テーマ:LAWS(自律型致死兵器システム)に関する国際的なルール作り及び対人地雷禁止条約の履行確保に係る取組と課題
(議事録は後日更新いたします)
殺人ロボット禁止を
参院調査会 岩渕氏が参考人質疑
参院外交・安全保障調査会は7日、「自律型致死兵器システム(LAWS)に関する国際的なルール作り及び対人地雷禁止条約の履行確保に係る取組と課題」について参考人質疑を行い、日本共産党の岩渕友議員が質問しました。
LAWSとは人間が関与することなく、AI(人工知能)の判断で敵の選別や攻撃ができる兵器で、「殺人ロボット」とも呼ばれます。昨年の国連総会では、国連憲章や国際人道法などが、LAWSにも適用されることを確認する決議が採択されました。グテレス国連事務総長は各国に対して、2026年までにLAWSを禁じる法的枠組みの整備を求めています。
岩渕氏は、LAWSの実用化、配備に対して、「世界各国のAI専門家や開発者、企業や団体などからも懸念が示されている」と指摘。「開発や製造、使用の禁止に向けたルールづくりが必要だ」と主張しました。
そのうえで、現在行われているウクライナ侵略やガザ攻撃の例を挙げ、侵略や攻撃、対人地雷や核兵器の使用などをさせないための、市民社会の役割について質問しました。
非政府組織(NGO)「地雷廃絶日本キャンペーン」の清水俊弘代表理事は「犠牲者が泣き寝入りしない社会にしていくことが大前提だ」と指摘し、「被害者目線で考えていくことが抑止力になる」と述べました。
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2024年2月7日(水) 参議院 外交・安全保障に関する調査会
「LAWS(自律型致死兵器システム)に関する国際的なルール作り及び対人地雷禁止条約の履行確保に係る取組と課題」
○岩渕友君
日本共産党の岩渕友です。
参考人の皆様、本日はありがとうございます。
初めに、お三方にそれぞれお伺いをするんですけれども、自律型致死兵器システム、LAWSですよね、この規制について様々な論点があるということを今日のお話伺って感じました。それで、このLAWSが実用化、配備されるようになると、自国の兵士の犠牲を考慮する必要が薄くなるので、戦争のハードルが低くなる可能性もあるんだというような指摘もあって、非常に怖いなというふうに思ったんですね。世界各国のAIの専門家であるとか、あと開発者であるとか、企業や団体などからも懸念が示されていますし、さらにこのAIに人の命を奪う権限を与えていいのかということで、倫理的な問題も指摘をされています。
先ほど御紹介あったんですけれども、昨年末の国連総会の中で、国際的なルール作りを進める決議が初めて採択をされるということになって、グテーレス事務総長が2026年までにLAWSを法的に禁じる枠組みをつくるということを各国に求めているわけですけれども、私は、その開発や製造や使用の禁止に向けたルール作りがやっぱり必要だというふうに思っています。
その上でなんですけれども、なかなか議論が進んでいないと、ルール作り進んでいないという上で、ルールを作る上で、議論を進める上で日本がどのような役割を果たすかということで、先ほど来お話いろいろいただいているんですけれども、改めて3人のお考えをお聞かせいただければと思います。
○会長(猪口邦子君)
どなたから。
○岩渕友君
どなたからでも大丈夫です。
○会長(猪口邦子君)
清水さん、小笠原さん。
○岩渕友君
三人、順番で、いいです。
○会長(猪口邦子君)
大丈夫。
では、小笠原参考人からどうぞ。
○参考人(小笠原一郎君)
日本の果たすべき役割ということでございますが、日本は、先ほど岩本参考人からも御紹介がございましたけれども、アメリカ等と一緒になりまして、今、条項案というものを具体的に提示しております。その中では、国際人道法を遵守できないような形でしか使用できないようなLAWS、これは使ってはならないということを訴えているのみならず、具体的な国際人道法の比例原則ですとか区別原則、あるいは予防原則、そういった原則をどのように確保していくのかということを非常に実践的、具体的に示しております。
これは、我々は、アメリカ等と提案しておりますけれども、しておりましたが、発展していく文書であって、今後のいろいろな状況、あるいは技術の進歩等によって、今後もこれをどんどん変えていきたいということで、国際的なコンセンサスの形成になるべく資すような形で提供するということを考えてまいりました。
この一つ前には、原則とグッドプラクティスという別の文書を提案しておりまして、これは過去の政府専門家会議での合意を分野別にまとめたものです。これは、毎回毎回同じ議論について新しい議論が起こるので、それではなかなか議論が進まないから、既に合意のある部分についてはもうこれ以上議論をしない、その更に先に進めていこうという観点から出したものです。ただ、国際社会では、条約の形にしてこれを禁ずる、そういった方向に動きたいという大きな意見もございましたので、それを踏まえて、新たにそれを改定いたしまして、昨年提出したものは条項案という形で、御覧になっていただけますと、具体的な条文に近いような形の案文を提出してきております。そういった具体的な提案を行いながら、我々の考えているところをしっかり、国際的な、日本の考えていること、同志国とともに考えているところを国際的なコンセンサスの基盤にしていくということを続けていくのが非常に重要なことだと思います。
そして、昨年のこの政府専門家会議で一定の、私、先ほど進展があったと申し上げましたが、その進展の中に含まれた要素というのはほとんど私どもの条項案。ほかの提案にも含まれているんですけれども、私どもの条項案にも同じような、国際法の遵守できないようなLAWSというものは使ってはならないといったメッセージ、こういったものはその基盤として使われております。
○参考人(岩本誠吾君)
御質問ありがとうございます。
私の考えは、まずはCCW枠内で、まあ穏健なものになるかも分からないですけれども、最大公約数の人道法条約を作っていくと。で、軍縮条約というのは、まあ本当に望ましいんですけれども、今の段階でCCWの枠外に出て一足飛びに軍縮条約を作っていく、これは可能だと思います。というのは、軍事大国を見放せればそれはできるわけです。ただ、それをすれば軍事大国を規制する条約がない。法的な受皿を一度つくっておいて軍縮条約につなげるべきであろうという意味では、CCWの枠内での議論を詰めていって成果物を出すと。同時並行でもいいんですけれども、最終的には軍縮条約のようなものがあればいいんですけれども、今の段階としてはステップ・バイ・ステップ方式で進める方がいいんではないかというのが私の考えです。
