参院国民生活・経済調査会は14日、若年者をめぐる格差への取り組みについて参考人質疑を行い、日本共産党からは岩渕友議員が質問に立ちました。
「住まいの貧困に取り組むネットワーク」世話人の稲葉剛立教大学特任准教授は、若年層に広がる「住まいの貧困」について、ブラック企業で長時間働かされ、過労による精神疾患をきっかけに生活困窮に陥っている場合が多いと指摘。改正住宅セーフティーネット法、生活困窮者自立支援制度の課題について述べ、若者への住宅支援の拡充の必要性などを強調しました。
岩渕氏は、福島原発事故避難者への住宅無償提供が打ち切られ、追い出しまで始まっていることを示し「国の責任で必要な人に住宅提供すべき」と強調し、住まいの確保の重要性について質問。稲葉氏は「住まいは基本的人権であり、まずは安定した住まいを確保することが重要だ」と述べました。
岩渕氏は、高い若者の貧困率、労働権教育の重要性などを述べた竹信三恵子和光大学教授に対して「働き方改革」の問題について質問。竹信氏は「同一労働同一賃金が重要だ。今回の改革は雇う側にとって都合の良い内容。働く人の側に立った改革が必要だ」と話しました。
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○参考人(稲葉剛君) 本日は、このような機会を与えていただき、ありがとうございます。
私からは、若年層に広がる住まいの貧困というタイトルで、特に大都市部において若者が住宅の確保に困難を感じているという現状とそれへの対応策はどうあるべきかという点についてお話をさせていただきます。(資料映写)
私自身は、一九九〇年代の半ばから、主に住まいを失った生活困窮者の相談支援活動を行ってまいりました。その中で、十代、二十代の若者のこういう生活困窮者の相談を受ける機会も多くなってきているんですけれども、こうした生活に困窮している若者の相談を受ける中で、若者が生活困窮に至る二つのパターンがあるのではないかというふうに考えております。
一つは、貧困の世代間連鎖の問題です。
二〇一〇年に、NPO法人ビッグイシュー基金という団体が中心となって、若者ホームレス五十人への聞き取り調査が行われました。これは若者ホームレス白書という形でまとまっているものです。この五十人の若者ホームレスの中で、実に六人が児童養護施設の出身者である、そして三人が親戚宅の出身者であるということで、五十人中九人が実の親以外に育てられているという状況があります。
近年、子どもの貧困対策法の下で子供の貧困対策が進められ、貧困の世代間連鎖が起こっているということが大きな社会問題としてクローズアップされてきました。私自身がお会いした若者の中でも、児童養護施設を十八歳で出て、そして住み込みで働いていたけれども、その会社が倒産してしまったと、そうすると、もう帰る場所がなくてそのまま路上生活になってしまったというような方もいらっしゃいました。
こうした問題については、貧困の世代間連鎖を止めようということで、現在、政府においても、公的な給付型奨学金の創設であるとか、あるいは児童養護施設を出た若者たちへの住宅支援等も進められているところではありますけれども、こうした対策をもっともっと進めていただきたいというふうに願っております。
あともう一つのパターンといたしましては、実は、私たちが相談している若者の中には、大学を出て一回は正社員として就職した若者たちもいらっしゃいます。なぜ彼らが生活に困窮するのかといいますと、その就職した先の企業がいわゆるブラック企業と言われるところで、非常に過重な労働、睡眠も与えないようなオーバーワークをさせると。その結果、結果的にうつ病などの病気を発症してしまって働けなくなってしまって、一時的に親御さんに頼ったりするんですけれども、なかなか状況が改善しないまま時間が経過してしまって、最終的には親との関係も悪くなって、そして家にもいられなくなって外に出てしまうと。その結果、ネットカフェ難民になったり路上生活になったりという方もいらっしゃいます。
この問題についても、厚生労働省の方でブラック企業に対する規制というのが始まっておりますけど、こうした点も今後強化していただきたいというふうに願っております。
本日は、特にそうした若者の貧困の中でも住宅問題についてお話をさせていただきたいと思っているんですけれども、住まいを失った生活困窮者というと、まず思い浮かぶのはホームレスの人たちということになります。
日本では、二〇〇二年にホームレス自立支援法が制定されまして、その下で二〇〇〇年代に入って本格的なホームレス対策が行われてきました。官民の支援が整った結果、近年ではホームレスの人たちの数というのは激減しております。厚生労働省の統計では、これまでホームレスの数が一番多かったのは二〇〇三年で約二万五千人ですけれども、現在では六千人を切っていると。
ただ、この統計を見る際に注意していただきたいのは、この調査が昼間の目視調査であるために、夜間は夜間だけ野宿している人がカウントされないという傾向があると。民間団体の調査では夜間の実数はこの数の約二・五倍になるというような調査結果も出ておりますので、その点は留意していただきたいんですけれども、ホームレス対策という点においては着実に効果を上げているということが言えるんじゃないかなと思っております。
ただ、問題点は、このホームレス自立支援法におけるホームレスというのが、路上とか公園とか河川敷、いわゆる屋外に暮らしている人のみがホームレスというふうに定義されているという問題があるということです。
私は、二〇〇九年に「ハウジングプア」という書籍を発行いたしまして、この中で、国内において住まいの貧困が広がっていると、狭い意味のホームレスだけではなくて、例えばネットカフェに暮らしているとか、二十四時間営業のファストフード店にいるとか、カプセルホテルやサウナにいるとか、あるいは友人宅に居候しているとかいったような、路上一歩手前の人たちが広がっているんじゃないかという点について問題を提起してまいりました。
例えば、二〇〇八年から二〇〇九年にかけては派遣切りの問題が起こって日比谷公園では年越し派遣村も行われましたけれども、そのときに派遣村に駆け込んできた方の多くは、住み込みで働いていた方、派遣会社が用意していたマンションやアパートに暮らしていた方ということで、この問題についてもやはり住まいの貧困の問題というふうに考えることができるんではないかなというふうに思っております。ここに逆三角形の図を出しましたけれども、現在ホームレス自立支援法が対応しているのは一番この下の三角形の部分だけであって、その一歩手前の人たちも含めて全体をきちんと調査、把握をして対策をする必要があるというふうに考えております。
こうした問題については、私たち、本格的な実態調査の実施をずっと求めてきたんですけれども、今年に入って東京都が初の実態調査を行った結果を発表しております。東京都が今年の一月二十六日に住居喪失不安定労働者、いわゆるネットカフェ難民の調査結果を発表しておりまして、その中で、東京都内、都内だけですけど、東京都内で約四千人がネットカフェで生活をしていると見られるという調査結果を出しております。この住居喪失者のうち、三十代が三八・六%、二十代も一二・三%ということで、二十代、三十代だけで約半数に達しているという状況があります。一方で、五十代の方も多くて、五十代の方も約三割、二八・九%いらっしゃるということです。
