2022年5月18日(水) 参議院 東日本大震災復興特別委員会「福島復興再生特別措置法改正案」
テーマ:国は原発事故の責任認めよ/事故被害者の生活再建を(反対討論あり)
日本共産党の岩渕友議員は18日の参院震災復興特別委員会で、東京電力福島第一原発に保管されている「アルプス(ALPS)処理水」の海洋放出について、漁業者をはじめとする地元の努力を水泡に帰す恐れがあるとして、強行しないよう迫りました。
岩渕氏は、国と東京電力が福島県の漁業者と、「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」と約束したにもかかわらず、政府は反対の声にまともに応えていないと指摘。それどころか処理汚染水の海洋放出に関して、ALPS処理水は安全基準を満たすなどとしたチラシを学校現場に送りつけ、3月下旬以降、同様の広告を全国の新聞に出してきたとして、「新聞広告は何紙に掲載され、販売部数と費用はいくらかかったのか」とただしました。
経産省の須藤治福島復興推進グループ長は「全国全ての都道府県でおよそ50紙、1300万部。費用は4000万円」と述べました。岩渕氏は「全ての都道府県で掲載されており、大問題だ」と指摘。すでに現地で海洋放出のための事前工事が始まっていると指摘し、「漁業者などの反対の声や懸念などを聞かずに海洋放出を強行してはならない」と強調しました。
質問資料1 東電福島第一原発事故 被害者集団訴訟判決での賠償責任 【PDF版】/【PNG版】
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2022年5月18日(水) 参議院 東日本大震災復興特別委員会
「福島復興再生特別措置法改正案」
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
本法案で設置をされる福島国際研究教育機構は、福島を始め東北の復興を実現するための夢や希望となるものとするとともに、世界に冠たる創造的復興の中核拠点を目指すというふうにしています。復興だというふうに言うんですけれども、復興だと言うのであれば、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故で被災をし、被害に遭った方々の生活となりわいの再建こそ進めるべきです。
まず、原発事故で被害に遭った方々が今どんな実態にあるのかというのを見ていきたいというふうに思うんですね。
まず、資料を御覧ください。16日に、原発事故による集団訴訟である愛媛訴訟の口頭弁論が最高裁で行われて、上告をされている4件の集団訴訟の全てで審理が終わりました。来月にも最高裁で国の責任について統一判断が示される見通しというふうになっています。
愛媛訴訟の原告で、意見陳述を行った渡部寛志さんは、長女は中学生のときに作文で、原発事故が全てを変えた、何年も何年も引きずり、苦しめられ、普通の生活に戻れない、生き地獄だと書いていた。事故は取り返しの付かない事態を生み、今もかけがえのないものを奪い続けている。1日でも早く、1人でも多くの人が前を向いて歩き出せるように判断をしてほしい、こういうふうに述べて、国の責任を認めるように訴えました。
原発事故によって避難を強いられた方々がどんな思いで暮らしているのか、原発事故が今も被害に遭った方々を苦しめ続けている、こうした実態、今紹介をしたわけですけれども、こうした実態を聞いて、西銘大臣、どのように思われたでしょうか。
○国務大臣(西銘恒三郎君) 私自身、東京都近郊や沖縄県に避難されている方々の声を直接お聞きをしております。岩渕委員御指摘のとおり、避難生活の長期化に伴い、様々な状況に置かれた被災者がおり、1人1人に寄り添った支援を行うことが重要だと、車座の対話集会をしながらも感じております。今委員がお話しされたことを聞いていても、本当に、11年経過したとはいえ、それぞれで、それぞれの思いというものは、まあ私たちは車座で聞くぐらいしか今できないんですけれども、大変重く受け止めながらお話を聞いておりました。
引き続き、避難者の声をお聞きするとともに、帰還したい避難者のための帰還環境の整備、あるいは、県外の避難者に対して、全国26か所の生活再建支援拠点を通じた支援、車座で聞いていますと、その支援での交流会は是非続けてほしいという声等も聞いております。被災者の生きがいづくりのための心の復興事業等、きめ細かい支援、被災者に寄り添った支援をしっかり取り組んでまいりたいと考えております。