以上です。
○参考人(清水俊弘君)
私自身はLAWSに関しての内容に余り踏み込めるだけの知識がありませんが、先ほど小笠原大使がおっしゃったように、この規制の合意形成のプロセスに日本が粘り強く参加して、そこに資するような貢献ができるといいなというのはもちろん思います。
その件に関しましては、クラスター爆弾禁止条約ができるときに、やはりその定義をめぐっては相当な長い議論がありまして、最初は、こういったものは駄目というようなリストが、長いリストがあったものがだんだんだんだん、いろんな国の意見があって最終的に五項目程度の加重方式という形での定義付けになり、その中で、日本の、私、ダブリンの会議にも参加していたんですが、外務省、防衛省から来られた外交官の方がその定義の内容を詰めるときに結構積極的な発言をされていたことが記憶にありますので、そういった経験踏まえて最後まで粘り強く合意形成に貢献していただければというふうに思います。
○岩渕友君
ありがとうございました。
次に、清水参考人に伺います。
対人地雷が国際条約として違法化されてきて、条約に参加していない国も含めて、その対人地雷は使ってはならない兵器だというふうになってきました。これは、やっぱり世界の市民であるとかNGOなどの運動が大きな力になって変化をつくってきたんだというふうに思っていて、非常に重要だなというふうに思うんですね。でも、同じように、核兵器禁止条約も被爆者の皆さんを先頭にした市民の運動が世界を動かして、まあ経済力とか軍事力がある大国ではない国々が平和をつくるために国際社会の中でも力を発揮しているという今状況になっているのかなと思うんですね。
そうした中で、今、そのロシアのウクライナ侵略であるとかイスラエルによるガザ攻撃が続いていて、ロシアが核兵器の使用を口にしたりだとか、対人地雷などによる死傷者数も増えているという下で、その侵略や攻撃、その対人地雷や核兵器の使用などをやめさせていくというために、やっぱりその世論の高まりが世界的に必要なんだというふうに思っているんですけれども、こうした事態を変えていくために参考人が大事だと思っていることについてお聞かせください。
○参考人(清水俊弘君)
ありがとうございます。
いずれにしても、一番大事なのは、犠牲になる方の声、犠牲者の声、あるいは潜在的犠牲者の声をやっぱりできるだけ早く、いち早く広く伝えていくと。今は特にSNSなどの利用でリアルタイムでそういったものが流される時代にもなってきていますし、そういった人たちにまずしっかり目を向けて、そういうこと、人たちが泣き寝入りしないようなやっぱり社会をつくっていくというのが大前提だと思っています。
そういった意味で、日本も、核兵器禁止条約の、もちろん批准すべきだと私は思っていますが、その手前でも、締約国会議にオブザーバー参加をして、日本が長年培ってきたやっぱり被爆者支援の経験あるいは具体的な制度などについてしっかりと共有していくような役割を果たせる、とにかくその被害者目線で万事考えていくということが最も有効な抑止力になるんではないかというふうに考えています。
○岩渕友君
ありがとうございました。以上で終わります。
2024年2月7日(水) 参議院 外交・安全保障に関する調査会
「LAWS(自律型致死兵器システム)に関する国際的なルール作り及び対人地雷禁止条約の履行確保に係る取組と課題」
前軍縮会議 日本政府代表部 特命全権大使 小笠原一郎参考人
○参考人(小笠原一郎君)
どうもありがとうございます。
ただいま御紹介にあずかりました小笠原一郎でございます。
このような機会を与えていただいて、大変光栄に存じます。
私、昨年12月に、外務省を、40年間奉職しまして、退官いたしました。外務省奉職中は、参議院の先生方に本当に御指導、御鞭撻いただきまして、特に私、そのうち2年間は参議院を担当する国会担当の参事官、審議官という役割を演じておりましたので、もうその期間も含めまして、もう大変なお世話になっておりました。この場を借りて、厚く御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
私、昨年退官するまで4年ほどジュネーブにございます軍縮会議日本政府代表部の特命全権大使を務めておりまして、今回の議題である2つのテーマ、自律型致死兵器システムに関わる議論、それから対人地雷禁止条約に関わる議論、これに関する国際会議に参加をして、日本政府を代表して活動してまいりました。
今日は、特にその期間の出来事、昨年末までの最新の出来事を含めて皆様に御説明をさせていただきたいと思います。
まず、お手元に資料を配っております。前半が自律型致死兵器システムに関するものでございまして、後半に地雷に関する資料を御用意しております。
この資料に入る前に一言、どのような国際環境の下で我々の議論が行われていたかということを一言申し上げたいと思います。
特に、このLAWS、なかなか遅々として合意形成が進まないということでいろいろ批判をされておりますが、やっぱり、非常に大国間の対立、競争というものが前面に出る国際環境の中で、国際約束を形成する、国際合意を形成するということが非常に難しくなっている、そういった環境の中でLAWSに関する議論は営々と進められてきておりました。
私は、個人的には、その中でも、特に私どもがやっております議論は全会一致で決定を行わなきゃなりませんので、全ての人が同意してくれる、逆に言うと、1か国、全ての国が拒否権を持っているという中で議論を進めてまいりましたので、一定の成果は生んだのではないかと思っております。
他方、対人地雷の方は、そのような大国間の競争、対立というものから比較的自由な状況に置かれております。この対人地雷禁止条約ができた経緯から申し上げましても、冷戦が終わって対立の時代が終わって、その後20年間ほど国際協調の時代、特に西側の勝利によって終わった冷戦の後の20年間の協力の時代、そういった背景の中から出てきたものだというふうに考えております。
今現在も、この対人地雷に関する条約の方も全会一致で意思決定をしておりますが、実は主要な大国が加盟国に含まれておりません。中国、それからロシア、アメリカ、インド、パキスタン、イスラエル、そういった国々はいずれもこの対人地雷禁止条約には含まれていないということで、合意形成が比較的容易な分野でございます。
