福島第1原発事故の費用は東京電力が負担するという原則を投げ捨て、帰還困難区域の除染費用を国が肩代わりする福島復興再生特別措置法改定案が19日に参院本会議で審議入りしました。質問で日本共産党の岩渕友議員は、「自主避難者」に「本人の責任」と言い放った今村雅弘復興相を厳しく批判。「被害者は自己責任、加害者は免罪する今村氏に復興相の資格はない。ただちに辞任すべきだ」と迫りました。
岩渕氏は、福島県民の1人として事故を振り返り「事故さえなかったら失うことのなかった命がある。生まれ育った自然豊かな故郷で、家族や友達とともになりわいや生きがいをもって生活する。当たり前のくらしと人生を奪われることもなかった」と強調。「自主避難者」の命綱である住宅無償提供が打ち切られるなかでの今村氏の暴言は、福島を切り捨てる安倍政権の姿勢があらわになったものだと批判しました。
岩渕氏は、除染費用への国費投入は東京電力の責任を免罪するものだとし「そのツケを国民に押し付けることは認められない」と主張。“賠償打ち切り”の姿勢を続ける東電に対し国として指導するよう求めました。
今村氏は、暴言で「おわび」を表明しながら辞任は拒否しました。
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○議長(伊達忠一君) 岩渕友君。
〔岩渕友君登壇、拍手〕
○岩渕友君 日本共産党を代表し、福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律案について質問します。
東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から六年がたちました。いまだに福島県内外で七万人を超える方々が避難生活を強いられています。
私は福島県の出身です。六年前の三月十一日、電気も水道も止まり、余震と寒さの中、眠れないまま夜を過ごしました。翌日、福島市の避難所で、必要なものはないか、困っていることはないかと歩いているときに飛び込んできたのが、福島第一原発が爆発したというニュースでした。これから一体どうなってしまうのか、言いようのない不安を抱えて過ごした日々を忘れることができません。廃炉・汚染水問題は先が見えず、事故は収束していません。
原発事故さえなかったら、失うことのなかった命があります。生まれ育った自然豊かなふるさとで、家族や友人とともになりわいや生きがいを持って生活する、この当たり前の暮らしと人生を奪われることもありませんでした。福島県民の苦しみは今も続いています。
それにもかかわらず、原発事故によって避難指示区域外から避難する方々にとって命綱である住宅無償提供が三月末で打ち切られました。今村復興大臣が自主避難を自己責任だと言い放ったことに対し、原発事故さえなければ避難をする必要はなかったと、怒りの声が全国に広がっています。
大臣の暴言はこれだけではありません。福島の復興はマラソンで例えると三十キロ地点と、あたかも復興がもう終盤であるかのような発言をし、福島県知事から、まだスタートラインにも立っていない地域もあると指摘されたばかりです。さらに、自主避難者に、ふるさとを捨てるのは簡単という驚くべき発言をしました。全国で怒りの声が起こり、東京に避難をしている方からは、ふるさとを捨てることができないから六年間も苦しんでいるんだと涙ながらの訴えがありました。
大臣は自己責任発言を撤回したと言いますが、何を撤回したのですか。辞任を求める声はますます大きくなるばかりです。このことをどう受け止めていますか。
今村大臣の暴言だけにとどまらず、今年の東日本大震災追悼式で安倍首相は原発事故に言及しませんでした。原発事故を終わったことにしようとしているのかと批判の声が次々上がりました。これらのことは単なる言葉や態度の問題ではありません。住宅無償提供を打ち切ったことを含め、福島を切り捨てる安倍政権の姿勢があらわになったものではありませんか。官房長官、お答えください。
子ども・被災者支援法では、移動及び帰還の選択を自らの意思で行えるよう、被災者がそのいずれを選択した場合でも適切に支援するものでなければならないと明記しています。先日の前橋地裁判決では、国と東京電力の加害責任を認め、避難区域の内外を問わず避難すること、避難を継続することの合理性を認めています。
官房長官、原発事故前にどこに住んでいたかにかかわらず、ふるさとに戻りたい人も戻れない人も、その選択が尊重されるというのが国の支援の基本姿勢であるべきです。答弁を求めます。
