2021年5月17日(月) 参議院 決算委員会
「2019年度決算ほか2件」省庁別審査⑤
日本共産党の岩渕友議員は17日の参院決算委員会で、東京電力福島第1原発事故に伴う政府の廃炉工程の見直しが迫られている実態を示し、廃炉作業を口実に決定した放射能汚染水の海洋放出決定の撤回を迫りました。
岩渕氏は、政府が廃炉期間を30~40年間とする一方、1~3号機のシールドプラグ(格納容器の上部に敷かれたコンクリート板)に最大で計7京ベクレルの放射性物質が付着していると指摘し、認識をただしました。更田豊志・原子力規制委員長は「(廃炉計画の)小手先の変更では対処は難しい」と述べ、山名元・原子力損害賠償・廃炉等支援機構理事長は「(燃料デブリの)取り出し方法の戦略を柔軟に検討していくことになる」と答弁。梶山弘志経済産業相は「廃炉作業が遅れることは現時点で考えていない」と強弁しました。
岩渕氏は、通常炉でも廃炉に40年以上かかるとして、事故を起こした同原発を最長40年で廃炉にするとした政府の中長期ロードマップは「そもそも無理がある」と追及しました。
原子力学会で、廃炉完了・敷地再利用まで最短で100年以上かかるとの報告書が公表されたと紹介し、汚染水の海洋放出を今決める必要はなく、タンク増設の敷地確保を徹底的に追求するよう要求。「住民や自治体などの地元の声を聞きながら廃炉への選択肢を検討すべきだ」と述べ、ロードマップの根本的見直しを求めました。
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質問資料1 1号機~3号機の状態(推定)【PDF版】【画像版】
質問資料2 1号機~3号機の放射線汚染状況【PDF版】【画像版】
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質問資料3 国内各原発の廃止措置終了予定時期【PDF版】【画像版】
質問資料4 日本原子力学会報告書での、廃炉4シナリオ(2020年7月)【PDF版】【画像版】
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2021年5月17日(月) 参議院 決算委員会
「2019年度決算ほか2件」省庁別審査⑤
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
東京電力福島第一原発事故から十年がたちました。四月十三日に、政府が福島第一原発事故によって発生をした汚染水をめぐる取扱いについて海洋放出決定を強行したことについて抗議をするとともに、決定の撤回を求めるものです。二〇一八年に行われた公聴会でも、昨年行われた関係者の御意見を伺う場でも、パブリックコメントでも海洋放出に反対が相次いで、当面の間、陸上保管を継続するための様々な提案も行われました。福島県内でも七割を超える議会が反対、慎重な対応を求める意見書などを採択をして、決定後も、福島県内はもちろんですけれども、東北でも、そして全国でも反対の声が広がっています。
政府と東京電力は、設置されているタンクは二二年の秋以降には満杯になると、タンクを増設する余地は限定的だと、こういうふうに言っていますけれども、これだけ反対の声が相次ぐ中で、タンク保管継続のために、第一原発の敷地内、北側を始め、増設のための敷地の確保を徹底的に追求するべきだと思うんですけれども、どうでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 廃炉を安全かつ着実に進めていくためには、今後、燃料デブリ等の一時保管施設や、廃炉作業に伴い発生する廃棄物の保管施設を設置するための広いスペースが必要であると考えております。
具体的には、二〇二二年頃には使用済燃料を格納した乾式キャスクの仮保管施設や燃料デブリの一時保管施設、二〇二三年以降には制御棒などの高線量の廃棄物の保管施設、二〇二六年以降には燃料デブリ取り出しの規模拡大に伴い増設する一時保管施設や取り出し装置のメンテナンスの施設等の設置が検討をされているところであります。その前の工事や規制対応に要する期間を勘案すれば、廃炉作業を遅滞なく進めるためには敷地を最大限有効活用していく必要があると考えております。タンクが敷地を大きく占有している状況を踏まえれば、廃炉作業に影響を与えない形で長期保管用のタンクを更に増設する余地は極めて限定的であると考えております。
一方で、方針決定後も、実際の放出に、始まるまでには設備の工事や規制への対応に二年程度の時間が必要になると見込んでおります。放出までの期間を最大限活用し、御懸念される方に基本方針への理解を深めていただくよう取組を続けてまいりたいと考えております。
