2022年10月24日(月) 参議院 予算委員会(対総理質疑、TV中継)
テーマ:岸田首相による原発政策大転換について
(議事録は後日更新いたします)
日本共産党の岩渕友議員は24日の参院予算委員会で、岸田政権が原発政策の方針を大転換し、再稼働だけでなく、歴代政権でも踏み込まなかった「新増設」や「運転延長」を進めようとしていると批判。「福島(原発事故)のことを忘れたのか」と方針の撤回を迫るとともに、再生可能エネルギーへの転換を求めました。
岩渕氏は、運転開始から40年を超える原発も含めて今後、何基稼働させるのかと質問。西村康稔経済産業相は「現時点で予断をもって答えるのは差し控える」と述べました。
岩渕氏は政府の資料を示し、冬までに再稼働済みの10基、来年の夏以降に設置許可済みの7基、2020年代半ばに設置許可審査申請済み10基、未申請9基があると指摘。「再稼働のために審査が続いている原発や、再稼働すると事業者が言っていない原発まで稼働させる計画だ」と批判しました。
また、東京電力福島第一原発事故では、50km離れた飯舘村まで避難指示が出され、100km離れた土壌も放射能汚染したとし、「事故によるリスクは全国に広がる。避難計画も地元同意もないまま、再稼働の押し付けは許されない。事故は絶対に起きないのか」と追及しました。岸田文雄首相は「100%安全はない」と答えざるを得ませんでした。
岩渕氏は、現在の帰還困難区域が東京23区の面積の半分に上ると指摘。「11年以上たってもふるさとが奪われている。原発事故をもう終わったことにするのか」と迫りました。
原発新増設で有力とされる次世代革新炉は、欧州で当たり前に装備されているコアキャッチャー(溶けおちた核燃料を受け止める装置)の設置さえ含まれない新規制基準に合わせるものだとただし、「原発回帰の方針は撤回し、原発ゼロと地域と共生する再生可能エネルギーへの転換を求める」と主張しました。
質問資料1 政府がねらう原発再稼働の時期と100km圏内の全国地図 【PDF版】/【PNG版】
質問資料2 原発事故 避難指示区域の概念図とその居住状況 【PDF版】/【PNG版】
全編版
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2022年10月24日(月) 参議院 予算委員会
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
昨年10月に閣議決定したエネルギー基本計画は可能な限り原発依存度を低減するとし、政府はこれまで新増設は考えていないと述べてきました。
ところが、総理は、この8月、今ある原発を最大限活用するとして、再稼働の加速、運転期間の延長、さらに新増設という方針を表明し、検討を指示しました。これは従来の方針を大きく変えるものです。
そこで、総理に伺います。
原発の運転期間を原則40年とするルールは、東京電力福島第一原発事故を受けて、その反省を踏まえたものではなかったのでしょうか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 東京電力福島第一原発事故の深い反省の下に、原子力利用の推進と規制を分離し、規制行政を一元的に担うため独立した原子力規制委員会を設置するとともに、規制の強化を行うために、平成24年6月、原子力規制委員会設置法案が議員立法で国会に提出され、原発の運転期間を40年とし、1回に限り20年以内で延長できるとする改正が成立をいたしました。こうしたことも踏まえて、GX会議において原発について議論をお願いした次第であります。
今、ウクライナ情勢を始め国際的な変化の中でエネルギーの安全保障を考えていかなければならない中にあって、原発についても議論をすることを避けてはならない、そういった思いでGX会議、専門家の皆さん方に議論をお願いした、こうした次第であります。
○岩渕友君 今答弁にも、深い反省の下にと、あの事故の深い反省の下にという言葉がありました。
これ、原則40年とした根拠については、当時の環境大臣が、いわゆる圧力容器に中性子が照射をされて、それが続けられることでもろくなってしまうということ、それぞれの機器の耐用年数を考慮したと、こういう答弁しているんですね。科学的な根拠に基づいて求められたものであって、そのことによって決められたものであって、当時の民主党政権、自民党と公明党も賛成をして決めたものです。
老朽原発を稼働するということは、リスクを高める、事故の教訓を顧みないものだと言わなくてはなりません。運転開始から40年を超えた原発も含めて政府は再稼働を加速させようとしています。一体、何基稼働しようというのでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君) お答え申し上げます。
