2025.06.05 参議院 経済産業委員会
「早期事業再生法案」対政府質疑、終局(討論あり)
質問テーマは「労働者不在、海外買収ファンドを利する新リストラ法案」です。
(ボタンをクリックやタップすると議事録が開きます)
217-参-経済産業委員会-013号 2025年06月05日
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
本法案は、経済的に窮境に陥るおそれがある事業者、厳しい状況に陥るおそれがある事業者が早期に事業再生に取り組み、事業価値の毀損や技術、人材の散逸を回避するものとして、多数決による私的整理を可能とする新しい制度を設けるというふうにしています。
法案では、事業者が早期事業再生計画を作成をして対象債権者集会に提出するというふうにしていますけれども、この再生計画には人件費の切下げや雇用の削減などが含まれることがあり得るということでいいか、確認をします。
○政府参考人(河野太志君) お答え申し上げます。
早期事業再生計画には、主として事業者が制度を利用するに至った事情ですとか、業務の現状ですとか、その事業再生に向けた今後の事業活動に関する事項などを記載することとしております。
今御指摘のあったこの計画に人件費の切下げとか雇用の削減等が含まれるか否かは、これは一概に申し上げることはできないわけでございますけれども、事案によっては記載されることもあり得るというふうに認識をしてございます。
○岩渕友君 今日の議論でも、そのことを前提にして議論しているというふうに思うんですね。労働者にとって非常に重要な内容が書き込まれる可能性があるということです。
ところが、労働者や労働組合が再生計画の内容について知ることができる、つまり、その人員整理だとか労働条件の引下げなんかが含まれているということを知ることができるのは再生計画が第三者機関に提出される時点だというふうにこれまで衆議院でずっと答弁してきているんですよね。つまり、そのときは再生計画もうでき上がっているということなんですよ。
労働者や労働組合が関与できないという状況に対して、衆議院でも、そして今日も質問が行われて、雇用や賃金の減少が見込まれる事案については、関連する労働法制にのっとった手続に加えて運用面で対応するという答弁が行われてきています。
さらに、具体的には、会社分割とか、事業譲渡とか、雇用や賃金の減少が見込まれる事案については、第三者機関への計画提出に先立って労働組合等へ通知を行うことを省令で規定をして、労働組合等がその後の協議等に向けた準備が行えるように環境を整えていきたいという答弁されているわけですよね。そこに、また今日のやり取りでは、労使の協議状況を記載するという答弁もあったと思うんです、ということですよね。さらに、この協議の状況について記載があっても中身が伴わない場合、実質が伴わない場合はどうなるのか、こういうやり取りもありましたよね。
その上でちょっと聞くんですけれども、この労使協議がまとまらない場合、第三者機関に再生計画の提出はできないということでいいかどうか、確認をしたいんです。
○政府参考人(藤木俊光君) 御答弁申し上げます。
まず、そもそもそういった労働関係に影響を及ぼす場合、これは労働法制上の手続がこの早期事業再生法とは別の手続として必要になります。したがって、労働者の方々の権利はそういった労働法制上の手続をもって守られると、これは今日も御答弁申し上げているところでございます。
したがいまして、この早期事業再生法案においては、情報提供を行い、それに基づいて必要な協議がなされているかという状況の確認まででございまして、それに基づいてその後どういう形で労使の話がまとまるか、あるいはまとまらないかということについては、これは労働法制上の手続をもって担保されると、そういう問題であるというふうに理解してございます。
○岩渕友君 今の答弁でいうと、あくまで労働者の権利は労働法制で守られるんだと、だから実際に第三者機関が行うのは協議がされているかの確認までだということですよね。
そうなってくると、労使協議がまとまらない場合であっても、つまり、第三者機関に再生計画の提出はできるということでいいということになりますよね。
○政府参考人(藤木俊光君) そういう御理解でよろしいと思います。
○岩渕友君 つまり、それは要件にならないということなんだということですよね。
それで、今日の答弁というかやり取りの中で、保秘とのバランスということもいろいろ答弁あったと思うんです。