ネットカフェ難民というと、ともすれば好きでそういうライフスタイルを選んでいるというふうに見られがちなんですけれども、この調査結果から浮かび上がっているのは平均月収が十一万四千円しかないと、中には全く収入がないという方もいらっしゃるので、働いている方に限っても約十二万円しか収入がないという実態です。そうすると、ネットカフェに泊まるお金すら確保できないという日も出てきますので、仕事がないときなどには路上にいると、路上生活もしているという方が全体の四三・八%に上っておりまして、路上とネットカフェを往復しているような人たちが多数いるということがこの調査結果からも分かっております。一日当たりの食費も一千百円ということで、かなり苦しい生活をされている実態が明らかになっております。
都の調査では、この人たちが住宅の確保に当たってどういう問題を抱えているかという点についても聞いております。
その中で一番多い回答、六二・八%は、入居に必要な敷金、礼金等の初期費用を用意することができないというものです。東京や大阪などでは、月々のアパートの家賃も高いんですけれども、入居する際に敷金、礼金、あるいは不動産手数料、あと最近では家賃保証会社というのを使うケースが増えているので家賃保証会社の保証料、火災保険等、約二十万円ほどお金を用意する必要があります。そうしたお金を用意することができない、派遣労働をしたりとか日雇の仕事をしながら何とか自転車操業でネットカフェに暮らしてはいるんだけれども、そこから蓄えをつくってアパートに入るということはできないという実態が浮かび上がっております。
ほかにも、アパートに入ったとしても家賃を払い続けられるほどの安定的な収入がないといった答えや、あるいはアパートに入る際の保証人が用意できないといったような回答もあって、住宅確保に様々なハードルがあるということが分かっております。
ただ、こうした問題というのは、ともすればごく一部の人たちの問題というふうに見られがちなので、そうではないということを言いたいがために、もう一つ調査を紹介させていただきます。
こちらは、二〇一四年に私も参加して行った調査です。NPO法人ビッグイシュー基金が中心となって若者の住宅問題という調査を行っています。こちらについても調査結果の冊子がまとまっておりまして、ホームページでダウンロードすることができます。こちらの調査は、首都圏と関西圏に暮らす二十代、三十代の未婚で個人の年収が二百万未満の若者千七百六十七人、ほぼ男女半々ですけれども、その人たちにインターネットを通して調査をしたものです。
ちなみに、今の二十代、三十代で未婚で個人の年収二百万という人たち、どれぐらいのボリュームいるかというと、全体の三割、三〇%という数になります。かなり大きな割合でそういう方がいらっしゃるということです。いわゆるワーキングプアの若者ということであります。こうしたワーキングプアの若者がどこに居住しているのか、どういう住宅状況にあるのかというのをこの調査では調べました。
その結果、七七・四%、実に八割近くの方が親と同居しているというふうに答えております。この親と同居という問題については、以前パラサイトシングルという言葉があって、そのイメージが強く残っていらっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんけれども、ただ、昔パラサイトシングルとか独身貴族とか言われたように、好きで親元にいてある程度豊かな生活をしているというイメージから懸け離れた実態がこの調査では明らかになっております。収入が非常に低いために親元から出られないということが分かってきております。
その証拠に、この調査ではホームレス経験がありますかということも聞いています。ここで言うホームレスというのは広い意味でのホームレス、路上生活だけではなくて、ネットカフェでの生活や友人宅での居候も含めて、安定した住まいを喪失した経験はありますかという質問をしているんですけれども、その問いに対して実に六・六%の人がホームレス経験ありというふうに答えております。これは十六人に一人という割合になります。
さらに、先ほど大体四分の三の若者が親と同居しているというふうに答えておりますけれども、逆に言うと四分の一の若者は親と別居しております。つまり、自分でアパートとかマンションを確保して暮らしているということになるんですが、この親と別居している若者たちに同じ問いをしたところ、一三・五%がホームレス経験ありというふうに答えております。
一三・五%というと七人から八人に一人ということで、かなり高い割合でホームレス、住まいを失った経験をしているということでして、こうした数字が示しているものというのは、今の若い人たち、特に大都市部に暮らす若者たちにとって、自分で住まいを確保するということが大変リスクの高い選択になってしまっていると。住まいを借りるということが、イコールもしかすると自分がホームレス化してしまうというリスクを抱え込んでしまう。それほどまで住宅確保のハードルというのが高くなっているという実態を示しているというふうに思います。
一方で、相談できる相手について、特に男性で四六・七%、相談相手がいないということで、かなり孤立している実態も明らかになっています。
更に深刻なのが、同じこの若者の住宅問題の調査の中で結婚に関する意向を聞いております。その結果がここに示したものですけれども、結婚したいと思わない、三四・一%、将来結婚したいが結婚できるか分からない、二〇・三%等となっておりまして、合わせると約七割の若者が結婚に消極的あるいは悲観的な傾向を示しているということになります。結婚したいし結婚できると思うと答えた若者は僅か六・六%です。結婚の予定があるという人も二・五%しかいなくて、結婚に対して前向きな方というのが全体の一割にも満たないという実態があります。
もちろん、私、結婚だけが人生の在り方として正しいと言うつもりはありませんけれども、こうした状況というのは、若者が今自分の住まいを確保することすら困難になっている、ましてや将来に対する見通しを持てない、自分の人生に対する見通しを持てないという実態がこうした数字によって明らかになっているんじゃないかなというふうに思います。こうした七割が結婚に対して消極的、悲観的という数字は、ある意味社会の持続可能性の危機に陥っているんじゃないかというふうに考えます。
欧米では、こうした若者たちに対する住宅支援というのを、人生のサイクルを前に進めてもらうための支援として住宅支援を行っている国々がたくさんあります。家賃の補助を行ったり低廉な住宅を提供したりして、早めに実家から出てもらう、若者に早く自立をしてもらって、それによって、それが少子化対策にもつながるという考え方があるんですけれども、日本の現状は非常に、このままだと少子化がますます進んでしまうような実態にあるんではないかと。そうした点でもやっぱり政策の転換が求められているというふうに考えております。
こうした住宅問題に関しては、近年、様々な対策が進んできております。
昨年の四月、実は私も衆議院の国土交通委員会で参考人として呼んでいただいたんですけれども、改正住宅セーフティーネット法が成立して、十月から施行されております。これは、全国的に増え続ける空き家問題に着目して、現在、全国で約八百二十万戸の空き家があると、全体の一三・五%が空き家になっているという実態があるんですけれども、こうした空き家の登録制度を都道府県別につくって、大家さんに空き家を登録してもらって、こうした空き家を高齢者とか障害者とか、そして若者を含めた低額所得者、一般の賃貸住宅市場では部屋を借りにくい人たちに活用してもらおうという、非常に画期的な政策になっております。
