参院国民生活・経済に関する調査会は12日、地域活性化の取り組みと地域間格差の現状と課題について参考人質疑を行いました。
岩渕友議員は「原発事故を経験した日本こそ再生可能エネルギーへの転換が必要ではないか」と質問。明治大学の小田切徳美教授は「地元の中小企業の仕事や雇用に結びつき、地域に新たな収入が生まれる。農山村でこそ再エネの意義は大きい」と答えました。
徳島県の飯泉嘉門知事は、昨年9月の県議会で日本初の「脱炭素社会づくり」の条例を制定したと紹介。「国に対して、再エネが活用できるよう制度改正を要望していく」と述べました。
岩渕氏が地域経済の要である中小・小規模事業者への支援の重要性について尋ねたのに対し、飯泉氏は「99%の中小企業のうち、地方では99.9%が小規模事業者。地産地消の担い手である小規模事業者支援に特化した条例改正を行った」と応じました。
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○参考人(小田切徳美君) ありがとうございます。明治大学の小田切でございます。
このような機会をいただきまして、大変ありがとうございます。
テーマであります地域活性化の取組及び地域間格差の現状と課題等に関わって、特に田園回帰という新しい動きについて少しお話をさせていただきたいと思います。この動き自体がこの活性化あるいは地域間格差について大いに関わるというふうに私自身思っております。(資料映写)
まず、田園回帰という言葉なんですが、この言葉は、政府文書でいえば今から二年前の食料・農業・農村白書の中で取り上げられております、特集の中で取り上げられております。御存じのようにこの食料・農業・農村白書は閣議決定文書でもございまして、そういう文書の中でこういう言葉が出てきたというのが一つの特徴でございます。
この特集の中に取り上げられているのが下の方にあります内閣府の世論調査であります。細かく見ることは省略したいと思いますが、非常に印象的な数字が出ております。
約千八百ぐらいのサンプルサイズだというふうに記憶しておりますが、それぞれ男性、女性、世代別に、あなたは都市住民、あなたは農山漁村への定住願望がありますかという、そんなことを聞いておりますが、イエスというふうに回答している者、これを見ていきますと、二〇一四年の数字ですが、二十代の男性四七・四%という、こういう数字であります。つまり、都市に住む若者の半分近くが将来的には農山漁村に移住したいという、そんな思いを強めているという、そんな傾向がはっきり出てきております。
もう一点注目したいのは、実は女性の三十代、四十代であります。絶対的な割合は低いんですが、実は伸びのポイントとしては女性の三十代、四十代が一番大きくなっております。恐らく一番現実的な志向性を持っている世代だというふうに思いますが、その世代でもこういった動きが出てきているというのが一つの特徴です。
今申し上げたのは二〇一四年度の調査だったんですが、実は直近に総務省で同じような調査をさせていただきました。私が座長を担当させていただきました「田園回帰」に関する調査研究会、これが中間報告をこの三月に行いましたが、これはインターネット調査で三千のサンプルを持っております。
ここで、御覧のように、男性の世代、女性の世代別にそれぞれ見ておりますが、同じような傾向が出ていると同時に、少し違うのが、実は二十代と三十代がほぼ並び始めております。この図でいえば緑の部分のところまで、ここが移住願望が何がしかの形であるということなんですが、男性の二十代、三十代、これ三つのカテゴリーを足すと男性二十代が四三・八となります。三十代が四三・六%というふうになって、ほとんど並んでいるというのが一つの特徴であります。前には見られなかった傾向、つまり、田園回帰の願望が若手を中心に、そして三十代にまで広がり始めているというのが一つの特徴であります。
上から三番目に小さな数字で書いておりますが、全体として見れば、調査した対象の三千強のうち三一%、三〇・六%が移住願望を持っておりますが、さらにその方々にどうしたら移住するのかというふうに聞きましたところ、条件が整えばすぐにでもというのがこの中で一六・一%あります。つまり、全体の調査対象の五%が条件があればすぐにでも移住したいという、こういう数字が出ているというのも一つの特徴であります。
さて、それではどういうところに移住しているのかということなんですが、島根県の地図がここにあります。このデータは、藤山さんという田園回帰一%戦略を唱えて大変有名な研究者ですが、この藤山さんが島根県の一つ一つの地域、この一つ一つの地域は小学校区に相当しますが、その中で二〇〇九年から一四年、どのように三十代の女性が動いたのかというのを見ております。
実は、赤い部分が増加であります。全体の島根県の二百二十七エリアある中で九十六エリア、ここで三十代の女性が現に増加しているという、こういう傾向が出ているということであります。
なぜ三十代の女性に注目したのか。これはもちろん、先ほど見たように、この世代が言わば最も現実的な動きをするという、そういうこともありますが、先生方御存じの例の増田レポートであります。増田レポートは、二十代、三十代の女性が将来半減するということをもって消滅可能性を論じました。ところが、現実にこういうふうに細かく見ていくと、つまり市町村単位でなく見ていくと増加しているところが出てきているという、このことが初めて明らかになったというふうに思います。
右は鳥取県、隣の鳥取県の数字を見ておりますが、ここは地域分布というよりも数そのものを御覧いただきたいと思いますが、表の中に、二〇一一年が五百四人、これは移住者の実数でございますが、二〇一五年、最も新しいデータですが、約二千人と四倍になっている数字も確認することができます。
それでは、この移住者、全国的にどういうふうな数なのか。残念ながら全国データはございません。この全国データがない中で、私どもの大学とNHKと毎日新聞で合同調査を二回ほど取っております。その結果、二〇一四年度の数字を御紹介させていただくと、全国で約一万人の移住者がいるという、そのことが確認されております。
ただ、ここには最狭義というふうに書いておりますが、ここでの移住者は県境をまたいでいることが条件であります。あるいは、都道府県や市町村の何がしかのあっせん窓口を経ていることが条件であります。全国を比較するためにこういうふうな制限を付けざるを得なかったということですが、そういう意味では恐らくこの一万二千人の数倍はいるというふうに思いますが、見ていただきたいのは、むしろ青いグラフのトレンドです。これで見ていただきますように、移住者はこの五年間で四倍に増加しているという、こんな傾向が出ております。もちろん、これがそのままのトレンドで伸びていくというふうには思いませんが、ただし単純延長すれば数万人規模になるという、そのことが予想されるということであります。
ただ、この調査の中で、私ども大変驚いたんですが、明らかになったのは地域間格差の存在であります。四十七都道府県のうち、東京と大阪は調査しておりませんので四十五道府県が対象なんですが、下の表にございますように、二〇一四年度、そのトップファイブを掲げますと、岡山、鳥取、長野、島根、岐阜、こんなところが出てくるわけですが、この五県の合計で実は全国の四八%を占めているという、こういう状況になっております。つまり、残りの五二%で四十県がひしめいているという、こういうふうな格差が出ているというのが一つのポイントであります。
それでは、どういう特徴が見られるのか、私どもの実態調査結果を御披露させていただきたいと思います。
一つは、二十代、三十代が中心であることも明らかになっています。いわゆる団塊の世代の移住が予想され、期待されておりましたが、それは期待ほどは多くなかったというのが実態であります。
