いたわけですよね。この措置を今後もこのまま継続するべきではないでしょうか。そしてあわせて、適正な上限価格の検討も必要ではないでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) この冬の電力市場価格の高騰を受けて、本年一月に、供給力不足を生じた際に小売電気事業者が送配電事業者に支払う精算金について、来年四月に導入を予定していました需給逼迫時の上限価格の設定を前倒しして導入したところであります。
委員御指摘のとおり、市場におけるセーフティーネットを導入することは市場参加者の予見性を確保する観点から大変重要であると考えております。このため、現在、今般の事象の検証と並行して、市場におけるセーフティーネットの仕組みとして精算金の上限価格の検討を進めており、一月十七日に前倒しして導入した需給逼迫時の上限価格を継続することや、需給が逼迫していない場合における精算金の上限価格の在り方について、審議会において有識者の意見も踏まえながら議論を進めているところであります。その他、今回の高騰の原因についてもいろんな角度から今議論をしているところでもあります。
○岩渕友君 前倒しで導入をしたということですけれども、今、六月三十日までというふうになっているわけですよね。でも、もうそれずっと前倒しでこのまま進めていくことが必要だということだと思います。電取も、上限設定が必要だという問題意識を持っていたからこそ、これ準備をずっと進めてきているわけですよね。
一月のインバランス料金については、これまで公表されてきた速報値が平均五十九・二円パー・キロワット・アワーだったのに対して、確報値が七十七・六五円パー・キロワット・アワーと、速報値と大きく乖離した状況になっているということも明らかになりました。
これ、ある電力、市民電力の方からは、二月時点の予測で二千三百万円の損害が出るんだというふうに算定をして、増資を行って二千百万円集まったので何とかしのげるというふうに思ったんだけれども、これでは更に経営的に打撃になると、結局はユーザーや出資者の負担になっているじゃないかと、こういう話も聞いているんですね。対応が必要だったと、こういうふうに認識をしながらやってこなかった。その間に起こった事態が今回の事態だということです。
インバランス料金が高騰したことによって一般送配電事業者に集まったお金は、損害を受けた小売事業者に当然還元する、されるべきだというふうに思いますけど、いかがでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 小売電気事業者が十分な供給力を確保できなかった場合、安定供給を確保するために、一般送配電事業者が不足分の供給を行うこととしております。
この際、小売電気事業者から一般送配電事業者に対して精算金を支払うことになりますが、この精算金は市場価格に連動して決定されることから、この冬の市場価格高騰を受けて高額な精算金が発生をしているところであります。
仮に市場価格高騰に伴い一般送配電事業者が要した費用を上回る収益を上げるとすれば、広く需要家に還元していくことが適当であると考えております。既に審議会においてもそのような方向性で議論を進めているところでありまして、引き続き検討を深めてまいりたいと思っております。
そして、新電力に対しましては、分割の支払ということで、まずは五回ということでしたけれども、さらにまた、全新電力に対して聞き取り調査をしたところでありますけれども、九回まで延ばしているところでもあります。
○岩渕友君 小売事業者、大きな損害を受けているわけですね。当然還元をされるべきだし、この間のやり取り聞いていると、新電力でもリスクヘッジしている事業者もいるじゃないかというようなこともおっしゃられているんですけれども、リスクヘッジと言うけれども、自己責任だと言うんだったらば、それだけの制度設計が行われていなければならないということですよね。
FIT、特定卸供給によって、再生可能エネルギーによって発電をされた電気は、FIT価格で送配電事業者が買い取って、その電気を送配電事業者が市場価格で引き渡すということになっています。再エネを自社で発電している事業者も、再エネ事業者と契約している事業者も、この仕組みを使わなくちゃならないと。なので、市場を使っていなくても、FIT電気を使っている小売事業者は市場価格の変動の影響を受けているわけなんですよね。
消費者や新電力などの小売事業者が損害を受ける一方で、電力市場全体では一か月で一兆五千億円を超える資金移動が起こっているというふうに言われています。通常の五倍とか六倍とも言える取引額が送配電事業者に流れたということになります。公正な競争もできずに、多様なプレーヤーが事業を継続できない状況では、市場の発展や成長はないということですよね。
資料の一を御覧いただきたいんですけれども、これ、十二月中旬以降、旧一電、あとJERAの売り入札量が減少した要因の一つに、関西電力そして中国電力が一定期間グロスビディングを取りやめていたということもあります。
グロスビディングは旧一電の自主的な取組で、グループ内取引している電力の一定量を市場に放出する仕組みです。これまでも、現状のグロスビディングは透明性が確保されていないと、こういうふうに指摘をされていました。自主的な取組に任されたままでは、また同じことが起きかねないと、起こりかねないということになります。
資料の二も御覧いただきたいんですけれども、これ、法的分離以降の電気事業者の会社分割状況なんですね。そもそも、巨大な電力会社と新電力では、持っている情報や電源の保有や競争力といった点で、全ての点において圧倒的な力の差があります。市場の透明化がやっぱり必要なんですね。
電力市場における電力会社と新電力の格差、圧倒的な非対称性を解消して適正な環境を整えるためには、大手電力の発電部門と小売部門の分離、発販分離が必要ではないでしょうか。電取に。
○政府参考人(佐藤悦緒君) まず、この冬の価格高騰について見解を述べさせていただきます。
この冬の価格高騰における旧一電のスポット市場における入札行動につきましては、当委員会でも徹底的に調査分析を行い、公正取引委員会もオブザーバーとして参加する審議会で有識者に御議論いただいておりますが、相場を変動させることを目的とした売惜しみ等の問題となる行為は現時点では確認されておりません。