私も、この対策を是非、高齢者、障害者だけじゃなくて若者にも使ってほしいということで要望を出してきて、大変期待はしているんですけれども、残念ながら、現時点ではまだまだこの政策が進んでいないという状況があります。
国土交通省がセーフティネット住宅情報提供システムというホームページを作っていて、全国の改正住宅セーフティーネット法に基づく登録住宅の状況を公開しております。こちらに出した数字は一週間前のものですけど、先ほど正午の時点でホームページをチェックしたところ、現在登録されている住宅は全国で四十六件、二百六十一戸にとどまっております。東京都についてはいまだにゼロ件という状況です。
国交省は、年間五万戸の登録住宅を整備していくと、二〇二〇年度までに十七万五千戸の住宅を整備するという大きな目標を掲げているんですけれども、四か月たった段階でまだ二百六十一戸という状況ですので、かなり目標達成が危ぶまれる状況と言ってもいいんではないかなというふうに思っております。こうした点も、もっともっと強化していただきたいというふうに願っております。
その一方で、厚生労働省の方では、二〇一五年度より生活困窮者自立支援制度という制度が始まっております。これは、各自治体に生活保護とは別の窓口をつくると、生活保護の手前で生活困窮者を支えるという趣旨の下、相談窓口をつくって、まだ家にいるような若者も含めて支えていこうという仕組みになっております。
ただ、その支援のメニューの中で居住支援、住宅支援が弱いのではないかというふうに私は考えておりまして、具体的には、この生活困窮者自立支援制度の中で住居確保給付金という仕組みがあります。これは、元々は、二〇〇九年に派遣切りの問題が起こった頃に厚生労働省が当初住宅手当という名前で導入した制度を恒久化したものです。ただ、この住居確保給付金の利用者が、こちらの数字にありますようにこの六年間で七分の一まで減っていると、平成二十八年度では五千九十五件しか利用されていないという実態があります。
実際には住宅に困っている方がたくさんいるのに住宅支援の制度が使われていないというのはなぜかと申し上げますと、この制度の対象者が離職者のみであると。要するに、仕事をなくした方、失業状態にある方しかこの制度を利用できない。例えば、ネットカフェに暮らしている方というのは派遣などの仕事をしている場合が多いんですけど、仕事をしているうちはこの制度を使えないという問題がありまして、その結果、制度の利用が進んでいないということがあります。
ですので、こうした仕組みについて対象者を拡大して、あと、アパートに入る際の敷金、礼金等についてはこの仕組みから出していないんですけれども、それについてもきちんと支給していく仕組みにしていく必要があるというふうに思っております。
ほかにも、こうした厚生労働省が行っている生活困窮者支援の制度というのは、いろいろメニューはあるんですけど、基本的には就労支援に偏っていて、次の仕事が見付かるまでの間、家賃を補助するよとかサポートするよというものなんですけれども、やはり現在、その居住を安定させるということが一番の課題になっておりますので、安定した居住の確保ということを最優先にする政策に転換していく必要があるだろうというふうに考えております。
これまでの日本の住宅政策というのは、これはよく指摘されることでありますけれども、中間層の持家を取得するという政策が中心でした。ある程度経済が回っている時代にはこれでよかったんですけれども、今のように日本型雇用が崩れる中では、若者たちが将来の見通しが持てないまま住宅を確保できないという状況が広がっております。ですので、発想を変えて、例えば公営住宅についても若者に門戸を開放するであるとか、生活保護の手前に家賃補助を導入するとか、住まいは基本的な人権であるという考え方に立って、これまでばらばらに行われてきた福祉政策と住宅政策を融合するような政策の転換が求められているというふうに思っております。
最後に、昨年の住宅セーフティーネット法の改正に当たって、参議院の国土交通委員会で上げていただいた附帯決議の一部を抜粋しておきました。こうした点、特に最後に実態調査というのが入っているんですけれども、今回は東京都が実態調査を行いましたけれども、国としてもきちんと住まいの貧困実態調査を行ってほしいということを願ってこの項目を挙げさせていただいております。
ちょっと時間が超過いたしましたけど、私からは以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。
○会長(増子輝彦君) ありがとうございました。
次に、秋田参考人にお願いいたします。秋田参考人。
○参考人(秋田敦子君) 秋田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私どもはちょうど一九九七年に子供、若者の支援をしてまいりました。二十年になる中で、だんだん環境も変わりました。社会の環境も変わり、でも、子供たち一人一人にすると昔と何ら変わらない子供たちですが、ただ、今不登校、引きこもりという問題がかなり大きく取り上げられています。
彼らの一番難しい部分はなかなか御本人が登場しないという、ほとんどは御家族から相談が上がり、御本人はなかなか、自ら進んで僕は不登校です、引きこもりですと来る人たちは少ないわけですね。じゃ、それは諦めるかというと、彼らなりの原因がというか理屈があるわけですね。それは、自らが不登校を決めた、で、自らが引きこもることを自分で決めたわけです。自分で決めるということは、ちょっとやそこらで周りの人が後押ししても多分びくとも動かないだろうと思います。自分が出るときには自分で自己決断をして、自分の意思で外に出ると決めていますから、なかなか支援が行き届かないという現状でした。
その中で、私どもも、最初は御家族からの相談です。大抵の相談支援をされる方は、親御さんの支援を数回しますと、御本人が見えないのでなかなか相談できません、また何かあったらいらしてくださいということで、相談が中断されるわけです。その結果、少し見守れば自分で動き出すのかなと親御さんは勘違いします。でも、てこでも動かない彼らはなかなか親御さんの思っているとおりにはなりませんので、私たちはまず家族支援を重視いたします。
ちょうど十九年になります。毎週毎週親御さんたち、年代によって違うんですけれども、いらしていただいて、まず御家族を安心させること、安定させる。そして、家族という土台ですね、それをしっかりすること。地震でぐらぐらしている状態と同じようになっていますので、家族の安定を図ることによって少しずつ御本人が出てまいります。これが本当に、時間は多少掛かりますけれども、自らの意思で社会に出てくると。
その流れを私どもは三つの段階に分けて支援してまいりました。最終的には自立、本人なりの自立と社会参加の仕方を自分で自ら選ぶ。それをプロセス化をしてストーリーを作り上げます。一人一人に合ったストーリーを描きながら支援する中で、確実に彼らが社会に出ていくということが分かりましたので、その方法をちょっとスライドでお見せしたいと思います。(資料映写)
ちょっと見にくいんですけれども、お手元にA4の縦長のをお示ししたと思うんですが、一番下にひきこもり地域支援センターがあります。市と県の委託を受けておりますので、その中にいろんなところから相談が参ります。医療機関だったり、御家族だったり、民生委員だったり、それから保健所やら近隣の人とかですね。その相談を、まずこちらの方は一度二度で終わることなく長期に継続的に行います。その中で見えてくる御本人の特性、それから支援方法が見えてきた段階で少しずつアウトリーチをする場合もあるんですが、今は御家族支援の中だけで御本人が登場に至ります。