例えばなんですけれども、事業者から労働組合に通知があったと、労働組合が、その再生計画の中に賃金カットであるとか人員削減計画があるということが分かりました。その中身について例えば労働組合がチラシなんかを作って労働者に配ったりするということはできるのかどうか、これはいかがでしょうか。
○政府参考人(藤木俊光君) お答え申し上げます。
一般論で申し上げますと、この再生局面における情報の扱いというのは大変センシティブなものであるというふうに思ってございます。例えば上場企業でございますと、インサイダー取引という問題にも関わる問題であるというふうに思っておりまして、そういった当事者間における情報の保持と、秘密の保持ということは大変重大な問題だと思います。ただ、これ事案に応じて、情報の内容に応じて区々あると思いますので、これはまさにそれぞれのシチュエーションに応じて判断される話でございます。
○岩渕友君 シチュエーションということだったんですけど、今私が質問したような具体的な事例の場合というのはどうなりますか。
○政府参考人(藤木俊光君) 繰り返しになりますけれども、その情報の内容にもよりますので、それがその段階で公にできるものなのかどうなのかということに関わると思っております。当然、会社から組合に情報を示すに当たってどういう条件をお付けになるかということも、それ、それぞれ組合と会社の間でお話が当然なされるということが前提でございますので、予断を持って、何かルールとしてここから先は駄目だということを私がこの場で申し上げる性質の問題ではないと考えております。
○岩渕友君 今日のやり取りの中でも、労働者が知らない間に人員の削減計画なんかが決まっていたみたいな、いつの間にかそういうことになっていた、それを報道で知ったというような話あったと思うんですよ。つまり、今の答弁でいうと、労働者はもう何にも知らされないということが当然あり得るというか、むしろそういうことになっていくんだというふうに思うんですよね。
それで、その前段に質問した中身でいえば、今日いろんなやり取りはあったんだけれども、結局は労働法制で守られるんだと。いろいろ省令に書き込むとは言うんだけれども、結局は労働法制だと。第三者機関ができるのは協議の確認までだということなんだと思うんですよね。
そうなってくると、これ、労働者を守るということにならないんじゃないかというふうに思うんですね。いかがですか。
○政府参考人(藤木俊光君) 繰り返しになりますが、労働者の権利については労働法制でしかるべく守られているということでございまして、労働法制でもって守られていない権利について、それを超えてこの法律で何かを保護するというものではないというふうに思っております。
○岩渕友君 だから、いろいろ省令に書き込むといっても、それが必ず労働者を守るということを担保するというふうにはならないのかなというふうに私は思いました。
さらにですけれども、この新しい制度は非訟事件ということでいいか、確認をしたいと思います。
○政府参考人(河野太志君) 本法律案に規定する強制執行等の中止命令ですとか担保権実行手続の中止命令、それから権利変更決議の認可の申立ては、これは裁判手続であるところ、いずれも非訟事件という扱いでございます。
○岩渕友君 非訟事件ということは、原則非公開ということになるんですよ。その手続は労働者に明らかにされないということになります。労働者が自分たちに関わることなのに、情報が公開されない、明らかにならない、手続にも関与できないということになるわけですね。
経産省は、この制度について、先行する欧州の類似制度を参考にしたというふうに言っています。フランスの制度について紹介をしてください。
○政府参考人(河野太志君) お答え申し上げます。
ヨーロッパでは、早期かつ予防的な事業再生を促進する観点から、裁判所の関与を通じて、反対債権者に対しても必要な手続保障を確保しつつ多数決に基づく権利変更を実現する制度が存在しておりまして、その一つでございますフランスの迅速再生手続につきましては、事前に調停手続が前置をされていて、調停手続におきまして対象債権者の大多数の同意を得た上で、迅速再生手続を用いて、多数決原理によって再生計画案の可決及び裁判所の認可を目指す手続であるというふうに認識をしてございます。
他国の法令の詳細について全て正確に把握はしておりませんけれども、承知をしている範囲で申し上げますと、当該制度におけるこの労働債権に関する規定につきましては、分かる範囲でございますが、権利変更の対象債権は手続利用者がこれは選択が可能であるものの、労働債権については権利変更の対象外という形になっているということでございます。
そのほか、これ労働債権に関する規定ではございませんけれども、例えば再生計画案の記載事項には、一部、従業員の雇用の見込みについての説明といった項目があることは承知をしているところでございます。
