2020年3月17日(火) 参議院 予算委員会「2020年度予算 一般質疑」
「原発事故被害者への住まいと賠償の打ち切り許さない」
関電原発マネー還流問題 利権の追及は不可欠
日本共産党の岩渕友議員は17日の参院予算委員会で、関西電力の第三者委員会が、関電役員ら計75人が福井県高浜町の元助役と関連企業から約3億6千万円を受け取ったなどとする調査報告書を公表したことを受け、「原発マネー還流」問題を追及しました。
岩渕氏は、昨年の同委で日本共産党の井上哲士議員が金品提供は「原発マネーの還流だ」と指摘したことにふれ、報告書では、元助役の金品提供の目的が関電からの工事発注約束などの見返りと利益を得る仕組みを維持することだったとして、原発マネー還流を認定したと指摘。「原発は国策で進めてきたもの。原発マネーの原資は、電気料金と電源開発促進税。国の責任をどう考えているのか」とただしました。
梶山弘志経済産業相は「報告書では関電の不適切なガバナンスが原因だ。原子力政策を推進してきたことが問題が生じた原因の本質として指摘されているわけではない」と強弁しました。
岩渕氏は、報告書が東京電力福島第一原発事故以降、再稼働のための安全対策工事などを通じて金品額が急増したと認定したことは重大だとして、「関電はじめ全国の電力会社の再稼働をめぐる利権を徹底的に追及することが不可欠だ」と述べ、政府・経産省が疑惑解明に責任を果たすよう強く求めました。
被害者切り捨てるな 国と東電
日本共産党の岩渕友議員は17日の参院予算委員会で、東京電力福島第一原発事故被害者への住宅の無償提供や損害賠償の打ち切りを許さず、国と東電に被害者の生活と生業(なりわい)の再建に最後まで責任を果たすよう求めました。
岩渕氏は、福島県浪江町から福島市に避難している70代の夫婦の「墓参りも自由にできず、造林し手入れしてきた山はこの10年、手つかずのまま。先祖代々引き継いできたものをゼロにされるのはつらく、悔しい」との悲痛な声を紹介し、重く受け止めるよう訴えました。
そのうえで、3月末に富岡、浪江両町と葛尾、飯舘両村の「帰宅困難区域」を抱える自治体からの避難者への住宅無償提供が終了する問題を追及。「帰ることができないのに打ち切るのは被害者切り捨てだ」として、国の責任で継続するよう迫りました。田中和徳復興相は「自治体と協議してこのようにした」と答弁。岩渕氏は「国策で事故が引き起こされた責任を感じていない」と断じました。
さらに岩渕氏は、原発事故の裁判外紛争解決手続き(ADR)で、東電が和解案受け入れの条件に将来の請求を放棄させる趣旨の「清算条項」を要求する実態があると指摘。東電の小早川智明社長は、清算条項をつけた和解件数が2012年101件、13年5件、16年1件、17年8件、18年54件、19年42件となっていることを初めて明らかにしました。
岩渕氏は、清算条項が原発事故賠償になじまないため事故後に減っていたが近年急増しており「東電が清算条項を付けるなら和解に応じる」例もあることを示し、「加害者が被害者に損害賠償をあきらめさせようとしている」と批判。東電を指導してやめさせるよう求めました。梶山弘志経済産業相は「そういった状況があれば東電を呼んで話を聞いて指導したい」と述べました。
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質問資料① 避難指示区域の概念図(2020年3月10日時点)【PDF版】【画像版】
質問資料② 応急仮設住宅の無償提供終了後(2020年4月以降)の見通しについて【PDF版】【画像版】
質問資料③ 東電福島第一原発事故賠償 裁判外紛争解決手続(ADR)における「清算条項」を付した和解件数の推移【PDF版】【画像版】
全編版
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○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
初めに、関西電力の原発マネー還流疑惑について聞きます。
第三者委員会報告書が十四日、公表をされました。内部調査報告と比べ、何が明らかになったでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 第三者委員会は、社内調査が二〇一一年から、七年間遡り、現役二十六名をヒアリングしたという調査と異なり、独立した四名の委員、特別顧問、そして約二十名の弁護士から成る事務局が、一九七〇年代まで遡り、現役のみならず、退職者、社外関係者二百十四名に対してヒアリングを行うとともに、六百五名に対する書面調査やデジタルフォレンジック調査を行い、全社員、グループ会社社員、OBを広範に対象とした通報窓口を設置するなど、本格的な調査を行ったものと承知しております。