その上で、御指摘いただきましたが、電源の大半を有する旧一般電気事業者の卸取引について、今後更に透明性を高めることは極めて重要だと考えております。今委員からは旧一電の発販分離を進めるべきとの御指摘をいただきましたが、重要なことは、組織の形ではなく契約の中身であり、旧一般電気事業者の発電部門が自社グループ内の小売とグループ外の新電力とを取引条件において差別しないことを確保して、その透明性を高めることが最も重要と考えております。
このため、監視等委員会では、昨年七月に、旧一般電気事業者に対しまして、社内外の取引条件を合理的に判断し内外無差別に卸売を行うことのコミットメントを強く要請いたしまして、各社からこのコミットメントを実施するとの回答を得ております。
今後、旧一般電気事業者各社の内外無差別な卸売に関する実施状況を確認、また公表することによりまして、こうした取組の実効性を確保していきたいというふうに考えております。
○岩渕友君 今いろいろ答弁いただきましたけど、大手電力と新電力では圧倒的な差があると。やっぱり発販分離、必要だと思うんですけど、大臣はいかがでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 先ほど電取から話がありましたように、公正取引委員会もオブザーバーとして参加する審議会で有識者に御議論をいただいて、今回の事象の分析等を行ったということであります。
その上で、この冬の価格高騰において旧一般電気事業者が相場を変動させることを目的とした売惜しみ等の問題となる行為を実施したことは確認されていないと承知しておりますけれども、やはり情報の透明化というものは必要だと思っております。そして、予見可能性というものも必要だと思っております。
一方で、あとは、こういう事態に陥ったときに慣性力をどう保つか、調整力をどう保つかということで、この市場と併せて容量市場等の必要性というものも改めて感じたところでありますし、二〇一六年から自由化始まりましたけれども、市場もまだ未成熟の市場であると思っておりますので、しっかりと今回の教訓を生かしながら、市場をできるだけ早く改善をしていくということが我々の仕事であると思っております。
○岩渕友君 そこで、ちょっと公正取引委員会にお聞きするんですが、昨年十月、公取と経産省が出した適正電力取引についての指針で挙げられている公正かつ有効な競争の観点から問題となる行為について簡潔に説明をいただきたいというのと、続けて、公取が今回の高騰問題をどういうふうに見ているのか、また、その旧一電などが市場に電力の売惜しみをするなどして小売事業者が電力を調達できないようなことがあった場合はどのように対応するのか、教えてください。
○政府特別補佐人(古谷一之君) 電力市場の自由化に伴います競争上の問題等に関しましては、今御指摘がございましたように、公正取引委員会におきましては経済産業省と共同しまして適正な電力取引についての指針を策定しております。
その中で、卸電力市場の電力投入の制限に関しまして、旧一般電気事業者が不当に電力投入を制限することなどにより、他の小売電気事業者が卸電力取引所において電力を調達することができず、その事業活動を困難にさせるおそれがあるなどの場合には独占禁止法に違反するおそれがあるという考え方を示しております。
今、不当にと申し上げました。競争者を市場から排除する目的などがあって、その手段として電力投入量を制限するといったような場合が典型的に不当な場合に当たろうかと思います。
先ほど経産省の方から答弁がありましたように、公正取引委員会としましても、電力・ガス取引監視等委員会が主催をしております検証の場にオブザーバーとして出席しておりまして、その検討状況については承知をしておりますが、やはりこの卸電力市場が新電力にとっても公正な競争が行われる場として整備が図られていくということが非常に重要だと公取としても考えております。
監視等委員会と連携をして取り組んでいきたいと思いますし、個別の事案についてお答えすることは控えさせていただきますが、今申し上げました適正取引についての指針における考え方を踏まえまして、仮に独占禁止法に違反するような事実が認められる場合には厳正に対処をさせていただきたいと考えております。
○岩渕友君 いろんな懸念をなくすためにも、徹底した情報公開が必要です。今回のことを受けていろんな情報公開されるということにもなったんですけど、問題起きて公表できるんだったらもっと早く公開できたということだと思うんですね。
スポット市場の公開など、早くから行うべきだったんじゃないでしょうか。
○政府参考人(佐藤悦緒君) お答え申し上げます。
市場参加者の予見可能性を高める観点から、入札並びに発電関連の情報公開は極めて重要でありますが、どこまで公開するかについては、それらが事業者の経営情報に当たり得ることや、また相場操縦行為を誘発しないかといった点とのバランスを考慮して決めてきたところでございます。
これにつきましては、今冬のスポット市場が高騰した局面においては、多くの市場参加者の方から今何が起きているかをより正確に把握したいとの声が相当数聞かれたところでございます。こうしたことを踏まえまして、当委員会としましてより情報公開を充実する方向で見直すことが必要と考え、まずもって日本卸電力取引所による需給曲線の常時公開を実施することにいたしました。
現在、発電所の稼働見通しといった発電情報の公開の在り方についても審議会で検討を進めておりまして、市場参加者の予見性の向上に向けて、引き続き情報公開の拡充に向けた検討を速やかに実施してまいりたいと考えております。
○委員長(有田芳生君) 岩渕さん、時間ですのでおまとめください。
○岩渕友君 はい。
情報公開、非常に重要だと思うし、大臣がおっしゃるように、透明性高めなくちゃならないということだと思うんですね。こうした状況を放置しておけば、電力システム改革といいながら結局は大手電力が独占するような状況で、再生可能エネルギーを選びたくても選べない状況、あの原発事故前に戻るということになっちゃうんだと思うんですね。
だから、いろんなプレーヤーが活躍できる市場、多様な電源を選択できるようにするために、やっぱり市場の寡占状態から公正な競争環境を整えることが必要だということを述べて、質問を終わります。