2020年1月30日(木) 参議院 本会議「2019年度第1次補正予算案」
参院本会議は1月30日、2019年度補正予算案を自民・公明両党、日本維新の会の賛成多数で可決し、成立しました。地方交付税法改定案など補正予算関連法案は日本共産党などを除く賛成多数で可決、成立しました。
補正予算案の総額は4兆4722億円。第2次安倍政権成立時の13年度補正予算5.4兆円に次ぐ規模です。
補正予算案の採決に先立って、日本共産党の岩渕友参院議員が反対討論しました。新型肺炎の感染拡大を防止する対策強化を要求。桜を見る会疑惑で安倍首相の私物化の実態が明らかになったとして野党の求める資料を開示するとともに、カジノ汚職の徹底解明と、カジノの実施中止を求めました。
補正予算について、災害対策費は復旧に必要な支出だと強調。被災者生活再建支援制度の拡充を求めるとともに、石炭火力・原発から気候変動への対応は喫緊の課題だとして、再生可能エネルギーへの転換を進めるよう要求しました。
予算案に反対する最大の理由は軍事費の計上だと強調。補正予算案に盛り込まれた軍事費の9割は兵器購入の分割払い前倒しであり、容認できないとして、憲法9条を生かした政治への転換を求めました。
消費税10%への増税で、新たな消費不況に陥りつつあると批判。消費税増税分とほぼ同額の国債4.4兆円を発行し、新規大型開発の大盤振る舞いをしていると告発しました。
富裕層・大企業への応分の負担を求め、消費税を5%に戻すなど国民生活を応援してこそ、景気の好循環をつくることができるとして、格差是正、くらし応援の政治に改めるよう求めました。
本会議に先立つ予算委員会で、山添拓参院議員が補正予算案に対する反対討論を行いました。
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2020年1月30日(木) 参議院 本会議
○岩渕友君 私は、日本共産党を代表して、二〇一九年度第一次補正予算案に反対の討論を行います。
新型コロナウイルス関連肺炎の感染が拡大し、重大な事態になっています。空港などの検疫体制強化とともに、医療機関や保健所などの体制確立と強化など、政府が総力を挙げて感染拡大を防止する抜本的な対策の強化を求めます。
補正予算の審議を通じ、総理による公的行事、桜を見る会の私物化の実態がいよいよ明らかになりました。総理の地元事務所が功績、功労と関係なく幅広く参加者を募り、地元後援会や支援者を参加させ、昭恵夫人までが多数の友人、知人を推薦し、それがそのまま招待されていたことを総理も認めました。長年の慣行などではなく、安倍政権が七年にわたって事実上の公職選挙法違反、買収をしていた疑いがいよいよ濃厚となりました。
総理が二〇一八年、自民党総裁選を前に、桜を見る会に自民党の地方議員を大量に招待していたことも明らかになりました。総裁選をめぐる桜を見る会利用という私物化疑惑です。
悪徳マルチ商法を展開したジャパンライフの山口会長に総理枠で招待状が届けられた疑惑も重大です。この招待状が悪用され、二千億円とも言われる被害の拡大につながり、その道義的責任が問われています。
こうした疑惑の究明を求める声に対し、安倍政権は、招待者名簿は廃棄したなどと徹底した組織的隠蔽を図ることで逃げようとしています。
しかし、個人情報を盾にした名簿廃棄の理屈が成り立たないことも明白となりました。招待者名簿提出に際しての政府及び自民党の連絡文書には、行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づいて名簿全体を公開されることもありますなどと明記されていました。公開が前提だったことは明らかです。森友問題の反省で作られたガイドラインを曲解し、あくまでも隠蔽を図ろうとしていることも明らかになりました。うそとごまかしを重ねることはやめるべきです。
直近の世論調査では、総理の説明に納得できないという回答が七割を超えています。政府が、野党の求める資料を直ちに開示し、真実を語ることは待ったなしだということを厳しく指摘するものです。
