2020年5月27日(水) 参議院 本会議
「復興庁設置法等改正案」
復興庁設置法等改定案
復興庁設置法等改定案が27日の参院本会議で審議入りしました。日本共産党の岩渕友議員は、同法案が「東京電力が負担すべき福島第1原発事故の処理費用を国民に押しつけ、賠償を打ち切る東電を救済するものだ」と批判しました。
同法案に盛り込まれた特別会計法改定案は、中間貯蔵施設建設費用を拠出する電源開発促進勘定がひっ迫しているとして、本来は再生可能エネルギー普及のためである予算からの繰り入れを可能にするとしています。
岩渕氏は、「東電が負担すべき費用を国が資金交付している上、別勘定からの繰り入れは東電の責任を免罪するものだ」と批判。電促勘定の財源は電気料金に上乗せされている税金であり「繰り戻すための費用は、国民負担になるのではないか」とただしました。梶山弘志経済産業相は、「新たな国民負担になるものではない」と開き直りました。
また岩渕氏は、福島イノベーション・コースト構想について「呼び込み型の巨大開発が中心で地元の事業者や住民の要求にかみ合っていない」と追及。広野町、いわき市に建設中の石炭ガス化複合発電も同構想の一つであり「気候変動対策に逆行する」とただしました。梶山経産相は「構想への地元企業の参画を促す」「高効率な石炭火発への新陳代謝を促すもの」と強弁しました。
岩渕氏は、福島第1原発の汚染水の海洋放出について「反対の声が国内外に広がっており、陸上保管を維持し幅広く意見を聞くべきだ」と求めました。
災害公営住宅家賃支援
復興相「10年間継続」
田中和徳復興相は29日の参院東日本大震災復興特別委員会で、災害公営住宅の家賃負担を支援する「東日本大震災特別家賃低減事業」を、「住宅の管理開始から10年間の支援を継続する方向で調整している」と明言しました。自民党の片山さつき議員への答弁。
同事業は、復興交付金を活用し、復興公営住宅に暮らす低所得者の家賃減免を実施する自治体への支援策として10年間行われているもの。住宅の管理開始から5年間は特段の減額措置を取り、その後5年間で段階的に家賃を引き上げる仕組みです。
政府は昨年12月に閣議決定した新たな「復興の基本方針」で、復興交付金の2020年度末での廃止を打ち出しました。この中で災害公営住宅の家賃負担を支援する制度は「別の補助に移行した上で引き続き支援する」とし、自治体の財政運営状況などを踏まえて「適切に支援水準の見直しを行う」としていました。この「見直し」で、供用開始時期の違いによって同じ支援が受けられなくなるのではとの懸念の声が被災地自治体から上がっていました。
日本共産党の高橋千鶴子議員が19日の衆院復興特別委員会でこの問題を取り上げ、「すべての復興住宅の供用開始後10年は、同事業の枠組みで支援すべきだ」と支援継続・拡充を要求。岩渕友議員も27日の参院本会議で、供用開始時期にかかわらず10年間は補助するよう求めていました。
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2020年5月27日(水) 参議院 本会議
○議長(山東昭子君) 岩渕友さん。
〔岩渕友君登壇、拍手〕
○岩渕友君 私は、日本共産党を代表し、復興庁設置法等の一部を改正する法律案について質問します。
冒頭、黒川弘務東京高検検事長の辞任問題について述べます。
安倍内閣が法解釈をねじ曲げ定年延長の閣議決定をした、その黒川検事長が賭けマージャンで辞任するというてん末に、多くの国民はあきれ果てています。安倍内閣の責任は重大です。憲法と検察庁法の精神に背いた違法な閣議決定、それを後付けしようとする検察庁法案の特例規定はいずれも撤回すべきです。
黒川氏への処分を訓告にとどめたことに怒りが沸き上がっています。法務省が懲戒相当としていたものを首相官邸が覆したとの報道もあります。安倍総理は、法務省、検察が決めたことと言います。しかし、森法務大臣は当初、内閣が決めたと会見で述べ、決算委員会でも内閣と協議したことを認めています。稲田検事総長は、訓告処分を主導したことを否定しています。誰が、どういう理由で、懲戒処分にしないと決めたのか、明らかにする必要があります。予算委員会での集中審議の開催を強く求めます。