○岩渕友君 3月には最高裁が、7件の訴訟について、国の賠償基準である中間指針を上回る東京電力の賠償責任を認める決定を行いました。これは、賠償基準が被害実態に見合っていないということを司法が認めたということを示しています。
そこで、末松大臣にお聞きするんですが、原子力損害賠償紛争審査会は、4月末の会合で、中間指針の見直しの必要性を検討するため、夏までに専門家から中間報告を受けて、最終的に対応の要否を判断するとしました。対応の要否は今後の判断ということですけれども、被害の実態に合わせた中間指針の見直しは当然行われるべきではないでしょうか。
そしてさらに、いつまでに判断するかは未定ということなんですけれども、一刻も早い被害者救済を考えれば、速やかな判断が求められているのではないでしょうか。
○国務大臣(末松信介君) 被害に遭われた皆様には、胸中いかばかりかと存じます。
岩渕先生御指摘のとおり、東京電力福島第一原発事故に伴いまして、7件の集団訴訟における損害賠償額に係る部分の判決確定を踏まえまして、4月の27日に第56回原子力損害賠償紛争審査会を開催したところでございます。同審査会におきましては、確定した判決は、賠償すべき損害の範囲、それと項目又は金額がそれぞれの考え方で異なっていることから、今後、専門委員を任命しまして、一定度の時間を掛けて各判決の詳細な調査分析を行うということを言ってございます。
このため、中間指針の見直しにつきまして、この見直しも含めた対応の要否については、その判断の時期も含めまして、今後任命される専門委員による各判決のかなり詳細な調査分析の結果を踏まえ、引き続き審査会で議論をいただくことになってございます。
できるだけ加速はしたいと思っておりますけれども、非常に細かな、中間指針読みましたけど、相当広い範囲でございますので、内容も、遠くに避難された方、近くに避難された方、いろいろありますからなかなか算定が難しいという、特に精神的被害というのは非常に算定が難しいんだろうと私なりに思ってございます。努力はしたいと思います。
○岩渕友君 努力すると、できるだけ加速したいという話ありましたけれども、衆議院の中では、指針の目安を上回る判決が示されることは指針策定当初から想定されていたというような答弁もあったんですよね。この早期の見直しが必要だということはこの間ずっといろいろな団体や方々から言われ続けていて、もう見直し必要だというのは今や共通の認識になっているんですよね。
そこで、やっぱりこの加速するのは当然なんですけれども、指針の見直しということで、もう一言、どうでしょうか。
○国務大臣(末松信介君) 先生のお考え、よく分かりますけれども、中間指針のこの見直しを含めた対応の要否につきましては、それぞれの判断の時期も含めて引き続き審査会で議論をいただきたいというふうに思っておりますけれども、一様にしては中立な立場で考えていかなきゃならぬ問題でありますので、7件全て整ったということはよく分かっておりますし、あとは国の責任だけが残っておる問題でございますので、その点はしっかりと受け止めたいと思います。
○岩渕友君 原賠審の委員からは、判断の中でどこが地元の人の思いを酌み取った部分なのかを調べる必要があると、それが地元に沿った指針見直しにつながるなどの意見が出たということで報道もあったんですけれども、この実態に合った見直しが必要だということを強く求めておきたいと思います。
最高裁は、賠償の対象地域も拡大して認めているんですね。この決定を受けて、16日に、東京電力福島第一原発、第二原発が立地をしている双葉町、大熊町、富岡町、楢葉町が、原告以外の被災者にも確定判決と同等の賠償をすること、速やかに直接受付を始めることなどを東京電力に求めて、経産大臣に東電への指導を要請しています。地元自治体のこうした要求に速やかに応えるべきではないでしょうか。
○副大臣(石井正弘君) 5月16日に、委員御指摘の福島県原子力発電所所在、失礼、所在町協議会から萩生田経済産業大臣に御指摘の要望書をいただきました。