この結果、一昨年九月の関西電力の社内調査書では、金品を受領した役職員の数が二十三人で、総額が約三・二億円とされていたのに対しまして、第三者委員会の調査報告書では、人数は七十五人、総額は三・六億円となりました。
また、森山元助役の金品提供の目的については、社内調査報告書では自己顕示欲を満足させるためとされていたのに対し、第三者委員会の調査報告書では、見返りとして、関西電力の役職員に自らの要求に応じて自分の関係する企業への工事等の発注を行わせ、そのことによってそれらの企業から経済的利益を得るという構造、仕組みを維持することが主たる目的であったと認定をされています。
さらに、社内調査報告書では指摘されていなかった点として、関西電力から森山氏関連企業に対する事前の発注約束が行われていたこと、社内調査報告書そのものの扱いについて、ごく一部の経営陣上層部の判断で取締役会への報告を行わないとの方針が決定されたこと、金品を受領した役員が本件に伴う追徴課税の補填を退任後に受けていたことなどが第三者委員会の調査報告書により新たに明らかになったと承知をしております。
○岩渕友君 昨年の予算委員会で、我が党の井上哲士議員が、金品提供について、原発マネーの還流だと、こういうふうに指摘したのに対して、当時の経産大臣は、原資は明らかになっていない、第三者委員会の報告を受けて厳正に対処すると答弁をしました。
報告書は原発マネーの還流を認定しています。原発は国策で進めてきたものであり、原発マネーの原資は電気料金、電源開発促進税です。国の責任をどう感じているのでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 今回、第三者委員会の調査報告書で明らかになりました広範な役職員が金品を受領していたこと、事前の発注約束や特定の取引先に事前の情報提供を行うなど不透明な工事発注、契約があったこと、社内調査の非公表を不適切なガバナンスの下で決定したことなどは、公益事業者としての信頼を失墜させる大きな問題であると認識をしているところであります。
そのような問題が生じた原因は、調査報告書によれば、特定の部門にとどまらない関西電力全体としてのガバナンスの欠如と、コンプライアンスよりも事業活動が優先されてしまう、またユーザーや社会一般の視点が欠落してしまうという内向きの企業体質であると指摘をされていると認識をしております。
こうしたことを踏まえて、今般、同社に対しまして、外部人材を活用した実効的なガバナンス体制の構築やコンプライアンス体制の抜本的な強化などを内容とする業務改善命令を発出をしたところであります。
調査報告書では原子力政策を推進してきたことが問題が生じた原因の本質として指摘されているわけではありませんけれども、国民と地域社会から信頼が得られる形で原子力政策を進めていくべく、国として責任を持って取り組んでまいりたいと考えております。
○岩渕友君 それだけでは済まない問題があるわけですね。
報告書が、東京電力福島第一原発事故以降、再稼働のための安全対策工事などを通じて金品の額が急増したと、こういうふうに認定したことは非常に重大です。これは関電だけの問題ではありません。国の責任で全国の原発について調査を行うべきです。
○国務大臣(梶山弘志君) 今回の事案の原因は、調査報告書において、関西電力の、コンプライアンスよりも事業活動が優先されてしまう、またユーザーや社会一般の視点が欠落してしまうという内向きの企業体質が数々の原因に共通する根本的問題であったとされており、これらを踏まえて、三月十六日月曜日に、同社に対しまして、コンプライアンス体制の抜本的な強化や、工事発注、契約に係る業務の適切な、適切性、透明性の確保などを内容とする業務改善命令を発出したところであります。
その他の電力会社に対しましては、今回の事案が発覚した昨年の段階で各社に確認を行っております。その結果、今回の問題のような事実は確認をされなかったとの回答を得ております。さらにまた、今般、関西電力に対して業務改善命令を発出したことを受けて、改めて各社にコンプライアンスの徹底や工事発注等に係る適切な業務執行を含め、適切かつ公正な業務運営に取り組むように指示を出したところであります。
引き続き、各社には、国民から不信を持たれることがないよう、適切かつ公正な事業運営に取り組んでほしいと考えております。
○岩渕友君 改めて全国の原発について調査をするべきですよ。それ、当然やるべきことですよ。
