2021年12月21日(火) 参議院 本会議
「2020年度決算の概要」
岸田文雄首相が就任してから初めての本格論戦の場となった第207臨時国会が21日、閉会しました。日本共産党の岩渕友議員は参院本会議で、2020年度決算の質問に立ち、国土交通省の統計データや森友公文書の改ざんをめぐる疑惑、新型コロナウイルス対策、東日本大震災の復興支援、原発問題などをただしました。
岩渕氏は、国交省の「建設工事受注動態統計」データ改ざんについて「再度、全省庁点検を行うべきだ」と要求。森友問題で政府が突如裁判を終結させたと批判し、関係者の国会招致を求めました。
岩渕氏は、岸田首相が「東北の復興なくして日本の再生なし」と言いながら所信表明演説で大震災について一言ふれた程度で原発事故には言及しなかったと批判。福島県浪江町の生活保護世帯は2015年の2世帯から2020年には82世帯に激増したとし、「避難者の生活実態を把握し、支援を続けるべきだ」と求めました。
さらに、政府が決定した東京電力福島第1原発で発生するALPS(アルプス=多核種除去設備)処理汚染水の海洋放出方針の撤回を要求しました。政府の第6次エネルギー基本計画で2030年の原発比率を20~22%としていることを批判。「原発も石炭火力もゼロの決断をしてこそ、省エネや再生可能エネルギーの導入に本気で取り組むことができる」と迫りました。
岸田首相は、ALPS処理汚染水について「汚染水ではない」と強弁。エネルギー問題では、省エネ・再エネとともに原発も選択肢として追求すると述べました。
岩渕氏は、新型コロナウイルス対策の中小企業者支援をめぐって、何度申請しても支給されない不備ループがあったと指摘。事業復活支援金でも「持続化給付金の半額程度の給付にしかならない」として、給付額・対象など抜本的な拡充が必要だとただしました。岸田首相は拡充には一切ふれず、事業者の願いを切り捨てました。
岩渕氏は男女賃金格差について、政府による実態調査と企業による公表の義務付けを要求しました。
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「2020年度決算の概要」
○議長(山東昭子君) 岩渕友さん。
〔岩渕友君登壇、拍手〕
○岩渕友君 私は、日本共産党を代表し、二〇二〇年度決算に関わって岸田総理に質問いたします。
国土交通省が、建設工事受注動態統計のデータを改ざんし、二重計上していたことが明らかになりました。少なくとも安倍政権の二〇一三年から八年も続けられており、GDPにも影響した可能性があります。
毎月勤労統計調査の不正が問題になった際、参議院は政府に対して警告決議を議決しました。政府は、全省府の統計作成プロセスの適正化等の取組を着実に推進し、統計に対する信頼を回復する措置を講じると約束したではありませんか。
それにもかかわらず、国土交通省が改ざんを続けていたことは重大です。総理、反省を口にするのであれば、第三者委員会任せではなく、政府の責任ですぐにでも真相を究明し、再度全省庁の点検を行うべきではありませんか。
森友問題で、公文書の改ざんを強要され自ら命を絶った赤木俊夫さんの妻、雅子さんが国を訴えた裁判で、政府は突如、認諾し裁判を終結させる暴挙に出ました。俊夫さんがなぜ自殺に追い込まれたのか原因と経過を明らかにしてほしいという雅子さんの思いを踏みにじり、隠蔽することは断じて許されません。世論調査で八割近い国民が再調査が必要だと答えています。総理、再調査をするべきではありませんか。
そもそも、なぜ、誰のために改ざんが行われたのか、真相究明のために、関係者の国会招致の実現など、国民の声に応えて参議院の役割を果たそうではありませんか。
二〇二〇年度当初予算にはコロナ対策が一円もなく、三次にわたる補正予算で積み増しされたものの、政府の後手後手ぶりをさらし、巨額の予備費で白紙委任を求めるなど財政民主主義に反する局面が続きました。公衆衛生や社会保障の予算を抑える一方、軍事費は米国からの兵器爆買いなどで史上最高を更新してきました。この路線の転換が求められています。
二〇年度は、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から十年の年です。私は福島県の出身です。原発事故さえなければ失うことのなかった命があります。ふるさとが奪われ、家族がばらばらにされた怒りや悔しさ、そして原発のない社会をつくってほしいという思いをこの六年、国会に届け続けてきました。
