2021年3月11日(木) 参議院 予算委員会
一般質疑
日本共産党の岩渕友議員は11日の参院予算委員会で、東京電力福島第1原発事故で被害者の「ふるさと」を奪った国と東電の責任を追及しました。さらに、不十分な損害賠償が被害者の生活困窮を深刻にしているとして、賠償基準の見直しを迫りました。(論戦ハイライト)
岩渕氏は、福島県の帰還困難区域の面積は東京23区の半分以上を占めていると指摘。「家も庭も動物に荒らされ、朽ちた。郷土芸能の三匹獅子舞も継承できない。このままでは津島が消えてしまう」という同区域の浪江町津島地区から避難した住民の切実な声を突きつけました。
岩渕氏は、原発事故・避難者訴訟の仙台高裁判決(昨年3月)が、国の賠償基準である原子力損害賠償紛争審査会の中間指針にはない「ふるさと喪失・変容」慰謝料を認めたのに対し、東電が上告したことをただしました。
東電ホールディングスの小早川智明社長は「判決は当社の考えと異なる」としか答えず、上告理由の説明を拒否。岩渕氏は「“故郷という法益は存在しない”として上告している。つまり、ふるさとは守るに値しないということだ。さらに、賠償金を払い過ぎていると述べている」と批判しました。
岩渕氏が「ふるさとが奪われたことを国も認めないのか」と追及したのに対し、梶山弘志経済産業相も「係争中の争点だ」と述べるだけで、まともに答えませんでした。
岩渕氏は、避難指示が解除されても帰れない人が多い実態をあげ、「ふるさと喪失・変容」慰謝料を加えるなど中間指針の見直しを要求。双葉町・大熊町が見直しを強く要望していることや各地での同様の判決を踏まえるべきだと述べました。
萩生田光一文部科学相は「いずれの判決も確定していない」として指針見直しを否定し、岩渕氏は「被害者をいつまで苦しめるのか」と批判。浪江町での生活保護世帯の急増にふれ、見直しを重ねて求めました。
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質問資料1 避難指示区域の概念図(2020年3月10日以降)/避難指示区域の居住状況(2020年末)【PDF版】【画像版】
質問資料2 浪江町津島地区Kさん宅と郷土芸能「三匹獅子舞」【PDF版】【画像版】
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質問資料3 生業訴訟 仙台高裁判決での、区域ごとの賠償額(2020年9月)【PDF版】【画像版】
質問資料4 東電福島第一原発事故 被害者集団訴訟各判決での賠償責任【PDF版】【画像版】
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2021年3月11日(木) 参議院 予算委員会
一般質疑
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
まず、武田総務大臣にお聞きします。
先ほど白議員の質問もありましたけれども、なぜ大臣はNTTとの会食があったかどうかの事実だけでも明言できないのでしょうか。この間、倫理規程に反する接待はなかったという官僚の答弁が虚偽であることが判明し、大臣も厳しく批判をしてきました。御自分のことを明言するのは当然ではないでしょうか。
○国務大臣(武田良太君) 個別の事案一つ一つにお答えするのは控えさせていただきたいと思います。
しかし、私は、国民の皆さんから疑念を招くような会食や会合に応じたことはございません。(発言する者あり)
○委員長(山本順三君) 武田総務大臣。
○国務大臣(武田良太君) 個別の事案一つ一つにお答えするのは控えさせていただきますけれども、私は、国民の皆さんから疑念を招くような会食や会合などに応じたことはございません。
引き続き、国民の皆様からの疑念を招くことのないよう、自らを律し、職務に精励してまいりたいと考えております。(発言する者あり)
○委員長(山本順三君) 武田総務大臣。
○国務大臣(武田良太君) 私は、委員、明確に答えているんです。国民の皆さんから疑念を招くような会食や会合は応じておりません。
○岩渕友君 私は、会食があったかなかったかということを聞いているんですよ。答えてくださいよ。
○国務大臣(武田良太君) 個別の事案一つ一つにお答えするのは控えさせていただきますが、私は、国民の皆さんから疑念を招くような会食や会合に応じたことはありません。
○岩渕友君 個別の事案なんて聞いていないんですよ。
大臣、総務省の政務三役について、NTTとの会食の有無、会った場所、その日時、相手、費用負担など、当委員会に報告してください。