原発事故後、再稼働に反対をする圧倒的な世論を政府が踏みにじってきました。再稼働をめぐる利権を更に徹底的に追及する、これが不可欠であるとともに、再稼働そのものをきっぱりやめるべきです。関電任せではなくて、政府、経産省が疑惑解明に責任を果たすべきであり、国会は国政調査権を行使をして真相解明を行うべきだということを強く求めたいと思います。
東日本大震災津波と東京電力福島第一原発事故から九年が過ぎました。復興庁の調べでも約四万八千人もの方々が避難を余儀なくされています。被災者の生活となりわいの再建は途上であり、災害公営住宅での孤独死や心のケアなど新たな課題が明らかになっています。
期限ありきではなく、国が最後まで責任を果たすべきではないでしょうか。
○国務大臣(田中和徳君) 今御指摘がありましたように、発災から九年がたっております。今日、私どもも、福島県等々自治体の皆さんと力を合わせて、被災者の皆さんのお気持ちにしっかりと寄り添う、そして現場主義に立って対策を講じてきておるところでございます。
もちろん、今経産大臣からもお話があったように、原子力発電所の推進というのは国の政策であったわけでございます。そのことについては私どもも十分承知しておることでございまして、私どもも、今回のこの九年を迎え、十年に向かう中にありましては、さらに、国の責任でしっかりと福島県あるいは自治体、そして被災者の皆さんの意に沿えるように努力をしてまいりたい、この思いでございます。
○岩渕友君 期限ありきで支援を打ち切るようなことがあっては絶対にならないということを言っておきたいと思います。
福島県では、避難指示区域の内外を問わず被害は続いています。加害者である国が被害者の生活となりわいの再建に必要な対策を取るのは当然のことです。
三月十二日、東京電力を被告とした福島原発避難者訴訟の仙台高裁判決は、中間指針を超えて避難生活による精神的苦痛を増額し、ふるさとを喪失し変容させられた損害への慰謝料を認めました。
東京電力はこのことをどう受け止めていますか。
○参考人(小早川智明君) 東京電力ホールディングスの小早川でございます。
まず、当社の福島第一原子力発電所の事故から九年が経過した今なお、福島県の方々を始め、広く社会の皆様に多大なる御負担、御心配をお掛けしておりますことに心より深くおわびを申し上げます。
ただいま先生から御質問のありました判決につきましては、現在、判決内容を精査し、対応を検討しているところでございます。
なお、訴訟に関わる個別の内容につきましては回答を差し控えさせていただきたく存じます。
○岩渕友君 正面から答えようとしません。
先日、浪江町から避難をしている七十代の御夫妻から話をお聞きしました。自宅は帰還困難区域、原発事故後、体育館、ペンションと避難をし、福島市に来た。自宅への立入りも墓参りも自由にできない。自宅はイノシシの被害がひどく、帰還困難区域は置き去りにされたよう。一日も早く帰りたい。造林し、手入れをしてきた山はこの十年手付かずのまま。樹齢三百年のケヤキは震災前なら三百万円くらいで売れたはずだが、今やパルプと同じ値段にしかならない。山は六十年から七十年のサイクル、今植えないと孫に渡せない。先祖代々引き継いできたものを自分の代でゼロにされるのはつらいし、悔しい。安倍首相にこの荒廃した姿を見てほしい。こういう話です。
この思いをどう受け止めますか。
○国務大臣(梶山弘志君) 先日、双葉町、大熊町、富岡町の一部地域の避難指示が解除をされました。帰還困難区域として初めての解除となるわけであります。これにより、三月十四日にはJR常磐線が全線開通し、福島の復興を加速するものであると期待をしているところであります。
しかしながら、私自身も帰還困難区域を訪問し、その風景、情景を何度か見てきておりますけれども、いまだに多くの方々が避難生活を余儀なくされていることは重々承知をしておりますし、私の心の中にも重くその情景が重なっております。
このため、たとえ長い年月を要するとしても、将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除し、復興再生に責任を持って取り組むとの決意の下に、可能なところから着実かつ段階的に、政府一丸となって一日も早い復興を目指して取り組んでまいりたいと思いますし、全力を尽くしてまいりたいと考えております。
○岩渕友君 高裁判決は、東電の津波の予見可能性を認めた上で、原告を含む市民団体が繰り返し抜本的対策を求めてきたにもかかわらず、対策を取ってこなかった東電の悪質性を指摘し、慰謝料算定の重要な考慮事情としています。加えて、これ以上被害救済を先延ばしにせず、適切な対応を求めています。