そういった大きな違いがある二つの条約、条約体、条約体、交渉体でございますが、まず資料に沿って、LAWS、自律型致死兵器システムに関わる議論の現状と、私どもLAWSと呼んでおりますので、ちょっと長うございますので、この場ではLAWSというふうに呼ばせていただきたいと思います。
まず最初、この経緯でございますけれども、人間の関与なしに自律的に攻撃目標を設定する完全自律兵器のキラーロボット、こういったものの危険性というものがヒューマン・ライツ・ウォッチ等のNGOから指摘がございました。そういった国際社会における問題意識の高まりを受けて、特定通常兵器使用禁止制限条約という枠組み条約がございまして、その下で2014年から非公式会合が行われ、2017年からは政府専門家の会合が行われるということになっております。
このCCWの考え方というのは、国際人道法の原則を個別の兵器に適用していくという考え方でございまして、国際人道法の主たる原則というのは、一つは、無差別な効果ですね、文民に対しても被害を及ぼすような形での害敵行為はやめようと、それからもう一つが、過剰な傷害、同じ軍事目的を達成できるのであれば人道的なコストのより少ない方法を選ぶべきではないかと、そういった観点から議論を続けておりまして、これまでに5つの議定書がそれぞれ個別の兵器についての規制、あっ、禁止、制限の国際約束を結んでおります。
したがって、経緯から申しますと、第六の議定書になることが念頭に置いて議論を続けているということではないかと思います。特にこの議論を行っている中で、この自律型兵器というものが実際に実戦で使用されるケースが増えてきております。最初はナゴルノ・カラバフ紛争における使用というものが注目されましたが、今やウクライナ戦争においては、自律性の多寡はいろいろ異なっていると思いますが、ドローンの多用というものが一つの特徴になっておりまして、まさに今後のゲームチェンジャーとしての大きな位置付けを持っているのではないかと思います。
この10年ほど議論を続けまして一体何が決定されたのかということですが、その最初のページの一番下に飛んでいただきますが、2019年に11の指針というものが決定されまして、これはお配りした資料の後ろの方にくっつけてございますけれども、その中でも特に、国際人道法がLAWSにも適用されること、人間の責任が確保されなければならないことといったことが合意されました。
昨年、また更に進歩がございまして、まず、国際人道法の遵守の観点からの禁止、規制の考え方等について記載したLAWSの報告書が採択されております。この考え方というのは、本来的に国際人道法を守れないようなLAWSは使っちゃいけないということです。
これは、考えてみると、本来駄目なものは駄目と言っているだけで、一種トートロジーではないかという意見もあろうかと思いますが、国際人道法がしっかり適用される、それと両立できないものは禁止されるということで一定の合意ができたということは一つの成果ではないかと思います。
さらに、同じこの昨年の政府専門家会合の報告書におきまして、どういう点で国際人道法とLAWSが抵触する可能性が高いのかということについての合意ができてきております。
それは、害敵行為を及ぼす対象である標的、これを機械に、標的の選択、これを機械に委ねるということは国際人道法との関係で非常に機微な問題を生じるのではないかということがこの報告の中に一致した認識として示されているということでございます。
日本は、その次のページをめくっていただきます、この議論の当初から、基本的な考え方といたしまして、人間の関与が及ばない完全自律型の致死性を有する兵器は開発する意図はないということを宣明しております。
この完全自律型の致死性を有する兵器、これは自分のところでやるつもりはございませんよということは、ほとんど全ての国は言っているところでございます。ただ、それをどのように定義していくのかといったようなところが非常に難しい問題になっていると。
それから、この10年間の経緯、議論の中でも具体的な取組としまして、アメリカ等と協調して幾つかの作業文書を提案しております。
最後には、この二枚目の資料の一番下でございますけれども、国際人道法を基礎とした禁止と制限の方法に係る自律型兵器システムに関する条項案というものを提示しておりまして、かなり成果物に近い内容のものを我々は提示するということを行ってきております。昨年の報告の中での採択、国際人道法に遵守できるような、遵守するような形で、使えないようなLAWSは使用すべきじゃないという考え方も私たちのこの条項案というものの中にも含まれております。
今、どのような形で国際議論がいろいろ分かれているかと申しますと、その次のページをめくっていただきますと、そこに、矢印ですね、ポンチ絵を置かせていただいております。
これは、今、議論の推進派、規制推進派と規制慎重派というふうに大きく分かれる、分けることができる、できようかと思いますが、主として、この成果文書が法的に拘束力のある文書とすべきか、法的な拘束力がある文書は志向しないかというところが一つの分かれ目となっております。
これ、簡単に申し上げますと、LAWSに関する技術を持っている国々は国際的な規制を受けるということに対して非常に慎重、技術を持っていない国々はむしろ国際的な規制によって自分たちがそういった兵器の犠牲となることを避けたいというふうに思っているということで、大体このベクトルは分かれているのではないかと思います。
慎重派の一番最右翼には、ロシア、あるいはインド、イスラエルという国々がおられます。その後ぐらいにアメリカですとか日本ですとか、この6か国がまとめて合同の提案を出しておりますが、こういった国々が続いてまいります。他方、非常に国際的な規制を推進しようという国々を見ていただくとよく分かると思うんですが、例えばインドに対するパキスタン、あるいはイスラエルに対するパレスチナといった関係で、隣国に自国の脅威となるような国々がそのLAWSに関する技術を持っているというところで非常に懸念を持っているという国々が規制の推進派の最右翼になっているというふうに私は感じております。
次に、ちょっと紙を離れて申し上げますが、なかなかこの議論が進捗しない理由としては幾つかあると思います。