そして次は、今度は御本人に合った居場所です。居場所という一つのちょっと曖昧な単語なんですが、彼らにとれば空白を埋めるリハビリテーションみたいなものですね。友人との格差を気にしております。その空白を埋めることによって格差がなくなり、自分も普通に過ごせるようになったと思える感覚をするためには、必ず居場所が必要になってくる、くるはずです。そのフリースペースがあります。これは第一段階、まず人と群れること。これまで群れてきた社会から個の、一個の人間で一人で孤立した姿ですね、それをもう一度集団の中で自信を付けてたくましく成長するためのフリースペースがあります。
そして次は、今度はもうちょっと目的を持つことで居場所を変えていきます。関わる中で、病気があったり、発達障害だとか、いろいろ家庭環境の問題とか見え隠れしてきたときに、それから、あとは何もないちょっとグレーの人たち、多少力が少し弱いなという人たちもいらっしゃいますので、NPO法人は、障害ではなくてグレーと言われる人たちですね、そのグレーも様々なんですけれども、その人たちも社会に出る練習をします。それから、障害がある程度分かってきた段階で、福祉サービスを使える社会福祉法人わたげ福祉会と両方で同じような支援を行っています。片方はなかなかとても経済的には苦しいNPO法人と、片方は社会福祉法人で障害、自立支援の方を使っておりますので、この人たちも社会を目指して同じように歩んでまいります。で、就労体験をして、そしてまた堂々と社会に出るというシステムになっております。
それでは、三つのステップを少し簡単に述べさせていただきます。
まず、支援の流れとしては、最初、ステップⅠ、ステップⅡ、ステップⅢがあるんですが、どちらも家族の個別面談、これはⅠでもⅡでもⅢでも行います。御家族を手放さないで家族支援をしてまいります。その中で、少しずつグループワークがあります。心理教育を使いながら、御家族も力を取り戻す、エンパワーメントを高める作業をしながら、母親勉強会、父親勉強会と分けて、毎週火曜日ですが、行っております。
そして、次の段階で、親御さんも多少元気になると、今度は自宅の中でいろんな工夫をします。個別面談も教室も継続しながら、少しずつうちの中で本人が動き出す気配を感じてきます。そろそろチャンスかなと思えばアウトリーチを開始したり、その手前のところでもうこちらを訪れる彼らも多いです。
そして、ステップⅢになると、本人がもう居場所に登場してまいります。
というように、これは具体的に書いておりますが、個々の様子と困っていること、それから具体的に家族がせねばいけないこと、そして子供の心を理解すること。年齢とそれから毎日昼夜逆転、ゲーム三昧の姿で判断ではなくて、物を言えない子供たちの心の中を理解する教室があります。目的は、本人の理解、それから余裕が出てくること、御家族に、そして本人が安心して家庭の中で過ごせるように。その結果、土台が安定してまいります。
次の段階では、個別面談も、それも継続しながら、いろいろ御家庭の中で具体的な工夫を繰り返していただきます。そして、その作業ができたかどうか振り返りながら、また新たに違う工夫をしてみるとか、家族自身のモチベーションを高めていきます。それが、焦りだった御家族がだんだん希望が見えてまいります。そのタイミングを見てアウトリーチ、そして本人が登場します。本人にすれば、安定した家庭があるので外に行きたくなるわけですね。
最後の段階なんですが、これも必要に応じて個別面談を行います。そして、家族教室もつながっております。長い人では、もう卒業した後も親御さんは家族教室に参加されて、また辞めたらどうしよう、仕事をしたんだけど、また辞めてもいいように親として力強く支えられるようにしたいという思いがあり、教室に参加される方もいらっしゃいます。
そして、今度はフリースペースに彼らが登場したときですね、そこではとても大事な役割を果たします。不安を和らげます。個から多数に、二人称になり、三人称になり、グループになり、集団になる。
元々、子供たち、私たち子供の頃は、集団の中で仲間をつくり、集団の中で冒険をして、傷ついて、力を付けながら大人へと成長していくわけなんですが、今の社会はどうしても個を重要視する社会であり、核家族であり、その結果、子供は、弱音を吐けない、誰にも言えない、相談できない、家族も孤立するという環境の中で、ますます不登校、引きこもりがちになってまいります。
その中で、子供たちが出てきたら、外に出る安心感と仲間への興味とかつながることの喜び、そういうものを体験いたします。目的は自己肯定になります。そして、目標を見付け、覚悟を決めて、最終的には自分で決断ということですね。
そして、これら三つのステップを家族の状況に合わせて臨機応変に繰り返しながら、回復のストーリーを描いていきます。その支援の中で、やはり居場所というのは、彼らの居場所は不可欠になってまいります。たかが居場所ではなくて、されど居場所というものがとても重要視されます。
その後、今度は外へ向けます。彼らが望む社会への一歩の中で、地域との関わりとネットワーク、これは段階的にトレーニングをしてまいります。地域社会の中に、ボランティア活動をしながらとか、一つのわたげの社会という中から、今度は外に向いた社会へ飛び立つわけです。ボランティア活動をしたり、それから、あとはグループで仕事も引き受けます。いろんなお仕事を地域の中で引き受けながら、それを一人ではなくて数人とかグループで仕事をして代価を得て働く喜び、そしてそのお金を使ってみる、そしてまだ欲しくなるというように目的を持ってまいります。
就労したりバイトをしたり、そして、この中にボランティア活動は数多く昔からあります。障害者施設と高齢者施設に行きながら、自分よりも少し弱い人たちの力になる。自分が一番弱いと思っていたのが、自分でも役に立てるんだなということを実感してまいります。そして、地元の商店街のお祭りでかなり活躍します。高齢者社会になってまいりましたので、地元のお手伝いをしたりですね。そうやってラジオ番組も毎週持っております、「それいけ!わたげ青年団」。という中で、地域の方々の彼らを見る目が変わってまいります。とてもいい子たちだな、ほっておけないとなってまいります。
そして、働く練習、ここに書いてあるように、皆さんのお手持ちありますので、どうぞ御覧ください、仕事体験をたくさんして自信を付けてまいります。最終的に、今度は仕事実践トレーニングで、大手病院の中、大手の病院なんですが、その中でのカルテ整理だとか、資材とかそんなものを院内に運んだり、それからデイサービスの送迎、スタッフをしたり、寺院内での仕事をしたり、そして、そこで正社員に雇っていただけるというところまで今充実してまいりました。
今まで就職した数多くの彼らですが、自動車一級整備士を取って、小学校四年生から不登校だった子が、私どもの学習支援の中で高認を取って、整備士の学校四年間行って一級を取り、今外車のディーラーの中で働いていたり、おすし職人になったり、それからパティシエになった子たちやら、それからデイサービスの職員になったり、たくさん様々なところに今就職をしております。
ところが、一年に一度、私たちはNPO法人、社会福祉法人で旅行に行きます。大旅行なんですが、そこに卒業生も加わります、お土産を持ってですね。こういう一つの彼らの社会というものを、個から少し集団の中、そして一般の社会に溶け込んでいく、このプロセスを、やはり今必要なのかなと感じております。