上告なんてするべきではありません。どうですか。
○参考人(小早川智明君) 先ほどからの繰り返しになりますが、現在、判決内容を精査し、対応を検討しているところでございます。また、訴訟に関する個別の内容につきましては御回答を差し控えさせていただきたいと思います。
なお、当社にとって、三・一一の反省と教訓は、事故原因を天災として片付けてはならないことでございます。防ぐべき事故を防げなかったことを真摯に受け止め、安全に終わりがないことを胸に刻み、二度とこのような事故を起こさないよう、私が先頭に立ち、安全最優先の事業運営に取り組んでまいりたいと考えております。
私からは以上です。
○岩渕友君 被害者をこれ以上苦しめることは許されません。
文科大臣、中間指針をこれ直ちに見直すべきではありませんか。
○国務大臣(萩生田光一君) 仙台高裁の判決については報道で承知をしておりますが、現時点では判決が確定していないものと承知をしています。
これまでの東電福島原発事故に係る訴訟の判決については原子力損害賠償紛争審査会において報告を適宜行っておりますが、判決は確定前のものであり、また、各判決には内容にばらつきがあるため、現時点では直ちに中間指針等の見直しを検討する状況にはないことを確認いただいております。
いずれにしましても、文部科学省としては引き続き動向を注視してまいりたいと思います。
○岩渕友君 これだけの判決出ているわけですよ。高裁判決の重みをどう考えているのかと。実態見ても見直しは当然です。見直しを強く求めます。
住まいの確保も深刻です。資料の①を御覧ください。
これは避難指示区域の概念図です。三月末で、原発立地町の双葉町、大熊町を除く自治体の住宅無償提供が終了となります。具体的にどうなるでしょうか。
○政府参考人(青柳一郎君) お答えいたします。
福島県では、富岡町、浪江町、葛尾村及び飯舘村について、帰還困難区域を除く区域の避難指示が解除されているところです。解除区域内では、役場機能が戻るとともに、生活環境も一定程度整いつつあり、また、帰還者向けの災害公営住宅が整備されるなど、一部自町村内での住まいも確保できる状況になったことから、これら四町村については、その意向も踏まえ、福島県において、昨年八月に、町村ごとに一律に供与延長する取扱いを終了し、被災者の公共事業の工期等の関係により供与期間内に住居が確保できない場合など、被災者各々の個別の事情に応じて供与延長する取扱いに変更することとなったところです。
○岩渕友君 三月末で住宅の提供が終了する世帯数は幾つでしょうか。
○政府参考人(青柳一郎君) 福島県等の調査によりますと、本年の三月末で一律の供与を終了する四町村において、昨年四月時点で応急仮設住宅を供与していた世帯数は二千二百七十四世帯でございました。このうち、この一月時点で、百六十四世帯については、被災者の個別事情を考慮の上、供与期間を延長予定であるということでございますので、これを差し引いた二千百十世帯が母数ということになりますけれども、福島県の調査によりますと、このうち、現にもう退去済みの世帯というものがあるようでございまして、この数字はちょっと私ども福島県からいただいておりませんけれども、最大二千百十世帯が終了するということになります。
○岩渕友君 四月以降の住まいの見通しが立っていない世帯数、もう一回確認します。
○政府参考人(青柳一郎君) 福島県の調査結果によりますと、令和二年一月末時点で住まいの再建の見通しが立っていない世帯は二百十一世帯でございます。
○岩渕友君 見通しが立たない理由をどうつかんでいるでしょうか。
○政府参考人(青柳一郎君) お答えいたします。
これも福島県の調査結果によりますと、令和二年一月末時点で見通しが立っていない二百十一世帯について、その理由とそれに合わせた世帯の内訳でございますけれども、移転に向けて具体的に動き出していないというのが百五十三世帯、希望が決まっていないが二十六世帯、移転するつもりがないが六世帯、連絡が取れない、返信もないが十八世帯、また、居住実態が確認できないが八世帯で、合計二百十一世帯でございます。
○岩渕友君 資料二のとおりとなっています。
見通しが立たないのはまるで避難者の責任かのような言い方ですけれども、これ、原発事故で避難を強いられている方たちなんですよね。これまでは避難指示解除とともに住宅の提供を打ち切ってきましたけれども、今度は解除されていない地域まで打ち切ろうとしています。
三月末に住宅提供が終了となる四町村は帰還困難区域抱えています。帰還困難区域とはどういう地域でしょうか。