福島県が行った調査では、避難区域外から避難する世帯は三月時点で一万二千世帯を超えています。住宅の無償提供継続を求める意見書採択は百件にも上り、自主避難者を受け入れている兵庫県宝塚市の市長は、自治体の支援には限界があり、国が一律の支援策を打ち出すべきだと述べています。復興大臣、国の責任で住宅無償提供を継続するべきではありませんか。
本法案は、将来にわたって居住を制限することを原則としてきた帰還困難区域の中に特定復興再生拠点区域を定め、五年後をめどに帰還できるようにするというものです。そのために復興拠点の除染とインフラ整備を一体的に行い、その費用は東京電力に求償せず、国が負担するとしています。
除染の費用は汚染の原因者である東京電力が負担すべきという原則を真っ向から踏みにじるものです。東電救済を目的としたものではないのですか。事故の原因者である東京電力の責任を免罪し、そのツケを国民に押し付ける、こんなことは認められません。このことを国民にどう説明するのですか。
帰還困難区域が面積の八割を占める浪江町の町長は、国費を投じる公共事業となると必ず費用対効果の議論が持ち上がる、戻る人数が少ないと事業を行わないということになり、全エリアの除染が行われない可能性が高いと述べています。復興拠点だけでなく、住民が納得するまで徹底した除染を行うべきというのが住民の強い願いです。この願いにどう応えるのですか。
被害者には自己責任を押し付ける一方で、加害者である東京電力の責任は免罪する本法案を提案する今村大臣に、復興を進める資格はありません。直ちに辞任をするべきです。
暮らしとなりわいの再建なくして復興はありません。福島県商工会連合会が行った調査では、避難区域外事業者の六割が損害賠償の請求をしていないことが明らかになりました。自分の事業には賠償が出ないと思ったというのが最大の理由で、東京電力に問い合わせたときに、あなたは賠償できないと言われたからだという方がいる、こうした実態を先月の委員会で世耕大臣に示しました。商工業者の賠償請求に対して、加害者である東京電力が門前払いや値切り、打切りを続けていることも許されるものではありません。商工業への営業損害賠償の実態について東京電力に確認し、しっかり指導することを求めます。経産大臣、いかがですか。
地震のたびに原発は大丈夫かと不安になり、原発に何かあればいつでも避難できるように車に避難の準備をし、ガソリンが半分になったら給油する、原発事故から六年たっても福島県民の不安は消えていません。あれだけの原発事故があったのに、なぜ第二原発は廃炉にならないのか、まさか第二原発を再稼働しようというのか、不信感は募るばかりです。第二原発の廃炉をなぜ国が決断できないのか。
昨年十二月の福島県議会では、四度目となる第二原発廃炉を求める意見書が全会一致で採択されており、県民の総意です。政府は廃炉は事業者の判断と言いますが、東京電力は国のエネルギー政策の動向を見て判断すると述べています。第二原発の廃炉を国の責任で決断するべきです。経産大臣の答弁を求め、質問といたします。(拍手)
〔国務大臣今村雅弘君登壇、拍手〕
○国務大臣(今村雅弘君) 私の発言等に関するお尋ねがありました。
自主避難者の皆さんが原発事故のために避難されていることにつきましてはよく承知をしております。御指摘の発言につきましては、帰還されるかどうかは、仕事の関係や子供の教育等、様々な御事情がある中、それぞれ御本人の自主的な判断を尊重すべきとの思いで述べたつもりであります。しかしながら、原発事故のために避難しておられるにもかかわらず、避難そのものまでが自らの責任のような伝わり方と印象を与えてしまったことから、この発言については撤回したところでありますが、改めてこの点について深くおわび申し上げます。
今後も引き続き、それぞれの方の御事情に応じて生活の再建が果たされるよう、福島県と連携し、しっかりと取り組んでまいります。また、私としても、引き続き、誠心誠意職務に当たり、被災者に寄り添い、被災地の一日も早い復興再生に全力を尽くしてまいります。
福島の自主避難者への住宅支援についてお尋ねがありました。
この度の応急仮設住宅の供与の取扱いにつきましては、福島県が住居の確保の市町村ごとの状況等を踏まえて判断し、災害救助法に基づいて内閣府に協議がなされ決定されたものであります。応急仮設住宅の供与終了に伴い、福島県では戸別訪問等を実施し、丁寧に避難者の御事情をお伺いするとともに、民間賃貸住宅の家賃補助や公営住宅の確保などを行っております。