本法案は、復興庁を十年延長する設置法改定を始め、五つの法案が束ねられています。被災者、被災地の実態から見れば、復興庁の延長は当然のことです。同時に、法案には本来、東京電力が負担すべき原発事故の処理費用を新たに国民に押し付ける内容が含まれています。これは、被害者への損害賠償を打ち切る東京電力を救済し、責任を免罪するもので、断じて許せません。
以下、法案についてお聞きします。
東日本大震災から九年二か月たちました。いまだに四万人を超える方々が避難生活を余儀なくされています。
二月に岩手県陸前高田市、宮城県石巻市で話をお聞きしました。直接の被害に加え、消費税増税や台風被害など、なりわいや地域経済への打撃が続いていたところに、新型コロナウイルスの影響が重くのしかかっています。加えて、復興公営住宅の高齢化と孤独死、心のケアやコミュニティーの形成、在宅被災者の問題など、新たな困難や課題が生じています。
昨年末閣議決定された基本方針は、地震・津波被災地域は、復興・創生期間後五年間で復興事業の終了を目指すとしています。必要な支援を期限ありきで打ち切るようなことがあってはなりません。被災者、被災地の実態を国が責任を持って把握すること、実態に合わせた支援を継続するべきです。復興大臣、お答えください。
東日本大震災特別家賃低減事業は、復興交付金を使って地方公共団体が行う復興公営住宅の家賃減免費用の一部を支援しています。管理開始から五年間は特段の減額措置、その後五年間で段階的に家賃が引き上げられます。法案では復興交付金を本年度末で廃止するとしています。
管理開始したばかりの住宅、完成が今年度という住宅もあります。別の補助で引き続き支援するとのことですが、供与開始時期の違いで同じ支援が受けられないとすれば不公平です。供与開始時期にかかわらず、十年間は当然補助されるということでいいですね。復興大臣に確認します。
東京電力福島第一原発事故被害者の実態はどうなっているか。三月四日、双葉町の帰還困難区域の一部が解除され、全町避難の自治体はなくなりましたが、避難指示解除地域の居住率は三割にすぎません。三月末には、浪江町や富岡町など、帰還困難区域を抱える自治体の住宅無償提供が初めて終了となりました。帰ることができないのに、住宅提供は打ち切る。被害者切捨てにほかなりません。国は住まいの確保に最後まで責任を果たすべきです。復興大臣、お答えください。
東京電力は損害賠償の打切りも進めています。原発ADRで、和解案を受け入れる条件に今後の請求の放棄を迫る完全清算条項を要求するなど、とても加害者とは思えません。経産大臣、被害者が損害賠償の請求を諦めることがないよう、東京電力を厳しく指導するべきではありませんか。
東京電力を被告にした福島原発避難者訴訟の仙台高裁判決は、中間指針を超えて避難生活による精神的苦痛への慰謝料を増額し、ふるさとを喪失し変容させられた損害への慰謝料を認めました。中間指針の見直しは待ったなしです。文科大臣、お答えください。
このような東京電力を更に救済しようというのが特別会計法改定案です。これは、原発事故により発生した放射性廃棄物を保管する中間貯蔵施設、この関連費用を拠出する電源開発促進勘定に、再生可能エネルギーの導入などに使うエネルギー需給勘定から資金の繰入れを可能とするものです。東京電力が負担すべき費用を国が資金交付している上に、更にその財源が逼迫したから別勘定から繰り入れるということは、東京電力の責任を免罪するものです。
電源開発促進勘定の財源は、電気料金に上乗せされている電源開発促進税です。経産大臣、繰り戻すための費用は結局国民負担になるのではありませんか。原発事故の責任を国民に転嫁することは到底認められません。
福島イノベーション・コースト構想についてお聞きします。