○岩渕友君 今答弁にあったように、廃炉作業を着実に進めるためにはスペースの確保必要だというわけなんですよね。
政府の中長期ロードマップでは、廃止措置完了までの期間を二〇一一年の十二月を起点に三十年から四十年後というふうにしています。あれから十年たっているので、今から見れば二十年から三十年後ということになりますよね。でも、これに対して、じゃ三十年から四十年で完了というのは現実的ではないと、地元の信頼を失うという声も上がっているんですね。
中長期ロードマップはこれまで五回改訂をされてきましたけれども、そのたびに使用済核燃料の取り出しであるとかデブリの取り出しなどに関わる工程が延期をされてきています。廃炉期間は大きく言って三つに分けられているわけですけれども、この第二期は燃料デブリ取り出しが開始されるまでの期間を二〇二一年十二月までということで、目標を堅持するというふうにしてきました。ところが、新型コロナウイルスの影響だということで、取り出し開始を二二年以降に延期するというふうにしています。堅持をしてきた重要な目標を断念したということになります。
資料一を御覧ください。これ、一号機から三号機までの各号機が今どういう状況になっているかというものを示しています。
推定八百八十トンにも上るデブリの取り出しというのはもう最難関だというふうに言われているわけですね。まずは一グラム程度取り出すんだというふうに言っているわけですけれども、これが予定どおり取り出せるかどうかも分からないと。仮に取り出すことができたとしても、その後のことというのは具体化されているわけではないんですよね。
さらに、新たな事実が明らかになっています。原子力規制委員会が行っていた福島第一原発の調査の中間報告が公表をされて、一号機から三号機の上蓋、シールドプラグですよね、の下の面に大量の放射性物質が付着をしているということが分かりました。
この上蓋の下の面の放射線量、それぞれどのぐらいでしょうか。
○政府参考人(金子修一君) 御指摘の今年三月に公表いたしました中間取りまとめでは、一号機から三号機の格納容器上部にあるシールドプラグ、今御指摘のあったものですけど、一番上の層の下面と中間の層の上面の間に、セシウム137で、三号機に三十ペタベクレル、ペタは十の十五乗の単位でございます、二号機で二十から四十ペタベクレル、一号機では〇・一から〇・二ペタベクレルが存在すると推定をしてございます。
○岩渕友君 資料の二を御覧ください。
今答弁をいただいたように一号機から三号機までの放射線量がなっているということなんですけれども、これ三つ合わせて最小で五十・一ペタベクレル、最大で七十・二ペタベクレルの汚染が考えられると、あるということなんですね。
これ、ペタベクレルと言ってもぴんとこないなということなんですけど、とんでもない数字なんですね。これ、日本の単位で言うと最大七京だと。京というのは兆の上になるわけですけど、この大きさを表現する例えが本当にもう難しいぐらい、とてつもない量があるということなんですよ。
これを受けて、更田委員長は記者会見で、ほとんど燃料デブリと言っていいようなものが上にあるというふうに述べていらっしゃるんですけど、この事実をどのように認識しているでしょうか。
○政府特別補佐人(更田豊志君) 元々シールドプラグ周辺の線量が高いことは知られておりましたし、それから、その構造から考えて、ある程度の量の放射性物質があるということは考えていたのですが、量が予想と異なりました。ただ、今のところまだ飛んでくる放射線を捉えての測定ですので、まだあらあらで、ざっくりこのくらいではないかと見ている段階であります。
ペタという、ペタベクレルという単位に言及ありましたけど、環境中にあの事故で放出された量がごくごくざっくり言って十五ペタベクレルぐらいだと言われております。そういった意味で、環境中に出てしまったものと同じレベルのものがシールドプラグ裏面にいるということで、予想より、予想を超える量があったというのが率直なあのとき受けた感想であります。
○岩渕友君 続けて更田委員長にお聞きするんですけど、廃炉作業にこのことがどのような影響があるというふうにお考えでしょうか。
○政府特別補佐人(更田豊志君) まず考えなければならないのは、あれだけ高い位置に多くの放射性物質がありますので、そこへ取り付いていくための遮蔽をどう考えるかというのが当面の大きな問題になります。今後、相対的に高い位置にあれだけの量の放射性物質があることを踏まえて、今後のアプローチを考えていくということになろうかというふうに思います。
○岩渕友君 今後のアプローチを考えていくということなんですけれども、それが廃炉作業に影響があるかどうかということと併せて、更田委員長が戦術よりも戦略に関わってくる話だというふうに述べていらっしゃるんですけど、これ具体的にどういうことでしょうか。
