農林中央金庫法改定案が24日の参院本会議で可決、成立しました。日本共産党は反対しました。岩渕友議員は23日の参院農林水産委員会で、改定案は大規模な農外事業者などのニーズに応えるためのもので、現場の深刻な実態と乖離(かいり)していると批判しました。
岩渕氏は「農林中金は、組合員の協同を基礎とし、組合内での調達、運用が中心であり、単協で発生した資金の過不足を調整する補完的役割を果たすもの」だと指摘しました。
しかし、総資産107兆円のうち農家への貸し出しは2割にすぎず、農林中金への預け金は48兆円で、リスクマネーに投資する異常な事態が進行しています。岩渕氏は「豊富な資金を食品産業の海外展開など政府が思い描く大規模な資金ニーズに活用するものだ」と追及。鈴木憲和農水相は「国内マーケットが限られているもので、海外展開も見据えることが大事だ」と強弁しました。
岩渕氏は「現場では採算が取れない、借りたくても借りられないのが実態だ。農林中金をゆがんだ状態にしてきたのは農政全体の問題だ」と批判し、日本の農業再生にこそ農林中金の資金が注げるような農政に転換すべきだと強調しました。
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221-参-農林水産委員会-007号 2026年04月23日(未定稿)
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
今日は、主に農林中央金庫法の改正案について、農林中央金庫法に定められたそもそもの農林中金の役割、目的に照らしてどうかということを中心に質問をしていきたいというふうに思います。
初めに、一般の金融機関と異なる農林中金の役割、目的について確認をいたします。
○政府参考人(小林大樹君) お答え申し上げます。
農林中金につきましては、この農林中央金庫法第一条に目的が規定されてございます。目的につきましては、「農業協同組合、森林組合、漁業協同組合その他の農林水産業者の協同組織を基盤とする金融機関としてこれらの協同組織のために金融の円滑を図ることにより、農林水産業の発展に寄与し、もって国民経済の発展に資することを目的とする。」ということが規定されてございまして、農林中金におきましては、この目的に沿って、農協から資金を預かってそれを運用し、その収益をまた農協等に還元すると、こういった役割を担っているところでございます。
○岩渕友君 元々、農協系の金融事業は、戦前、農民が高利貸しに苦しめられたような悲劇が起きないよう、農民同士の助け合いによって必要な資金を相互に融通するという理念で始まりました。戦後は、組合員の協同を基礎として組合内での調達、運用が中心であり、信連や農林中金は単協で発生した資金の過不足を調整する補完的役割を果たすものと位置付けられたものです。
二五年四月一日現在の農林中金の運用資産は八十三・五兆円です。その原資となっている組合員の貯金は、百七・二兆円と巨額になっているわけですよね。農協の預貯金残高は三大メガバンクなどと比べても大きいということが分かります。これだけの額がどのようにして積み上がったのでしょうか。
○政府参考人(小林大樹君) お答え申し上げます。
この農協への貯金につきましては、例えば農産物の販売代金を始めとしまして、様々な形でこの農協の組合員の方々から預けられた資金、こういったものが中心となって積み上がったものと認識してございます。
○岩渕友君 過去の農林中金の調査結果を見ると、農協貯金額の内訳として、六〇年代は農業収入が五割前後を占めていましたけれども、九〇年代に入ると一割前後に低下をして、逆に、農地の売却代金や農外収入、勤労収入だったり家賃収入だったり年金などが増えて大半を占めるようになったというふうにあるんですね。つまり、農業の縮小や切捨てと引換えに巨大化したゆがんだ構造になっているということです。
これだけ積み上がっている預貯金がどのように使われているのでしょうか。農協、信連、それぞれの貯金に対する貸出金の比率と、貯金総額のうち農林中金に預けた金額がどのようになっているか、直近の状況について確認をします。
○政府参考人(小林大樹君) お答え申し上げます。
貯金に対する貸出しの割合であります貯貸率につきましては、令和七年の三月末時点で、農協では二二・八%、信連では一〇・一%となってございます。また、農協、信連から農林中央金庫への預け金につきましては、令和七年三月末現在で四十八・二兆円となってございます。
○岩渕友君 今確認をしたとおりです。
七〇年代の末には、農協の貯貸率は五割を超えていたというふうに聞いています。農林中金には巨額の資産が積み上がっていますけれども、農林漁業に従事する人が減り続け、農協の数も信連の数も減り続けています。この間の農政によって農業が衰退をして、本来貸し出す先の農業者が減り続けているというのが実態です。その結果、農業向けの貸出しは困難な状況となって、一方、二十五年前の農林中金法改正によって可能となった会員以外の業種限定のない貸出しが増えていて、農業とは直接関係のないリスクマネーに投資せざるを得ない、こういう状況になっているという異常な事態が進行しているということだと思うんですね。