廃炉やロボット、ドローンなど、浜通り地域の産業回復をうたう構想ですが、昨年の県政世論調査で内容を知らないと答えた県民が八割以上に上りました。呼び込み型の巨大開発が中心となり、地元の事業者や住民の要求にかみ合っていないのではないでしょうか。認識を伺います。
広野町、いわき市勿来に建設中の石炭ガス化複合発電、IGCCもイノベーション・コースト構想の一つです。政府はIGCCは効率がいいと言いますが、二酸化炭素の抑制効果は一五%にすぎません。イノベーション・コースト構想の名で石炭火力発電を進めることは、喫緊の課題である気候変動対策に逆行することになるのではありませんか。以上、経産大臣にお聞きします。
最後に、いわゆるALPSで処理した汚染水の取扱いをめぐる問題について聞きます。
小委員会が示した海洋放出、大気放出案に基づいて、関係者の御意見を伺う場が開催されてきました。新型コロナウイルスの影響が広がり、広く意見を聞くことができない状況の下で、なぜ今開催するのですか。
東京電力の試算では、汚染水をためるタンクは二〇二二年夏頃までには満杯になり、処分準備に二年程度掛かるとしています。梶山大臣は方針決定の先送りはできないと述べており、タンクの置場を理由に結論ありきで処分方法を決定しようとしているのではありませんか。
二月には福島県沖で捕れる全魚種の出荷が可能となり、四月には浪江町の請戸漁港で九年ぶりに競りが再開された中で、海洋放出は漁業者の努力を無に帰すものと怒りの声が上がり、浪江町議会は海洋放出に反対する決議案を全会一致で可決しています。
国際環境NGO、FoEJapanが福島県近隣六都県の漁協を対象に行ったアンケートでは、九一%が海洋放出に反対と回答し、八五%が国民的な議論を求めています。茨城県知事が政府に白紙で再検討を求め、台湾の環境団体が海洋放出に反対を訴える経産省宛ての意見書を提出するなど、反対の声は国内外に広がっています。陸上保管を継続し、意見を幅広く聞くべきではありませんか。以上、経産大臣、お答えください。
一たび事故が起きれば、ふるさとも日常も奪い、環境を汚し、そのツケを国民に押し付けることになるのが原発です。原発ゼロの政治決断を強く求めて、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣田中和徳君登壇、拍手〕
○国務大臣(田中和徳君) ただいまの岩渕友議員のお尋ねにお答えをいたします。
地震・津波被災地域における被災地、被災者の実態把握とそれに合わせた支援についてお尋ねがございました。
地震・津波被災地域については、心のケア等の被災者支援を始めとする課題が残るものと認識しており、まずは、復興・創生期間後の五年間において、国と被災自治体が連携して全力で取り組んでまいります。その上で、被災者支援や子供に対する支援で五年以内に終了しないものについては、昨年末の基本方針において、個別の事情を丁寧に把握し、適切に対応することとしております。
今後とも、被災自治体とも連携をして、被災地や被災者の実情を丁寧に把握しながら、必要な支援を行ってまいります。
災害公営住宅の特別家賃低減事業についてお尋ねがございました。
昨年十二月に閣議決定した復興の基本方針において、復興交付金による支援から別の補助に移行した上で引き続き支援する、その際、管理開始時期が異なる被災地方公共団体間の公平性等を踏まえながら、適切に支援水準の見直しを行うとされております。
復興庁では、管理開始時期の違いにより支援に差異が生じることのないよう、国土交通省とともに引き続き適切に支援水準の見直しを検討してまいります。
浪江町や富岡町等の仮設住宅の供与終了についてお尋ねがございました。
応急仮設住宅の供与の終了は、市町村の意向や復興公営住宅の整備状況などを踏まえ、福島県が適切に判断し、内閣府への協議を経て決定されたものであります。応急仮設住宅は仮の住まいであり、帰還困難区域であるか否かにかかわらず、なるべく早期に恒久住宅に移転していただくことが望ましいと認識しております。
復興庁としては、今後とも、県や市町村と連携をして、被災者の方々の生活再建に全力で取り組んでまいります。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣梶山弘志君登壇、拍手〕