総理は、東北の復興なくして日本の再生なしと言いながら、先日の所信表明演説で大震災について一言触れただけ、原発事故には触れませんでした。さらに、初めて復興大臣が兼任となりました。原子力緊急事態宣言は今も発せられたままです。総理は、大震災も原発事故の被害ももう終わったという認識なのですか。
今も戻ることができない帰還困難区域のある浪江町の生活保護世帯は、二〇一五年の二世帯から二〇二〇年には八十二世帯に激増しています。避難が続いているのに損害賠償が打ち切られ、暮らしの実態は深刻です。ところが、政府は、医療や介護の減免措置を早ければ二三年度に見直すと言います。事故から十年たった避難者の生活の実態を政府の責任で把握し、支援を続けるべきではありませんか。政府が帰還困難区域について、除染をしなくても避難指示解除できるとする方針を示したことに怒りの声が上がっています。全域の除染を行うとともに、その費用は東京電力が負担することは当然ではありませんか。
ALPS処理水、汚染水について政府が海洋放出の方針を決定したことに、福島県内だけでなく、岩手、青森、茨城など全国で怒りの声が上がっています。宮城県石巻市で若手の水産加工業者から、漁業を続けたい、人生が懸かっている、希望を奪わないでと訴えられました。政府は、関係者の理解なしにはいかなる処分も行わないという福島県漁連との約束をほごにするのですか。風評被害対策というなら、海洋放出しないことが一番の対策です。方針を撤回し、汚染水そのものを増やさない対策に本気で取り組むべきではありませんか。
半径三十キロ圏に九十四万人が生活する東海第二原発の運転差止めを認めた水戸地裁判決は、実効性ある避難計画策定の困難さと人格権侵害の具体的危険があることを指摘しました。しかも、東日本大震災で被災した老朽原発であり、再稼働は中止するべきです。お答えください。
第六次エネルギー基本計画では、二〇三〇年の原発比率を二〇から二二%としており、老朽原発を含め二十七基程度の原発を稼働することになります。ドイツは、来年末までに原発を停止し、石炭火力を八年前倒しして廃止すると決めました。原発も石炭火力もゼロの決断をしてこそ、省エネや再生可能エネルギーの導入に本気で取り組むことができるのではありませんか。
二〇年度の最大の課題は新型コロナ対策です。中小事業者支援では、一時支援金、月次支援金事業をめぐって、何度申請し直してもいつまでも支給されない不備ループが大問題になってきました。埼玉県内の事業者からは、三年分の膨大な資料も提出したのに不備通知が繰り返されている、うちを潰そうとしているとしか思えないと怒りの声が寄せられています。先日、我が党議員の質問に萩生田大臣は、今改善をしている、丁寧に対応すると答弁しました。不備ループを解消し、一刻も早い支給と審査体制の改善を行うことを総理も約束してください。
事業復活支援金は持続化給付金の半額程度の給付にしかならず、これではとても復活できないという声が上がっています。給付額の増額や給付対象の拡大など、抜本的な拡充が必要ではありませんか。
政府は、病床確保を求めながら、地域医療構想の名で四百三十六の公立・公的病院の統廃合と急性期病床など二十万床を削減する計画を進め、二〇年度にも三千四百床を削減しました。秋田県から、大雪になれば遠い病院には行けない、高齢者の通院を考えるとここに病院が必要などの声が寄せられています。このまま計画を進めれば、地域医療を守れない、医療提供体制が崩壊することになります。それでいいということなのですか。
米価暴落、原油高騰、さらに赤潮被害が加わって、北海道の経済と道民の暮らしを直撃しています。米価対策、原油高騰対策を更に強化するべきではありませんか。赤潮被害の緊急支援事業が閣議決定されましたが、前例のない災害級の被害です。既存の枠を超えた支援が必要ではありませんか。
コロナ禍の下、非正規の七割を占める女性にしわ寄せが集中する中、働く女性の自殺が増加しています。シフトが減らされ、雇い止めが相次ぐなど、女性の多くが雇用の調整弁とされ、経済的な困窮が広がる下で、命を絶つまで追い詰められる事態になっています。
非正規を含む男女の平均賃金で見ると、生涯の賃金格差は一億円近くにも上ります。これが年金に連動して格差は更に広がります。政府として男女の賃金格差の実態を調査し、EUのように企業に実態の公表を義務付けるべきではありませんか。非正規の低賃金をなくすためにも、最低賃金の早期の抜本的な引上げが必要です。
賃金の平等はジェンダー平等社会を築く上の土台です。コロナ危機を経て、ジェンダー平等を求める国民の声が高まっています。この声に応え、政府が本気で取り組むことを求めて、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 岩渕友議員の御質問にお答えいたします。