それから二番目は、何といっても女性割合が上昇しております。かつては単身の男性が主な移住者だったわけですが、最近ではファミリー世代が移住している、したがって、必然的に女性の割合も増えているという特徴もあります。
そして三番目、地域振興上大変重要な論点ですが、移住、これは一般にはIターン者を想定されるというふうに思いますが、Iターン者が増えているところでは地元出身のUターン者が増えるという、こういうある種の傾向があることが分かり始めております。
なぜこのことを強調するのかと申し上げますと、実は、移住施策、地元からは必ずしも評判がいいものではありません。なぜよそ者だけを優遇するのかという、そういう議論は実は市町村の住民の中からしばしば出てくるわけなんですが、そうではなく、こういう方々が来ることによってその地域出身の息子や娘が帰ってくる可能性が高まるという、そんな傾向が明らかになっております。
そして、こういった特徴の延長線上に、私どもが孫ターンというふうに呼んでいる、一世代飛ばしで帰ってくる。つまり、息子、娘はもう東京、大阪に、そこに張り付いてしまっているけど、その子供、つまり孫が戻るという傾向が出てきておりまして、考えてみればNHKの朝ドラの「あまちゃん」がまさにそうだったわけですが、こういった傾向が実はかなり普遍的に見られる。恐らく、これは推測ですが、移住者の一割程度は孫ターンではないかという、そんなふうに私ども捉えております。
当然、こういうふうなお話をすると、先生方からの質問は、それでは彼らはどのような仕事しているのか、仕事がない中で移住が本当に成功するのかということなんですが、実はそこに新しいライフスタイルが生まれていることも見逃せないというふうに思います。
ナリワイとか、あるいは少し古い言葉ですが半農半X、あるいはドラッカーが一九九〇年代に言ったパラレルキャリア、こんな言葉で表現できるというふうに思いますが、複数の仕事を行う、こんな傾向も出てきております。夫婦移住の場合の標準型でいえば、年間六十万円、これは月当たり五万円という意味なんですが、この仕事を夫婦で五つ集めて暮らすような、そんなライフスタイル、これは貧困の上このようなライフスタイルにならざるを得ないということでは決してなくて、むしろそれを選び取っているという、自ら起業を行って、そしてNPOとして活躍するなどという、そんな傾向も見ることができます。詳しい事例は省略しますが、ここに書いたような幾つかの事例を私たちは目撃あるいは調査をしております。
こういった状況の中で、当然、従来から言われております移住をめぐるハードル、当然ハードルが存在しておりました。私ども三大ハードルというふうに言っておりますが、村、すなわちコミュニティーですが、あるいは住宅、空き家がない、そして今申し上げたような仕事がない、こういったハードルがあることは確かであります。しばしば自治体職員は、村はいつまでも閉鎖的だとか、あるいは空き家など絶対流動化しないとか、仕事がないから人など来ない、しばしば自虐的にこういうことをおっしゃっておりますが、詳しく御紹介することは省略しますが、実はこの三つのハードルが下がっているというのが実態であります。
特に、空き家が流動化しないということについては、しっかり空き家はその所有者の悩みに応えれば空き家も本来は流動化するんだという、そんなふうに言われ始めております。むしろ、空き家が流動化しないというのは農村伝説だなどという言葉さえもあって、その意味で、どのように流動化させるのかということを真剣に考えているところでは、いよいよこういう動きも出てきているということだろうと思います。
飛ばさせていただきまして、それでは課題がないのかというと、そうではありません。新たな課題が浮かび上がっております。この移住者の特徴を先ほど幾つか御紹介させていただきましたが、一言で言えば多様性です。あるいは多様化であります。ライフスタイルをめぐる多様化、あるいは世代をめぐる多様化、こういうものが明らかに出てきておりまして、この移住者の気持ちが多様化すれば、当然地域それ自体も多様化ですから、多様掛ける多様、こういうふうな状況の中で、言わばミスマッチが非常に起こりやすい状況が今生まれております。
そういう意味で、この地域と人のマッチングをどのようにするのかというのが実は非常に大きな課題となっております。
右に表がありますが、これは地域おこし協力隊の応募理由のアンケートでございますが、いろいろありますが、ここで見ていただきたいのは、実は理由が最大でも一九%、その他でも一七%という形で、非常に分散しているということであります。そういう点でも多様化を見ることができるわけであります。このミスマッチをどのように解消するのかが第一の課題でございます。
第二の課題は、移住者のライフステージに応じた支援というのが重要になってきております。
移住施策は、しばしば移住というこの瞬間に支援が集中しがちであります。ところが、移住が終わって定住に入れば、定住なりの課題があります。当然、仕事をどうするのかという課題がやはり存在しております。そして、永住段階にあれば、ここはここで課題になっておりまして、特に教育費が非常に大きな課題であります。先ほど申し上げましたように、夫婦で場合によったら三百万円でライフスタイルを楽しんでいる、そういう移住者がいて、彼らが、それでは東京に子供を出すとき、大学に出すときにはたと困ってしまう。この教育費が一つの大きな課題でありまして、現在、政府などが進めております奨学金の充実というのは確かに大きな課題であることが確認できるわけであります。
いずれにしても、移住ばかりに集中しない、言わば家族目線で、家族のライフステージに応じた支援が今後の課題となるというふうに思っております。
それでは、今日いただきました地域活性化というテーマとこの田園回帰がどういうふうに結び付くのかということをお話ししてみたいと思います。
二つの疑問から考えていきたいと思いますが、なぜ移住者は農山漁村に向かうのか、あるいはなぜ地域差は生じるのかということでございますが、これを我々に教えてくれたのが和歌山県の那智勝浦町の色川地区の皆さんです。
右側に図がありますように、実は色川地区は全住民の四五%が移住者という移住最先発地域の一つでありますが、その代表の方々は次のようなことを言っております。若者が本当にその地域を好きになったら、仕事は自分で探し、つくり出す。その地域にとって、まずは地域を磨き、魅力的にすることが重要だ。仕事がないと言う前にやるべきことがある。つまり、地域をしっかりと磨いて魅力的にすることが、実は移住が生まれて、その後に仕事は付いてくるんだ、そういった覚悟を持って若者の一部は来ているんだということを私どもに教えていただいています。
つまり、地域で今なすべきことは、何よりも地域を磨く、こちらの調査会の言葉で言うと地域活性化だということだと思います。地域を磨いて、人が輝いて、内外の人に選択されるような地域をつくる。私どもの調査によっても、人が人を呼ぶ、移住者の先輩が輝いて、それが移住者を呼び込んでいると。あるいは、今申し上げたように、地域が非常に輝いていて、こんな地域に住みたいんだということで移住が発生しているケースが非常に多いということが確認できます。
その意味で、ここに書きましたように、地域づくりと田園回帰のある種の好循環が生まれている。別の言葉で言うと、地域づくり、地域活性化なくして田園回帰なし、あるいは逆に、田園回帰なくして地域づくりなしという、こういった好循環が今生まれていることが一つのポイントだろうと思います。
もっと分かりやすく言えば、若い移住者は、前向きの人々、前向きの意識を持っている人々のところに移住してきます。別の言葉で言うと、愚痴ばっかり言っているような地域には人が入ってこないという、こういう特徴も見ることができるんだろうと思います。
話をまとめてみたいと思います。
それでは、田園回帰とは何なのか、私たちは三つの田園回帰ということを言っております。