東京電力福島第一原子力発電所の事故に関しましては、いまだ係争中の事件も多数あると承知をいたしておりますけれども、先月確定いたしました判決を踏まえまして、先ほど文部科学大臣の御説明にもございましたが、原子力損害賠償紛争審査会で、原子力災害の、損害の範囲の判定等に関する中間指針、この見直し等も含めた対応の要否について議論が開始をされたところでありまして、また、審査会の専門家による議論を踏まえまして、また、被害者の方々の個別具体的な諸事情を丁寧にお伺いをして、公平かつ適切な賠償を行いますように東京電力をしっかりと指導してまいりたいと存じます。
○岩渕友君 東京電力はこれまで、中間指針は実際の損害よりも高い賠償額を定めているとか、自主的避難等対象区域には法的な意味での損害はないとか、東電は賠償金を払い過ぎなど、自分たちにはまるで責任ないと言わんばかりの発言があったり、被害者の苦しみなんてもうまるで分かっていないと言わざるを得ないような暴言繰り返してきているんですね。
こうした東京電力の主張は最高裁決定で排斥をされて、加害企業としての責任が厳しく問われています。同時に、こんなことを東京電力に言わせている経産省の監督責任、問われているということだと思うんですね。
改めて、東京電力が全ての被害者の救済に直ちに真摯に取り組むように、経産省、経産大臣がこれしっかり指導するべきじゃないですか。
○副大臣(石井正弘君) 私は原子力災害現地対策本部長でもありますが、本部長の立場で被災地の様々な方よりお話を伺っておりまして、東京電力の賠償につきましては、先ほど議員御質問の中で触れられましたけれども、様々な声があるということは私も承知をいたしております。
東京電力は、福島への責任を果たすために存続を許された会社であります。第4次総合特別事業計画において、賠償に関する基本的な考え方といたしまして三つの誓いを掲げているところでありまして、一つは、最後の1人まで賠償貫徹、次に、迅速かつきめ細やかな賠償の貫徹、和解仲介案の尊重、以上三つの誓いを掲げております。
経済産業省といたしましては、東京電力が自ら掲げた三つの誓いに基づき誠実に対応することは当然の責務であると、こう考えておりまして、被害者の方々に寄り添った公平かつ適切な賠償を行いますように東京電力をしっかりと指導してまいりたいと、このように考えております。
○岩渕友君 これまで指導してきてもこういう実態出されているということなので、厳しく指導が必要だということです。
被害に遭った方々は、元に戻してほしい、原状回復してほしいということも求めています。こうした切実な声に応えるとともに、国は判決を待たずに、すぐにでも自らの責任を認めるべきだということ、強く求めておきます。
ここで、末松大臣は退席をいただいて結構です。
○委員長(那谷屋正義君) 末松大臣は御退席いただいて結構です。
○岩渕友君 最高裁で国の責任が認められるということには非常に重要な意味があります。
国は、自分の責任なんかなかったかのように海洋放出の強行をしようとしています。国と東京電力は、福島県の漁業者と関係者の理解なしにはいかなる処分も行わないと約束をしています。福島県だけではなくて、宮城や茨城、岩手や青森といった太平洋沿岸の漁業者を始め、全漁連が反対もしています。それにもかかわらず、政府は理解を得ていくと言うだけで、反対の声にまともに応えていないんですよね。
「ALPS処理水について知ってほしい3つのこと」というチラシが学校現場に届けられたということがこの委員会でも問題になってきました。私も質問をしています。チラシだけではなくて、同様の内容の広告が3月に新聞に掲載をされました。
新聞広告は何紙に掲載をされたでしょうか。また、その販売部数の合計と掛かった金額の合計を教えてください。
○政府参考人(須藤治君) お答えをいたします。
新聞広告でございますが、掲載した新聞の数、全国の地方紙、地元紙、合計およそ50紙に掲載をしてございます。発行部数でございますけれども、合計をいたしますと、およそでございますが、1300万部、費用、こちらも概算、概数でございますけれども、4000万円でございます。
○岩渕友君 今、全ての都道府県の地元紙という話があって、1300万部もあると。これだけの新聞広告が出されているということですよね。これ大問題だというふうに思うんですね。
それだけではないんですよ。東京電力は、海洋放出のための海底トンネルの設置に向けた事前工事を始めています。反対する声や懸念の声たくさん上がっているんだけれども、それを聞かないでこういう工事進めているということは、海洋放出を強行しようということなんでしょうか。