今回の法改正で、現在は任意業務とされている会員の構成員向けの融資を必須業務に追加するというふうになっています。これは、やらないといけない義務的な業務にするということなのかと。
何でこんなことを聞いているのかというと、これ絶対に貸出ししなくちゃいけないのかとか、例えばどこにも融資しないというようなことが許されないのかとか捉えられていて、でも、どこに融資をするかということは、これ農林中金が決めることだというふうに思うんですよ。そういう問題意識があるから聞いているんですけれども、これはいかがでしょうか。
○政府参考人(小林大樹君) お答え申し上げます。
今回の法改正では、会員の構成員である農林水産業者向けの融資につきまして、農林中金のこの必須業務として位置付けるということでございます。これは何を意味するかということなんですけれども、農林中金がこの農林水産業者向けの融資を業務として営むと、こういうことを義務付けるということを意味しております。
これは一方で、個別のこの融資案件につきましては、この融資を実施するか否か、こういった判断はあくまでも農林中金が行うものでありまして、この今回の法改正によって、例えば特定の事業にここに融資することを義務付けるとか、こういったことを国が農林中金に強制できると、こういうことにはならないというふうに考えてございます。
○岩渕友君 そもそも、どんな業務に融資をするか、出資をするかというのは農協の判断であり、やるかやらないかというのは農協や農林中金が判断をすることだということです。
今回の法改正の直接の発端は、農林中金が二四年度決算で約一・八兆円の赤字を計上したということから、農水省が有識者検証会を開催をして、結論を法改正に反映をしたというものです。これだけ巨額の赤字を計上したということは問題なんですけれども、国費の投入などをせずに自分たちで解決しているんじゃないでしょうか。
○政府参考人(小林大樹君) お答え申し上げます。
御指摘のとおり、農林中央金庫は令和六年度決算におきまして一・八兆円の純損失を計上したということでございますが、これに関して公的資金の投入といったものは一切行われているわけではありません。
○岩渕友君 自前で解決しているというんでしょうかね、ということになるんですよね。
それで、次はちょっと大臣にお伺いをしたいと思うんですけれども、この法案の衆議院の質疑で、大臣が、今回の改正を通じて日本の農業のどの分野をどういうふうに強化していきたいのかというふうに質問をされて、こんなふうに答えているんですね。気候変動や温暖化の中で災害が増えていく、そういう中でも食料供給をしっかり担うために、フードテック、ここへの投資が欠かせない、植物工場や陸上養殖、外食含め、国内外に大きく展開していく、これをいかに金融面で支えていくかというのが今回の法改正の一番の趣旨かと思う、金融を通じて、食の分野が日本の成長を支える、そういう柱になれるように、未来をつくれるように努力する、こういう答弁なんですね。
これ、大臣の答弁は、協同組合金融の自治に踏み込むことになるんじゃないかというふうに思うんですね。最初に農林中金の目的を確認しましたけれども、この協同組合の理念からいって、農林中金、農協が決めることなんじゃないでしょうか。いかがですか。
○国務大臣(鈴木憲和君) 今、岩渕先生からの私のこの衆議院の委員会での答弁は、今のところだけじゃなくて、その前にももっと大事なことを言っていまして、これ要するに、日本は人口が減る中においても食料供給力を上げていく、このことに尽きていきます、尽きていくんだと思っていますと、特に農業の分野では人が減るわけですから、その中で担い手にどんどん生産が集中をしていく、そうすると、規模拡大もしなければならないし、設備投資も必要になるので、そういうところにもです、そういうところにまずはしっかりと資金的な手当てがされていくということが基本中の基本だというふうに思っています。
そして、それと同時に、この農林中央金庫法の第一条の目的に、農林水産業の発展に寄与し、もって国民経済の発展に資するというふうに書いてあるわけですから、そこの、何というか、フードテックも含めて、この要するに農林水産業の発展に寄与する分野にしっかりと大規模な資金需要が必要になってまいりますので、それに対する、これまで以上の融資、出資に取り組んでいただきたいというふうに考えております。
ちなみに、その特定の何か、個別の企業の何かとか、そういうことについて私の方から農林中金側に何か介入をするということはあり得ませんし、それ自体は、個別の案件については、当然これは民間金融機関である農林中金が判断していくものだというふうに考えております。
○岩渕友君 農協であるとか農林中金が自分たちで決めると、そして自分たちでやることだということなんですよね。