一番問題なのは、今、グレーゾーンと先ほど言いましたが、障害も当てはまらないグレーの人たちの就労の場所。一般就労だとどうしても続けられません。やはり遅いとかですね、動きがどうも遅いとか、早くやってとか、どうしてこんなのもできない。なかなかスムーズに動けない彼らにとっての中間就労をつくらなければいけないという問題が目の前にあるんですが、これは私たちの大きな課題でもあります。
そして、まとめとしては、たくさんあるんですが、やはり、自分で引きこもる、それから職場を辞めるという決断した彼ら、それからがかなり苦しみを背負うわけです。もう少しやる気が出たら動けるだろう、最初はそう思うわけです。自分はやる気がないだけだ、やる気が起こったら絶対できると思って自分で判断して引きこもったり職場を辞めるんですが、ところが社会は待ってくれないわけです。止まっている間に自分の友人はどんどん成長してある程度のところまでいる、それを常に彼らは気にするわけですね。自分の友人が今どこに所属しているか、これが彼らに大きくのしかかってくるわけですね。そうやって引きこもりというのはかなり長期化してまいります。
最近はやっぱり五十代の引きこもりの御相談もかなり多くなってまいりました。御家族が地域包括支援センターを使うようになって、自宅に引きこもっている人がいらっしゃいます、どうしたらいいんでしょう。御両親のケアもあるんですが、御本人もいるということで、大きな問題がこれから起こってくるかなと思います。
それも含めて、例えば四十代でも、一応、私たちの窓口に来ていただければ、ある程度、人とつながる喜び、そして少し自分のお小遣いを働いてみる、手応えを感じて、そのうちに生きていきたい、そして自分らしい生き方もしたいし、幸せになるという希望も持ちたいと思ってもらえるような少し社会をつくっていきたいなというふうに感じております。これは私たちだけではできない。やっぱり地域の横の連携とか、連携、連携、つながるといっても机上の上だけのつながりではなくて、本人のきちんとした心のつながりを少し重く感じていきたいと思っております。
本人と御家族への後期支援もあります。巣立つ子たちが大勢います。その中でもう一つおまけがあります。卒業生たちがこうやって月に一度飲み会を行います。仙台は国分町とあります。そこに一か月に一度集まるわけです。大体三十五、六名が集まり、居酒屋さんで飲み放題、食べ放題で、食べて安否確認。そして、来月はこの日ねというふうに決めながら、だんだん来なくなると、仕事場に定着しているというように安心できます。
家族は一泊研修もあります。泊まりながら、少し御自分たちもリフレッシュしながら一年の振り返りを行い、スタッフも一年の振り返り、御本人たちも一年の振り返り、そして来年度に向けてまた目標設定をするという一つの研修を毎年行っております。
というように、ありがとうございました、急いで映像を映しましたけれども、彼らが、一人の人が、傷ついた困った人たちが、困難さを抱えた人たちが社会に出るまでという流れを、一つのプロセスを考えながら段階的に支援することできちんと自分自身というのを見付けるという支援をしてまいりましたという御報告させていただきます。
以上でございます。
○会長(増子輝彦君) ありがとうございました。
次に、竹信参考人にお願いいたします。竹信参考人。
○参考人(竹信三恵子君) 私は実は長く新聞記者をやっておりまして、そのときから非正規雇用がどんどん増えていくということで関心を持ってまいりました。その中で若者、女性に特にその比率が高いということで、若者の働き方にもずっと取材をしてまいりました。二〇一一年から今の大学で教員として働き始めるようになり、そこで実際に若者たちの就職とか考え方とかに触れていくようになり、かなり危機感を抱いています。
どういうことかといいますと、ほとんど若い人たちは、自分が働く権利とか、どうやって自分の問題を解決していいのかという知識を持っていないということです。最近はキャリア教育が盛んになって、会社にちゃんと入る、仕事を見付ける、そういうような教育は随分広がってきました。ただ、そのときに、何か不当な目に遭ったり困ったことに遭ったときに、自分を助けてくれるものは何なのかと、どういうような権利があって誰に相談すればいいのかというような、言ってみたら働く人にとってはもう基本的な知識というようなものについてほとんど知らないということが、実際、授業なども通じて分かってきたということです。そのために何冊か若い人向けの働く本も書きましたけれども、ちょっと今日はその状況についてお話をしまして、何が必要なのかということを皆さんと共有していけたらいいなというふうに思っております。(資料映写)
ということで、資料なんですけれども、まず、そんなこと言っても若い人はそんなに大変じゃないだろうとか、若い人に貧困なんかないだろうと、こういうようなのが一般的な世間の見方ではないかと思います。我慢が足りないからすぐ辞めるのだということもよく聞きます。なので、まず統計で、若い人の失業とか若い人の貧困とかということについて、やはりその世代が大変に圧迫といいますか影響を受けているということを確認しておきたいと思います。
最初にお示ししましたこれは、年齢合計を一〇〇としたときの失業率ですね。若者の失業率なんですが、これで見ると、一番高い、上の方にあるのがこれ若者、特に十五から二十四歳の若者の失業率が他の年齢と比べて高いということが分かると思います。
それから次に、特に低学歴といいますか余り学歴が高くない方ですね、大卒じゃない人たち、こういう方々の失業率が高いということで、学歴による格差というものがとても響いてきてしまっているということが一点。
それから、貧困というので見ますと、二つの山ができているのがお分かりになるかと思います。一番右側が高齢の方の貧困率ですけれども、左側のちょっと、十五から二十四歳ですかね、ぴょこっと上がっている山があります。ここで見ますと、若い方の貧困率がやはり高いということが見えてくるわけです。
こういう客観的な数字を基にしまして、何でそんなことが起こり得るのかということをちょっと考えていきたいと思います。
一つは、若い方が働き始めたときの労働条件の悪さということなんですね。非正規比率も高いですし、それから正規でも賃金は安い、非常に実は不安定です。しかも、それを何とか補填していくはずである親世代も、一九九七年以降どんどん賃金が下がり続けていますので、貧困化が進んでおります。教育費が削減されていまして学費が高騰していますので、それに伴って奨学金を借りる学生も増えています。それを返せないということで、仕事に就いて返そうと思うのですが、そこの賃金や労働条件が非常に低いということが多く、返し切れないで破綻してしまうというケースも少なくないということです。
しかも、破綻以前にそういうような圧迫された状況にあるので、何か声を上げてそのことを訴えていくことがもうできないんですね。辞めたらもう終わりだと思っていますから、黙っています。だから、見えてきません。そうすると、若い人は別に何も困っていないんじゃないかとか、わがままだから辞めるんだろうとか、我慢が足りないんじゃないかといった、そのような考え方がつい出てきてしまうということだと思います。
しかし、これを実際、私の記者時代の取材から、最近の若者の状況への調査を見ますと、違うということが分かります。
例えば、ここに製造業派遣の解禁などの規制緩和とありますが、元々男性の大卒以下の若い方のお仕事の安定職場としては製造業があったわけですけれども、この製造業の工員さんが、実は製造業派遣等々の規制緩和の中で正規の職が失われていくという事態が男性にも起きています。そういう中で、男性の賃金とかそれから雇用の不安定とかということが若い世代でも出てきているということが一つ。