○副大臣(石井正弘君) 東京電力が海底トンネルを掘削するためのシールドマシンの搬入や海底トンネルの放水口を設置するための海上での環境整備を開始したことは承知をいたしております。これらの環境整備は原子力規制委員会の認可を必要としない範囲で行っているものと聞いておりまして、海底トンネルの設置などの工事は原子力規制委員会の認可が出ないと進めることができない、このように認識をいたしております。
政府といたしましては、昨年4月に決定した基本方針に沿って、2023年春を目途に処分を開始できますよう必要な準備を進めていきたいと考えておりますが、本日、原子力規制委員会が審査の結果を取りまとめて公表し、今後、パブリックコメントを行うと認識をしているところでありますが、原子力規制委員会あるいはIAEAが厳しく確認をいたしました安全性を漁業者から消費者の皆様に至るまで繰り返し分かりやすく伝えていくなどの風評対策を政府を挙げて引き続き講じまして、引き続き地元の皆様方の御理解を得るように取り組んでまいりたいと存じます。
○岩渕友君 認可が必要なければ工事進めていいということにはならないわけですよ。
今、聞いたことにきちんと答えていないということだと思うんですけれども、漁業者を始めとして地元の努力を水泡に帰すおそれがあると、こういう声が上がる中で海洋放出を強行するということはあってはならないということを厳しく指摘しておきます。
復興推進会議が3月29日に決定をした福島国際研究教育機構基本構想では、機構設立の基本的な考え方として、福島を始め東北の復興を実現するための夢や希望となるものとするとともに、その活動を通じて、我が国の科学技術力の強化を牽引し、イノベーションの創出により産業構造を変革させることを通じて、我が国の産業競争力を世界最高の水準に引き上げ、経済成長や国民生活の向上に貢献する、世界に冠たる創造的復興の中核拠点を目指すとしています。冒頭にも言いましたが、復興とは言うんですけれども、そこには被災者、被害者の姿が見えてこないんですよね。
原発事故から丸11年たったわけですけれども、どれだけの方々が避難をしているのかということで、国と福島県は昨年3月、避難者数が実態に即していない可能性が高いということで、県外への避難をする方々を把握する全国避難者情報システムに基づいて文書を送ったと。31.9%に当たる3877世帯分が配達をされずに差し戻されたということです。
この3877世帯の方々は避難者数から除かれるということになるのでしょうか、西銘大臣。
○国務大臣(西銘恒三郎君) 岩渕委員御指摘のとおり、避難先都道府県に依頼し、福島県からの県外避難者に送付した文書が不達になった方の確認作業を行い、その結果について先月までに復興庁に報告をいただいたところであります。確認の結果、帰還の意思がない方や帰還が確認された方等については、登録されていた市区町村の避難者数から除いて避難者数調査に回答するよう依頼をしております。
なお、避難者にカウントされるかどうかにかかわらず、被災者に対する見守り、相談支援、心のケア等の支援に取り組んでいるところであります。
引き続き、避難者の声をお聞きするとともに、きめ細かい支援に努めてまいりたいと考えております。
○岩渕友君 済みません、もう1回確認するんですけど、避難者にはカウントされないということになるんですか。
○国務大臣(西銘恒三郎君) 帰還の意思のない方や帰還が確認された方等については、登録されていた市区町村の避難者数から除いて避難者数調査に回答するように依頼をしておりますので、意思のない方や帰還が確認された方等については市区町村の避難者数から除かれております。
○岩渕友君 ちょっとそこがよく分かんないんですけど、結局、この3877世帯の方々は避難者数から除かれるということになるのか、ちょっともう1回いいですか。
○国務大臣(西銘恒三郎君) 先月までに復興庁に報告をいただいて、今復興庁で整理をしているところであります。不達になった避難者に対しましては、電話や訪問など可能な方法で所在の確認を行っていただくよう避難先の自治体に依頼をしております。
○岩渕友君 まあ、これから判断するということなのか、でしょうかね。