一つは、何よりも都市から農山村に向かって新たな人口移動が起こっている、人口移動論的田園回帰であります。英語ではカウンターアーバニゼーションというふうに言いますが、既に一九七〇年代から欧米では起こっている動きでございます。現在、英国のイングランドではこの傾向がまだ続いている。地図も載せておりますが、黄色の部分がイングランドの人口減少地域でありますが、イングランド全体でこういうふうに人口減少地域と増加地域がまだら状況になっている、これがカウンターアーバニゼーションの一つの結論でございますが、日本で同じような地図を作れば過疎地域は真っ黄色という、そういう状況ですが、そうではないということが確認できます。これが言ってみれば半世紀遅れで起こっているということが一つであります。
そしてもう一つは、地域づくり論的な田園回帰、先ほど申し上げましたように、地域づくりと田園回帰が好循環を持っている。
そして、最後に先生方に是非お伝えしたいのは、このように、移住した皆さん方が、特に若い皆様方が、言わばソーシャルイノベーターという言葉を使いますが、言わば都市と農山村をつなぎ役として大きな役割を果たすという傾向が出ております。
二月に、全国町村会等の移住女子の大きなシンポジウムがありました。三人の移住女子が登壇されてお話をされたんですが、非常に印象的なのは、三人の女性が、私たちの役割は農山村と都市をつなぐことだ、異口同音におっしゃっておりました。具体的にそんな行動を彼ら、彼女は起こしております。それを我々はソーシャルイノベーターというふうに呼んで、言わば都市農村共生社会の担い手となり始めているということだろうというふうに思います。こんな傾向が出ていることを改めて確認してみたいと思います。
最後に、一点だけ付け加えてみたいと思います。
この表は、先進国の首都圏の人口傾向を見たものでございます。五十年間にわたって記しておりますが、よく言われておりますように、首都圏人口が増加しているのが日本だけでございまして、それ以外はちょうど一%内外の変化でございます。こういった傾向を改善していくためにも、先ほどの田園回帰傾向が必要であると同時に、ソーシャルイノベーターとしての若者の力というものを我々はもっと信じ、そして支援すべきだ、そのように感じております。
私の報告は以上でございます。
御清聴ありがとうございました。
○会長(川田龍平君) ありがとうございました。
次に、田村参考人にお願いいたします。田村参考人。
○参考人(田村秀君) ただいま御紹介いただきました新潟大学の田村でございます。
本日は、このような場をいただきまして誠にありがとうございます。
私の方からは、余り高尚な話というか、かなり砕けた話をさせていただこうと思っております。一応研究者ではありますが、かなりいろんな実践的なことをやっておりまして、そういう中で、地域の活性化ということについて私なりの考えもお話をさせていただければというふうに思っております。(資料映写)
ここに肩書が何か羅列しておりまして、大学で教える傍ら、後ほどお話をしますが、地方創生の関係で群馬県のみなかみ町の方に行っております。そして、ここには(予定)と書いておりますけど、実は、昨日やっと立ち上がりましたこういう食文化、こちらの関係をやっております。要は、食べ物で地域を元気にしたいということをずっとやっておりまして、その具体例をお話をさせていただきたいというふうに思っております。
このような目次でありまして、ちょっと簡単に私の紹介だけをさせていただきますと、役人やっていたんですが、霞が関ではなかなか私、落第生といいますか、研究の方が面白いということで、もう大学の方に十七年勤めております。その関係で、地方自治をやっておるんですが、どちらかというと、あちこち行きながらおいしいものを食べると。先生方の名刺いただきましたら、ああ、ここにはこういうのがありますねと大抵分かるんですが、一応大学のマネジメントもやっておりましたし、いろんなところへ行っております。本も書いたりということで、かなりやじ馬精神が旺盛な方かなというふうなことであります。
格差の問題でありますが、これについては、これまでもいろんな本で書かせていただきましたし、今回、先生方に事前に抜粋を送らせていただきました。そこにも書きましたとおり、かなり極端化している。いわゆるこの極端化というのは温暖化でよく使われる言葉ですが、勝ち組、負け組というものがかなり広がっている、しかも、その格差というものが相当大きくなってしまっているということはやはり問題だろうと。私がおります新潟でも様々な格差が顕在化しておりますし、やはり特に町村部であります。新潟県の町村会のアドバイザーもしておりますが、やはり町村長さんとか議員の方々から聞きますと、都市部以上に様々な問題が深刻化している。この点につきましては、先ほど小田切先生からもるるあったかというふうに思います。
次の話も釈迦に説法ではありますが、よく地方自治の世界で補完性の原理とか言われますが、個人ができることはまず個人がやっていくしかない、個人ができないことはコミュニティーだと。そしてまた、市町村はその町づくりであり、特に新潟におりまして感じますのは、都道府県の役割というのは、より小さな市とか町村をサポートする、そういうところに特化をしてほしいなというふうに思っております。さらに、国に関しましては、やはり地方の自主性を損なわないような形で地方の支援をすべきではないかと。もちろん、地方分権というのを進めるべきでありますが、その一方で、やはり国の支援というのも地方にいると大変必要性を感じるところであります。
ここまでは総論でありまして、私が個人的にやっております二つの仕事について少し御紹介をさせていただきたいというふうに思います。
まず、地方創生人材支援制度であります。これは国の方、内閣府の方で立ち上げまして、様々な専門家を人口五万人以下のところに派遣するという制度であります。私自身も、一期生に手を挙げまして派遣されたということであります。はっきり言いまして、大学の先生というのは非常に気楽な商売でありまして、こんなことを言っては怒られちゃうんですが、かなり自由なこともできますし、好き勝手なことを言っても楽なんですが、地方の厳しい現実を見ておりますと、やはり何かしなければという気持ちになったわけでありまして、特段この群馬県みなかみ町にはゆかりもないんですが、派遣されたと。それで、今年になりまして三年目ですが、国の制度は二年で終わることになっておりますが、みなかみの方で是非ということで、三年目も派遣されております。
この制度につきましては、どちらかというと七割ぐらいがいわゆる霞が関の官僚、若い人たちが派遣されておりますが、大学の研究者、シンクタンクの人なども派遣されていまして、実際非常に良かったことといいましては、派遣者同士がいろんな情報交換をする場ができております。やはり地域の課題というのは様々共通することもありますので、そういう中で交流が活発になり、これは元々日本版シティーマネジャー制度という形でできたものでありますが、現在、その有志で日本シティーマネジャー協会というものを立ち上げようと、このような動きも出ております。
それで、みなかみ町でありますが、一番象徴的なものとしては、この写真でありますけれども、アウトドアスポーツが大変盛んなところでございます。群馬県の北部でありまして、温泉が十八ございます。人口が二万弱でありますが、ほかの自治体同様、非常に人口減が厳しくなっております。
こちらの方は、内閣府の方で提出した実績の資料をちょっと加工したものであります。人口減もそうですし、また全国の観光地、バブルのときは大変良かったわけでありますが、その後非常に厳しくなっている。そういう中で、観光の再生ですとか農業の再生ですとか、そういう形で総合戦略というものを作りまして、具体的にはDMO、こちらの方も今取り組んでおります。また、先ほど来アウトドアということで、やはり健康づくり、それにつなげていこうということで、ヘルスツーリズムの推進ですとか、様々な活動をしております。