それから次に、キャバクラ調査と書いたので何でいきなりキャバクラなんだと皆さん驚かれたかもしれませんけれども、これは御存じのように、接客ですね、お酒を飲んでいろいろ人とお話をして相手をする女の人、若い女性の職場です。最近、実はちょっと、キャバクラだからと言ってはおかしいんじゃないかみたいな、そのような偏見を裏切るかのように、ごく普通の女性たちがそこに働きに行っているということをお耳にされた方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。
私は実は、そこで働く人たちの労働組合、キャバクラユニオンと提携しまして、今聞き取り調査を進めているところなんですが、ここで見ると、見えてくるのは女性たちの昼間の仕事の不安定さと低賃金さなんですね。例えば、マッサージとかそれから美容師さんとか、いろんな専門職がありますけれども、そこがやはりかなり徒弟制的であったり不安定であったり賃金が安かったりするので、それだけの賃金では生活が成り立たないわけです。まして奨学金の返済などを抱えていますととても難しいということになり、そこで、手っ取り早く入職できて、しかも一見時給が高そうに見えるので大丈夫かなといってそこに入っていく、そうするとそこでいろんな人権侵害に遭うというようなことが見えてくるということなんですね。
ここにもちょっと書きましたけれども、言ってみたら女性専門職が低賃金化している。介護や保育の低賃金化はよく言われていますけれども、美容師、エステ、申し上げました。専門学校に行けば何とか仕事がゲットできていいだろうと思って、大卒はお金が掛かるので、高校出てから一遍専門学校に行くという方は多いです。でも、専門学校で資格を取っても、全部とは言いませんが、その中には資格を取ったからといって生活できる賃金がもらえるような仕事にすぐ就けるわけではないということが出てきているわけですね。そういう方々で、女性の中で取りあえずということで接待業に行くというのが広がっているということです。
ですから、生活が懸かっておりますからユニオンができるわけです。遊びで行っているわけではないからです、ということですね。その方たちが労働条件をちょっと良くするためにどうすればいいのか、困ったらどこに言えばいいのか。いろいろ相談しても、どうせ水商売でしょうと言われて相手にしてもらえないことが多く、それでユニオンをつくったという、そのような形になっておりますので、そこと提携して、今何ができるかを考えているところです。なので、いわゆるスキルが必ずしも貧困脱出にはつながらないという構造になっているということですね。
そう申し上げますと、有名企業に行ってちゃんと正社員就職をすれば大丈夫なんじゃないかというふうにお思いになる方もいらっしゃると思いますが、実は、特に営業職などを中心にかなり問題が見えてきております。特に、名前は挙げませんけれども、大手の企業の中の営業職で、女性のですね、完全歩合給で働いているというケースがあります。これが分かったのが、実はキャバクラ調査の中で分かってきたわけです。どうしてキャバクラで働くようになったんですかというふうに聞きますと、それは、正社員で採ってくれると思って喜んで入っていったら完全歩合給で、下手をすると、ノルマが達成できない月には社会保険を払ってしまうと収入がゼロになってしまったときがあった、それなのでキャバクラに働きに行って何とかつないだという、そういう体験談が出てきたからです。これまで十人聞いて、うち二人がそういう事例で挙がってきております。
ということで、ベテラン営業員の方は収入はおありになるんでしょうけれども、もう市場が限られてきてしまっていて、その方々で顧客さんは満杯になってきてしまっているので、後から入職した若い営業マン、営業員たちは大変厳しいということが出てきているということですね。そうなると、もう先が見えないという気持ちになってきて、辞めてしまう。結婚に行く人もいますし、そうではなくて、こういったお仕事で取りあえずということで命綱にするというケースも出てきているということです。
つまり、ばくっと言いますと、非正規化が極めて進んでいることがまず若者の貧困の一つですね。それから、正社員が、今申し上げましたように非常に劣化してきているということ。これは、正社員の中で、今女性の営業職の話をしましたけれども、男性でも実はある親御さんからの聞き取りで出てきた話がございます。
どういうことかといいますと、息子二人が正社員に入ったので、ああ、この時代に良かった良かったというふうに思って大喜びしたと。ところが、一年か二年したら契約社員に変わってしまったと言うのです。それを聞きますと、それはこらえ性がなくて正社員で頑張れなかったからではないのかとつい思ってしまうんですが、事情を聞くと違っておりました。つまり、何時間働いても、固定残業制などがあって、裁量労働制とかいろんなものがあって、働いただけの賃金がもらえない、全てサービス残業になってしまうという苦情です。ところが、契約社員は、時給は確かに高くはないかもしれないけれども、働けば働いただけ賃金がもらえるのでまだましだと言って転職されていったと、そういう親御さんのお話です。
ですから、これは、今の労働法制の中で高度プロフェッショナル制度とか裁量労働制とか挙がっておりますが、使い方を間違えるとそういった現象の温床になりかねないということにも御注目いただきたいと思います。
もう一つ気に掛かっているのが、バイトという名前の児童労働といいましょうか。昨年十二月に茨城県で十五歳の少女が転落、労災死に遭いました。この方は、屋根の上で太陽光パネルの清掃をしていて、屋根が破れて落ちた、十三メートル下に落ちて亡くなりました。そのときに安全帯も着けていなかったということです。バイトということになっていたので非常に軽く見られがちですが、実は、これは年齢からいっても労働の形態が過酷であるということからいっても、児童労働、悪い形の児童労働であるというふうに考えられます。
似たようなことで、二〇一二年に栃木県の中学三年生の十四歳の男子生徒が夏休みのアルバイト中に解体工事の現場で作業中に亡くなっています。これは大きなニュースになったので、覚えていらっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。このときは、当時の新聞報道によるものなので裏付けを取っていないのですが、雇用主の解体会社の社長さんが、そのときに中学校や親からの強い依頼があって約二十人中学生を雇っていたということを証言しているということなんですね。
ですから、かなり雇う側の方も、人手不足やそれからやっぱり特に中小企業の経営の悪化等々で安い労働力をどこからでも採ってきたいという気持ちになっている。それから、大手でいえば、経営がグローバル化で不安定化する中で、できる限りそのリスクを働き手に転嫁したいという気持ちになっている。そのような中で、一方で、働く側の若い方は、親御さんの支援が受けられない、それから奨学金という負担が掛かってきている、そういう中で辞められない。立場が弱いということのプッシュ、押し出し要因とプル、引っ張り要因の二つが合致してしまいまして、そこで若い方の労働の劣化が起こっているんじゃないかというふうにも考えられます。
これはちょっと試みに労基署で摘発された児童労働なるものの件数を見てみたんですが、これで見ますと、たしか二〇一一年から、じわじわですけれども件数が増えていますね。これは摘発の事件が大きいと増えてしまうので、一概にこれが実際に児童労働がどんどん増えているという証拠として使えるかどうかは分かりませんけれども、ちょっと気になるところです。