○政府参考人(新川達也君) お答え申し上げます。
平成二十三年十二月の原子力災害対策本部において、事故発生当時から五年間を経過してもなお年間積算線量が二十ミリシーベルトを下回らないおそれのある、当時五十ミリシーベルト超の地域を帰還困難区域といたしました。その後、平成二十八年八月に原子力災害対策本部と復興推進会議におきまして帰還困難区域の取扱いに関する考え方を示し、五年を目途に、線量の低下状況も踏まえて避難指示を解除し、居住を可能とすることを目指す復興拠点の整備等を行うことといたしました。
これを踏まえて、平成二十九年五月に福島復興再生特措法が改正され、特定復興再生拠点区域が制度として創設されました。この制度に基づき六町村が特定復興再生拠点区域復興再生計画を作成し、内閣総理大臣の認定を受け、除染やインフラ整備等を始めとする帰還環境の整備を進めております。今月には、帰還困難区域として初めて、双葉町、大熊町、富岡町において特定復興再生拠点区域の一部地域の避難指示解除を行ったところでございます。
今後は、令和四年から五年春頃の特定復興再生拠点区域全域の避難指示解除に向けて、引き続き、関係省庁と連携して、除染やインフラ整備等の帰還環境の整備に努めてまいります。
○岩渕友君 復興拠点以外の地域の避難指示解除はどうなっているでしょうか。
○政府参考人(新川達也君) お答え申し上げます。
特定復興再生拠点区域外につきましては、これまでも地元の皆様から御要望いただいており、大変重く受け止めております。
昨年十二月に閣議決定された基本方針においては、地域の実情や土地活用の意向や動向、地方公共団体の要望等を踏まえ、避難指示の解除に向けた今後の政策の方向性について検討を進めることとしております。この方針を踏まえて、各町村の御意見を丁寧に伺いながら、拠点区域外の方向性を検討してまいります。
○岩渕友君 拠点以外はいつ帰れるかも分からないということなんですよね。
帰還困難区域での住宅提供終了は初めてのことです。これまでの打切りとは質的に違うんだという認識はあるでしょうか。
○国務大臣(田中和徳君) お答えをいたしたいと思います。
今御指摘のあった地域の件でございますけれど、内閣府と福島県等、あるいは市町村等でいろいろと十分協議をさせていただいて、応急仮設住宅の供与の終了等についてお話をさせていただいたと、このように承っておるところでございます。
私どもも、今後、福祉関係の対策も含めて、お困りになる方のないように精いっぱいの努力をいたしてまいりたいと、このように思っておるところでございます。
○岩渕友君 お困りのない、方が出ないようにというんですけど、帰ることができないのに住宅提供を打ち切ると言っているんですよ。どういうことですか。そんなことで本当にいいんですか。
○政府参考人(青柳一郎君) 事実関係についてお答え申し上げたいと思います。
富岡町、浪江町、葛尾村、飯舘村の四町村では、応急仮設住宅からの受皿となる復興公営住宅等の整備がほぼ完了していることに加えまして、避難指示解除区域内では、帰還者向けの公営住宅の整備、商業施設の開館、小中学校の再開や道路交通網の整備などが進んでいる状況にございます。
また、四町村は一人でも多く避難者の方に戻っていただきたいという意向であると伺っているところでございまして、そのような状況を受けて、応急仮設住宅の供与の延長については、この四町村の意向も踏まえて、福島県において令和の二年三月末に終了すると判断したものでございまして、これについて内閣府が福島県の考えを同意したというものでございます。
○岩渕友君 福島県のせいじゃないんですよ。
冒頭に紹介した方は、息子と暮らすために見付けた土地が昨年の台風で冠水、この話は白紙に戻ってしまった、四月からは家賃が掛かると。こうした方まで打切りになるんですよ。支援を打ち切るんだったら、国は戻れるように除染してくれというのはこれ当然のことですよ。
住宅の無償提供を国の責任で継続するべきですよ。大臣。
○国務大臣(田中和徳君) 先ほど来より御答弁をさせていただきましたけれど、応急仮設住宅は仮の住まいでございまして、なるべく早期に恒久住宅に移転をしていただく、このことが望ましい、またそういう希望者が多い、このことも承っておるところでございます。いろんな状況を勘案しながら、福島県、そして町村と協議をさせていただいて、今日このようなことにさせていただいておると、内閣府の方でも答弁があったとおりでございます。
私どもも、とにかく困っていらっしゃる方があれば細々とやはり意見も聞き、丁寧な対応をさせていただけるように、しっかりと自治体とも協議をしてまいりたいと思っております。