○国務大臣(武田良太君) 現在省内で行っている倫理法違反の疑いのある事案の調査について、検事経験のある弁護士の方にも参加をいただき、常に第三者のチェックをいただきながら、正確に、かつ徹底的に真相究明を進めてまいりたいと思います。
今後は、こうした疑念を招くこと、二度と起こらないよう、自ら先頭に立ち、一丸となってコンプライアンスを徹底的に確保し、国民の信頼回復に努めてまいる所存であります。(発言する者あり)
○委員長(山本順三君) 武田総務大臣。
○国務大臣(武田良太君) 特別職は一般職と違って倫理法の適用というわけにはいかぬものですから、行政がゆがめられたかどうかというものを検証するチームにおいてしっかりと調査をしていきたいと、このように考えております。(発言する者あり)
○委員長(山本順三君) 武田総務大臣。
○国務大臣(武田良太君) 第三者のチェック機関である調査委員会において、この国会での御指摘をしっかりとお伝えし、その調査の範囲に含めても御指導をいただきながら進めていきたいと、このように考えています。(発言する者あり)
○委員長(山本順三君) 御静粛に願います。
武田総務大臣。
○国務大臣(武田良太君) 先ほどから言うように、第三者のチェック機関が立ち上がりますので、そちらの方に、今委員から御指摘があったように、政務三役も含めてしっかりと調査をするように、旨報告をして御指導を仰いでまいりたいと、このように考えています。(発言する者あり)
○委員長(山本順三君) 質問を続けてください。
岩渕友さん。
○岩渕友君 今の答弁では納得ができません。
総務省の政務三役とNTTとの会食の有無、日時、場所、相手、費用負担などについて、予算委員会として報告を求めるようお願いいたします。
○委員長(山本順三君) 後日、後刻理事会で協議をいたします。
○岩渕友君 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から今日で十年です。改めて、犠牲になられた方々に哀悼の意を表するとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。
昨日、党として提言を発表し、平沢復興大臣への申入れを行いました。
宮城県民医連による災害公営住宅での調査では、三割が健康状態が悪化、六割が抑うつ傾向など、被災者の健康状態、在宅被災者の実態、住まいの再建や災害公営住宅の家賃問題、なりわいの再建、心のケアやコミュニティーづくりなど、いまだ多くの課題が残され、時間の経過とともに問題が多様化をしています。しかし、実態が十分につかまれていません。
政府として、一人一人の実態に応じた支援、対策を行うためにも、被災者と被災地の実態調査、把握するべきではないでしょうか。
○国務大臣(平沢勝栄君) 昨日、委員も御同席の下、志位委員長から御提言をいただきました。
発災から十年が経過しまして、復興は着実に進展しているわけですけれども、その一方で地域によって状況は様々に異なるということで承知しておりまして、今後も引き続き現場主義を徹底し、被災地に寄り添いながら復興に全力を挙げて取り組んでいきたいと考えております。
○岩渕友君 被災者と被災地は、その後の相次ぐ災害や基幹産業である漁業の不振、そしてコロナと、もう何重にも苦しんでいます。
期限を区切るのではなくて、支援や対策の強化拡充を求めます。いかがでしょうか。
○国務大臣(平沢勝栄君) 御意見も踏まえて、しっかり検討してまいりたいと思います。
○岩渕友君 支援、対策の強化拡充、強く求めたいと思います。
では、大臣は式典の関係がありますので御退席いただいて結構です。
○委員長(山本順三君) それでは、平沢復興大臣におかれましては退席いただいて結構でございます。
○岩渕友君 資料一を御覧ください。
原発事故による避難者は、福島県の発表で三万六千人、八万人以上に上ると言う方もいらっしゃいます。避難指示区域の居住率は約三割、十年たってもふるさとに戻ることができていません。なぜ十年たってもふるさとに戻ることができないのでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) これまで避難指示区域における除染やインフラ整備を着実に進めてきた結果、二〇二〇年三月までに帰還困難区域を除く全ての区域で避難指示の解除を実現をしてきたところであります。また、たとえ長い年月を要するとしても、将来的に帰還困難区域の全てについて避難指示を解除する決意は揺るぎのないものであります。