それで、農林中金の現在の農林水産業向けの貸出額、農林水産業者や食農分野を支える企業などへの出資額が総資産に占める割合が非常に低い現在でも、海外も含め、大企業との共同出資や融資の事業を展開しています。例えば、農作業の自動化などの事業への投資を進める米国のアグファンダーというところがあるんですけれども、このアグファンダーに日本の金融機関で初の出資契約を締結しているんですね。こうした投融資は、何千万円もする農機具の維持や更新に苦しむ現場の農林漁業者の実態と余りに懸け離れているんじゃないのかなというふうに思うんですね。
国内外の農外資本が進める大規模事業への投融資は、農協の組合員、地域の生産者、事業者から収奪し、競合するような事業ではないでしょうか。大臣、いかがですか。
○国務大臣(鈴木憲和君) この農林中金が、アメリカの食農ベンチャーキャピタルファンドであるアグファンダー・ファンド・オフ・フォーに出資を行っていることは承知をしております。
その上で、個別の、先ほども私、先生からも御指摘いただいて申し上げておりますが、個別の融資、出資の判断は民間金融機関である農林中金が行うものであり、農林水産省が介入するものでは全くありません。なお、農林中金によるこのファンドへの出資については、海外のフードテック領域における最先端の動向を把握するとともに、ファンド投資先企業と農林中金の取引先の生産者や食品関連企業との事業連携を進めることを狙いとして行われたものというふうに承知をしておりますので、結果として、日本の農林水産業の発展に寄与するものとなっているというふうに考えております。
○岩渕友君 ちょっと現場の実態紹介したいなというふうに思うんですけれども、北海道内の農協職員の方から、経営がいい酪農家、厳しい酪農家の二極化が加速をしていて、厳しい経営は借入れでしのぐしかない、国の支援策なども受けることができず、先行きが見通せない中、収支が合わず、財産を食い潰すよりはと離農を決断するケースが少なくない、こういう実態が出されているんですね。けれども、借入れでしのぐしかないのに、借りようとしても、その採算の見通しがないといって借りられないようなことが多数起きているんですよね。こうした現場の厳しい実態とやっぱり乖離しているんじゃないかなというふうに思うんですよね。
それで、外部理事の登用についても、農林漁業者のニーズではなくて、農業分野の資金ニーズに応えるもので、現場の実態とは乖離した投融資を加速させるということになるんじゃないでしょうか。
○政府参考人(小林大樹君) お答え申し上げます。
まず、今回の農林中央金庫の外部理事の登用でございますけれども、何度か出ておりますように、令和六年度に一・八兆円という大きな損失を発生させたということが発端でございます。ここは、資産、市場運用の話であったわけでございまして、そういうことを踏まえて有識者検討会でも原因検証とかをやってきたわけでございます。
この有識者検討会においては、農林中央金庫は、理事全員が職員出身となっているために同質的で、専門性の高い外部の理事の意見を聞く体制が必要ではないかとか、農林中金においても専門的な知見を有する者を非常勤の外部理事として登用することができれば、多様な視点が確保されることによってガバナンスが強化され、この市場運用の組織体制の強化につながるのではないかと、こういった指摘があったことを踏まえて、ガバナンスを強化することを狙いとして行われるものであるというふうには理解してございます。
今回の改正では、法改正では、農林中央金庫におきましてこういった外部理事の登用が可能となるように、外部理事の兼職、兼業の、外部理事を兼職、兼業規制の対象から外すといった措置を講ずるものでございます。
○岩渕友君 農業者向けの融資、出資ということであれば、外部人材ということじゃなくて、農協の中にこそ詳しい方たちたくさんいらっしゃるわけですよね。
衆議院の質疑で大臣が、新たに設置した財務戦略委員会に外部有識者も招聘し、経営判断に当たって多様な視点を確保することなど、既にスタートを切られていると認識しているというふうに答弁されているんですね。
今回の法改正によって外部人材の登用を進めるということは、農林漁業者の資金ニーズではないところを強化する趣旨にほかならないというふうに思うんですね。
衆議院の質疑では、農林中金が融資先を増やすようなプロジェクトを政府として取り組んでいく考えはないかというふうに問われて、大臣が、国内は人口が減るので、農林水産業、食品産業の持続的な発展を図るためには、成長する海外からの稼ぎを増やしていくことが不可欠、輸出だけでなく食品産業の海外展開に取り組むことにしたところ、食文化産業振興ワーキンググループをつくって食品産業の海外展開支援策を現在検討していると答弁しているんですね。