一つは、これだんだん、今、私どもがやっております議論というのは、かなり軍備管理条約に近いような、使用のみならず、開発ですとか設計ですとか、そういったものにも踏み込んだ議論をしておりますけれども、そういった安全保障にやっぱり直結してくる、そういった議論、領域で議論をする上では、お互いに正直者がばかを見ないような、自分が正直者になって相手に裏をかかれるということを非常に懸念しますので、やはり、その国際的な規制に自分が服することで自分の安全保障上の立場が弱まるということをやっぱり強く懸念していると。先ほど申し上げましたように、国際的に対立の風潮が強まっておりますので、そういった信頼のレベルが低い中で、なかなかそういった安全保障に直結する分野での合意は形成しにくいと、これがやっぱり一番の基本だと思います。
二つ目の難しさとして、このLAWSというのは、まだその完全自律型の兵器というものは存在しないと。特に、この議論が始まった当初はかなりその距離は、実現までの距離は遠かったと思います。したがって、存在しない兵器について議論するということの難しさ、特に実戦でどういうふうに使われるかということの見地がない中で議論をしなければなりませんので、それをどういうふうに規制していくのかということについても非常に困難があったのではないかと思います。
それから第四番目に、この分野は非常に技術進歩が速うございまして、私も感じるんですが、この10年前にLAWSの議論をここで始めたときには、多分、生成AIといったようなものがこれだけ広く使われるという状況には想定していなかったのではないかと思われます。したがって、私、この議論に参加していて、一定の成果、一定の広いコンセンサスの領域は広げてきたとは思うのですが、今の技術進歩に、果たしてこれまでの蓄積の延長線上で議論をしていて意味のある成果ができるのかということは若干懸念されるところでございます。また、そういった懸念は広く共有されておりまして、このLAWSの枠を超えて、ごめんなさい、特定通常兵器使用禁止制限条約の領域を超えて今いろいろ議論をしようという試みも行われております。
取りあえず、今のがLAWSに関する説明でございます。
次に、対人地雷に関しての説明でございますが、もう時間もございませんので簡単に申し上げますと、対人地雷禁止条約というのは、通常兵器の分野で日本がこれまでも非常に成果を上げてきた分野でございます。日本は、この対人地雷禁止条約、オタワ条約というものでございますが、また、この地雷も、対人地雷禁止条約も非常に大きな成果を上げてきまして、この枠組みの中で、ここに書いてございますように、多くの対人地雷が廃棄され、また、多くの大変広範な領域にわたって対人地雷の汚染から解放されるということが進んでおります。
特に私申し上げたいのは、この4ポツの我が国の取組のところでございますが、2025年のこの対人地雷禁止条約、オタワ条約の第22回の締約国会議、この議長を私の後任の軍縮代表部大使である市川とみ子さんが務めるということで、既に去年の、昨年の11月の段階で選出をされております。
その前の20、今年は5年に1回の運用検討会議の年でございまして、この運用検討会議はカンボジアが行うということになっております。昨年2023年の締約国会議の議長はドイツが務めているということで、私、この選出に当たっては私が参加しておりましたけれども、このドイツ、カンボジア、そして日本という三者がしっかりスクラムを組んでこの対人地雷禁止条約のより良い履行に努めていこうということで一致をしているところでございます。
特に、カンボジアというのは日本の対人地雷禁止条約の取組において非常に重要な舞台となってきております。カンボジアに関しましては、その紛争を停止する政治的なプロセスに日本は深く関与いたしまして、その後の、紛争停止後の平和構築、この中で非常に重要な役割を演じた、地雷の廃棄、地雷の除去というところに非常に日本は官民を挙げて大きな取組をしております。
その中では、例えば重機のコマツが、新しい、面で対人地雷を除去するような技術を開発してくれるとか、そういったことも行われております。
それからまた、今、日本は非常にODAの分野で対人地雷に関して進めておりますことに、第三国、あっ、三国間協力というのがございます。これは、日本とカンボジア、そこでつくり上げたこれまでの知見とか実績を第三国にも共有していきたいということで、アンゴラですとか、あるいは今はウクライナ、そういった国々に第三国間、三国間の協力を進めるということをしておりまして、まさにこの日本とカンボジアで培ってきた地雷取組のモデル、これを世界的に広げていく、そういう非常に大きな良い機会になるのではないかと思っております。
議長になりますと非常に忙しくなりますので、私は本来自分でやるべきだったんではないかと思いますが、後任が快く受けて、非常に意気に感じてくれていることを非常にうれしく思っております。
取りあえず、私の方からは以上で冒頭の御説明に代えさせていただきたいと思います。
2024年2月7日(水) 参議院 外交・安全保障に関する調査会
「LAWS(自律型致死兵器システム)に関する国際的なルール作り及び対人地雷禁止条約の履行確保に係る取組と課題」
京都産業大学 法学部 客員教授・世界問題研究所長 岩本誠吾参考人
○参考人(岩本誠吾君)
京都産業大学の岩本でございます。
国際法の中でも、国際人道法、従来の戦争法、戦時国際法を専攻しております。
本日は、LAWSに関する意見陳述の機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。
最後に、対人地雷についても一言付け加えさせていただきます。大使とのお話とかぶる部分もあろうかと思いますが、国際人道法の観点から、お手元の資料に基づきまして報告させていただきます。
近年、人工知能、AIの研究開発は急速に進み、2040年から50年の間に人間と同等の汎用型人工知能、AGIが開発され、その30年後には人間を凌駕するほどの超知能、スーパーインテリジェンスが出現すると言われております。最近では、10年前倒しとなっているとの研究者の発言もございます。
AIは、当然、民生用だけでなく軍事用にも活用されます。もっとも、AIの軍事利用の自律性全てが国際法的に問題となるわけではなく、問題となりますのは、兵器自体が標的を選定し、追尾し、攻撃するという戦闘用の完全自律型兵器です。
兵器に関する国際法は、武力紛争時の兵器使用の使用禁止に関する国際人道法と、平時に兵器の廃棄、削減、開発、生産、保有などの禁止に関する軍縮法があります。