このため、まずは特定復興再生拠点区域について、二〇二二年及び二〇二三年の避難指示解除に向けて、関係省庁と連携しながら除染やインフラ、生活環境の整備を着実に進めてまいりたいと考えております。
さらに、特定復興再生拠点区域外につきましても、それぞれの自治体によって事情が違いますので、各自治体の個別の課題や要望を丁寧に伺って、避難指示解除に向けた方針をしっかりと検討してまいりたいと考えております。
○岩渕友君 事故が起きたのは、原発事故が起きたからにほかならないんですよ、戻ることができないのはね。
帰還困難区域の面積を教えてください。
○政府参考人(須藤治君) お答えをいたします。
帰還困難区域は七市町村において設定をされておりまして、その合計面積はおよそ三百三十七平方キロメートルでございます。
○岩渕友君 これ、福島県土の約二・四%を占めているんです。東京二十三区の半分以上にもなるんですよね。
実は、平沢大臣も会見で、誰が考えてもおかしいというふうに言っているんですけれども、誰が考えてもおかしいんですよ。
そして、帰還困難区域の住民登録数、これは二万人を超えています。これ、事故が起きたのは一体誰の責任でしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 福島第一原発の事故に係る事故処理や賠償の対応につきましては、事故の当事者である東電が最後まで責任を持って行うことが大原則であります。国も、原子力災害からの復興に、前面に立ってその役割を果たしていくとの立場で対応をしているところであります。
経済産業省としましては、引き続き、被害者の方々に寄り添った公平かつ適切な賠償を行うよう東京電力をしっかりと指導していくとともに、福島の復興、そして福島第一原発の廃炉にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
○岩渕友君 事故が起きたのは国と東京電力の責任なんですよ。
先日、帰還困難区域である浪江町津島というところのKさんという方から話を伺いました。
資料二を御覧ください。
Kさんは、三百年も続く家の十八代目です。帰還困難区域になってからは帰宅にも許可が必要になり、家も庭も動物に荒らされ、朽ちてしまった。我が家はこの地区にしかない三匹獅子舞という郷土芸能を継承する庭元という役割を先祖から受け継いできたが、継承する人もいなくなってしまった。津島の美しい山や川、田園風景、地域のコミュニティーが破壊され、ふるさとに帰ることすらままならず、このままでは津島が消えてしまう、こういうふうに訴えられました。
どうしてこんなことになってしまったのかと、私たちが悪いことをしたのか、ふるさとに帰れるようにしてほしいと願うことは許されないのか、どうしても納得がいかない、こういうKさんの訴えをどう受け止めるでしょうか、東京電力。
○参考人(小早川智明君) 東京電力ホールディングス社長の小早川でございます。
当社は、福島第一原子力発電所の事故からちょうど十年が経過いたします、今なお福島の地元の皆様、社会の皆様に多大なる御負担、御心配をお掛けしておりますことを深くおわびを申し上げます。
当社事故により多くの方々が避難を余儀なくされ、事故から十年経過してもなおお戻りできない方が多くいることや、避難指示等が解除されても御帰還が進んでいないことも承知しております。
当社の最大の使命は福島の責任を全うすることでございます。当社といたしましては、廃炉を安全に実施し、地域の皆様に寄り添いながら、全力で復興に向けて取り組むとともに、一人でも多くの方にお戻りになられるよう最大限努力してまいりたいと思います。
○岩渕友君 同じ質問を経産大臣にもします。
○国務大臣(梶山弘志君) 私も、発災直後に地域に、浪江に入ったこともございます。そして、先般もまた、帰還困難区域外のところも入らせていただきました。
委員から御紹介いただいたその住民の方の思いというのは大変重く受け止めさせていただきたいと思います。いまだに多くの方が避難生活を余儀なくされているということ、多くの方がいつかは自分の家に戻りたいとずっとやっぱり考えておられること、そういったものを痛感をしております。
たとえ長い年月を要するにしても、将来的に帰還困難区域の全てを避難指示を解除する決意は揺るぎないというものでありますので、しっかりとそういった作業が進むように指導してまいりたいと思いますし、監督もしてまいりたいと考えております。
○岩渕友君 昨年の三月十二日に、東京電力福島第一原発事故避難者訴訟の仙台高裁判決で、賠償基準である中間指針にないふるさと喪失、変容に対する慰謝料が認められています。