統計問題の真相究明についてお尋ねがありました。
平成三十一年一月の毎月勤労統計の不適切事案を受け、政府全体として再発防止策を進める中で、今回のような事態になったことは大変遺憾なことであると考えます。
このため、私から国土交通省に対して、統計の専門家だけでなく法律の専門家も加えた第三者委員会を国土交通大臣の下に立ち上げ、経緯や原因の検証を行い、一か月以内に取りまとめ、再発防止に取り組むこと、こうした指示を行ったところであります。
そして、この国土交通省のこの第三者委員会でのこの検証を行った上で、その後、統計の専門家による第三者委員会である総務省の統計委員会において専門的な知見による精査を行い、政府統計全体に対する国民の信頼を確保するための方策、検討してまいりたいと考えます。
そして、森友学園案件に関する再調査についてお尋ねがありました。
森友学園問題については、まず、財務省においては、自らの非を認めた調査報告を取りまとめております。会計検査院においても、二度にわたる検査報告を国会に提出をしております。さらに、第三者である検察の捜査が行われ、結論が出ていると承知をしております。
今般のこの損害賠償請求を全面的に認めるに当たりまして、財務省に対し、別途の訴訟についてまず引き続きしっかりと丁寧に対応することを指示し、そして、今後も様々な場において真摯に説明を尽くしていく、このように指示をしたところであります。今後も、必要に応じてしっかり説明をしてまいりたいと考えております。
そして、東日本大震災についてお尋ねがありました。
岸田内閣は、原発事故を含む震災からの復興を内閣の基本方針と掲げ、全閣僚に対して、被災地、特に福島の復興に全力を尽くすよう指示を出しているところです。
復興大臣を務める西銘大臣は、就任以来、精力的に被災地を訪問するなど、原発事故の被災地である福島の復興再生、さらには沖縄及び北方対策の両方の重要業務をこなしていると認識をしております。
東日本大震災からの復興に向けては、引き続き被災者支援や産業、なりわいの再建などの課題が残り、福島の復興再生は中長期的な対応が必要であると認識をいたします。今後とも、閣僚全員が復興大臣であるという認識を共有し、総力を挙げて東北の復興に取り組んでまいります。
医療、介護等の減免措置についてお尋ねがありました。
これまで、原発事故により設定された避難指示区域等に居住されていた方について、医療、介護保険等の保険料、窓口負担の減免措置を実施してまいりました。本措置については、復興の基本方針において、被保険者間の公平性等の観点から、避難指示解除の状況も踏まえ、適切な周知期間を設けつつ、激変緩和措置を講じながら、適切な見直しを行う、このようにされております。
見直し内容については、被災者の方々の実態を把握している各自治体の意見も踏まえながら、復興庁と厚生労働省において連携して検討してまいります。
帰還困難区域の除染や解除についてお尋ねがありました。
将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除し、復興再生に責任を持って取り組むとの決意、これについては全く揺らぎはありません。
また、帰還困難区域の解除に向けた除染については、特定復興再生拠点区域の除染を進めるとともに、同区域外にあっては、住民の帰還の意向を個別に丁寧に伺いながら、人口回復などを通じて復興を後押しするために、政府方針を踏まえ、国の負担において行ってまいります。
そして、福島第一原子力発電所のALPS処理水についてお尋ねがありました。
まず、政府が海洋放出を決定したのは、汚染水ではなくALPS処理水であります。その上で、ALPS処理水の処分については、復興の、福島の復興を成し遂げるためには避けて通れない課題であると認識をしています。
引き続き、政府が前面に立ち、処理水の安全性を確実に確保するとともに、風評払拭に向けてあらゆる対策を行うことを通じて、地元漁業関係者も含め、皆様の理解を得てまいりたいと存じます。
汚染水発生量の抑制対策については、凍土壁や地下水バイパスの設置等の対策により、昨年度は、対策開始前と比較して発生量が約四分の一程度まで減少しています。引き続き、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。
東海第二発電所についてお尋ねがありました。