国際人道法には、兵器自体に関する兵器法、例えば、不必要な苦痛を与える兵器、無差別的な性格を有する兵器、環境を破壊する兵器を禁止する法原則があります。また、兵器は合法でも、その使用によって違法行為となる標的化法、そこには、区別、比例、予防の法原則があります。お手元の資料の三ページの図一、二にありますように、無人兵器の中でも遠隔操作型の兵器や起動後に中止することができる半自律・監視型兵器は人間の判断が介入するので従来の兵器と同様に合法兵器となります。
他方、人間の判断、関与、制御なく機械が判断して攻撃する完全自律型兵器、特にLAWSは兵器法及び標的化法に違反するので禁止すべきではないかと、ジュネーブにおいて2014年以降、CCW締約国会議の枠内でその規制について議論されてきました。しかし、この10年間、LAWSに関する指針原則以外に具体的な成果がなく今日に至っております。
その主な原因として、五つ考えられます。
第一に、10か国ほどのAI兵器開発国とそれ以外の非開発国の対立です。図にありますよう、図三にありますように、兵器開発国は法規制に消極的であり、非開発国は法規制に積極的となります。消極派の中にも追加的な法規制が不要と考える国と、まずは政治宣言や行動準則といった非法的な文書を作成しようとする国に区分されます。積極派も、兵器使用の人道法条約派と、兵器の研究開発を禁止しようとする軍縮条約派に分かれます。
第二に、非開発国は、機械が区別原則や比例原則を適用できないから違法だと主張しますが、開発国は、状況により、例えば海域では区別原則や比例原則の適用は可能であると反論します。
第三に、自律型兵器の危険性から、人間の制御、ヒューマンコントロールや人間の関与の必要性は合意されていますが、その場面について意見対立があります。研究開発、生産、配備、訓練、戦場への投入、そして兵器の起動までのそれぞれの段階で人間の制御が働いているので十分であるとする考えと、兵器の起動後も誤作動や機能不全から意図しない行動や結果をもたらす場合には修正や中止させるために起動後も介入できなければならないとする考えが対立しております。
第四に、議論の中で、国際人道法と軍縮法の混乱、混同があります。CCWは、あくまで通常兵器の使用禁止、制限の国際人道法の枠の条約であるにもかかわらず、そこに兵器の開発、製造、配備の禁止といった軍縮法を盛り込もうとするから議論がまとまらないということになります。
第五に、CCWの手続規則はコンセンサス方式で、軍事大国も小国も同意が必要となります。そのため、成果物は望ましいことと可能なことの妥協となりますが、軍事大国が参加することで、100%は満足はないとしても、軍事大国も法的に拘束されることになります。
今後のLAWS規制の議論に対する教訓となる事例として、対人地雷規制とクラスター弾規制が挙げられます。対人地雷は、地雷使用の緩やかな法規制の、1980年、CCW第二議定書、それと、厳しい法規制となった1996年の改正地雷議定書は、使用の禁止、制限に関する人道法の枠内で合意されました。しかし、CCW枠内は、前述したように、コンセンサス方式の手続規則のために、完全禁止という100%の要求は実現できず、CC枠外の有志連合方式で、完全に対人地雷を全廃するために、1997年の対人地雷禁止条約という軍縮条約が策定されました。
このように、ホップ・ステップ・ジャンプ方式で、二つの人道法条約の後に一つの軍縮条約が成立しました。軍事大国は今でも対人地雷禁止条約に加入していませんが、厳しい法規制の改正地雷議定書という法的受皿があるために、それには加入しており、一定の法規制が軍事大国にも働いています。
他方、クラスター弾規制も、当初、CCW枠内で議論されていましたが、CCW枠内での合意、すなわち、人道法条約の成立を待たずに途中で、CC枠外の有志連合方式で、クラスター弾条約という軍縮条約が採択されました。クラスター弾条約に加入しない軍事大国は、法的受皿となる国際人道法条約がないために、監視法の国際法原則を除き、無法状態のまま放置される結果となりました。
目的はあくまで軍事大国の法規制であって、軍縮条約は非常に重要な条約でありますが、条約であり、未加入の軍事大国に汚名化、スティグマタイゼーションの政治的効果はありますが、しかし、軍事大国が加入しなければその国には法規制が及びません。LAWS規制も、最終的には軍縮条約が望ましいとしても、まずは軍事大国の法的受皿を準備することが最重要課題であると思います。
ましてや、現在は、人道法条約か軍縮条約かという法文書、いわゆる条約、これはハードローとよく言われますが、ハードローの議論に至る前の段階の政治宣言やベストプラクティス、行動準則といった非法的文書、いわゆるソフトローの議論ですらコンセンサスが成立していない状況です。このような閉塞的な状況の中で、昨年は大きな動きが見られました。それは、CC枠内での議論だけでなく、国連総会という別の議論をする場、プラットフォームが新たに追加されたということです。
昨年の国連総会で、今年九月までにLAWSに関する各国の見解をまとめた報告書を事務総長に提出するよう要請するとともに、LAWSを今年度の国連総会の暫定議題として決定しました。今後、CCWが何も成果を上げなければ、多数派のAI非開発国により、核兵器禁止条約を成立させたようなプロセス、委任事項、マンデートとしてLAWSに関する条約交渉を進める総会決議を多数決で採択することも考えられます。この別のプラットフォームの存在は、存在意義を問うという意味でCCWに大きな刺激となります。
昨年のもう一つの変化は、LAWSというAI兵器規制だけの議論ではなく、AIの軍事利用の国際会議、2月の軍事領域での責任あるAIサミット、それに関連する米国提案のAI、自律性の責任ある軍事利用政治宣言が公表されました。AIの軍事利用は、迅速な状況認識や脅威評価、被害評価など、様々なところの意思決定支援システムで既に実施されています。AIの軍事利用に関するベストプラクティスや行動準則などのソフトローの策定が進んでおります。
さらに、LAWS議論は2013年、14年からですが、AI規制の議論は、資料の20ページ、この水色の20ページの表にありますように、2019年から急速に進化してきました。特に、2022年11月末のチャットGPTのような生成AIが出現してから、昨年の広島プロセスといったように国際会議や各国において急速にAI規制が喫緊の課題となっております。