判決では、ふるさとについてどのように述べているでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(門田友昌君) 仙台高裁の令和二年三月十二日判決の判決書の四十七ページの下から四行目から四十八ページの上から七行目までを読み上げます。
当該地域の住民が、山林で自生するきのこ、たけのこ、山菜などを採取し、川や海で魚を獲り、田畑や家庭菜園で米や野菜などを収穫して消費していたことや、住民相互間でこれらの収穫物を「お裾分け」し合ったり、農作業、冠婚葬祭、子育て、介護などについて自発的に協力し合ったりするという協働又は共助の関係が根付いていたなどの事情を主張する。
これらの自然環境的な条件と社会環境的条件は、住民が、そのような諸条件下になければ通常は無償で取得することができない財物や役務を、無償で取得することを可能にしていた(経済的側面)ということができる。また、同時に、自然環境との関わりや住民相互の緊密な人間関係を通じ、住民は、地域に対する強い帰属意識を有し、当該地域に居住することによる安心感を得ていた(精神的側面)ということもできる。
以上でございます。
○岩渕友君 今紹介していただいた部分は、先ほどお話をしたKさんの訴えそのものですよね。
東京電力は、この高裁判決を受けて、ふるさと喪失、変容について上告理由で何と述べているでしょうか。
○参考人(小早川智明君) 御質問にお答えいたします。
判決内容の一部につきまして当社の考えと異なることがあることなどから上告を提起させていただくことにいたしましたが、訴訟に関わる内容につきましては、この場での回答は差し控えさせていただきます。上告審の場において丁寧に対応してまいります。(発言する者あり)
○委員長(山本順三君) 小早川智明参考人。
○参考人(小早川智明君) 訴訟に関する内容につきましては、この場での回答は差し控えさせていただきますが、上告審の場において丁寧に対応してまいります。
○岩渕友君 自分たちが述べていることなんですよね。何でそれが言えないんでしょうか。もう一度お願いします。
○参考人(小早川智明君) 繰り返しになりますが、訴訟が進行中でありますので、訴訟に関する内容につきましては、この場での回答は差し控えさせていただきます。(発言する者あり)
○委員長(山本順三君) 小早川智明参考人。
○参考人(小早川智明君) 改めてお答えいたします。
判決内容の一部について当社と異なる点などがあることなどから、総合的に判断し、上告を提起することといたしました。
訴訟に関わる内容につきましては、先ほどの御回答のとおりでございます。
○岩渕友君 結局答えないんですよね。
ふるさとなどという法益は存在しない、つまり、ふるさとは守るに値しないものだと、こういうふうに言っているんですよ。そして、ほかにも、賠償は十分行っていると、提訴している人は僅かしかいないと、こういうふうに言っているんですよ。
それでいいですよね。
○参考人(小早川智明君) まず、いまだに多くの方々がお戻りできないことにつきましては、大変申し訳なく思っております。
当社といたしましては、当社事故による損害がある限り賠償をするという考え方に一切変わりはございません。当社といたしましては、三つの誓いに掲げる最後のお一人まで賠償を貫徹するという考え方の下、中間指針にはない損害の請求をいただいた場合には、個別の御事情を丁寧にお伺いし、きめ細かく適切に対応してまいっております。
○岩渕友君 実態は今の答弁のようにはなってないんですよ。
東電に聞きますけれども、ふるさとを奪ったという認識はないんですか。
○参考人(小早川智明君) 繰り返しになりますが、いまだ多くの方々がお戻りできないことにつきまして、大変申し訳なく思っております。
当社といたしましては、地域の皆様に寄り添いながら、全力で復興に向けて取り組むとともに、一人でも多くの方がお戻りできるよう最大限努力してまいる所存でございます。
○岩渕友君 ふるさとを奪ったという認識はないんですかというふうに聞いているんですよ。
もう一度お願いします。
○参考人(小早川智明君) いまだ多くの方々がお戻りできないことにつきましては、大変申し訳なく思っております。
○岩渕友君 結局、こんな大事なことも答えないんですよね。これ、とんでもないことだと言わなくてはならないです。正面から認めるべきです。
じゃ、国も、ふるさとが奪われたということを認めないのでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 御指摘のふるさと喪失につきましては、係争中の訴訟における争点となっていることから、コメントすることは差し控えたいと思っております。