○国務大臣(西銘恒三郎君) 不達になった方を含めて、結果について先月までに復興庁に報告をいただいておりますので、その報告をいただいた数字を今復興庁の方で精査しているという御認識でよろしいかと思います。
○岩渕友君 済みません、こればっかりやっているわけにはいかないので。
意思の確認できないといっても、やっぱりいろんな思いがあるので、戻るか戻らないかとか、やっぱりすごく迷っている方たちもたくさんいらっしゃるということだと思うんですよね、戻れるか戻れないかとか、そういったことを本当にみんな真剣に考えているということだと思うんですよ。
そもそもなんですけど、これ、3割の世帯から郵便戻ってきたと、こんな状況になるまで実態が把握されていなかったということそのものが問題だと思うんですよね。これ大問題だというふうに言わなくちゃいけないと思うんです。避難指示区域の外から避難をする方々や復興住宅に入居した方などは避難者数に含まれていないんですよ。ふるさとに戻ることができない方々は8万人超えるというふうにも言われているんですね。けれども、原発事故の被害が終わっていないのに、被害を小さく見せるために避難者数が少なくされて、そのことが支援の打切りにつながってきているんですね。
政府は、避難をする方々を対象に医療や介護の保険料などの減免措置について、2023年度から段階的に縮小して、一部を除いて27年度末で廃止する方針を決めたと。けれども、廃止できるような状況なのかということがあるわけですよね。
楢葉町は2月9日に、原子力災害は町民の心身に様々な影響を及ぼし、医療や介護サービス等の利用がいまだ増加傾向にあるということで、政府に減免措置の継続を要望しています。浪江町では、2019年の所得が100万円以下の世帯が四割を超えて、生活保護受給世帯が2015年の2世帯から2020年12月では82世帯、41倍になる、急増をしています。医療・介護保険料等の減免措置、継続するべきではないでしょうか。
○国務大臣(西銘恒三郎君) 前段の部分も質問があったかと認識をしているんですが、前段の分から少し答えさせていただきます。
避難者数の調査は、避難者からの届出に基づいて、避難先である全国の自治体が把握した人数を復興庁へ御報告をいただいております。避難元へ帰還した場合や避難先への定住を決めた場合等に適切な届出がなければ把握が困難であるという課題があります。避難者数から除かれた避難者についても、転居先等で再度届出があれば避難者数に集計されることとなっております。これまで政府広報やツイッター等で適切な届出を呼びかけてきたところであります。
避難者にカウントされるかどうかにかかわらず、被災者に対する見守り、相談支援、心のケア等の支援は引き続きしっかり取り組んでまいりたいと思っております。車座集会で避難された方のお話を聞いていても、なかなか簡単に、帰りたいけれども帰れない、なかなか結論が出ないという状況も現場で感じております。
二点目の医療、介護の御質問についてお答えをします。
原発事故により設定された避難指示区域等に居住されていた方について、医療・介護保険等の保険料窓口負担の減免措置を実施してまいりました。この措置につきましては、復興の基本方針において、被保険者間の公平性等の観点から、避難指示解除の状況も踏まえ、適切な周知期間を設けつつ、激変緩和措置を講じながら、適切な見直しを行うこととされております。これを踏まえて、被災者の方々の実態を把握している関係自治体の御意見を丁寧に丁寧にお伺いしてきたところであります。
今般、この措置の見直しを決定いたしましたが、関係自治体の御意見を踏まえ、急激な負担増にならないよう、避難指示解除から10年という十分な経過措置をとるとともに、複数年掛けて段階的に見直すこととしております。また、本特例措置が終了した後も、所得の低い方に対しては通常の保険料等の負担軽減措置が講じられることとなります。さらに、個々の事情に応じた納付相談の実施など、きめ細やかな対応が行われるよう、厚生労働省とも連携して周知に努めてまいりたいと考えております。
○岩渕友君 浪江町の議会は3月に、医療・介護費用の減免措置継続を求める意見書を採択しています。避難中にある町民は、肉体的、精神的苦痛をこれからも抱えて避難生活を送らなければならない現実があることを十分理解した上での見直しなのか甚だ疑問、国は、原発事故の加害者として被害者である浪江町民に対し、医療費、介護費の無料化を継続するための財政支援をすることが責務と、厳しく指摘をしています。また、ある町の幹部は、減免措置は町と住民をつないでおり、措置が終了すればつながりが切れてしまうというふうに言っているんですよね。これ、減免措置は継続をするべきです。