復興庁としては、雇用促進住宅での受入れを関係団体に協力要請し、住宅の一部提供が行われることとなったほか、国土交通省とも連携しながら、公営住宅への入居円滑化の支援を行っているところであります。引き続き、それぞれの方の御事情に応じて生活の再建が果たされるよう、全国の生活再建支援拠点への支援や帰還に向けた生活環境整備を行うなど、福島県と連携し取り組んでまいります。
帰還困難区域の復興拠点における除染費用を国の負担とする目的及び国民への説明についてのお尋ねがありました。
帰還困難区域は、将来にわたって居住を制限することを原則とした区域として設定されており、こうした政府方針を前提に、東京電力は賠償の支払を実施しております。今回、帰還困難区域においては、こうした従来の方針から前に踏み出して、新たに住民の居住を目指す復興拠点を整備することといたしました。この整備は、復興のステージに応じた新たな町づくりとして実施するものであるため、除染費用を国の負担の下で行うこととしております。したがって、改正法案は東京電力を救済することを目的としたものではありません。
なお、福島原発事故に係る事故収束や賠償の対応については、事故の当事者である東京電力が最後まで責任を持って行うこととし、昨年十二月二十日に閣議決定した政府方針においても、東京電力に福島復興に向けた責任を貫徹させていくと明記をしております。
また、除染を国の負担で行うことについて国民の御理解をいただくため、法案に関するこれまでの国会審議においても説明申し上げているところでありますが、引き続き丁寧な説明に努めてまいります。
帰還困難区域の復興拠点以外における除染についてのお尋ねがありました。
本法案は、可能なところから着実かつ段階的に帰還困難区域の復興に取り組むものとして、まずは特定復興再生拠点区域を定めて除染やインフラ整備等を集中的に進め、避難指示解除を行い、復興再生を推進するということを具体化しているものであります。
他方、復興拠点外を含めた帰還困難区域全体の取扱いについては、放射線量を始め多くの課題があり、帰還困難区域を有する市町村の置かれている状況も様々であることから、今後の検討課題であるものと認識しております。(拍手)
〔国務大臣菅義偉君登壇、拍手〕
○国務大臣(菅義偉君) 福島復興への安倍政権の姿勢についてお尋ねがありました。
東日本大震災は、津波、地震、そして原発事故の複合災害であり、三月十一日の追悼式典におきましても、原発事故の被害者も当然含めたものであり、総理の式辞でも福島復興に向けた強い思いを述べられていたと承知をいたしております。
また、三月十日に行った復興推進会議・原災本部合同会議においても、総理から、原子力災害からの復興再生が東北の復興のために欠かすことができないとして、閣僚全員が全力を尽くすよう改めて指示をしたところであります。政府としては、原子力災害被災地域の復興に向けて、引き続き全力で取り組んでまいります。
福島の被災者に対する支援についてのお尋ねがありました。
子ども・被災者支援法においては、被災者が福島における居住、他の地域への避難、元の地域への帰還のいずれを選択した場合であっても、適切に支援することとされております。
政府としては、同法の趣旨も踏まえて、被災者それぞれの御事情に応じ生活の再建を果たされるよう、インフラの復旧・復興、医療、教育、鳥獣害対策、なりわいの再生など、帰還に向けた生活環境の整備、さらに、全国二十六か所で被災者の相談にきめ細かく応じる生活再建支援拠点の支援などに取り組んでいるところであります。今後ともしっかりと取り組んでまいります。(拍手)
〔国務大臣世耕弘成君登壇、拍手〕
○国務大臣(世耕弘成君) 岩渕議員にお答えいたします。
賠償についてお尋ねがありました。
東京電力は、二〇一四年に策定した新・総合特別事業計画において、最後の一人が新しい生活を迎えることができるまで、被害者の方々に寄り添い賠償を貫徹するという方針を明らかにしているところであります。東京電力がこうした取組を適正に行い、該当する最後のお一人までしっかりと請求していただくことが重要です。
経済産業省としても、新・総合特別事業計画の履行状況の評価等を通じて、東京電力の取組状況を確認し、必要に応じてしっかりと指導してまいります。
福島第二原発の扱いについてお尋ねがありました。
福島第二原発については、福島県の皆様の心情を察すると、これまでに新規制基準への適合性審査を申請している他の原発と同列に扱うことは難しいと認識をしております。まずは、東京電力が地元の皆様の声に真摯に向き合った上で判断を行うべきものと考えております。(拍手)