○政府特別補佐人(更田豊志君) 当然のことながら、予想を超える量のものが比較的高い位置にありましたので、ただ、先ほど申し上げましたように、現在はまだ放射線の量を通じてその量を推定している段階ですので、次のステップとして、このシールドプラグ裏面にある量、これ耳かき程度であっても、まず取ってくるという作業を次のステップとして考えております。今後も新たな情報が出てくる都度、技術的な検討を重ねて、廃炉戦略といいますか廃炉計画を考えていくべきであろうと思います。
戦術でなく戦略と申し上げたのは、非常に大きな量ではありますので、小手先の変更ではなかなか対処するのが難しいだろうという考えでそのように申し上げたところでございます。
○岩渕友君 今、小手先の変更では駄目なんじゃないかというような話もありました。
それで、この戦術よりも戦略に関わってくる話というやり取りが記者会見の中であったときに、実は更田委員長が気中工法の話にも触れているんですね。この工法の決定というのは、二〇一七年に原子力損害賠償・廃炉等支援機構がデブリの取り出し方針ということで示して、これを受けてその年の九月に中長期ロードマップが改訂をされているんですね。これ、廃炉工程全体に関わる重大な問題だということです。
そこで、機構が今回の事態をどう受け止めているのかと、また、今後、方針の変更を検討するのか、教えてください。
○参考人(山名元君) お答えいたします。
私ども、東京電力に対して、廃炉に関わる指導、助言、勧告を法律に基づいて行っております。
このオペレーティングフロアに設置されているシールドプラグの高線量、この線量の汚染については、やはり更田委員長おっしゃるように、今後の廃炉作業においては非常に重要な情報であるというふうに認識しておるところでございます。
このデブリ取り出しの方法については、東京電力が二号機から小規模な取り出しを、試験的な取り出しを開始することになっておりますが、あわせて、東京電力において、本格的な取り出しに向けた幾つかの工法概念を具体的に東電として検討しているところであると承知しております。
この検討に当たっては、シールドプラグの高線量汚染の情報を始めとしまして、それ以外にも格納容器内外の線量ですとか、あるいは燃料デブリの分布の状況ですとか、デブリの取り出しに必要な情報を総合的に検討して、安全、着実な工法を得るという作業を進めているというふうに理解しております。
私ども機構としては、こうした東京電力のエンジニアリング検討を始めといたしまして、デブリの試験的取り出しや内部調査によって得られる、これから得られる情報、それから国内外の技術動向などを踏まえて、政府や東京電力と情報交換、連携いたしまして、原子力規制委員会とも可能であれば積極的な対応を行って、必要に応じて取り出し方法の戦略を柔軟に検討していくということになるかと考えております。
○岩渕友君 大臣にもお聞きをするんですけれども、今回のことが廃炉期間にも、三十年、四十年というこの期間にも当然影響が出るんじゃないでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 二号機及び三号機の格納容器上部の蓋、シールドプラグ周辺の線量が高いことにつきましては、過去の東京電力による調査の結果から推定をされていました。その中で、先日公表された報告書では、蓋の汚染状況について更に詳細な知見が得られたものと認識をしております。
前提として、現在の中長期ロードマップは、廃炉作業がある程度高線量下で実施されることを考慮した上で策定をされているものであります。そのため、今回判明した新たな知見によって廃炉作業が遅れることは現時点では考えておりませんけれども、様々な状況を踏まえて、必要となれば見直すことになるということであります。
○岩渕友君 これだけのいろんな事実が出てきても、今のところはまだ考えていないということですよね。
そもそも、通常炉でも廃炉には長い時間が掛かるわけですよね。通常は、通常の原発を廃炉にする場合はいわゆる更地にするということになるわけですけれども、福島第一原発も最終的には更地にするんでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 福島第一原発の廃止措置を終了した状態については様々な御意見があると認識をしております。炉内状況の把握や廃棄物処理処分の検討状況など不確定要素が多いために、まだ具体的な絵姿をお示しできる状況になく、今後、更なる調査と研究を進めながら検討を深めていくことが必要と考えております。廃止措置の状態は地域の将来像に関わることでもあるため、技術的観点に加えて、地元の皆様の思いもしっかりと受け止めて検討していく必要があると考えております。