このレジュメの図五のように、AIの民間利用や軍事利用の法規制がLAWS規制と同時並行して議論されており、LAWS規制の議論もそれらの動きに大いに影響を受けております。AIの全体的な規制動向やAIの軍事利用のベストプラクティスに共通した合意事項、例えば人間中心主義、人的制御、リスクベースアプローチ、意図せざる結果の検知、回避機能や機能不全時の不活性化機能などの安全装置を参考にLAWS規制の在り方を考えることができます。
国連事務総長は度々、2026年までにLAWSの禁止制限に関する法文書作成を強く要求しております。CCW締約国会議も、政府専門家会議に、5年ごとに開催される2026年の再検討会議に何らかの報告書を提出するように要請しております。この2024年、25年、26年の3年間の間にCC枠内で何らかの成果を上げなければ、議論の中心が国連総会に移り、軍事大国を巻き込まない軍縮条約の議論になる可能性があります。そのために、人間の関与が及ばない完全自律型致死兵器を開発する意図がないと表明している日本は、CC枠内で重要な役割を果たすことができます。
日本の役割として六点挙げました。
第一の点は、CCWの議論の整理です。21年頃からLAWSの致死性、リーサルを外して、AWS、自律兵器システムが議論されるようになりましたが、対人殺傷用の自律型兵器を規制するのか、対物破壊用の自律型兵器までも規制しようとするのか、区別して議論をする必要があります。対人用と対物用では、区別原則や比例原則の適用において法的義務の差が存在すると思われます。それと、人道法と軍縮法を区別して、あくまで軍事大国も同意する人道法の枠内、兵器使用の禁止制限で議論する必要があります。
第二点は、例えば包括的AI規制動向の中のリスクベースアプローチは、LAWS議論での人道法違反の自律兵器の禁止とそれ以外の合法的な自律兵器の規制という二層アプローチに通ずるものであり、包括的なAI規制やAIの軍事利用規制の動向を参考にする必要があります。
第三点は、中国もロシアもAI規制では人的制御に賛成であり、LAWS規制においても、中ロを含む、まずは政治宣言、行動準則といったソフトローの合意形成に注力すべきであると思います。
第四点は、CCW枠内でのコンセンサス形成の努力が必要であり、成果物なく途中でCCW枠外の有志連合方式、今回それが国連総会の場になるかもしれませんが、それを回避すべきだと思います。
第五点は、ソフトローからハードローへ、それも、まずは人道法条約を、その成立後に軍縮法へと議論を進めるべきであります。あくまで、法規制レベルが低く甘いとしても、軍事大国規制の法的受皿が最重要課題であります。
第六点は、最近のCCW議論の焦点が自律兵器の合法的使用に向けた具体的な条件設定に移りつつあるように思います。今後は、兵器の起動後も人間が介入できるような人的制御、機能不全の不活性化装置などのリスク軽減措置、昨年の政府専門家会議の報告書にも言及された自律兵器システムの標的タイプ、対人殺傷に限定するのか対物破壊も含むのか、運用の時間的期間、地理的範囲、使用回数、兵器の攻撃力の規模などが議論の対象となります。
運用期間の制限事例として、改正地雷議定書では、遠隔散布地雷は投射後30日以内の自己破壊装置、120日以内の自己不活性化装置が義務付けられております。運用領域の制限事例として、CCW第三議定書での空中投下の焼夷兵器は人口密集地での使用が禁じられています。今後、具体的な、このような制限条項を考慮して自律兵器の使用の禁止、制限を詰めていく作業が必要となってきますので、日本はその議論をリードすることが求められております。
それでも、兵器、自律兵器自体が危険であり、禁止すべきと判断すれば、全面禁止の軍縮条約を国連総会で策定することも考えられます。いずれにせよ、LAWS規制はステップ・バイ・ステップ方式で進めるべきであると思います。
最後に、対人地雷に関して一言述べたいと思います。
この本資料の81ページの記事にありますように、ロシア・ウクライナ戦争において、対人地雷禁止条約未加入国であるロシアはウクライナに対して対人地雷を使用しております。他方、ウクライナは対人地雷禁止条約に関し、加入しているために、対世的な義務として対人地雷は保有できません。ウクライナは、条約当事国でありながら対人地雷の使用疑惑があるので調査する必要があり、もし保有し使用していれば条約違反となります。ここに対人地雷使用の非対称性が存在します。
第二次世界大戦前であれば、諸国家間の紛争で条約当事国でない国が存在すれば、条約当事国であってもその条約義務を履行しなくて済むという総加入条項がありました。しかし、今は総加入条項は条約に加入されることなく、挿入されることなく、対人地雷禁止条約当事国は非当事国との戦闘行為において不利な立場に置かれます。それを不利と考えれば、条約当事国は条約から脱退するかもしれません。
対人地雷禁止条約の当事国を増やすことも重要ではありますが、条約当事国が脱退しなくても済むように、核兵器の場合のように対人地雷禁止条約非当事国は条約当事国に対して対人地雷を使用しないと約束させる消極的安全保障、ネガティブ・セキュリティー・アシュアランスを検討することも必要ではないでしょうか。
日本は、対人地雷禁止条約及びクラスター弾条約の当事国でありますから、それらの条約非当事国との戦闘において非対称的な立場、不利な立場に置かれる可能性があります。事前にこの非対称性問題を検討しておく必要があると思います。
以上で御報告を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
2024年2月7日(水) 参議院 外交・安全保障に関する調査会
「LAWS(自律型致死兵器システム)に関する国際的なルール作り及び対人地雷禁止条約の履行確保に係る取組と課題」
地雷廃絶 日本キャンペーン 代表理事 清水俊弘参考人
○参考人(清水俊弘君)
本日は、このような貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
私自身は、実は山梨の韮崎市というところに自宅がありまして、この雪の予報があったんでどうしたものかと思いまして、月曜日のうちに東京の自宅に、あっ、東京の実家に移動しまして、今日この日まで待機しておりました。よろしくお願いいたします。
私自身は、この地雷廃絶日本キャンペーンというのは、日本の、ICBL、地雷禁止国際キャンペーン、ICBLの日本の構成団体の一つでありまして、私自身は、1992年、カンボジア駐在中にこのICBLのメンバーとなり、その後、97年に帰国した際にこのジャパンキャンペーンを立ち上げ、今に至っております。