ただ、いまだふるさとに帰還できず、大変な御苦労をされている方が大勢いらっしゃることは承知をしておりますし、先ほど委員の御紹介にもありました方々も含めて、切実な思いも、私も多くの意見を聞かせていただいているところであります。
経済産業省としては、こうした方々の早期帰還を実現するために、福島の復興、なりわい再建、さらには復興の前提となる福島第一原発の安全かつ着実な廃炉にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
○岩渕友君 帰還困難区域だけではないんですよね。避難指示が解除をされても、ふるさとに戻るということそのものは簡単ではないんですよね。
住民意向調査で、帰還についてまだ判断が付かない、戻らないという、こういうふうに回答している方々の理由を紹介してください。
○政府参考人(角野然生君) お答えいたします。
今年度、双葉町、富岡町、浪江町、大熊町、川俣町の五町において、原子力災害で被災した住民の方々の帰還意向に関する調査を実施したところでございます。
この調査結果によると、帰還意向について、まだ判断が付かないと回答した方の帰還を判断するために必要な条件としては、医療・介護施設の再開、充実や商業施設の再開との回答が多く挙げられております。
また、戻らないと回答した方について、戻らないと決めている理由としては、避難先で既に生活基盤ができているからや医療環境に不安があるからとの回答が多く挙げられているところでございます。
○岩渕友君 今答弁にもあったように、避難指示が解除をされても、例えば医療であるとか商業施設の再開であるとか、インフラそのものが十分に整っていないという現実があるわけですよね。
更に言うと、家族や、そして友達も一緒に戻らないとか、もう見る景色も前と全然変わってしまっているとか、ふるさとは事故前と大きく変わってしまっているということなんですよ。こうした被害の実態に即して、避難生活の継続や避難を余儀なくされた慰謝料とは別に認められたのがふるさと喪失・変容慰謝料だということなんですよ。
資料の三を御覧ください。これ、昨年九月三十日のなりわい訴訟仙台高裁判決では、ふるさと喪失による賠償が認められて、区域外避難者の精神的損害賠償の対象範囲が広がって、上乗せも認められています。
資料の四も御覧ください。判決が積み上がる中で、中間指針の見直しを求める声が被災者や自治体から上がっています。
昨年九月、原子力損害賠償紛争審査会の現地視察の際に、双葉町と大熊町から中間指針の見直しについて要請を受けていると思います。どのような要請を受けたでしょうか。
○政府参考人(生川浩史君) 御指摘の双葉町、それから大熊町からいただいた要望書の前文の中で、中間指針の見直しに関係する箇所でございますけれども、まず、双葉町については、このように多くの町民が避難生活の更なる長期化を強いられる中で精神的、経済的に被っている苦痛は計り知れず、極めて深刻であり、中間指針で示されている範疇を大きく超えているものと認識しております、審査会におかれましては、指針が町民の被害実態に即した内容となるよう指針の見直しに真摯に努めていただきたいというふうに記載されております。
次に、大熊町についてでございますけれども、審査会におかれては、復興の状況だけでなく、目を背けたくなるような当町の現状を十分に御理解いただき、国策として推進してきた原子力発電所の事故により苦痛を強いられている町民及び事業者の被害実態に即した内容となるよう指針の見直しに真摯に努めていただきたいというふうに記載されております。
○岩渕友君 両町が何でこうした要請を行ったかというと、両町ともさらに、審査会が被害者の声に真摯に耳を傾けて審査、検証が行われてきたものとは考えにくいと、こういう厳しい指摘までしているんですね。
萩生田大臣は、福島民報社のインタビューの中で、中間指針の見直しについて、関連する訴訟の動向などを注視しながら迅速、公平、適切な賠償が実施されるよう取り組むと、こういうふうに述べているんです。
これ、判決が積み重なってきているわけですけれども、この積み重なる判決についてどのように分析をしているのでしょうか。
○国務大臣(萩生田光一君) 東電福島原発事故に係る裁判の動向については、中間指針の見直し要否の検討に資する観点から、国家賠償の集団訴訟の判決内容については随時、原子力損害賠償紛争審査会に報告を行ってきております。