○岩渕友君 今も答弁に少しあったんですけど、フランスの制度は本制度とは違って、労働債権は常に影響を受ける当事者から除外をされているし、意思に反して事業再生計画案に拘束されることはないということなんですね。このことが制度で担保されているということなんですよ。フランスの制度だったら、再生計画に基づく首切りなどはできないということなんですよね。
再生計画は参考資料だというふうにされていて、仮に再生計画に人員整理などについて書かれていても法的効力が発生するものではないといいます。けれども、金融機関は、再生計画の中身を見て減免などの権利変更に応じるわけですよね。だから、再生計画は決議と一体のものになるはずなんですよ。
労働法制にのっとった手続だというふうに言いますけれども、衆議院の審議でも、あと、今日もやり取りあったと思うんですけど、法案の作成に当たって厚生労働省の協議は行われたのかというふうに問われて、厚生労働省とも認識は共有しているというふうに答弁するだけなんですよ。共有しているだけなんですよ。
大臣に伺うんですけど、ちょっとこの今までのやり取り聞いて、これで本当に労働者守れるのかと。守るということだったら、法案に労働者保護について書き込むべきじゃないでしょうか。
○国務大臣(武藤容治君) 御指摘の労働者の権利保護については、この労働関連法制、今ずっと議論させていただいております、のっとった手続を経て担保されているものと承知をしております。企業で働く従業員の理解と協力を得ることが事業再生の成否を決する上で重要な観点であると、先ほどもおっしゃったとおりで、衆議院における議論においてもずっとこういう議論を重ねてきています。
また、本法案は金融債務の減免等の手続を定める制度でありますけれども、その目的たるものは、やはり金融債務の減免等を通じて早期での事業再生を図ることで、事業価値の毀損や技術、人材の散逸につながる倒産状態に至る事態を回避することにあるんだと思っています。
衆議院での本法案の修正も通じながら、こういう点がより明確化されたものと認識をしておりますし、本修正も踏まえ、本制度の活用を通じて事業者に早期での事業再生を促しながら、従業員の協力も得て技術、人材の散逸の回避を図ることができるよう適切な制度運用に、これを是非図っていくこととしていきたいというふうに考えています。
○岩渕友君 従業員の理解と納得だと、協力だと言うんですけど、冒頭確認をしたように、結局その再生計画の中に人員削減の計画なんかが入っていて、労使で協議をしたとしても、その協議しているかどうかしか確認されないわけですよ。これで本当に労働者の理解や納得得られるのかと、協力得られるのかということだと思うんですよ。これ、得られないですよ。これでは労働者守るどころか、もうリストラを後押しする制度になるんじゃないかという懸念をもうはっきり言って拭えないということなんですよね。
そもそもこの制度が何で必要なのかということなんですけど、法案の提案理由の中に、二〇二四年の倒産件数が十一年ぶりに一万件を超えたということが挙げられています。けれども、そのうちの約九割が従業員数十人未満の小規模企業だということが答弁されているわけですよね。一方で、本法案の対象は主として金融債権者の多い大企業、中小企業、中堅企業を想定しているというふうに言うわけですよ。法案の背景として挙げていることと実際に想定されている対象がもう合っていないというふうに思うんですよね。
同時に、法案の背景では、経済の新陳代謝機能の強化が重要だというふうにしています。この新陳代謝に関わってなんですけど、二〇二二年の十月に開催をされた第一回新たな事業再構築のための私的整理法制検討分科会というのがあって、そこに冨山和彦委員という方が参加をされているんですけれども、新陳代謝についての発言をされているんですね。
何と言っているかというと、日本経済の停滞の根本には新陳代謝力がなくなったことがあると、中小企業、地方の企業が物すごい勢いで交代していかなければならない、だから退出、廃業、買収、集約が起きないと進まない、そのために私的整理をできるだけスムーズに行える必要があるといったことを述べているんですね。
この法案ですけれども、中小企業の淘汰を進めるための法案ということになるんじゃないんですか。大臣、いかがですか。
○国務大臣(武藤容治君) 審議会の報告書ですとか本法案の提案理由を説明する際に用いておりますけれども、経済の新陳代謝機能の強化という言葉でありますが、事業者の事業の再建を円滑化する制度基盤を整備することで、収益性の高い事業に入れ替えたり、新たに挑戦していくという、いわゆる事業内容の新陳代謝を意味しているところであります。