いずれにしましても、御指摘の点はしっかりと対応してまいりたいと思っております。
○岩渕友君 原発事故が国の責任で起きたということを認めているんだったらば、お困りの方に対応するということじゃ足りないということなんですよ。ちゃんと責任果たして無償提供を続けてくださいよ。
○国務大臣(田中和徳君) 何度も同じ答弁になって恐縮でございますけれど、お困りの方、このことについては、福島県等、また町村からもいろいろと御報告をいただいておりまして、私どもも内閣府も承知をして当たっておるところでございます。
いずれにしましても、困っていらっしゃる方のないように、とにかく福祉的な対応もしっかりと対応させていただきながら、努力をさせていただきたいと思っております。きめの細かい対応をお約束を申し上げます。
○岩渕友君 これ、国の責任を全く感じていないというような答弁ですよ。
これ、損害賠償の実態も打切りそのものなんです。この間、原発ADRの問題をただしてきましたけれども、ADRとはどういう仕組みでしょうか。
○国務大臣(萩生田光一君) 原子力損害賠償紛争解決センターは、原子力事故により被害を受けた方の原子力事業者に対する損害賠償請求について、円滑、迅速、かつ公正に紛争を解決することを目的として設置された公的な紛争解決機関です。
具体的には、中立かつ公正な立場の仲介委員が当事者双方の意見を丁寧に伺い、和解案を提示するなどして、当事者の合意による紛争解決を図る仕組みとなっております。
○岩渕友君 東京電力は、損害賠償における三つの誓いを行っています。この誓いとはどういう中身でしょうか。
○参考人(小早川智明君) 先生の御質問にお答え申し上げます。
当社は、二〇一四年一月十五日に認定いただきました新・総合特別事業計画におきまして、三つの誓いを掲げております。
三つの誓い、三つの誓いの内容につきましては、一つ、最後の一人まで賠償貫徹、二つ目、迅速かつきめ細やかな賠償の徹底、三つ目、和解仲介案の尊重。以上でございます。
○岩渕友君 実態は、この三つの誓いが守られているとはとても言えないような実態があるんですよ。
二月三日付けの河北新報は、原発ADRで、東電が和解案を受け入れる条件に今後の請求を放棄させる趣旨の清算条項を要求するケースが急増していることが分かったというふうに報道をしました。
清算条項とは一体どういうものでしょうか。
○政府参考人(生川浩史君) お尋ねの清算条項でございますけれども、一般的には、原因となる事故に起因する全部又は一部の損害に関し、当該和解に定めるもののほか、何らの債権債務がないことを相互に確認をする旨の条項でございます。
○岩渕友君 この清算条項を付した和解の実態を文科省はどのようにつかんでいるでしょうか。
○政府参考人(生川浩史君) 御指摘の清算条項が付されている和解の状況についてでございますが、平成三十年のADRセンター活動状況報告書によりますと、東京電力が清算条項を付すことを条件に和解に応じる旨の意見を述べる案件が増加をしており、実際に同条項を付した和解も成立をしているというふうに記載をされているところでございます。
ただし、ADRセンターにおきましては、東京電力が清算条項を条件とする意見を述べてきた場合であったとしても、申立人が不測の不利益を被ることのないよう、十分に注意しながら和解仲介手続を進めているというふうに認識をいたしております。
○岩渕友君 清算条項を付した和解の件数と、そして完全清算条項の年ごとの件数はどうなっているでしょうか。
○参考人(小早川智明君) 御質問にお答え申し上げます。
各年ごとの清算条項付き和解の件数と、そのうちの完全清算条項付き和解の件数を申し上げます。
二〇一二年が百一件のうち六件、二〇一三年が五件のうちゼロ件、二〇一六年が一件のうち一件、二〇一七年が八件のうちゼロ件、二〇一八年が五十四件のうち二十三件、二〇一九年が四十二件のうち十九件。合計でございますが、清算条項付き和解の件数は二百十一件、そのうちの完全清算条項付き和解の件数は四十九件でございます。
○岩渕友君 資料の③を御覧ください。
今答弁いただいたことを表にしたものです。これ、加害者である東京電力が損害賠償を一方的に打ち切るということじゃないでしょうか。
これ、何で清算条項を付けているのでしょうか。
○参考人(小早川智明君) 御質問にお答え申し上げます。
当社は、これまでも和解仲介案の尊重というお約束に沿って和解の早期成立に向け対応してきたところでございまして、その考えに一切変わりはございません。他方、時間の経過とともに、本件事故との相当因果関係などの点で事実関係の確認が困難な案件も増えつつあります。