具体的には、それぞれの判決について、その損害項目や対象、賠償額などの報告を行い、各裁判所においてそれぞれの考え方で異なる判決が言い渡されていること、現時点でいずれの判決も確定しておらず、引き続き状況を注視する必要があることなどが同審査会において確認されているところです。
今後も関連する訴訟の状況等について適切にフォローアップをしてまいりたいと思います。
○岩渕友君 判決が確定するまでということになると、更に長い時間を要するということになるわけなんですよね。これ、被害者はいつまで苦しめばいいのかということになるんですよ。
これ、中間指針、直ちに見直すべきです。どうでしょうか。
○国務大臣(萩生田光一君) 中間指針は、東電福島原発事故が規模、範囲において未曽有のものであり、特に、事故当初、生活状況が切迫する多くの被害者の方々を迅速に救済する観点から、類型化可能なものについて一定の目安を示したものです。このため、個別事情について争いがある場合はADRセンターや裁判所で対応していただくことを基本的な考え方としていますが、現在は事故から十年が経過し、賠償が進んでいる中で、原子力損害賠償紛争審査会でも指摘があるように、多くの方々に迅速に賠償するというよりは、むしろ個別事情に応じた賠償が求められている段階と承知をしております。先月開催された紛争審査会においても、直近の賠償に関する動向等を踏まえ、現時点で直ちに中間指針等の見直しを検討する状況にはないことが確認されております。
引き続き、関連動向や被災地の実態などを踏まえつつ、紛争審査会で御審議、御判断されることではありますが、必要と認められる場合には適時適切に中間指針の見直しについて検討されるものと考えております。
いずれにしましても、文科省としては、被害者の方々の御事情を踏まえつつ、公平かつ適正な賠償が行われるよう着実に取り組んでまいりたいと思います。
○岩渕友君 個別の事情ということでしたけれども、その個別の事情が東京電力によって応じられないという事例もあるわけですよね。ADRセンターの和解案の拒否があるだとか、そういった実態があるんですよ。
損害賠償が非常に不十分になっているということが被害者の皆さんの生活を困窮させているんですね。それを更に深刻にしています。浪江町では、二〇一五年に二世帯だった生活保護世帯は、二〇二〇年には八十二世帯になっているんです。五年間で四十一倍にも急増しているんですね。こういったことを考えても、中間指針の見直し必要です。これを直ちに行うということを強く求めます。
次に、福島第一原発で発生した汚染水の海洋放出は重大な問題です。
昨年六月、全漁連は、海洋放出に断固反対する特別決議を全会一致で採択し、十月十五日に大臣への要請を行っています。どのような内容だったでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 今委員御指摘のように、十月に全漁連の岸会長や福島県漁連の野崎会長らが来訪されました。その際には、ALPS処理水の取扱いが我が国にとっての重要課題であることは認識をしているが、風評影響は極めて甚大なものになることが憂慮されるなどの観点から、ALPS処理水の海洋放出には絶対反対であり、政府には、漁業者の意見を十分に踏まえ、慎重な判断を求めるという御要望をいただいたところであります。
私からは、いただいた御要望はしっかりと受け止めた上で政府内での検討を深めること、特に、御懸念の風評影響については、政府方針決定前後を問わず、徹底的な対応を取ることなどを申し上げたところであります。
○岩渕友君 今紹介ありませんでしたけれども、漁業者の努力が水泡に帰すと、で、漁業者を失望させる、漁業の将来に壊滅的な影響を与えかねないと、こういうことまで言っているんですよね。
福島県内では、七割を超える市町村議会が海洋放出に反対若しくは慎重な対応を求める意見書を可決して、東北市議会議長会も、関係者のこれまでの努力を裏切るものだというふうに厳しく指摘をしています。
国と東京電力は、二〇一五年に福島県漁連と、関係者の理解なしにはいかなる処分も行わず、タンクに貯留するという約束をしています。この約束に変わりはありませんね。まず東京電力から。
○参考人(小早川智明君) 御質問にお答えいたします。
処理水の扱いにつきましては、今後、国としての結論が示されるものと認識しておりますが、地元を始め関係者の皆様の御理解が得られるよう努力し続けることが大切という考え方は一貫して変わりはございません。
○岩渕友君 経産大臣もお願いします。
○国務大臣(梶山弘志君) 地元を始め関係者の御理解を得られるよう努力し続けることが大切だということは一貫して変わりません。