先ほどの問いですけれども、こういう点もやはり不確定要素が多いということで、そういったものが明らかになってきて、必要になればやっぱりそういう変更というものも考えていくということであります。
○岩渕友君 もう今既に見直すべきときなんだと思うんですよ。いろんな意見も聞きながら決めるということでしたけれども、最終的な状態も決まっていないのに、結局三十年、四十年というところは今のままではまず、今の段階では見直さないということになるわけですよね。
資料三を御覧いただきたいんですけれども、これは原発の廃止措置終了予定時期なんです。伊方の一号機、二号機でも三十九年だと、福島第二原発四十三年と。通常炉でも四十年近く、若しくは四十年以上掛かるということなんですよね。
これ、通常炉でさえ四十年以上掛かる廃炉なわけですから、事故を起こした福島第一原発がどうやって四十年以内でやるのかと。そもそものこのロードマップにやっぱり無理があるんだと思うんですよね。どうですか、大臣。
○国務大臣(梶山弘志君) 通常炉の廃炉に要する期間というのは、各原子力事業者が放射性物質の自然減衰を経るための安全貯蔵期間を定めて設定をするものであり、国内で認可されている廃止措置計画を見ますと、二十四年のものもあれば四十四年のものもあると認識をしております。
福島第一原発では、放射性物質によるリスクを早期に低減していくという考えに立った上で、米国スリーマイル島原発の廃炉や通常廃炉の標準工程等を参考として、三十年から四十年後に完了をさせるという廃炉終了までの期間目標が設定をされているものであります。
福島第一原発の廃炉は予測の難しい困難な作業が発生することも想定をされます。世界にも前例のない困難な取組ですけれども、引き続き三十年から四十年後の廃止措置終了を目指して、国も前面に立ってしっかりと進めてまいりたいと考えております。
○岩渕友君 資料四を御覧ください。これは昨年七月に日本原子力学会が第一原発の廃炉検討、の中にある廃炉検討委員会というところが公表した報告書なんですけれども、これ驚きを持って受け止められたと。「国際標準からみた廃棄物管理」とした報告書なんですけれども、放射性物質をどう取り扱うかという視点でまとめられたものです。
これ見ると、廃炉、最終的な状態をあらかじめ設定することが重要だと、ということで四つのシナリオを出しているわけなんですよね。このシナリオによれば、廃炉が完了して敷地を再利用できるようになるには最短でも百年以上掛かるというふうになっているわけなんです。
シナリオにあるように、最終的な状態によっては放射性廃棄物の量が変わると。敷地の活用の仕方が変わってくるんですね。だから、廃炉が完了するまでに長い時間が掛かるというふうになれば、もう急いで海洋放出決定する必要なくなるということだと思うんですよ。だから、今日こだわって、何で四十年なのかということをずっとやっているんですね。
廃炉は地域の将来にも関わる重大な問題です。どういう形がいいのか、住民や自治体など地元の声を聞きながら幾つかの選択肢について検討するべきではないでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 日本原子力学会が昨年公表しました報告書において、福島第一原発の廃炉について、建屋の解体の開始時期や廃炉終了時の状態を組み合わせた四つのシナリオを御提案いただいたと承知をしております。
そのシナリオにおいては、デブリ取り出しと施設の解体が別の段階として取りまとめられています。一方で、実際の廃炉作業においては、例えばデブリ取り出しと施設の解体を並行して進めるなど、安全を最優先にしながらも、できる限り早くリスクを低減するために全体最適を考えながら廃炉作業を進めていくことになります。
このように、原子力学会で示されたシナリオと中長期ロードマップに定める二〇四一から二〇五一年までに廃止措置を終了させるという目標は、一概に比較することは難しいと考えております。福島第一原発の廃炉は世界に前例のない困難な取組であり、引き続き、二〇四一から二〇五一年までの廃止措置完了を目指して、国が前面に立って安全かつ着実に進めていきたいと考えております。できる限り早く、リスクを低減するために全体最適というものを考えながらやっていくということで御理解をいただきたいと思います。
○委員長(野村哲郎君) 時間を経過しておりますので、発言をおまとめください。
○岩渕友君 はい。
時間なので終わりますけど、最後の設問は、幾つかの選択肢について検討するべきではないかということだったんです。今日議論してきたとおり、中長期ロードマップ、根本的に見直すべきだということを述べて、質問を終わります。