総理自身が成長戦略の目玉として推進してきたカジノ事業をめぐって、担当副大臣だった現職国会議員が収賄容疑で逮捕されるという重大事件が起こりました。
カジノ実施法の強行に当たり、参議院の附帯決議は、収賄等の不正行為を防止し、選定の公平性、透明性を確保することとしており、最優先で全容を解明しなければなりません。野党は、衆議院にカジノ廃止法案を共同提出しました。疑惑の全容解明とともに、カジノの実施は中止することを強く求めます。
補正予算案について述べます。
本案のうち、相次ぐ台風、豪雨による災害からの復旧対策費は、緊急かつ必要な支出です。お亡くなりになられた方々に哀悼の意を表するとともに、被災された方々にお見舞いを申し上げます。
私も、発災直後、福島県で被災された方々からお話を伺いました。自宅が浸水したけれど、高齢だからアパートを借りることができない、修理をするべきか、転居をするべきかなど、多くの方が不安を抱えており、生活再建に向けた更なる対応が政府に求められています。
とりわけ、住まいの再建に向けた支援の抜本的な強化が必要です。被災者生活再建支援制度による支援金の対象に半壊と一部損壊は含まれていません。制度が実態に合わないとして、改善を求める声が広がっています。制度の対象拡大、全壊で最大三百万円となっている支給額についても五百万円に引き上げるなど、拡充を求めます。
相次ぐ災害の被害からも、気候変動への対応は喫緊の課題です。世界の流れに反して政府が石炭火力発電所の建設、海外石炭火力発電所への投融資を進めていることに国際的な批判が強まっています。政府は、石炭火発、原発に固執するエネルギー政策から、地域や市民が主体となる分散型の再生可能エネルギーへの転換を進めるべきです。
本案に反対する最大の理由は、巨額の軍事費の計上です。そもそも、財政法上、補正予算は予算編成後に生じた事由に基づく特に緊要な場合に限って認められます。ところが、安倍政権は、この間、戦闘機、護衛艦、ミサイルなどの購入経費を補正予算に盛り込むやり方を常態化させてきました。これは、補正予算の趣旨を根本からゆがめるものです。
本案にも、この傾向が顕著に出ています。軍事費は四千二百八十七億円に上りますが、その九割を占めるのが、F35A戦闘機や空中給油機などを取得するための歳出化経費、つまり兵器購入の分割払の前倒しです。既に発注済みの兵器の後年度負担分を繰り上げて払うことに緊急性はなく、ましてや経済対策でもありません。
補正後の後年度負担は、新規が二・六兆円、総額は五・四兆円に達しています。本案は、将来の財政を圧迫し、国民生活に必要な施策ができなくなる危険性を増大させるものであり、断じて容認できません。
政府が行うべきは、巨額の軍事費で際限のない軍拡に突き進むことではありません。憲法九条を生かした政治への転換こそ求められていることを強く指摘するものです。
消費税一〇%増税の強行で、日本経済は新たな消費不況に陥りつつあります。山形で創業三百二十年の老舗百貨店が消費税増税を契機に自己破産するなど、地域経済の苦境とともに、増税による売上げの減少や複数税率の対応などで中小・小規模事業者の廃業が加速しています。消費税増税が暮らしと経済を冷え込ませ、二〇一九年度の税収見通しも二兆三千百五十億円もの減額となっています。
本案は、その穴埋めのために二・二兆円、経済対策のために二・二兆円、合わせて四・四兆円もの国債を発行しようとしています。これは消費税増税分とほぼ同額です。一方で、高速道ネットワーク化、世界レベルのホテル建設を含む民間都市開発、日本の大企業によるMアンドAやインフラ整備など、新規大型開発の大盤振る舞いをしています。不要不急の財政支出はやめ、社会保障、暮らしに予算を回すべきです。この点からも、本補正予算案に賛成できません。
富裕層、大企業に応分の負担を求め、消費税を五%に戻し、社会保障の充実、国民生活の応援をしてこそ、景気の好循環をつくることができます。
格差を是正し、暮らしを応援する政治へ、税金の集め方、使い方を抜本的に改めることを強く求めて、反対討論を終わります。