冨山先生のいつも御意見も別なところで拝聴していますけれども、決してそういう意味では、中小企業の倒産を促進するという意味でもなく、企業の新陳代謝を進めようとしているわけでもございませんので、御理解をいただきたいというふうに思います。
○岩渕友君 ただ、実際には、その中小企業や地方の企業、物すごい勢いで交代しなくちゃいけないと、だから退出、廃業なんだとおっしゃっているので、そういう懸念になるわけですよ。
再生計画にリストラ計画が含まれているということは、労働者にとってはもう本当に大変なことなわけですよね。このリストラということでいうと、まさにあの日産自動車が今直面している問題だということです。
日産自動車が五月十三日、経営の立て直しに向けて二〇二七年度までにグループ全体で二万人を削減すること、日本を含めて七工場を削減する方針を発表しました。日産は、一九九九年に、当時の最高責任者だったカルロス・ゴーン氏が、日産リバイバルプランということで、五つの工場を閉鎖し、全従業員の一四%に当たる約二万一千人の労働者を退職させる計画を発表しました。ゴーン氏はコストカッターというふうにも呼ばれていたわけですよね。その事業再構築計画を、政府は、産業活力再生法、産活法に基づいて、二〇〇一年の三月十九日に認定をしています。
大臣、これは、政府自身が大リストラの後押しをしてきたということになるんじゃないですか。政府が計画を認めてきたということが今回のこの大リストラにつながっているんじゃないでしょうか。
○国務大臣(武藤容治君) この再建計画は承知をしているところですけれども、日産が経営再建策として約二万人の人員削減する等々、これ報道にあるものであります。
経営再建計画そのものにつきましては、個社の経営に関わる事項でありますからコメントは差し控えたいと思いますけれども、同社は、現時点では、どの工場を閉じるかということについてはまだ説明をされていないものと承知をしているところです。
これ、衆議院でもたしか委員の方から御指摘ありましたけれども、今回の経営再建計画が雇用やサプライチェーンに与える影響について、今後ともしっかり注視をしてまいりたいというふうに考えています。その上で、影響を踏まえつつ、必要に応じて対応を検討してまいりたいと考えているところです。
○岩渕友君 前段に質問をした、かつて政府がこの事業再構築計画を認めてきたということがリストラの後押ししてきたということについてはどう認識されていますか。
○政府参考人(藤木俊光君) 二〇〇一年の話だと思いますが、事業再構築計画が認定されたということでございますが、当時の産活法に基づく事業再構築計画に関しましては、企業が自らの中核的事業に対して経営資源を重点投入して、それによって企業全体の生産性向上を図るということを目的とした計画であると、そういった計画について認定を行ったということでございまして、何らか従業員の解雇を後押しするというような趣旨のものではないということでございます。
○岩渕友君 五月二十五日付けの東京新聞では、一面で、今回の危機は当時の延長線上にあるという日産OBの声を紹介しているんですね。
五月三十日付けのしんぶん赤旗が、日産倒産の街ということで、二〇〇四年に完全閉鎖された村山工場の跡地がある武蔵村山市で取材した内容を報じているんです。工場の跡地の利用が進んだのは市や民間企業が土地を所有する北側のほんの一部だけで、下請企業や関連企業の撤退が相次いで、飲食店の多くが廃業、理容室やタクシーの客が減って、地域経済への影響は大きかったというんですね。また、自治体の財政にもマイナスの影響を与えています。
今回、閉鎖が検討されていると報道されている湘南工場は約千八百人、追浜工場では約三千六百人の労働者が働いています、五千人以上ですね。神奈川県内には千七百社を超える関連企業があるというわけです。だからこそ、黒岩知事が、県民も不安に思っていると、工場の閉鎖は取りやめてほしいと日産に直接伝えたというわけですよね。関係自治体の首長からも懸念の声が上がっていると。それだけ労働者や地域経済への影響が大きいということなんですよ。
衆議院で我が党の辰巳議員が、下請企業への社会的責任を果たさせるように、直接大臣から日産に働きかけるべきじゃないかというふうに求めました。二〇〇〇年二月の衆議院の予算委員会で、日産の問題について我が党の議員が追及したことを受けて、当時の深谷通産大臣は、日産自動車に対して十分な配慮をするようにと指示をしたということなんですね。
大臣は必要に応じて対応を検討すると答弁しているんですけど、検討じゃなくて、これ働きかけるべきじゃないでしょうか。