原子力発電所については、いかなる事情より安全性を最優先にし、高い独立性を有する原子力規制委員会が科学的、技術的審査を行い、世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認められた場合のみ、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進める、これが政府の方針であります。
こうした方針に基づき、新規制基準に適合すると認められた東海第二発電所についても、地元の理解を得ながら再稼働を進めてまいります。
原発と石炭火力についてお尋ねがありました。
エネルギーは全ての社会経済活動を支える土台であり、安定的で安価なエネルギー供給を確保することは政府の最重要課題の一つであると認識をしております。単一で完璧なエネルギー源が存在せず、今後の技術革新などの不確実性を踏まえれば、徹底した省エネ、再エネ、原子力、CCUSなどあらゆる選択肢を追求し、カーボンニュートラルを目指すことが重要であると考えております。
原子力については、安全性の確保を大前提に、原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた場合には、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進めてまいります。
また、石炭火力については、二〇三〇年に向けて、非効率な石炭火力のフェードアウトを着実に進めてまいります。さらに、二〇五〇年に向けては、水素、アンモニアやCCUS等を活用して脱炭素型の火力に置き換える取組を推進するなど、我が国としてもしっかりと取り組んでまいります。
そして、一時支援金などについてお尋ねがありました。
まず、一時支援金と月次支援金については、緊急事態宣言等の影響を受けた事業者を支援するものとして、これまで、累計約三百万件の申請に対して約二百八十万件の給付を行ってまいりました。月次支援金は、現在も十月分の申請を受け付けており、引き続き迅速な給付に努めてまいりたいと思います。
申請書類については、過去に申請したことがある者の負担軽減策を講じているところですが、その際に、提出された書類からは給付要件を満たすことが確認できない申請者に対しては、必要最小限の追加書類を提出することをお願いし、速やかに手続を終えるよう努めております。
事業復活支援金については、事業規模に応じて支援上限額を最大二百五十万円としていることに加え、新たに売上高の減少割合が三〇%以上の事業者も支援対象とするなど、持続化給付金よりも手厚い支援措置となっております。
地域医療構想についてお尋ねがありました。
地域医療構想については、人口構造の変化を踏まえ、地域の医療ニーズに合わせ、質の高い、そして効率的な医療提供体制の確保を目指して取り組むものです。こうした観点から、地域での合意を踏まえ、自主的に行われる病床の減少に対して支援を行っているところです。
病床の減少、失礼、病床の削減あるいは統廃合ありきではなく、地域の事情を踏まえつつ、地方自治体等との連携、地方自治体等と連携して検討を進めてまいります。
そして、米価、原油高騰、赤潮被害への対策についてお尋ねがありました。
新型コロナによる米価の下落に対しては、当面の需給の安定に向け、新型コロナによる需要減に対応する十五万トンの特別枠を設け、保管や長期計画的な販売等を支援してまいります。
原油高騰に対しては、経済対策において、国民の皆様が年末から春先まで見通せるように、農業や漁業等に対する業種別対策を強化いたします。加えて、ガソリン、軽油、灯油、重油の急激な値上げに対する備えとして、年内から小売価格の激変緩和事業も講じてまいります。
北海道での赤潮被害については、漁業共済等による減収補填に加え、漁業共済の対象外であるウニについても、ウニ殻の除去等の漁場環境の回復の取組を経済対策等により支援をしてまいります。現場の状況を丁寧に把握し、被害を受けた漁業者の皆様に寄り添って対応してまいりたいと考えております。
そして、男女の賃金格差と最低賃金についてお尋ねがありました。
女性活躍推進法においては、男女の賃金格差は、管理職比率と勤続年数の差異を始め、複合的な要因があること等の理由により、情報公開の対象とはしておりません。
政府としては、更なる格差の改善が必要であると考えており、その是正に向けて取り組んでいきたいと考えます。
また、労働者全体の賃金の底上げを図ることも重要であり、御質問の最低賃金につきましては、骨太の方針二〇二一に基づき、より早期に全国加重平均千円とすることを目指してまいりたいと考えます。
以上です。(拍手)