97年といえば、日本がオタワ条約に署名した年でもありますが、その年には私自身も小渕外務大臣とお話をさせていただきまして、12月の調印式に間に合うように日本も是非準備してほしいというお話をさせていただきました。
また、その後、2008年には、クラスター爆弾禁止条約の成立、そして日本の署名に際しては、今日いらっしゃる猪口先生、それから河野洋平先生に大変お世話になりまして、日本政府のオスロ条約署名にこぎ着けるというところで議員の皆さんにも大変御尽力いただいた記憶がまだ新しく残っています。
今日は、私自身はその市民社会の立場からオタワ条約のことを中心に現状と課題について述べさせていただきたいと思います。簡単なレジュメを用意いたしておりますので、そちらを御覧ください。
1997年にオタワ条約が成立し、そして99年3月に発効してからはや四半世紀がたっております。この四半世紀の間の成果は、先ほど、前にお話しされたお二方からもあるとおりなんですが、現在の加盟国164、これは実は2017年にスリランカが加盟して以来増えていないという、まあ現状横ばい状態で、残りまだ33か国の加盟は待たれているところです。
その中で特に私たちが問題視しているのは、ロシアとミャンマーの使用、それから、今、岩本先生からもお話がありましたウクライナの使用あるいは使用疑惑に関する問題点であります。
この点に関して、昨年11月に行われました締約国会議において、どの国もですね、一般論として、この条約第一条でうたっています、いかなる状況下でも地雷の使用、生産等は許されないということに関して触れつつも、ウクライナに対して具体的にその調査あるいはその現状の報告を求めることを明確に示した国はありませんでした。
私たちICBL全体の見解としましては、今、岩本先生おっしゃったこととはちょっと反する部分もあるかもしれませんけれども、やはり条約違反は違反として、ウクライナに対してもしっかりと報告と調査を求めるべきであると思っています。なぜならば、いかなる理由であれ、対人地雷を使うということは、その国の市民の命、そしてその後の復興の大きな障害になるということがもう明白であるからですね。特に、日本はウクライナの地雷除去、不発弾除去の支援を始めているということもありますので、今度の締約国会議においても議長の立場から一定程度の進言があってもいいんじゃないかというふうに私は考えます。
それから、そういったことが条約の規範力、つまり条約に加盟していようが加盟していまいが、やっぱりその国際法でこの兵器は禁止されているんだということがやっぱりしっかりと根付いていくためにも、このいかなる状況下でもというところにより強いメッセージを向けてもいいんじゃないかというふうに思っています。
それから、生産能力を有する国は12か国、その中でも今も生産を続けている国が幾つかありますが、やはりミャンマー、ロシアに関しては私たちも非常に大きな問題だと思っております。まあ、もちろんほかも問題なんですけれども。
犠牲者の数、99年の発効当時に比べれば半分以下に減っているというふうには言えますが、やはり依然として相当な数のレベルの犠牲者がいて、そのうち民間人の割合はこれも依然として80%を超えているという状況にありますので、うち子供がやはりそのうちの半分を占めている。そういった意味でも、この地雷の使用による犠牲者を早くゼロにするという意味でも、より強い取組が必要かと思っております。
そんな意味で、国際協力の部分に関しましては結構高いレベルで、日本を含めて世界各国から毎年相当数、相当額の支援が届いているということは報告されております。特に、2021年度よりも2022年度は47%増加をしていると。条約ができてから既に四半世紀ぐらいたっているのにまだこの支援レベルが増えるということは、これは相当いいことだと思いつつ、その増えた分の大半はウクライナに対する除去支援などの部分が多く占めているということを考えると、やはりウクライナ、もちろんロシアに対して地雷あるいはクラスター爆弾の使用に関してがっつりとやっぱり糾弾すべきだと思いますけれども、やはり同様にウクライナに対しても一言言う必要があるんじゃないかと、かように思っているところであります。
同じく国際協力の中の大きな課題として私たちが認識しているのは、犠牲者支援の部分です。この支援総額自体は合計七億ドルを超える大きな額になっておりますが、実はこの中で被害者支援に向けられている支援額は全体の5%にすぎません。ほとんどが地雷対策、地雷除去、探査、そういった対策の方に振り分けられてしまっていて、非常に少ないパイを地雷被災国の犠牲者たちの支援に分けざるを得ないと。で、そのうちの多くはアフガニスタン、シリア、イエメンといったようなやはりその国に限られていることもありまして、やはりバランスの良い配分、地域のバランスであったりそれから地雷対策と犠牲者支援のバランス、この辺に関してはこれはもうずうっと長い期間課題となっていることでもありますので、やはり、まあこれは本当繰り返し繰り返し私たちも言っていることですが、このバランスの見直しは必須であろうというふうに思っております。
また、地雷の被害国の中でも特に都市レベルから地方遠隔地にやっぱりその支援が延びるということも滞っておりまして、地方レベルで生存している地雷犠牲者に対する義足などの支援であったり、リハビリ、それから社会復帰に向けての様々な支援は相当遅れています。こういった事実もありまして、私たちも五年ほど前からミャンマーの地雷犠牲者に対する義足の提供、リハビリ、社会復帰の支援をやっておりますが、私たちにできることは相当限られていることでもありますので、やはり政府レベルに、の認識を新たにしていただいて、より地方レベルにアウトリーチできるだけのボリュームと認識を持っていただければというふうに思っています。
そういうことも踏まえまして、来年、今年の11月にカンボジアのシェムリアップで開催されます第5回運用検討会議についてですが、カンボジアで第5回目の運用検討会議が開かれるということ自体非常にシンボリックなことだと思っておりますけれども、その大事な会議に日本政府の軍縮代表が議長を務めると、これは本当に大きなことだと思っています。そういった意味でも、ここで日本のやっぱりプレゼンスというものをよりしっかりと示していただきたいということもありまして、特にこの地雷対策支援以外の分野、もちろんその犠牲者支援ということも含めてやってほしいということ以外に、普遍化の部分あるいは条約のコンプライアンスなどでもより積極的な姿勢を示していただければと思っています。