○国務大臣(武藤容治君) ちょっと先ほどの答弁の繰り返しになっちゃいますけれども、現時点でまだどこの工場を閉鎖するとかいうことは明示されておりません。
そういう中で、関係自治体に対しても何も決まっていないという説明を行っているものと承知をしていますので、今回、経営再建計画が雇用やサプライチェーンに与える影響も踏まえながら、しっかり今後も注視してまいりたいと思いますし、その影響を踏まえて必要な、応じて対応を検討してまいりたいというふうに考えています。
○岩渕友君 それでは自治体や労働者の不安払拭できないですよ。地域の住民の人たちの不安払拭できないですよ。だって、もう黒岩知事は懸念示しているわけですから、日産にも直接伝えているわけですから。これ、大臣がやっぱり働きかけるべきだと思うんですね。
日産自動車の事実上のティア1である米買収ファンドのKKR傘下の自動車部品大手のマレリホールディングスについて、二〇二二年に私的整理を進めようとしたけれども、債権者の同意が得られずに、私的整理が成立せずに、法的整理をして元本の返済を猶予されてきました。ところが、二〇二四年十二月末に始まるはずだった返済ができずに、その後も返済猶予となっています。
アメリカのファンドであるSVPなどが追加融資を行って、自らの債権回収を確実にしようとすると、そういう姿勢に日本の銀行が反発をしているというふうに報道もされています。五月二十六日に私的整理を協議するための集会が開催をされたと、インドのマザーサン・グループによる株式取得のスキームが提案をされたというふうに報道をされています。
本制度があればマレリに適用された可能性があると思うんですけれども、その場合に、SVPのような海外の投資ファンドの金融債権も対象となるのでしょうか。
○政府参考人(藤木俊光君) まず、御答弁申し上げる前に、個別の事案でございますとか個別の企業についてこの場で申し述べることは差し控えたいと思います。
その上で、金融機関等ということにつきまして、これは法律で規定をしているところでございますが、この中には、例えば日本に支店を有する外国銀行を対象となる金融機関に含めているというところでございます。
また、本法律案におきまして、その範囲につきまして、貸付け等の信用の供与を行う事業者として経済産業省令で定めるということになってございますので、この法律案の対象としてどのようなものを入れていくのか、更に具体的に検討をして、実効性のある制度設計を今後行ってまいりたいと思っております。
○岩渕友君 海外ファンドの日本企業の買収は、二〇二四年、過去最多になっているんですね。悪質な投資ファンドは、労働組合の解体だとか労働者の解雇や労働条件の切下げを行うこと、企業価値イコール株、株価最優先を特徴としています。
大臣に伺いますが、本法案で悪質な投資ファンドから労働者を守る措置必要じゃないでしょうか。
○国務大臣(武藤容治君) この制度におきましては、公正中立な第三者機関が債務調整の必要性、決議成立の見込み等を確認すること、そして対象債権者集会において債権額の四分の三以上の同意を得ることが必要であること、また決議の後に裁判所が手続の公平性や法令違反がないか等を審査すること等を通じながら、複層的に多数決濫用の防止措置を設けていることから、本制度を悪用するような事案は相当程度、相当程度抑えられるものと認識をしているところです。
また、金融庁の監督指針においては、メインバンクはその貸出先に対して丁寧に対話を行った上で実情に応じた支援に積極的に取り組んでいくこと等が求められているところであります。
こうしたことを踏まえれば、事業の再建による長期的な利益ではなく、事業の切り売りによる短期的な利益を優先する計画に多数の債権者の賛同を得ることは考えづらいと認識しているところであります。
その上で、経済実態の進展ですとか、裁判実務の積み重ね等も踏まえながら、制度の濫用防止についても不断の検証を続けてまいりたいと考えているところです。
○岩渕友君 日本がファンド天国と言われる一方で、EUでは労働者保護を中心としたファンド規制が行われているんです。悪質な投資ファンドから労働者を守る措置が必要です。
最後に、自社株買いについて質問をします。
企業価値を上げるために、一九九〇年代から商法改正などが行われて、二〇〇六年に自社株買いの完全解禁が行われました。
資料一を見ていただきたいんですけど、日本の上場企業が、二〇二四年度自社株買いの合計額、約十九兆円に上っていると。前年度と比べるとほぼ倍増になっています。
資料の二、見ていただきたいんですが、自社株買いの上位企業は名立たる大企業ばかりで、直近の二〇二四年度見ると、本田技研工業、トヨタ自動車、リクルートホールディングスは一兆円超えています。