細かいところは省略いたしますが、こういう形で、一応大学の方も勤務しておりますが、週に一、二回、みなかみの方でまさに地方創生の仕事をさせていただいていると。そういう中でいろいろと感じるところがありますので、それについてまたいろいろお話をさせていただきたいというふうに思っております。
そこで、幾つか気付いたことがございます。町づくりとか地域活性化でよそ者の視点ということが大事だということがよく言われますが、みなかみに行きましてもそれが非常に役に立ったといいますか、やはり地元の人は、非常に地元のことをよく分かっておりますが、意外と欠けている視点というのもございます。やはり外の視点をどんどん取り入れるということが、地域の活性化につながるのかなと。
実は、これは一昨年でありますが、北陸新幹線が開通したと。当時、上越新幹線沿い、新潟県とか群馬県とかは、新幹線の数が減ってしまうんじゃないかとか、あるいはミニ新幹線になってしまうんじゃないかとか、いろんな声がありましたけれども、結果的には新幹線の数はほとんど減らなかったんですが、ちょっと新潟辺りですと所要時間が長くなったりということがあったわけですが、実は、みなかみ町というのは、新幹線、上毛高原の駅があるんですが、そこが結果的に近くなった。しかしながら、地元の人、観光業界の方がたくさんいらっしゃるんですが、ほとんど気付いていなかったということに、たまたま時刻表とか調べているうちに分かりまして、しかも平均で十一分も短縮された。これ、残念ながらJRも余り積極的にPRしていなくて、やはりこういうところはしっかり統一したキャッチフレーズでPRすべきじゃないかということで意見をさせていただきまして、改善が加えられたということであります。
そのほか、これは自治体間で今様々な連携というのが起きていますが、さいたま市が新幹線の駅のフォーラムを二〇一五年からやっているんですが、昨年、みなかみ町も、是非これは私が参加すべきではないかということで、参加してもらったものであります。
実際、町とか小さい市の新幹線の駅もあるんですが、なかなか、さいたま市とか金沢とかそういうところが、そうそうたるメンバーが入っている中で、小さいところはどうなのかなというのがあったようですけれども、規模の関係ではない、やはり意欲であろうということで、こういう取組も進めているということであります。
また、地方創生といいますか地域活性化というのはやはり連携が必要だろうということで、実際、みなかみ町、県域を越えた広域観光圏にも入っておりますし、また、市町村の枠を超えた一部事務組合の高校もありますが、こういうところの活性化などもやっております。
これも後ほどもちょっとお話をしようと思いますが、やはり活性化には高校生、場合によっては小学生、中学生の力というのが非常に今注目を集めておりまして、実際頑張っています。そういうところもみなかみでもやっているということでありまして、まさにコラボレーションの時代だろうということであります。
それと、もう一つの方でありますが、食による町づくり。
やはり地域の魅力というのは一言で何となるかということであります。私なりに考えていますのは御当地、御当地の良さ、そういうものに光を当てることが地域活性化につながるというふうに考えておりまして、実は、大きなイベントですが、B―1グランプリというものがありまして、こちらの特別審査員などを十年ほど務めております。
どうもこのイベントについてはまだ誤解があるようなんですが、これ、実は食のイベントじゃございません。いわゆる御当地グルメを通した町おこしの祭典ということでありまして、その御当地の魅力を食だけでなく様々な形でイベント会場などでPRしているということであります。
皆さん方のそれぞれの御出身のところでも様々な御当地グルメがあると思います、ギョーザだったり焼きそばだったり焼き鳥だったりと。様々なルーツありますけれども、そういう中でも最近ちょっと新しいものが、開発型が乱立している感じもありますが、むしろ元々ある地元に愛されたものを大事にすべきである、またそういうことが地域の活性化につながるんじゃないかということでこの活動をしております。
まさに食というものは古今東西、観光、交流のキラーコンテンツでありまして、非常にこのB―1の活動も活発化しております。
例えば、これは北九州で行われたときの前夜祭でありますが、各団体のまさに町おこしを自ら実践している人たちの集まりであります。そしてまた、こちらの方は、これは豊川の会場でした。本当に多くの人が駆け付けます。まさに食を通じた町おこしということで、かなり定着してきたのかなという感じがいたします。
そして、これに、特にこの写真に注目していただきたいんですが、これ青森県の十和田市の団体、バラ焼きという肉料理があるんですが、これを生かした町おこしをやっている団体であります。その団体の活動がゴールドグランプリを取ったんですが、このときは地元の高校生がまさに食づくりとか地元のPRとか大活躍をされました。そして、ここにはないんですが、その翌年に十和田市で実は次の大会があったんですが、今度は小学生とか中学生が来た人たちの案内をしたりごみを集めたりということで、まさにおもてなしをしております。
まさに地域の活性化、地方創生というのは若い人たちがどれだけ地元を好きになって地元の発信をしていくか、それが恐らくは、仮に将来東京に出てもまた地元に帰ってくるきっかけになるのではないかということで、このB―1グランプリの活動というのは非常に定着してきたわけであります。
しかしながら、それだけで、要はイベントをやるだけで本当にいいんだろうかと、いろいろ壁にも突き当たっているところもございます。こういう御当地グルメというのはまさに日本の食文化であると、これを活用することが地方創生に少なからずつながるのではないかというふうに関係者の中でいろんな議論があったわけであります。
そういう中で、こちらのB―1グランプリの関係者、旅行関係ですとJTBさんとか、マスコミの関係者など、これがいろいろと集まりまして一般社団法人日本食文化観光推進機構、大変、昨日できたまさにほやほやでありまして、これからまさに活動していくわけですが、地域食文化の発掘調査とか情報収集とかブランディング支援とか人材育成、そしてまた、食文化に我々が関心を持っていますのは単に日本人だけではないと、やはり海外の人に、インバウンドがこれだけ盛り上がっている中で、もっと日本の各地にある様々な食文化というものを外国人の人にも知ってもらいたいというようなことを考えておりまして、本来、私のような者が理事長になるのはちょっとどうかなと思ったんですが、ちょっと諸般の事情がありまして、初代の理事長になったということであります。
どのようなことを考えているか、この概念でありますけど、まさに人口減少の中で、やはり地域に住んでいる人が地元を好きになる、その一つのきっかけと。やはり食というものは、一種のソウルフードというものは、やはりこれは長い年月を掛けてつくられたものでありますし、またそういうものがいろんな発信の可能性があるだろうと。それについていろんな団体、メディアとか旅行会社とか食品メーカーとか連携しまして、食文化を生かした産業振興とか、食文化を生かした観光振興、そしてブランディングとか海外への発信ということで、なかなかそう簡単ではないかもしれませんが、やっぱり食を通じて若者の定住人口の増加ですとか地方創生の実現ということを考えているということであります。