○国務大臣(梶山弘志君) 岩渕議員からの御質問にお答えをいたします。
原子力損害賠償についてのお尋ねがありました。
ADRにおいて、東京電力が清算条項付きの和解案を提案することがありますが、申立人が不測の不利益を被らないよう、ADRセンターは慎重な検討を行っており、また、将来予測できない事情の変化が生じた場合には柔軟な対応も必要と考えております。今後とも、被災者に寄り添い、迅速かつ適切な賠償を行うよう、東京電力を指導をしてまいります。
エネルギー対策特別会計についてお尋ねがありました。
今般の措置は、国として行う福島の復興再生に関する施策の財源確保に万全を期すため、仮に一時的に財源が不足する場合の融通を可能とするものであります。繰戻しは電源開発促進勘定から行うことになりますが、既存の電源開発促進税の税率引上げによって繰り戻すことは想定をしておらず、新たな国民負担になるものではありません。
福島イノベーション・コースト構想について、地元業者や住民の要求にかみ合っていないのではないかとのお尋ねがありました。
これまで経済産業省では、決して大型施設の整備だけではなく、企業誘致の支援に取り組み、約三百件の企業立地と約四千人の地元雇用を生んでまいりました。また、進出企業と地元企業とのマッチング支援も行い、昨年度は約七十の商談を設定をし、八件の取引成立を実現をしております。
こうした取組を通じて、地元企業や地元住民の御要望に一定程度応えてきたと認識しておりますが、今後は、より一層の御要望に応えられるよう、構想への地元企業の更なる参画を促し、地元への経済効果につなげ、福島浜通りの一日も早い復興を実現できるよう、全力で取り組んでまいります。
福島イノベーション・コースト構想における石炭火力発電の推進についてお尋ねがありました。
本構想は、福島県が掲げる原子力に依存しない、安全、安心で持続的に発展可能な社会づくりとの復興の基本理念を踏まえて策定をしております。本構想に位置付けられるIGCCの開発、実用化は、非効率な石炭火力発電から高効率な石炭火力発電への新陳代謝を促すものであり、将来的な温室効果ガスの排出削減につながるものと考えております。
ALPS処理水の取扱いに関する御意見を伺う場の開催、決定に向けたプロセス及び幅広い意見の聴取についてお尋ねがありました。
ALPS処理水の処分方針の決定は、本年二月に公表をされました小委員会の報告書を踏まえ、現在、地元を始めとした関係者から御意見をお伺いしているところであります。御意見を伺う場については、緊急事態宣言が発令されていた中、関係者の御意見を丁寧にお伺いするために、以前から既に参加が予定をされ、かつウエブ会議での参加も可能と回答された方から参加をいただき開催をいたしました。
タンク保管の継続について、小委員会の報告書には、現行計画以上の増設の余地は限定的であると指摘をされております。こうしたことも踏まえながら、結論ありきではなく、引き続き様々な関係者の御意見をお伺いした上で、最終的には風評被害対策を含めて、政府として責任を持って結論を出してまいります。(拍手)
〔国務大臣萩生田光一君登壇、拍手〕
○国務大臣(萩生田光一君) 岩渕議員にお答えいたします。
仙台高裁判決を受けての中間指針の見直しについてお尋ねがありました。
仙台高裁の判決については、現時点では確定しておらず、また、中間指針等の見直しは原子力損害賠償紛争審査会で御審議いただくことと考えています。
これまでの東電福島原発事故に係る訴訟の判決については、紛争審査会において報告を適宜行っておりますが、判決は確定前のものであり、また各判決には内容にばらつきがあるため、現時点では直ちに中間指針等の見直しを検討する状況にはないことを確認いただいております。
いずれにしましても、文部科学省としては、引き続き動向を注視してまいりたいと思います。(拍手)
○議長(山東昭子君) これにて質疑は終了いたしました。