景気が良くなってくると風俗系又は接客系で未成年の女性を雇っていくということは当然ありますし、それから、今回のように、建設関係の労働力が逼迫している中で、一部、ちょっと呼び出して簡単に使える労働力としてアルバイトという名前で若い方を使っていく。そのときに、非常に抵抗力がないですから、そのようなことについての、安全措置についての知識がないということ、大変大きな問題になると思います。
かつては高所の作業というのは専門職の成人男性がやっておりました。ですから、もし安全帯がないなどということが分かれば、これはおかしいじゃないかといって抗議をしたはずです。それがアルバイトという名前で使われているために言えないということになってきてしまうわけです。
ということの問題点というのは何かというと、若い方が会社に入ること、仕事をゲットすることについては非常に熱心なんですね。だけれども、自分たちがじゃ入った後どうなるかということについての想像力が全くないです。どうしてキャリア教育として会社に入ることがそれほど発達したかというと、私たちの頭の中では終身雇用のイメージがありますから、とにかく一遍会社に入れれば何とか後はなるはずだと何となく思っているわけです。でも、それは定年まできちんと雇ってくれて、だんだん労働条件が上がっていくという時代の話です。
よく考えてみますと、入った後、解雇はよく起きていますし、しかも、電通の件にありますように、過労自死、過労自殺ですね、自死や、それから過労死というケースが若い方にも頻発してきています。そこまで行かなくても、先ほど申し上げましたように賃金が非常に低下している、生活できないから掛け持ちをして働いているなどという事例まで出てきており、在学時代から奨学金の問題もあるし大変なのでアルバイトをするという、かなり半労働、半分の労働ですね、という形での働き方の中で、もう若い方たちは一遍会社に入れば上がりという話ではなくなってきているわけですね。
ここにありますように、これは例の接客系で働いていらっしゃる三十代男性でしたけれども、もう雇用なんという言葉は私たちの世代の間では存在しませんよと言い放っておられました。要するに、もういろんなぐじゃぐじゃの融解状態が起きておりまして、従来型の働くということがもう頭の中にイメージができないということですね。それプラス、それをどう考えるかという枠組みを教えられていないわけです。とにかく押し込めばいいという教育が横行しているので、入った後こういう権利を使いなさい、本当はこうです、本来はこういうことが決まっていますということがほとんど出てきていないということです。
ですから、学生たちに聞いてもこんなことを言うんですね。賃金って労使交渉で決めるのはおかしいでしょう、会社が決めるんじゃないですか。賃金は労使交渉で決めるものですよね。つまり、私たちが自分の労働力を売る、それを交渉して幾らでもって買ってもらうかで値決めが起きるというのはごく普通の話です。それを、会社の言ったとおりに働かなくちゃいけないのが当たり前だと思っている。それから、長時間労働で過労死すると先生は言いますけど、会社は長時間働いてもらわないともたないんです、慈善事業じゃないんですから、先生は甘いんですと、こういうふうに言われたことさえあります。それから、長時間労働がいけないと言いますが、ゆとり世代ですぐ会社を辞めてしまう根性のない若い社員がいけない、これは自分たちのことを言っているわけです。最低賃金なんか上げない方が、上げたら会社が潰れるから、困るからやめましょうとか。最後には、先生、労働組合って悪い人たちなんですよねとか。もうすごいですね。
とにかく、自分たちがどっちの側にいるのかが全然分からなくなっていて、働いて、その権利を誰が守って、誰に頼めばいいのかということが全く分からなくなっている。
こういう話を授業の中で、いや、本来はこういう権利もあって、働く側が守られないと会社だって本当困るんだよという話をしますと、あっ、そうだったんですかというふうに彼らも気付くわけですね。そして、安心しましたと言います。これまで、会社に行ったら何でも会社の言うことを聞かなくちゃいけないのかと思って暗い気持ちになっていたけれど、味方になってくれる人もいるんですねと言われて、私は率直に言って、もう泣きました、本当に。でも、明るい気持ちになれましたと彼らは言いました。味方になってくれる法律とか相談窓口があるんなら、ひどい目に遭っても何とかなるかもしれないなという気持ちになれたと言うわけです。そういう気持ちを何とか若い人たちに教えてあげていただきたいと思うわけです。
実際、その授業をした後で、アルバイトで、調べてみたら自分のところのお店の給料が最低賃金を下回っていたということが分かって、店長に交渉したら、ああ、悪かったと言って上げてくれたという事例とか、有給休暇はバイトでも取れるんですよねといって言ったら、店長は、私も取っていないと言ったのですが、でもまあしようがないなと言って、試験の前に有給休暇をくれて勉強ができたとか、いろんなことがそれなりにはできるようになってくるわけです。
ということで、私が申し上げたいことというのは、若い人たちに、単に会社に入ったり、働く、仕事をゲットするということ、これもとても大事なことなんですけれども、それだけではなくて、働く権利、どうすれば身を守れるのか、何が困ったら守ってくれるのか、そういう原則を知る教育が必要なんじゃないかというふうに考えているわけです。
皆さんの、議員さんたちの御活躍でワークルール教育推進法というものも近く出るというお話になっていると伺っています。これをちゃんと早くまず出していただきたい、決めていただきたい、通していただきたい、これが非常にまず重要なことです。そうしないと、学校の方は、労働の権利とかそんなことを教えてしまうと会社に嫌われて就職が悪くなるんじゃないかとすごく心配しているんですね。なので、先生が少しやる気があって教えようかなと思って教えても、校長先生が、そんなことが知れ渡ったらうちの学校から就職が出なくなるというふうに極端に解釈をして、ちょっと引けてしまうというケースもあると地方では聞いています。なので、まず、それはそんなにとんでもないことではないのだということをきちんと法律を使って知らしめていただきたい。そうしないと、本当に学生たちはやられっ放しになってしまい、それこそ黙って死んでいく、黙って辞めていく、労働条件上げられないというふうになっていきかねません。
ただ、それだけでは足りないのです。なぜかというと、働く権利を知っているだけでは働く権利は使えないからです。相談窓口として彼らを支えてあげるものがもっと必要です。労働組合が今一七%ぐらいまで組織率が下がってしまっていまして、そういう意味でいうと、地域の小さい労働組合とか、それから労働弁護士さんたちの相談窓口、又は行政の相談窓口、こういったものに電話で、一体自分の今のこの症状は大丈夫なのか、そうじゃないのかということを聞くということがすごく重要になってきます。ですから、こういう窓口ももっと早く整備していっていただきたいというふうに思います。
アメリカでは、やはり雇用がかなり劣化していますし、非正規化も進んでおりますけれども、州によってはワーカーセンターといって、そういった相談に乗るようなセンターをつくっています。二百ぐらいあるそうです。州によってはそこに補助金を出しています。