葛尾村は、帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点区域の避難指示解除を6月12日に行うということを決めました。葛尾村では、帰還困難区域のうち、拠点区域は6%だけなんですね。帰還意向を示しているのは4世帯8人にとどまっています。
避難自治体1市4町1村の住民意向調査を見ると、帰還するか判断が付かないと回答した方が帰還を判断するために必要な条件として挙げているのが、医療機関の充実です。戻らないと回答した方の多くが、帰還をしないと決めている理由として、医療環境に不安があるからと答えています。
基本構想の基本的な考え方には、機構の活動に参画する国内外の大学、研究機関、企業等の研究人材等を居住や滞在の形で立地地域や周辺の福島県浜通り地域等に集積させるためには、住まい、教育、子育て、医療を始めとする生活環境の充実が重要とあります。生活環境の充実が行われるということは避難する方々にとっても大切なことなんですけれども、避難する方々が戻ることができる生活環境が整備をされていないんじゃないかと。機構の活動のためには生活環境の充実が重要だというふうに位置付けされる一方で、被害者が置き去りになっているんじゃないでしょうか。大臣、いかがですか。
○国務大臣(西銘恒三郎君) 避難をしている方々が帰還をするときに、帰還した場合に、生活環境、医療の関係であったり、あるいは買物の場所であったり、あるいは生活のインフラの部分であったり、生活環境が整わなければ帰りたくても帰れないという点は、現場でお話を聞いていても認識はしているつもりであります。
福島国際研究教育機構につきましては、国内外から様々な研究人材等、また機構の立地地域や周辺地域に呼び込んでいく必要があるものですから、そのためには、住まいや教育、子育て、医療、同じような生活環境の充実が重要でありと認識をしております。町づくりと緊密に連携する必要があることと認識をしております。
その一方で、避難者の方々が安心して帰還できるよう、医療、介護、買物環境、教育、なりわいの再生など、必要な生活環境整備を行ってきたところであります。引き続き地元の声を丁寧に聞きながら支援していく必要があると認識をしております。
研究人材やその家族と避難者の方々の生活環境整備は両面で進めていくことが重要であり、ひいては福島全体の町づくりにも寄与するものと考えております。国としては、地元の意向を最大限尊重し、その取組と緊密に連携を図りつつ、機構の施設整備も進めてまいりたいと考えております。
○岩渕友君 そもそも、あの法案の条文に避難者ということ書かれていないんですよね。昨日確認をしたら、書かれていないというような答えだったんです。
この大震災とあの原発事故によって失われた浜通り地域等の産業を開発するためということで、国家プロジェクトというふうに位置付けられた福島イノベーション・コースト構想の取組が進められてきました。福島国際研究教育機構は、このイノベーション・コースト構想を更に発展させると、横串を刺す司令塔として位置付けられているということなんですけれども、福島県が行った県政世論調査、直近の2021年度の結果では、イノベーション・コースト構想について知っている取組で最も多いのは廃炉なんですよね。さらに、強化してほしい取組で最も多いのも廃炉に向けた取組なんです。イノベーション・コースト構想といえば福島県民にとっては廃炉であって、県民が求めているのも廃炉を進めるということだと思うんですね。
本法案で、廃炉はどのように位置付けられているでしょうか。
○国務大臣(西銘恒三郎君) 機構は、福島を始め東北の被災地における中長期の課題の解決、ひいては世界共通の課題の解決にも資する、国内外に誇れる研究開発を推進することとしており、廃炉作業の着実な推進等を支える技術開発等に取り組むこととしております。