そもそも、食文化と言ってまいりましたけれども、皆さん方御存じのように、和食がユネスコ遺産になりましたけれども、もちろん高級なものもありますけれども、ここで言っている食文化というのはむしろラーメンですとかギョーザですとかもっと庶民的なもの、もちろん高いものも否定はしませんが、そういうものを、地域に根差している、地域のまさに文化である。こちらの細かいこと書いてありますが、御当地グルメは景観であると、まさに食堂とかの風景ですとか様々な地域の資源とつながってということであります。
そこにも書いておりますが、食文化観光とは、地域食文化を体験することを目的にその土地を訪れ、地域独特の食を味わい、その食の背景にある地域ストーリーを知ることにより、その地域が本来持つ価値を体感する旅行の形態であるということで、こういうことを今後進めていきたいというふうに考えております。
ここにも書いておりますけれども、食材だったり郷土料理だったり御当地グルメ、いろんな言い方されます。私も、当初はB級グルメという言い方で本も書いたりもしましたが、ちょっと、B級と余り言ってしまうと、何か、じゃA級はどうなのかとかいろいろありまして、むしろ、そういうことではなくて、地域に根差した、御当地のもの、これ実は食だけじゃないと思います。御当地の宝をいかに磨いてそれを発信していくか、これが活性化につながるんじゃないかということで、現在、今後の展開を図るべく、様々取組を進めようということであります。
ということで、私の方からは余りアカデミックな話でもありませんで、みなかみ町での活動、そしてまた食文化観光ということについての活動の一端を御紹介させていただきました。
地方創生ということで言葉は使っておりますけれども、昨今ではもうこれは地方創生は失敗だと言い切るような有識者もいらっしゃいますけれども、やはり今やらずしていつやるんだろうかということ、そしてまた、地域の活性化というのはやはり競争していくこと、いい意味での競争をしていくことじゃないと達成できないだろうと。みんなで手をつないでというわけにはなかなかいかないのかなというふうに思います。それはまさに、競争するということと、一方で、地域が、例えば観光であれば、先ほどの雪国観光圏じゃないですが、周辺の県と連携してということ、競争と協調、このコラボレーションのバランスなんだろうと思います。
また、地方創生の中で、産官学金労言と言われまして、まさに地域の総力戦、いろんな方々、いろんなプレーヤー、そういう人たちが全て参加して地方創生、地域活性化に取り組むべきだと思います。ですから、批判している暇というのはまずないんだと思います。まさに地域で自分ができることに取り組むべきではないかというふうに思います。
また、実はB―1グランプリの各団体を見ますと、結構地方議員さんがやられていたり、あるいはそういう町おこしの団体から議員さんになったりということで、議員さんたちもプレーヤーになっている方結構いらっしゃいます。願わくば、地方議員、そしてまた国会議員の皆さん方もキープレーヤーとして頑張っていただきたいと。偉そうなことを言いましたけれども、そういう方々が実際各市や町にいらっしゃいます。我々もそういう方々と連携して、まさに食文化で地域を元気にしていきたいというふうに思っております。
雑駁になりましたが、以上で私の説明を終わらせていただきます。
○会長(川田龍平君) ありがとうございました。
次に、飯泉参考人にお願いいたします。飯泉参考人。
○参考人(飯泉嘉門君) ただいま御紹介をいただきました全国知事会地方創生対策本部副本部長、徳島県知事の飯泉嘉門でございます。
川田会長さんを始め調査会の先生方には、こうした場をお与えをいただきまして、心から感謝を申し上げたいと存じます。
それでは、紙媒体としては徳島の資料と、そして全体はスライドショーの方で進めさせていただきたいと存じます。(資料映写)
まず、今日のラインナップでありますが、地域間格差の現状と課題等という今回のテーマ、そして地方創生の必要性から全国知事会からの提言、あるいは徳島が今打ち出しております「VS東京」、そして徳島の具体的な事例について、以下御説明をさせていただきます。
まずは、今の全国の状況、どうなっているのか。大正九年から行われております国勢調査、平成二十七年度行われまして、大変ショッキングなデータが二つ出てまいりました。まず、全体としてはいよいよ日本が人口減少時代に入ったということ。また、調査開始以来一度も人口の減ったことのない大阪府が人口減少となりました。その一方で、東京を始めとする千葉、神奈川、埼玉、いわゆる東京圏は五年間で何と五十一万人も人口が増えたんですね。地方創生、まさに何とかしなければ東京一極集中の是正はあり得ないという状況になりました。
また、その中のデータを調べると、更に大きな課題が出てまいります。先ほど小田切先生の講演の中にもありましたように、都市部にいる若い皆さん方は地方に行きたい、こうした希望があるにもかかわらず、結果として大学への進学あるいは就職、これをきっかけに東京にどんどん若者が集まってしまっている。まさに若者のブラックホール東京となっているところでありまして、更なる地方創生、これが大変重要になるということで、その具体的な処方箋として、新しい働き方から地方創生回廊の創出まで、以下五つ御説明をしてまいりたいと思います。
それではまず、地方創生に入る前の年、全国知事会から日本再生デザイン、こちらを発表をさせていただきましたので、その主なポイントを御覧をいただきたいと思います。
ここでは、五つの未来像、こちらをしたためるとともに、具体的な施策の抜粋、これがなされました。一つは、自己決定と責任を持つ、二十一世紀型の地方自立自治体なんだと。まさに国、地方が連携をして国の形、例えば国、地方協議の場などを通じて策を取りまとめていく、こうした点であります。また、多様性のある経済圏、大交流圏形成によるまさに多極交流圏の創出ということで、こちらにつきましては、今大きなテーマとなっている六次産業化、一次産業をベースとしていかに成長戦略を果たしていくのかという点であります。また、三番目として国土軸の新たな形、リダンダンシーなどが出されておりまして、この中には全国の新幹線構想、こうした点についていかにこれから具現化をしていくのか、これが大きなポイントになるというものであります。また、国、地方の力を結集をした社会保障制度、こうした点についてどうしていくのか、その背景には多様なまさに働き方、環境整備が必要になる。そして五番目、地域や日本を担い、そして未来を開く、やはり重要なのは人づくりという点であります。
それでは、徳島が今地方創生の中で打ち出している「VS東京」、この点について少しお話をしたいと思います。
「VS東京」、これが発表されたのは平成二十六年の九月九日であります。ちょうど九月の三日に地方創生、東京一極集中の是正だ、政府が掲げた点で大変注目をいただいたところでありまして、この「VS東京」の動画、ユーチューブで流したところ、何と十日間で十万回の再生件数があったところであります。
マスコミの皆さん方は、徳島が東京にけんかを売るのかなんてことで言われたわけでありますが、実はそうした意味ではありません。コンセプトは大きく二つ。まず一つは、東京と地方がやはり切磋琢磨をしていかなければならないだろうと。特に、第二次世界大戦後、東京都の人口は四百万人でありました。もちろん、疎開をされている人もおられたとは思いますが、今ではそれが一千万を超え、一千三百万人、つまりその多くの皆さん方は地方にルーツを持つ皆さんということで、例えば徳島御出身、徳島ゆかりの人、あるいは徳島で長年仕事をしてお子さんの関係で老後を東京で暮らしている、こうした皆様方にあなたのふるさとはどこですか、こうした問いかけをしていこう、これがまず第一点であります。気付きを持っていただこうということ。