今総理から答弁がございましたとおり、安全性の確保、これが大前提であります。原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた場合のみ、その上で地元の理解も得ながら再稼働を進めるというのが政府の方針であります。
今後の、将来の御指摘の原発の稼働状況については、まさに個別の発電所に関する事業者の判断、それから何よりも原子力規制委員会による適合性審査の状況などによって決まるものでありますので、現時点で予断を持ってお答えすることは差し控えたいというふうに思います。
○岩渕友君 政府が示している原子力政策の今後の進め方という資料では、具体的なスケジュールも出されているんですよね。それ紹介していただきたいんです。
○国務大臣(西村康稔君) 今申し上げましたとおり、原子力規制委員会の新規制基準に適合すると認めた場合のみ、その上で地元の理解も得ながら再稼働を進めるという方針であります。
先般のGX会議でお示しした基数は、その時点での原子力規制委員会の適合審査の状況に沿った基数であります。それが7基ということで、今既に10基はもう稼働しておりますので、7基ございます。
ただ、これは、まだ地元同意、あるいは工事がまだ進められているものもありますので、そういう意味で、その時点での適合性審査に合格、適合したというものの基数を述べたものでございます。
○岩渕友君 今答弁にあったもの以外にも、政府が示している資料を見ますと、20年代半ば以降、再稼働のための審査が続いている原発や事業者が再稼働すると言っていない原発まで稼働をしようとしているんですね。
私、福島県の出身ですけれども、原発事故によって、福島県の発表でも最大で16万5000人が避難を強いられました。原発は、一たび事故が起きれば取り返しの付かない被害をもたらし続けます。
そこで、このパネルを御覧いただきたいんですけれども、(資料提示)この全国の原発を基点に、50キロそして100キロ地点で円を引いたものです。福島第一原発事故では、原発から約50キロの飯舘村、ここにも避難指示が出されました。そして、100キロの土壌に放射能汚染が確認をされました。そして、200キロ以上離れているこの東京でも放射性物質が確認をされています。
風向きで汚染される範囲というのは変わるわけですよね。そのことがあの福島の事故でも示されました。事故によるリスクは全国に広がるという可能性があるわけです。避難計画も地元同意もないままに、国が前面に立つんだといって再稼働を押し付ける、こういうことは許されません。
総理、福島第一原発事故のような事故が絶対に起きない、絶対に起きないというふうに言えますか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 東京電力福島第一原発事故の深い反省の上に、独立した原子力規制委員会の下、万が一過酷事故が発生した場合への対策も含めた、世界で最も厳しいレベルの新規制基準が策定されたと考えております。
原発の再稼働については、原子力規制委員会が科学的、技術的審査をし、その新規制基準に適合すると認めた原発のみ、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら進めるというのが政府の方針です。
絶対に事故は起きないと言えるのかという御質問でありますが、これは、100%の安全やゼロリスクということはないと思います。むしろ、絶対、絶対的な安全という考え方は安全神話につながりかねない、こうしたものであると思います。そうした事態に陥ることなく、原子力規制委員会と事業者の双方が更なる安全性の向上に不断に追求するべく努力をする、このことが重要であると認識をしております。
○岩渕友君 基準を満たせば安全だという、それがまず誤解だということだと思うんです。絶対に安全だとは言えないわけですよね、今総理が言ったとおり。で、このまま進めていくということになれば、やっぱりおっしゃったとおり新たな安全神話を生むということになるんだと思うんですよ。
次のパネルを見ていただきたいんですけれども、今も避難指示が出されている帰還困難区域の面積は東京23区の半分にも上っているんですね。
総理は、所信表明演説の中で、帰還困難区域に住民が帰還をしている、復興に向けた熱い思いを聞いた、移住してきた若者がわくわくする地域にしたいと語っていた、こういうふうに言って、どんな困難も乗り越えられるというふうに述べているんです。それは住民の皆さんと関係者の方々の努力があったからにほかならないんですよね。
その一方で、10年以上たってもふるさとが奪われている、帰りたくても帰ることができない、諦めざるを得ないという方たちがいます。けれども、所信表明の中ではそのことには触れられていないんですよね。そもそも、原発事故という言葉がどこにも出てこないんですよ。