資料の三、見ていただいて、自社株買いの額が増えるのに伴って株主への配当も増えています。配当と自社株買いで二〇二四年には五十兆円を超す株主還元行われたというふうに見られています。
五月三十日に経済産業省の産業構造審議会の有識者会議の報告でこの自社株買いについて触れて、株主還元だけでは十分な企業価値向上を実現できるとは限らないというふうに書きました。先日、予算委員会で我が党の小池議員が総理に、自社株買いに対する規制、企業が目先の短期的な利益を追求するのではなく、内部留保を投資や賃上げに還元するような仕組みを真剣に考えるべきじゃないかというふうに質問をしたら、総理は御指摘のとおりだというふうに答弁したんですね。
そこで大臣に伺うんですが、この自社株買いに対する規制、企業が目先の短期的な利益を追求するんじゃなくて、内部留保を投資や賃上げに還元するような仕組み必要だと思いますが、どんな仕組み考えているでしょうか。
○国務大臣(武藤容治君) 自社株の関係の御質問というふうに考えさせていただきます。
おっしゃられる委員会ですけど、先月三十日ですけれども、産業構造審議会価値創造経営小委員会の中間報告を公表いたしました。その中では、本小委員会での議論を踏まえ、自社株買いや配当といった株主還元は企業価値の向上に一定の役割を果たしてきた一方で、成長投資の機会が潤沢にあるならば必ずしも株主還元を優先すべきではないと企業経営者が認識することが重要であるとしているところです。
経済産業省としては、この中間報告を踏まえ、積極的な成長投資や賃上げ等を後押しする施策を進めることで、企業が成長投資と株主還元の適切な優先順位を付けられる事業環境を整備したいと、整備してまいりたいと考えているところです。
○岩渕友君 内部留保を賃上げや設備投資に還元する仕組み、これしっかり検討していただきたいということを求めて、質問を終わります。
─────────────
○委員長(牧山ひろえ君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
これより討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
○岩渕友君 私は、日本共産党を代表して、いわゆる早期事業再生法案に反対の討論を行います。
反対理由の第一は、労働者保護が制度上担保されず、新たなリストラ促進法となるものだからです。
事業再生計画には人員削減や労働条件切下げが含まれ得るにもかかわらず、審議において各会派から相次いだ懸念に対して運用面で手当てすると答弁するのみです。
海外の類似制度では労働者保護が担保されている一方、本法案及び衆議院での修正条文では制度上の担保は全くされていません。労働者に大きな影響が出る法案と分かっていながら、前提となる経産省小委員会に労働団体などを一人も入れず、海外の類似制度を意図的に隠した資料を作成するなど、経産省の姿勢は労働者を無視していると言わざるを得ません。このような状況にもかかわらず、見直し規定には年限もない恒久法です。労働者をないがしろにすることは断じて容認できません。
反対理由の第二は、悪質な投資ファンドによる悪用を排除する担保がないからです。
企業価値を株価最優先とし、短期的利益を求め、支配下に置いた企業の資産を売却する、さらに、労働組合解体やリストラ等を露骨に行う事案が頻発しているにもかかわらず、日本は欧州に比べて極めて脆弱なファンド規制しかなく、労働者保護は放置されたままです。こうした下で、労働者、地域を踏みにじる企業買収、企業壊しは許せません。
反対理由の第三は、前段となる内閣官房分科会では、中小企業、地方の企業が物すごい勢いで交代しなければならない、退出、廃業するか、買収、集約されないと進まない、低生産性企業の買収は私的整理をかませないと起こらない、多数決による私的整理はとにかく早く成立させてほしいなどという驚くべき中小企業淘汰論が堂々と議論されました。新陳代謝機能の強化が法案の提出背景としてうたわれており、許容できません。
経産省は、一九九九年の日産のカルロス・ゴーン氏による大リストラ計画を産業活力再生法で認定し、支援しました。その後も大企業のリストラ、人減らしを支援することで株主資本主義、株価資本主義を推し進め、多国籍企業の競争力強化を図る一方、国民の暮らしや雇用を破壊してきたことに何の反省もありません。現在も日産で二万人の大リストラが計画される中、本法案はこれまでより簡易な手続で迅速にリストラを実行できるものであり、看過できません。
以上述べて、反対討論とします。