そしてもう一つは、東京を始めとする東京圏、二〇二五年問題が今大きく立ちはだかっております。医療、介護、この需給が大変逼迫をする。あの地価の高いところに病院を、介護施設をどんどん建てていく、これはなかなか不可能であります。ということであれば、徳島ゆかりの皆さん方に是非まだ現役として働ける間に徳島にお戻りをいただき、そして老後を過ごしていただこうと、こうした点を平成二十六年度から行ってきたところ、それが後に日本創成会議が打ち出す日本版CCRC、これへと結び付いてくることとなりました。
ということで、ちょうど平成二十六年の十二月、当時の舛添都知事さんの方へこの「VS東京」を持っていったところ、翌年には今度は東京側から「&TOKYO」というものが出されました。これの一番のポイントは、決して徳島VS東京と言っているわけではない。つまり、高知VS東京でも鳥取VS東京でもいい、地方が東京と共に切磋琢磨をして、そして日本をより良くしていこう、日本創成に結び付けていこうというものでありまして、実はこの「VS東京」、県庁の四十歳以下の若手十四名のタスクフォースが二十六年の一月から約九か月間を掛けてつくった、まさに若者の意識、やる気というものであります。
それでは次に、徳島の具体的な地方創生の状況、お話を各テーマに沿って申し上げていきたいと思います。
全体として共通をするのは、ピンチをチャンスへであります。徳島を始めとする四国、いわゆる典型的な地方であります。人口減少、高齢化、少子化、日本で最初に課題が訪れる課題先進県であります。そして、これが日本全体のまさに課題へとなっていく。であれば、真っ先にこの課題を解決をする処方箋を出すことがまさに徳島、四国から日本のスタンダードをつくることができる。我々徳島は、課題先進県から課題解決先進県を目指していこうとしているところであります。
そこで、まず第一番目、新しい働き方改革であります。
実は地上デジタル放送、テレビが双方向になる、紅白歌合戦、お茶の間から投票ができる、いいことずくめです。これは、しかし政府広報であります。実は、四十六都道府県はいいんでありますが、徳島県、アナログであるがゆえに関西波が全て見える。しかも、大阪は一チャンはビデオチャンネル、徳島は四国放送が見えます。つまり、十チャンネルということで、何と東京と同じなんですね。しかし、放送法上は三チャンネルしか見えない県、デジタルは仕事きっちりであります。見えるか見えないか、「暴れん坊将軍」が見えなくなる、高齢者の皆さん方が逆に暴れちゃうぞ、大変だということで、約七年間を掛けて、中山間地域、各御家庭までケーブルテレビでつなぎました。それが後発の利ということで、光ファイバーで結ぶこととなり、今ケーブルテレビの普及率は八九・八%、五年連続で日本第一位。ちなみに、第二位が大阪府、第三位が日本最大の難視聴地域である山梨県、「VS東京」相手の東京は第四位。もう既にVS東京、言うまでもないところであります。
ということで、この光ブロードバンド環境を使わない手はないであろうということで、まずは、東日本大震災、これが起こり、特に東京、大阪のICTの企業の皆さん方がクライアントから、BCPはどうするのか、リスクヘッジをどうするのか、こう問われた。しかし、彼らにとってみて東京、大阪以上の通信環境にあるところはない。しかし、それは徳島なんですね。
ということで、我々は、二十四年の三月から東京、大阪の企業の皆さん方に、徳島でサテライトオフィスを構えないか。今では神山町あるいは美波町は十六社始めとして、二十四市町村がある中で何と九市町に今四十五社が集まっております。そして、美波町では東京サテライトオフィス、そして美波町を本社にする企業も出てまいりました。
ということであれば、これをまず隗より始めよ、県庁からはしっかりとテレワーク、これを行っていこう。在宅勤務、モバイルワーク、そして神山町の方にサテライトオフィスまで構えた、これがとくしま新未来創造オフィス、後に消費者庁の移転の名前になるベースがここにございます。そして、いよいよ今年の六月からは、県庁十階、ここが消費者庁、消費者行政新未来創造オフィスが移ってくるフロアでありますが、WiFi環境を全て行い、フリーアドレス制、そしてさらには立ち会議システムの導入、ペーパーレス化、こうしたものを進める予定としております。
また、県民の皆さん方、企業の皆さん方にもテレワークを実感をしていただこうと、特に子育てあるいは介護離職、女性の管理職の皆さん方に大きな今課題となっているところでありまして、これを、テレワーク実証センター徳島を二十七年十月つくりまして、そうしたテレワークの講座、また各企業の皆さん方に、テレワークやってみたいんだけどまずはお試しからという皆様方の場の提供をさせていただいております。
次に、今度は六次産業化であります。今、農業を始め第一次産業は、従事者の減少あるいは高齢化、大きな課題があります。こうした中で、長らく関西の台所を任じ、そして東日本大震災発災以降は日本の台所を期待される徳島県。実は、中四国九県の中で大学に農学部がないのは徳島県だけであります。かつてはオー・ノーなんてことを言っていたわけでありますが、そうではなくて、このピンチをチャンスに、最大の工学部があるんであれば、工学系から農学系の方へと農工連携スタディーズを始め、昨年の四月から日本で初となる六次産業人材育成の進学、徳島大学としては三十年ぶりの学部を県とともにつくり上げ、生物資源産業学部が誕生をいたしました。
ということで、今、Iターンの皆様方にもどんどん農林水産業、徳島で行っていただいております。小田切先生始めとする明治大学の農学部の皆様方が、本県の海陽町、きゅうりタウンということで、先ほども出てまいりましたが半X半農と、ここでは埼玉のIターンの女性がJA共済の全国版の宣伝のモデルとして出てくるわけでありますが、きゅうりタウンでキュウリを作り、年商一千万を超えようと。そして、彼女は実は埼玉にいながらにしてサーフィンが好きなんですね。ということで、海陽町でサーフィンを行う。高知県との県境、生見のところはまさにサーフィンの世界的な大会が行われる場所であります。
また、これに併せ、徳島としては、地元の大学とアグリ、マリン、フォレスト、三つのサイエンスゾーンをつくり上げるところであるとともに、さらに即戦力としての林業あるいは漁業。既に林業は昨年の四月からとくしま林業アカデミーを、何と倍率は倍以上、そして今年卒業生が出たわけでありますが、この皆さん方、林業関係からは何と三倍の募集率ということで、次は更に数が増えたところであります。漁業アカデミーはこの四月から、こちらも五名の枠だけを設けたところでありますが、倍以上の募集がありまして、七名をまず採ってみて、そしてベテランの漁業者の皆さん方とともにこの皆さん方を育んでいこうというものであります。
また、全国初となりました徳島大学、こちらの生物資源産業学部、定員は百名であります。県から提案をさせていただきまして、実は八名の地方創生枠、こちらはセンター試験を受けることなく、いわゆる専門高校からそちらへ推薦で入ることができるわけで、弱いミシン目で四、四、全国枠と県内枠がありましたが、二年連続で五名、県内枠が入りました。つまり、全国枠を一名食べたところでありますし、また、百年を超える伝統の徳島農業大学校、こちらの専修学校化をし、大学の三年に編入を可能としているところであります。ということであれば、高校の段階からこの大学を目指していこうではないか。新たな専門コース、こちらをつくるところでありまして、今、職業高校が、例えば農商が一体になる、あるいは農工商三つを一体とする、こうした高校のコースをどんどんつくり、この生物資源産業学部を始めとする、即戦力として六次産業の人材を育成をしているところであります。
そして次に、どうして若者が東京に集まるのか。言うまでもなく、名立たる企業の本社が東京にあるからであります。しかし、それも各企業、東京をなかなか離れられない。これは、明治開闢以来、この国の中枢と言われる霞が関に各省庁が集まっているからであります。この省庁を地方に分散化しないことには、まさに企業の本社が地方へ展開をするのは夢、幻となります。