総理、原発事故はもう終わったと、そういう認識なんでしょうか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) いえ、原発事故については、様々な皆さんの努力によって今日までの復興が進んできたわけでありますが、まだまだこれから努力をしなければいけない課題がたくさんあると認識をしております。
だからこそ、私も、政権をスタートしてから度々福島に足を運び、多くの皆さんの声を聞いてきました。技術的な問題あるいは精神的な問題、様々な課題について我々は真剣に取り組んでいかなければならない、この終わったなどということは決してないと強く認識をしております。
○岩渕友君 総理の言葉からはそういうことが感じられないということなんですよ。だったら、何で原発事故って言わないのかと、何で所信表明演説の中で、頑張ってきた皆さんの努力もあるけれども、いまだに苦しんでいる人たちがいるということについて触れないのかということなんですよね。
さらに、政府は、これまで想定していないというふうに言ってきた新増設にまで踏み込もうとしています。この実用化に最も近いというふうに言われているのが革新軽水炉です。これ、どこが革新だというのでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君) 例えば、三菱重工なども発表しておりますけれども、革新軽水炉につきましては、半地下の構造にするとか、あるいは、万が一デブリが出たときにそれを捕まえて、電源が全て失われても冷却できる仕組みであるとか、あるいは、放射性ガスの分離、貯留、つまり外に出ないような仕組み、こういった様々な新たな安全メカニズムが盛り込まれている設計となっております。
既にもう国外で導入されている軽水炉にはこうした機能の一部の要素が先駆的に導入されているものもあるというふうに思いますけれども、そうした知見も踏まえながら、安全メカニズムをより先進的で幅広い事象に適用されるものとするべく、技術的な検討が進められているものというふうに承知をしております。
○岩渕友君 今大臣から三菱重工がという話もありましたけれども、4つの電力会社と一緒にその次世代軽水炉を共同開発するということが発表をもう既にされているわけですよね。この三菱重工業の担当者が何と言っているかといいますと、新規制基準に合致をする基準で設計を進めているんだというふうに言っているわけですね。既にある基準に基づいて設計進めていると言っているんですよ。ということは、結局は既存の原子炉と変わらないということになるんじゃないですか。
今、受け止めてという話があったんですけど、これね、多分溶け出した核燃料を受け止める装置のコアキャッチャーのことをおっしゃっていたと思うんですけど、欧州ではもうこれ既に当たり前に装備をされているんです。政府が世界で最も厳しい水準と言っている新規制基準には、コアキャッチャーの設置さえ含まれてないんですよね。
10月18日付けの北海道新聞に、札幌市に住む中学生のこんな投書が掲載をされました。事故がなくても廃炉になる全国の原発の解体で出る廃棄物をどうするのでしょう。原発政策の大転換はただ問題を先送りにするだけです。そのツケを払うのは僕たちなんですか。こういう内容なんですね。本当はもう全部是非見ていただきたいぐらいなんですけれども。
こうした声に総理はどういうふうに応えるんでしょうか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 安定的かつ継続的に原子力発電を利用するために、この使用済燃料の再処理、あるいは貯蔵能力の拡大、高レベル放射性廃棄物の最終処分等の課題に対しても、国民の皆様に丁寧な説明を行いながら、これは責任を持って取組を進めていかなければならないと思います。
これらの課題も含めて、原子力について正面から議論をしなければならない、年末に向けて、GX会議、有識者、専門家の皆さんに御議論をいただきたいというお願いをいたしました。是非、こうした御議論をしっかり踏まえた上で政府としての方針を定めていきたいと考えています。
○岩渕友君 今日、安定供給というような話もあったんですけど、原子力に依存するということは再生可能エネルギーの導入を遅らせることになるんですね。エネルギーの海外依存からの脱却にも逆行します。エネルギーの安定供給というんだったら、100%国産の再エネに転換をするべきです。再エネはもうコストの面でも原発より安くなっていますし、世界の本流は再エネなんですよね。
今日議論をした新増設や運転延長なんかは、歴代政権が決して踏み込まないできた、そして、この夏の参議院選挙でも触れられてきませんでした。福島でも全国でも、福島のこと忘れたのかという怒りの声が上がっています。
○委員長(末松信介君) 時間が参っておりますので、おまとめください。
○岩渕友君 事故の検証どころか、増え続ける汚染水など、事故そのものが終わっていないのに、国民の声を聞かずに強行することは許されません。原発回帰の方針転換は撤回をし、原発ゼロ、再生可能エネルギーへの転換を求めて、質問を終わります。