そのような形で働く人の背中を押してあげないと、結局産業がどんどん悪くなっていくと、それが全部働く人に掛かってきてしまって、働く人が良くしてくれという声が上がっていくことによって、産業ももっと食べさせられるいい産業に変えていこうというマインドが出てくるんだと思います。単に働く人の言いたい放題言わせろと言っているのではないのです。いい産業をつくるためには、働く人からも、八時間働いて帰れるぐらいの賃金水準はどうやったらつくれるのか、それから、サービス残業なくすにはどうすればいいのかという押し返しの動きが出てくることで、産業界の方もいい仕事をつくれるような産業をどうすればいいのかということを一緒に考えていけるのではないかと思います。ということで、是非その点についての御協力をよろしくお願いしたいと思います。
ありがとうございました。
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
参考人の皆さん、本当にありがとうございました。
私は、青年の要求を実現する団体の責任者として、福島の出身なんですけれども、福島で活動をしてきました。リーマン・ショックのときには派遣切りの嵐が福島でも吹き荒れていて、路上で寝泊まりする若い人たちとも出会って、県に対して対策を求めるような活動をしてきました。こうした実態は過去のものではないんだと思います。
先ほど稲葉参考人からも話がありましたように、東京都が行った調査では、インターネットカフェなど、いわゆる調査対象の店舗にオールナイトで利用している住居喪失者が約四千人に上ると、そのうち二十代、三十代が五割に上るというような結果が出ています。
また、朝日新聞では、国の奨学金を返すことができずに自己破産をするケースが、本人はもちろんなんだけれども、本人だけではなくて保証人となった親族にも広がっていて、過去五年間で延べ一万五千人に上っているというような報道もありました。
低賃金や雇用破壊、長時間労働やブラック企業など雇用をめぐる問題、そして高い学費や奨学金など、若者を取り巻く状況は今も深刻だと思います。未来を担う若者たちが安心して学び働ける社会をつくるということは、一人一人の若者の権利を守るとともに、日本社会の発展につながるものだというふうに考えます。
そこで、参考人の皆さんにお伺いをしたいんですが、初めに稲葉参考人にお聞きします。
私は、東日本大震災と福島の原発事故を経験して、住まいは人権だということを強く実感をしてきました。原発事故によって避難区域の外から全国に避難をしている方たちの住宅無償提供が打ち切られて、今、公営住宅などから追い出されるというようなことが起きています。国の責任で必要な人に住宅を提供するということが必要だと考えているんですけれども、住まいの確保の重要性についてどのように考えていらっしゃるか、お聞かせください。
○参考人(稲葉剛君) ありがとうございます。
おっしゃるように、住まいは基本的な人権であるという観点に立って私たちも活動を続けているところですけれども、住まいを喪失してしまった、ホームレス状態になってしまった生活困窮者と多数お会いしてお話をする中で感じてきたことというのをお話ししたいと思います。
住居を喪失するということは、当然、日常的な生活の場を失うということでありますけれども、と同時に、特に働いている方にとっては、安定した仕事を見付けるのが困難になるという側面もあります。
例えば、今、マイナンバー制度というのが始まっておりまして、仕事に就くときにもマイナンバーを求められる、企業からマイナンバーを出してくれというふうに言われる機会が増えてきておりますけれども、ただ、ネットカフェに暮らしている方の中には、長期間そういう生活をしているために住民票がなくなってしまっていて、住民票が消除されている、消されているがためにマイナンバーを受け取れていない方もいらっしゃると。そうすると、マイナンバーがなかったりとか、あるいは住所がない、住民票がないということによって、次の仕事に就くのも困難な状態にあるという方もいらっしゃいます。
ですので、まずは安定した住まいを確保するということが重要だということを訴えたいというふうに思っています。
○岩渕友君 ありがとうございます。改めて住まいの確保が重要だということを確認することができたかなというふうに思います。
次に、秋田参考人にお伺いします。
引きこもりが今日のようにこれだけ広がった背景にある若者たちの実態がどのようなものだというふうにお考えなのかということをお聞かせいただきたいのと、あと、安定した雇用や社会保障を拡充することで誰でも安心して生きることができる社会をつくるということが必要だと思うんですけれども、その引きこもりの対策として必要だというふうに思うことがあればお聞かせください。
○参考人(秋田敦子君) ありがとうございます。
引きこもるというのは、今どなたにでも、誰でもそういう可能性は持っていると思います。特殊な子というよりも、どうしても、機械化されている社会と、それから核家族だとか、それから子供たちも、仲間と共同とか集団で群れることがなくなってきた、一人で遊ぶ時代ですから、そういう中で、人との関係をうまく築けない。これを言ったらどうなるだろうとか、とても人の評価を気にする時代ですから、誰が傷ついてもおかしくないような、そのぐらい、どちらかというとたくましさが、もちろん全部ではありませんけれども、弱いんだなと思います、デリケートと言ったらいいのか。
ですから、やはり私たちは、彼らにとったら引きこもらないように、不登校にならないためにはといえば、昔私たちが遊んだ社会だとか、人の、周りから育てられた、大人から育てられたとか、地域の方から注意を受けたとか、少なからずそういうちょっと社会をもう一度取り戻せるような活動が必要かなと思うのと、それから、安定した例えば職場、会社とか働き方というのも、これは安定というのは彼ら自身の心が安定できることが大事であって、それと安定できるようなメンタル的なものをもうちょっと育ててあげることと、企業側も、育てる企業、子育てというより、子供たちを、彼らを使い捨てではなくて少し育てていこうというような見方をしてくださる企業をいかにつくっていくかというところが、私たちも常に会社側と彼らとのマッチングをするというふうにすると辞めることがないですね。逆に、とても空白の時間が長かったけれども一旦仕事をしたら辞めないで続けるということは、多分、彼らの気持ちが安定したということと、それから会社側もこの子たちなら大丈夫というふうに、育てたいという気持ちになってくださったからかなと思います。
○岩渕友君 ありがとうございました。
次に、竹信参考人にお聞きをいたします。
先ほど、若い世代でも過労死が頻発しているという話もありました。そして今、秋田参考人からも、企業が使い捨てではなくてという話もありましたけれども、先ほども話にあった働き方改革が今議論されているわけなんですけれども、本当にいい方向の改革にという話もありましたけれども、そういう方向に改革するということで、どのような改革が必要だとお考えか、お聞かせください。
○参考人(竹信三恵子君) やはりもっと、ある意味同一労働同一賃金というのをきちんとやるとか、それから働く側に立った改革というものが必要になってきているのではないかと思うんですね。今の改革というのは、失礼ながら、やはり雇う側にとって非常にやりやすいという形になってきてしまっているので、それを働く人の側からやっていく必要があるというふうに思います。
○岩渕友君 ありがとうございました。
おっしゃるとおり、本当に働く側に立った改革のために私も力を尽くしたいというふうに思います。
以上で質問を終わります。