そこで、徳島県は、二十七年の九月、国からの手挙げ方式に対して、消費者庁、国民生活センター、消費者委員会、これらを提案をさせていただきました。
では、なぜ徳島県が消費者庁を選んだのか。平成十九年、本県の四大ブランド、その中の筆頭、こちらが実は産地偽装の事件が起こり、マスコミの皆さん方からは、消費者目線でやはりその業者の名前を公表すべきではないか、こうした話がありました。うちの農林水産部としてもこれをしようと決めたところではありますが、国の方から、風評被害を招くのでこれはまかりならないという待ったが掛かりました。やはり業育成のところが業規制と同じになっていると、どうしても育成が勝ってしまう。そうした点で、最終的には私が会見をしたところでありますが、この中で、やはり消費者目線の役所をつくるべきではないか。徳島県は翌年から政策提言として消費者庁の創設を提言をさせていただきました。そして、二十一年の九月、消費者庁が誕生するわけでありますが、当初の様々な、また全国の制度といったものが徳島をモデルとして生まれたものが多々あるところであります。
そして、平成二十八年に入りまして、神山町、県庁で業務試験が、国民生活センターにつきましては五月から今年の二月まで鳴門におきまして様々な研修事業が行われたところでありまして、こうした結果、今年の七月頃と言われておりますが、消費者行政新未来創造オフィスが先ほども少しお話をした県庁の十階に五十名の規模で創設をされることとなります。まさにこれからは、徳島県というフィールドを持つことによって新次元の消費者行政あるいは消費者教育の展開が、そして日本の新しい働き方改革へ、また消費者教育の新たな展開がこれから期待をされるところであります。
そして、最後、四番目となりますが、先ほどの地方創生回廊の話であります。
実は、二〇二〇年インバウンド二千万人、しかし、昨年既に二千四百万人を突破をし、今国におきましては、二〇二〇年には四千万人、そして二〇三〇年には六千万人という形となりました。しかし、東京圏あるいは東京から富士山、名古屋、京都、大阪、神戸、ゴールデンルート、今ではビジネスホテル一泊五千円のところが五万円、とても泊まることができない。新たな観光圏を、新たな広域観光周遊ルートを観光庁の方が展開を言われたところであります。
実は、中四国で最初にこの観光圏指定をされたのが本県の県西部二市二町、にし阿波でありました。またさらに、広域観光周遊ルートが最初に七つ選ばれ、新しいゴールデンルートをこの中で、実は、四国、瀬戸内、関西、この三つの広域観光周遊ルート、かぶるのは徳島県のみであります。
また、今農林水産省におきましても新たなインバウンド対策として、日本の原風景、これを是非にということで、食と農の景勝地、五つ全国で指定をされました。西日本では唯一やはりにし阿波が、そして、日本農業遺産には八地域指定をされるとともに、このうち特に三つを世界農業遺産にチャレンジをする。こちらについても、その三つの中ににし阿波が選ばれるところであります。
しかし、ダイレクトに四国へ入ってくる、海外からはなかなか難しいところであります。今は羽田空港、更に二本滑走路を加えようか、こうしたお話もあるところでありますが、しかし、関西、大阪ベイエリアを見ていただきますと、関空、大阪の伊丹、神戸、徳島、南紀白浜と五つで何と七本の滑走路があります。今、北陸新幹線の大阪までのルートが決まり、その後これを関空まで延ばすべきではないか。もし関空島まで新幹線が渡ることになれば、お向かいは、もう淡路島は目の前であります。そして、淡路へ渡れば、淡路島と徳島、鳴門の間には大鳴門橋が整備をされ、ここは新幹線併用橋となっております。BバイCということではなく、こうした既存のストックを併せ持つストック効果を今後は是非目指すべきではないか、このように考えるところでありまして、首都と関西、二つをまさに二眼レフ構造によりまして国土の強靱化を図っていく、そうした今後の道筋もお考えをいただければと思います。
ということで、以上、課題解決先進県徳島として、全国知事会を下に、是非先生方の御理解をいただきまして、しっかりと地方創生を展開してまいりたいと考えております。どうぞよろしくお願いをいたします。
御清聴ありがとうございました。
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。参考人の皆さん、今日は本当にありがとうございます。
この間、大都市に一極集中するという経済政策の下で、中小企業や農林水産業の経営が壊されて、地方の衰退が深刻化をして、大都市と地方の格差が拡大をする、地域経済の疲弊が深刻となって、日本社会と経済にとって大きな問題になっています。
地域経済を元気にしていくためには、地域社会を維持する経済主体である住民お一人お一人の生活が維持をされる、向上をされること、中小企業や小規模事業者、農家、協同組合、NPO、そして自治体のそれぞれが再投資力を付けるということが重要だというふうに考えています。国が、地方の基幹産業である農林水産業の振興と六次化産業、中小・小規模事業者の振興、観光産業や地域おこしなどの振興策、自然再生可能エネルギーの地産地消など、自治体が行っている地域の活性化策を支援することが必要だというふうに考えています。
その上で、参考人の皆さんにお聞きをしたいんですけど、初めに小田切参考人にお聞きをいたします。
私は福島県の出身です。原発事故を経験をして、原発依存ではなくて、エネルギーを再生可能エネルギーに転換をするということが必要だというふうに考えているんですけれども、小田切参考人の書かれた著書の中で、食料、エネルギー、水、二酸化炭素吸収源としての森林が非常に重要だと。いずれも多くが農山村から供給されていること、地球温暖化の要因となる火力発電所や原発に代わるバイオマスや小水力など、再生可能エネルギーの実現は農山村でこそ可能であるというふうに本の中で指摘をされておられます。
この再生可能エネルギーなんですけれども、その活用が地元の中小企業の仕事や雇用に結び付く、地域経済に取り入れることができれば地域に新しい収入が生まれてくると。その成果を地元に還元をしたり、雇用や技術、資金の流れを地元に生み出すことで、地域経済の活性化に役立ちます。ドイツでは再生可能エネルギーの分野で三十八万人の雇用が生み出されていると。再生可能エネルギーには優れた雇用効果もあります。
国内でもいろいろな取組が行われているんですけれども、この農山村での再生可能エネルギーの取組が地域の活性化に大きな役割を発揮するというふうに考えるんですけれども、参考人はどのようにお考えでしょうか。
○参考人(小田切徳美君) 委員おっしゃるとおりだろうと思います。
再生可能エネルギーは、先ほどもおっしゃった地域内再投資力、地域内で再投資をして、それを回していくという考え方、その基本的な考え方にまさに適する素材だというふうに思います。それからもう一つは、先ほども読んでいただきましたように、四つの資源、エネルギーも含めた四つの資源が、まさに農山村に偏在しているといいましょうか、立地しているという特徴があります。
そういう意味では、私自身は、国内戦略地域、国内の中で戦略的な地域が実は農山村で、その一つの素材がエネルギーだというふうに思っています。その少しマクロな視点から見ても、再生可能エネルギー、農山村における意義というのは極めて大きいものがある、そんなふうに考えております。
○岩渕友君 ありがとうございます。
次に、飯泉参考人にお聞きをしたいんですけれども、今の再生可能エネルギーのことと関わってなんですが、徳島県が中四国の中で初めて地球温暖化対策推進条例というものを制定をして、東日本大震災と福島の原発事故を契機にして、化石燃料中心から環境負荷が少ない自然エネルギーを活用しようということで推進戦略を策定されているというふうに知りました。