御意見を伺う場での御発言や先ほど御紹介した要請書の内容を踏まえれば、漁業関係の皆様は、廃炉を進めるためにはALPS処理水の処分が我が国として喫緊の重要課題であることは理解を示しつつも、とりわけ風評影響について強い懸念を持たれているものと承知をしているところであります。
このため、何らかの形でALPS処理水を処分する場合には、風評被害を受け得る方々の御意見に耳を傾け、国が前面に立って風評払拭に取り組む必要があると考えております。その過程で、様々な御懸念に対応し、関係者の御理解を深めていくことが責任ある政府の対応であると考えております。
○岩渕友君 海洋放出を決定するということは、漁業者との約束をほごにすることだし、新たな被害を被害者に負わせることになるという認識はあるでしょうか。
○参考人(小早川智明君) 当社といたしましては、福島県漁連様とのお約束をほごにすることは考えておりません。
今後、政府によるいかなる決定がなされようとも、関係者の皆様に御理解いただけるよう努力し続けてまいります。
○岩渕友君 大臣もお願いします。
○国務大臣(梶山弘志君) 先ほど申しましたとおりでありますけれども、ぎりぎりまでしっかりと協議、また説明をしていくということであります。
○岩渕友君 大臣にお聞きしますけれども、おととい閣議決定された復興の基本方針では、関係者の理解を得る努力をするというふうには書かれていないんですよ。先送りできないから適切なタイミングで結論出していくというふうにあるんですけれども、これ、結論ありきということになっちゃうんじゃないんですか。
○国務大臣(梶山弘志君) 昨年の二月に小委員会の報告がありました。その後、結論ありきではなくて、多くの方の御意見を伺うということで、数多くの方々、また団体の意見も伺ってまいりました。そして、現在も様々な団体との説明、また意見を伺うことを継続をしているところであります。最大限努力をしてまいりたいと思っております。
○岩渕友君 先ほどもあったように、そもそもは理解が得られなければ海洋放出決定しないし、タンクの貯留継続すると言っているわけですよね。説明するということ、すればいいということではないんだということなんですよ。
県民の世論調査では海洋放出に五三%が反対をしていて、漁業者も県民も理解なんかしていません。結論ありき、海洋放出ありきではなく、タンクの保管継続のために英知を結集するべきだということを強く言っておきたいと思います。
先日の福島県沖地震で、第一原発三号機に設置をされていた地震計の故障を放置していたことが判明するなど、東京電力の隠蔽体質と危機管理のなさに怒りの声が上がっています。こんなことが十年続いているんですよ。だからふるさとに戻れないんですよ。
被害者の生活となりわいの再建妨げているのが東京電力だということを認識しているでしょうか。
○参考人(小早川智明君) これまで十年間、廃炉作業につきましては、地域の復興や被災された方々の御帰還に水を差さないよう、細心の注意を払いながら努めてまいりました。
そのような中で、今般の地震に伴う対外公表、また地震計の故障が放置されたことなど、地元の皆様に御不安を与えるような事案が発生したことは大変重く受け止めており、しっかり改善してまいりたいと思います。
○岩渕友君 もうこんなこと十年も続いているんですよね。家に帰ることを決めたばかりなのに、原発がまた爆発するかと思うと帰る選択にならないと、こういう声も寄せられています。
大臣、こんなこと十年も続いていると。今東電の答弁もありましたけど、どんなふうに認識していますか。
○国務大臣(梶山弘志君) 先般の地震のときのその地震計の話も含めて強く東電に抗議をし、そして今後の改善というものを指示をしたところであります。一つ一つしっかりと改善をさせていくこと、そして廃炉、そして福島の復興というものを一歩ずつ進めていくことが重要なことであると思っております。
地域の自治体におかれましては、この汚染水、また処理水がたくさんタンクにあること自体がこの地域の風評にもつながるものでもあるという御意見もいただいているところでありまして、そういった意見も含めていろいろ参考にしながら判断をしていくということになろうかと思います。
○岩渕友君 そんな問題引き起こすのが原発事故で、国と東電の責任なんですよ。
原子力緊急事態宣言は今も解除されていません。事故原因も究明されず、検証が必要です。原発ゼロは事故の最大の教訓であり、被害者の願いです。
野党が共同で提出している原発ゼロ基本法案の成立を求めるとともに、再生可能エネルギーを主力とするエネルギー政策への転換を求めて、質問を終わります。