そのような中、申立人様の御事情を踏まえ、和解の成立に向けた一つの御提案として、清算条項についてADRセンターに上申させていただくこともございます。ただし、清算条項につきましては、ADRセンターにおいて、申立人様に不測の不利益が生じないよう注意して進めていると認識しており、当社といたしましても、ADRセンターの進行に従い、慎重に対応しているところでございます。
○岩渕友君 しかもですね、資料③にあるように、完全清算条項ということなわけですよ。
この完全清算条項というのは一体どういうことなんでしょうか。
○参考人(小早川智明君) ただいま御質問の中身に、完全清算条項とは、原因となる事故に起因する全部の損害に関し、当該和解に定めるもののほか、何ら債権債務がないことを相互に確認する旨の条項でございます。
○岩渕友君 つまりは、もうこれ以上損害賠償応じませんよと、ありませんよと。まさに、打切りそのものじゃないですか。こんなことで本当にいいんですか。
○参考人(小早川智明君) 先ほどからの繰り返しになりますが、本件事故との相当因果関係などの事実関係の確認が困難な案件など、こういったことについて、和解の成立に向けた一つの御提案として、清算条項についてADRに上申させていただくことがございますが、和解の前提としていた御事情などについて和解成立時点で予見できない事由などにより変化が生じた場合には、清算条項を付した和解であっても、申立人様の御事情を丁寧に伺い、誠実に対応してまいりたいと考えております。
○岩渕友君 申立人の事情を丁寧に聞いて、やるというんだったら、何でこんな清算条項を付けるのかということになるんだと思うんですよ。だったら、最初から清算条項なんか付けなければいいじゃないかということになるんじゃないんですか。
○参考人(小早川智明君) 本当に繰り返しになりますが、本件事故との相当因果関係などの点で事実関係の確認が困難な案件が増えつつあり、和解選択の成立に向けた一つの御提案として、清算条項についてADRセンターに上申させていただいているところでございます。
当社といたしましても、ADRセンターの進行に従い、慎重に対応してまいりたいと考えております。
○岩渕友君 解決が困難な案件があるからと言うんですけれども、東京電力は加害者なわけですよ。だから、被害者がどんな賠償を持ってきても、本人が納得するまで最後まで賠償するというのが加害者としての姿勢ということになるんじゃないんですか。もう一回。
○参考人(小早川智明君) いずれにしましても、当社は三つの誓いの原則に従い、損害がある限りしっかりと賠償については対応させていただきたいと考えております。
引き続き、ADRセンターの進行に従い、慎重に対応してまいりたいと考えております。
○岩渕友君 損害がある限りと言うんですけれども、結局は、清算条項を付けて、もうあなたの賠償は受け付けないよと、こういうことをやっているわけですよね。
それで、文科大臣にお聞きをするんですけれども、清算条項にADRセンターが消極的な姿勢を取ってきたと、この理由は一体どういうことなのでしょうか。
○国務大臣(萩生田光一君) ADRセンターにおける仲介委員は、申立人が不測の不利益を被ることのないよう、御指摘の清算条項を付すことには抑制的に対応してまいります。
ADRセンター発足当初は、損害賠償に関する民事裁判などの和解事例において清算条項が付いているケースが多いことから、各仲介委員によって、訴訟などの実務に倣い、清算条項が付けられていたケースが一定数あったと考えられます。
平成二十五年頃からは、将来の請求権などが消滅しないことが明らかになるような条項を作成することとした結果として、清算条項を付した和解成立件数が減少したと考えられます。
○岩渕友君 この表にもあるように、当初は、要するに、この原発事故の損害賠償であっても、その通常の損害賠償と同じように扱ってきたわけですよね。だけど、原発事故の損害賠償で清算条項なじまないじゃないかということで、二〇一二年以降はどんどん数が減ってきたと。だけど、今またこういうふうにして清算条項出てきているという状況になっているわけなんですよね。
それで、東京電力が、清算条項を付けるんだったら和解に応じますよと、こういうふうに切り出すこともあるんだというふうに言います。清算条項をもし拒むようなことがあれば、東京電力が和解案を拒否をして手続が打ち切られれば、もうあとは被害者の皆さんは訴訟するしかないと、こういう状況になります。そうなれば、もう将来改めて請求できる可能性を失うと分かっていても和解するしかないと、こういう声も上がっているんです。つまりは、諦めさせられているというのが実態だということなんですね。