自然エネルギーの宝庫である徳島県、先ほど御当地の宝を大事にするということが田村参考人からも話ありましたけれども、その徳島県の優位性を生かしてエネルギーの地産地消の取組をされています。同時に、自然エネルギー協議会の会長県でもあられるということで、自然エネルギー導入に向けた政策提言も積極的に行っていらっしゃいます。
このエネルギーの地産地消の取組が地域活性化とどういうふうにつながっているのか、参考人の考えをお聞かせいただきたいのと、この地産地消型の自然エネルギー、この推進を行うに当たって、国への要望があれば是非お聞かせください。
○参考人(飯泉嘉門君) 私の場合は、徳島県知事ということと自然エネルギー協議会、今三十四道府県、二百を超える企業の皆さん方がこのメンバーに入っていただいております。
そして、今御紹介いただきましたように、平成二十年、中四国初となります地球温暖化対策条例、正面から地球温暖化対策に取り組んでいこうと。そして、実は、昨年の九月の議会で日本で初めてとなる脱炭素社会づくりの条例を制定をいたしました。そして、再生可能エネルギー、この導入、あるいは二酸化炭素の固定、今吸収源対策のお話がありましたが、こうした温室効果ガスの排出抑制といった観点で、国全体では二六%、これを四〇%と、日本で一番高い数値を挙げるとともに、これが決して絵空事ではないということで、お話のあった吸収源対策を一三・六%、この中に入れると。その意味では、林業に着眼をして、平成十七年度から林業再生、山に高性能林業機械を入れ、若い皆さん方の特にIターン、Uターンの雇用の場にしていこうと。十九年からは再生、二十三年からは飛躍、そして今では二十六年度から新次元という形で林業の一大中心産地にしていくと。こういうことによって吸収源対策を絵空事ではないんだと、こうした形で進めております。
ということで、まず考え方ということでありますが、当然マラケシュによってもう既にパリ協定、脱炭素社会に世界中が動き出したところでありますので、県としてあるいは自然エネルギー協議会の会長として、国に対してもこの再生可能エネルギー、これをどんどん活用できるような規制緩和ですね、その意味ではFIT、この促進期間が既に終わったところであります。例えば接続の制限であるとかそうした電力改革、こうした点についてもやはり国にしっかりと先陣を切っていただきたいな、このように思います。
またさらには、地産地消としてこれを地方創生に生かしていくべきではないだろうか。実は、農林水産省の皆様方にも御理解をいただきまして、例えば農業振興地域であったとしても、角度によってソーラー、このパネルを併せて使うことができると、そうした形によって耕作放棄地の解消を農転をしないままに行っていくことができる。あるいは、小さい集落であれば小水力の発電を行うと。これによって地域の様々な電力を賄うだけではなくて、余剰についてはこれを電力会社に売ることができまして、それによって地域の様々な、先ほどイベントの話もありましたが、こうしたものに振り向けていくと。
まさに地産地消の、また、これを行う会社を立ち上げることによってまさに地域に経済と雇用をもたらすと。こうした点について規制緩和とその促進を自然エネルギー協議会としても訴えかけているところでありますので、是非こうした点も政府の皆さん方にお考えをいただければと、このように考えています。
○岩渕友君 ありがとうございます。
今もいろいろお話ありましたけれども、中小・小規模事業者のことについてもお聞きしたいんですけれども、この中小・小規模事業者が経済の根幹であると。それだけではなくて、災害で例えば力を大きく発揮をするだとか、お祭りだとか地域の文化の担い手としても重要な役割を果たしているわけなんですけれども、地域循環型の、経済の循環の核である中小企業の支援を強化するということは地域活性化にとっても非常に重要であるというふうに考えるんです。
そこで、飯泉参考人にまたお聞きをするんですけれども、徳島にも小規模企業振興憲章があって、条例でもそこがしっかりと位置付けられていると。先ほども話ありましたけれども、雇用を支えると、地域経済の安定化に果たす役割が非常に大きいというふうに評価をされてこうした取組が行われているということなんですけれども、この中小・小規模事業者が元気になるということが地域の活性化の要だというふうに考えるんですけれども、参考人はどのようにお考えでしょうか。
○参考人(飯泉嘉門君) おっしゃるとおりですね。といいますのは、日本の企業構成、この比率を考えると自明の理なんですね。つまり、日本の企業九九%が実は中小企業なんですね。そしてまた、地方におけると、中小企業のうち九九・九%は実は小規模事業者なんです。
ということで、先ほど地球温暖化対策の条例のお話をいただきましたが、同じ平成二十年度、このときに中小企業の振興条例を中四国で初めて作りました。そして、今、国におきまして、小規模事業者、こちらに目を当てようということで法律も制定をされてきておりますので、徳島では既に昨年、この条例を改正をさせていただきました。先ほど憲章のお話をいただきましたけど、小規模事業者に特化をした例えば融資の制度であるとかあるいは助成金の制度であるとか、こうしたものを制定をさせていただきまして、小規模事業者の皆さん方がまさに地域の経済と雇用、そしてまさに地産地消といった点について担い手として頑張っていただけるような体制、こちらを既に構築をし、スタートを切ったところでもあります。
○岩渕友君 ありがとうございました。
それでは、田村参考人にお聞きをいたします。
田村参考人の書かれた本の中で、公共事業に依存するのでは地域経済が駄目になるのではないか、それは地域の魅力を損なっていることも多くあるんだと、環境であるとか国土の保全に力を注ぐことの方がはるかに地域の魅力を増すことにつながっていくのではないかというようなことが書かれていたんですけれども、生活密着型の公共事業への転換が必要ではないのかなというふうに考えるんですが、参考人はどういうふうにお考えか。
そして、環境や国土保全をするということが地域にとってどういう意味を持つというふうに考えられるかお聞かせいただきたいのと、同じ質問を、済みません、小田切参考人にもお聞きいたします。
○参考人(田村秀君) 私も売れない本をいっぱい書いているので、どの本に書いてあるかちょっとあれなんですが、多分そういうことを書いた記憶があります。
もちろん、公共事業を否定しているわけではございません。ただ、より生活に身近なものが必要ではないかという多分思いで書いたと思いますし、特に環境とか国土保全ということに関しましては、私は今みなかみ町の参与をしております。そういう中で、まさにあそこに五つの大きなダムがございます、矢木沢ダムを始めですね。やはりそういうダムを通じて、実は、ダムだけじゃなくその周辺の森林の環境を保たないと、きれいな水質が確保できない。正直申しまして、東京都知事さんにはもっとみなかみに来ていただいて、やっぱり水がめで支えているということを知っていただきたいとも思うんですが、そういう都市と地方の交流ということも含めての国土保全、環境、場合によっては下流と上流の間の負担の在り方とか、そういうことがもっと私は議論されてもいいのかなと思っております。
○参考人(小田切徳美君) 私も田村先生と同じように、公共事業を否定するものではありません。
しかし、環境保全の側面を強調したいのは、とりわけ景観です。先ほどの英国におけるカウンターアーバニゼーションは、明らかに美しい景観を目指して人々が動くという、そういう傾向があります。そして、日本の田園回帰も、先ほどは人が人を呼ぶ、地域が人を呼ぶということを申し上げましたが、それに加えて言えば、やはり美しい農山村景観です。その意味で、景観をしっかりと維持するような、そういう視点が今後ますます重要になっているというふうに思っております。
○岩渕友君 ありがとうございました。以上です。