また、四月十日に開催をされた日本の食輸出一万者支援プログラムのキックオフ会合で大臣が、将来的にはマクドナルドやスターバックスのように国際的に展開される外食チェーンを目指して必要な支援策を考えたいというふうに挨拶をされているんです。
これでは、農林中金の豊富な資金を食品産業の海外展開など政府が思い描く大規模な資金ニーズに活用するということ、なるんじゃないかと。現場で、機械の更新できないと、離農が進んでいるような状況で、これやっぱり現場の実態と乖離しているんじゃないかと思うんですけど、大臣、いかがですか。
○国務大臣(鈴木憲和君) 岩渕先生から、先ほどから、現場の感覚とこの今回の法改正の方向がちょっと乖離しているという御指摘なんですけど、これ、もうちょっと大きい視点で見ると決して私は乖離しているとは思っておりませんで、やっぱり、先ほど、要するに、やめざるを得ないというふうな判断をされている方々もですね、やっぱりそもそもの根本的な問題は何かといえば、日本が、要するにこの人口減少も含めて国内マーケットがなかなか胃袋は限られているんで大きくならない中で、ただ、実際は、酪農にしてもですよ、牛乳にしても、生産力はもっとつくろうと思ったらつくれるじゃないですか。だけれども、やっぱり国内マーケットが十分にないものだから、国内マーケットだけ見ているとやっぱり価格も上がりづらいし、なかなかその結果採算ベースに乗らなくてやめざるを得ないという方々が出てくるという、これが一番根本的な私は問題だと思うんですね。
米についてはもうまさにそういうことだと思っていますし、ですから、やっぱり私たちはこれから、要するに日本は、日本人が食べたいものを何でもかんでも全部、小麦も含めて全て一〇〇%どこまで作れるかといったら、それは得手不得手が当然ありますから、作れるものはもっと頑張って作って稼いでいくし、作れないものはしようがないから輸入するということにならざるを得ないというようなことで、全体として食料供給力をちゃんと上げていくということが海外展開も見据えると大事だというふうに思っておりますので、それが結果として日本の食料供給力のアップに私はつながるんだというふうに思っておりますので、是非、現場の皆さんとの乖離が少しでも御理解いただけるように私は努力をさせていただきたいと思います。
○岩渕友君 私はそうかなというふうに思うんですよね。やっぱり農村や中山間地の実態と巨額の資金を比べれば、余りに違い過ぎるってことだと思うんですよ。農林中金をゆがんだ状態にしてきたのは、やっぱり農政全体の問題だと思うんですね。
日本農業の再生にこそ、農林中金の資金が注げるような農政に転換するべきだということを指摘して、質問を終わります。
○委員長(藤木眞也君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。
これより両案について討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
○岩渕友君 私は、日本共産党を代表して、農業近代化資金融通法の一部改正案に賛成、農林中央金庫法の一部改正案には反対の立場から討論を行います。
農林中央金庫法改正案は、農林水産業への円滑な出資、融資を促進するためとして、目的及び業務の見直しで、構成員向けの融資等を必須業務化するとしています。本来、どんな事業に融資するかは農林中金が自ら決めることであり、全く必要のない改正です。そもそも農協系金融事業は、農民同士の助け合いによって必要な資金を相互に融通するという理念で始まったもので、組合員の協同を基礎とし、組合内での調達、運用が中心であり、農林中金は単協で発生した資金の過不足を調整する補完的役割を果たすものと位置付けられてきました。
しかしながら、際限のない輸入自由化と販売価格の低下、農家への支援切下げによって、農家、農村は疲弊し、生産基盤が弱体化してきた結果、現在の農林中金は、本来貸し出す先の農業者は減り続け、農業とは直接関係のないリスクマネーに投資せざるを得ない状況という極めてゆがんだ構造にあります。
農林中金は、既に、大規模な農業、食料関連の事業に投融資を行っていますが、この改正により、政府が主導する海外からの稼ぎを増やしていく、食品産業を海外展開するといった事業への投融資を更に促すことになります。
また、農民は今、余りに高額な農機具の維持更新費用に苦しんでいますが、この改正により、農外企業が農林中金の資金を使って農村に入り込み、アグリビジネスと称して高額な機器、資材などを売り付けるような事態も一層進みかねません。
一方、農林漁業の現場では、採算が取れない、借りたくても借りられない状況に陥っています。今回の改正は、農外事業者など大規模な事業者のニーズに応えるためのものであり、現場の深刻な実態や要求と余りにも乖離したものです。農林中金をゆがんだ状態にしてきたのは、この間の農政全体の問題です。
どんな地域でも農業ができるよう、地域の農林漁業のニーズを喚起する日本農業の再生にこそ、農林中金の資金が注げる農政に転換すべきだということを指摘して、反対討論とします。