被害者に賠償を諦めさせる、こんなこと許していいんでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 今ほど文科大臣と東京電力より、紛争の早期解決の観点から、和解を成立させるための一つの手法として一部の案件について清算条項が提案されることもありますが、清算条項の付与については、和解を仲介するADRセンターも申立人が不測の不利益を被らないよう十分注意しながら手続を進めているという答弁がありました。
清算条項につきましては慎重に検討することが必要であり、仮に将来予測できない事情の変化等が生じた場合には、清算条項に付した和解であっても、清算条項を付した和解であっても、個別の事情を伺って柔軟に対応する必要があると考えております。
被害者の方々に寄り添い、賠償を適切に行うよう、折に触れて東京電力をしっかりと指導してまいりたいと考えております。
○岩渕友君 経産大臣にもう一回聞きます。賠償を諦めさせるようなことがあっていいのかどうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 今申しましたように、予測できない事情の変化等が生じた場合には、清算条項を付した和解であっても、個別の事情を伺って柔軟に対応する必要があると思っております。
これまでも東京電力の小早川社長を呼んで指導した例もありますし、しっかりと、そういうことがないように指導してまいりたいと考えております。
○岩渕友君 個別の事情を伺うんだったら、さっきも言いましたけど、清算条項なんか最初から付けなければいいということなんですよ。
それで、東電は、これまでも原発のADRでは集団申立ての和解案を拒否してきました。それで、その後どうなったかというと、個別だったら受け付けるんだと、そう言って、そういう対応を被害者に求めた。その上、今回のように、清算条項を受け入れれば賠償してやるという、こういうやり方なんですよ。
これは、原発事故を終わったことにしようとするものであり、被害者の切捨てそのものです。こんなことはやめるように、経産大臣、ちゃんと東京電力指導してください。
○国務大臣(梶山弘志君) 全てがそういう状況ではないと思っております。相手の合意もあってできているものもあると聞いております。そういった中で、一方的にそういうことをするのであれば、指導をしてまいらなければならないと思います。
○岩渕友君 合意があればいいというものではないんですよ。さっき言ったように、合意せざるを得ない状況に追い込まれているということなんですね。
今回の話を受けて、改めて東京電力を呼んでちゃんと指導するべきだと思うんです。まず話聞くところから始めるべきだと思うんですよ。どうでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 今ほど申し上げましたように、いろいろな事情があってその合意をしているものもあります。ただ、その中で、将来予測できない事情の変化が生じた場合には、この清算条項があってもしっかりと柔軟に対応するようには私どもは指導しております、指導してまいります。
○岩渕友君 今大臣が言ったようなものばかりではないと、そういうことだってあり得ると思うんですよ。だから、指導してくれと、事情を聞いてくれと言っているんですよ。どうですか。
○国務大臣(梶山弘志君) 全て、全てがそうだと、お互いに、そうではないと思っております。全てが片方の意見のとおりということではないと思っております。ですけれども、そういった状況があるのであれば、また東京電力を呼んで、話を聞いた上で指導をしてまいりたいと考えております。
○岩渕友君 そもそも、加害者がそういうことをしていいのかということがやっぱり問われているんだと思うんですよ。
それで、事情があったらって言うんですけど、私、今こういうふうに言っているわけですから、東京電力呼んで指導してくださいよ。
○委員長(金子原二郎君) 時間が来ております。
○国務大臣(梶山弘志君) これまでも、現場でもいろんな意見も聞いております。その意見に従って東京電力を呼んで指導してきたこともございます。もしそういうことがあるんであれば、東京電力をしっかりと指導して、事情も聴取をしてまいりたいと思っております。
○委員長(金子原二郎君) 岩渕さん、時間です。
○岩渕友君 国と東京電力は、被害者の生活となりわいの再建に最後まで責任を果たすべきだと、そして、最後に、原発ゼロの政治決断を求めて、質問を終わります。