具体的には、ロボット分野において、高い放射線の中など、様々な過酷環境下で作業を実行できる遠隔操作のロボットの研究開発などに取り組むことを想定しております。現場でこのロボットを見させていただきました。また、放射線科学、創薬医療分野においては、幅広い分野の放射線安全に関する研究などの総合的、学際的な放射線科学研究に取り組むことを検討しております。さらに、原子力災害に関するデータや知見を収集、分析し、世界に向けて積極的に発信することにより、風評払拭や廃炉の着実な推進に貢献してまいる所存でございます。
○岩渕友君 イノベーション・コースト構想では廃炉あるわけですけれども、機構の研究開発機構5つあるわけですが、そこの中に廃炉はないわけですよね。
廃炉の中心は、デブリをめぐる問題です。今、880トンあると、1号機から3号機まで、言われているわけですよね。私も先日の委員会視察でロボットアーム見ました。先端に付いたブラシのようなものをデブリに刺して、デブリ取り出すと。でも、取り出すといっても数グラムだというふうに言われているわけですよね。
廃炉中長期ロードマップでは、2011年12月から、30年から40年後に廃止措置終了しているとしています。つまり、2051年までにということなんですけれども、こんな状況で廃止措置が終了しないというの、もう明らかではないでしょうか。石井副大臣。
○副大臣(石井正弘君) 福島第一原発の廃炉につきましては、中長期ロードマップにおきまして、2041から2051年までの廃止措置完了を目標といたしまして、これに向けた対策や工程をお示しをしております。
この工程に沿って、全体といたしましては廃炉は着実に進捗していると受け止めておりまして、具体的には、汚染水の発生量は約4分の1に低減をしております。また、使用済燃料の取り出し、3号機、これは昨年2月に完了し、残りも2031年内に全て取り出しが完了できる、このように継続、取組しております。
燃料デブリにつきましては、先ほどのお話のとおり、ロボットアームの本格的な試験、これも開始をした等々でございまして、福島第一原発の廃炉は予測の難しい困難な作業が発生することも想定されます、世界にも前例のない困難な取組であります。引き続き、2041から2051年までの廃止措置完了を目指しまして、国も前面に立って、しっかりと進めてまいりたいと存じます。
○岩渕友君 通常炉でも廃炉ってすごく時間掛かるわけですよね。第一原発、最終的にどうなるかという形も決まっていないわけですよ。結局、廃炉といっても決まっていないと、廃炉そのものが曖昧な上に、機構における廃炉についての位置付けも曖昧だと、余りにも無責任だということを指摘して、質問を終わります。
2022年5月18日(水) 参議院 東日本大震災復興特別委員会
「福島復興再生特別措置法改正案」
○岩渕友君 私は、日本共産党を代表して、福島復興再生特別措置法の一部改正案に反対の討論を行います。
3月29日に復興推進会議が決定した福島国際教育機構基本構想は、機構設立の基本的な考え方で、福島を始め東北の復興を実現するための夢や希望となるものとするとし、我が国の産業競争力を世界最高の水準に引き上げ、経済成長や国民生活の向上に貢献する、世界に冠たる創造的復興の中核拠点を目指すものとしています。
本法案は、福島復興特措法の一部改正案という形を取っていますが、肝腎の復興が脇に置かれていることは明らかです。その内容は、国際競争力の強化のため総合科学技術・イノベーション会議の指揮下で行う国際的な研究開発という名の特区のようなものであり、福島の復興再生とは関係なく、負の遺産にもなりかねません。復興といいながら法案の条文には避難者という言葉もなく、被災者、被害者の姿が全く見えてきません。
決まっていないことが多過ぎることも大きな問題です。復興庁の設置期限は2030年度末であり、それ以降の運営や財源については未定となっています。復興大臣は主務大臣でさえありません。
東京電力福島第一原発事故から丸11年たつ今も、ふるさとに戻れない被害者は8万人を超えると言われています。被害が続いているにもかかわらず、政府は避難者を対象にした医療や介護の保険料などの減免措置について段階的に縮小、廃止する方針を決めるなど、原発事故を終わったことにしようとするものであり、許せません。
福島を始め東北の復興を実現するための夢や希望となるものとするというのであれば、東日本大震災と原発事故で被災し、被害に遭った方々の生活となりわいの再建こそ進めるべきです。
このことを強く求めて、反対討論とします。