繰り返しになりますが、ウクライナに対してもやはり厳しい態度で臨むべきだと思います。そして、ミャンマーは未加盟国でありますけれども、やはりオブザーバーとして参加してもらうなど事前の働きかけがあってもいいんじゃないかと思っています。
そして、2014年でしたか、第3回の運用検討会議、モザンビークのマプートで開催されました。私自身も参加しましたけれども、そこで非常に記念すべき宣言として、2025年までにこの問題を終わらせようという期限目標が掲げられました。この条約ができる前は一体この問題は何十年、何百年掛かるんだと言われていたことが、条約ができて本当に数十年の間に期限目標が掲げられるところまで来たということは非常に条約ができたことの大きな成果だというふうに思いますけれども、まあ実際のところ、その地雷除去のその作業工程から考えて、既に2025年を超えた範囲で、26年、27年まで延長を申請している国もある中で、2025年、つまり来年に全てを終えるということは現実的には不可能であろうというふうには思いますが、やっぱり一方で、やっぱりその目標ができるだけなし崩し的に、ただだらだらっと延びるのではなくて、やっぱりこの目標は目標としてありますよねということ、そして、じゃ、延ばすんだったらばどのぐらいなのかということをより強い形で、この期限目標を、2025年と一度うたった期限目標をできるだけ肯定的なイメージで更新していただくような雰囲気づくりというのが求められているんじゃないかというふうにも思っています。
これに関連しまして、次のページ、二番目のアジアの地雷被災国、ミャンマーの現状についても少し報告させていただきます。
御承知のとおり、2021年2月1日にクーデターが発生してから3年。私自身、昨年12月にタイでミャンマーの現地NGOのメンバーと会いまして、特に地方レベルでの戦闘状況、それから地雷の犠牲者、国内避難民の状況、そういったことを聞いてきました。その報告につきましては事前にお配りした資料の中にも入れさせていただいておりますけれども、非常に若い人たちが、本来であれば、クーデターがなければ普通に学生をやっている、普通に勤めていたであろう学生たちが、戦闘に関わりながら非常に致命的なけがをしているという状況が今も増え続けています。
やっぱりこのミャンマー国軍の暴挙を一刻も早く止める必要があろうかと思いますが、ほかの国、欧米と日本も歩調を合わせて、やはりより厳しい制裁措置をとるべきではないかと。日本もやはり、新規のODAをやっていなくとも、過去に契約したODAは今続いているということ、それから、日本の企業が依然としてミャンマー国軍に利するような経済活動をしているというような現状もありますので、ここに関しては政府としてもより厳しい目で見ていただければと存じます。
その意味でも、日本は今ASEAN諸国とのいろいろ協調関係、模索していると思いますけれども、やはりASEAN諸国と協調して、このミャンマー問題、一緒になって解決していくということ、これをオタワ条約の文脈の中でも幾らか実現できる部分があるんじゃないかというのが、先ほど申し上げましたとおり、運用検討会議あるいは締約国会議に、ミャンマー政府の代表団に対して是非オブザーバーでいいから参加して議論しようよというような働きかけ、呼びかけがあってもいいんじゃないかというふうに思っております。
そして、今回、地雷の話を超えてしまいますけれども、私たちの認識では、同じく人道的軍縮条約の流れとして、クラスター爆弾禁止条約についても非常に大事なものだと思っておりますので、少しだけ付け加えさせていただきたいと思います。
クラスター爆弾禁止条約、オスロ条約は2010年8月に発効して、現在13年半がたったところになりますが、加盟国が112と、いま一つ伸び悩みがあるところです。昨年の夏に南スーダンが加盟して以降伸びていません。この辺では、日本も締約国の一つとしてオスロ条約の普遍化にもよりまた御尽力いただければというふうに思っています。
一点だけ大事なこととして申し上げたいのは、この条約の一条(c)項でうたっております一般的義務の、一条の一般的義務というのは、そもそもいかなる状況であっても、クラスター爆弾を使用、生産等してはいけないということなんですが、その(c)項として、本条約において締約国に対して禁止されている活動を行うことにつき、いずれかの者に対して援助し、奨励し、又は勧誘することをしてはならないという中で、この中で、私たちはこのクラスター爆弾製造企業に、例えば日本の金融機関が投融資をするということもこれは当然禁止されるべき行為だなというふうに僕らは思っているんですが、外務省の担当の方とこの件に関してはずっと平行線をたどっております。現在、世界ではこういった解釈ができるという国は既に28か国ありますし、日本がその批准している条約のことでもありますので、是非より厳しい対応をお願いしたいと思っています。
そんな意味で、民間の金融機関は全てそういったことに対してはもう行わないという指針を2017年に出しておりますが、残念なことに、年金積立金の運用管理独立行政法人、GPIFに関してはいまだにそういった指針を示していず、アメリカのクラスター爆弾製造企業、をしている会社、テキストロン社の株式を保有しております。
そういった意味でも、法改正までは必要ないかもしれませんが、GPIF自身がこうやってうたっているこの括弧内の文言がありますが、こういったそのうち活動原則の中でやっぱり一定の制約というものは考えるべきではないかということがあってもいいんじゃないかというふうに思っております。
あとの四番、五番にあることは今日のこととは直接関係ありませんが、この資料の中で、OSA、政府安全保障能力強化支援に対して私たちNGOが感じている懸念点に関しては、このお配りした資料の中に掲載させていただいております。日本政府が人間の安全保障というものを一つ大事にしていく中で、こういったことに関しても是非考えていただければと思います。
もう一つの、パレスチナ難民救済機関、UNRWAに対する資金停止の問題に関しても非常に私たちは懸念しておりますが、これに関しましては、一昨日、日本国際ボランティアセンターのメンバー等が深澤外務政務官に直接お会いしてこの声明をお渡ししておりますので、またそれに関してはまた別途お話しする機会があればと思います。
以上、私からの報告になります。ありがとうございました。