2022年12月2日(金) 参議院 本会議「2022年度第2次補正予算案」
テーマ:反対討論
(議事録は後日更新いたします)
2022年度第2次補正予算が2日の参院本会議で、自民、公明、国民民主の賛成多数で可決され、成立しました。日本共産党は反対しました。
日本共産党の岩渕友議員は反対討論で、「最も急がれる物価高騰から暮らしを守るという点で全く不十分な一方、緊急性がない多額の予備費や基金、軍事費などを計上しており、暮らしの実態からも財政法に照らしても認められない」と批判しました。
岩渕氏は、政府の物価高騰対策は「部分的な価格抑制策であり、不十分だ」と批判。「全ての物価を引き下げる消費税の減税こそ最も効果的な対策だ」と述べました。
また、「『物価上昇に負けない賃上げ』というのなら、雇用の7割を支える中小企業全体の賃上げ支援が重要だ」と指摘し、中小企業への社会保険料・税負担の軽減策を要求。「最低賃金1500円、安定した働き方を希望する人に無期雇用を保障することは政治の責任だ」と主張しました。
岩渕氏は、畜産・酪農の危機打開のために、緊急に飼料・肥料価格の高騰分を農家に直接補てんし、乳価の引き上げを行うよう要求。「(福島第一原発処理水の)海洋放出を前提とした予算の計上は認められない」と厳しく批判しました。
さらに、多額の軍事費にも言及し、「次年度以降の歳出化経費を前倒しして盛り込むやり方はやめるべきだ」と批判。「憲法9条を持つ国として、軍拡ではなく平和を構築する外交努力を行うべきだ」と強調しました。
反対討論
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2022年12月2日(金) 参議院 本会議
「2022年度第2次補正予算案」
○岩渕友君 日本共産党を代表し、2022年度第2次補正予算案に反対の討論を行います。
統一協会との癒着、政治と金をめぐる問題などで1月に3人の閣僚が辞任しました。ほかにも疑惑を追及されている政務三役がおり、総理の任命責任は重大です。
統一協会の被害者救済のための法案が、昨日、閣議決定されました。ところが、審議を通じて、被害救済、被害防止を図る上で不十分な点が多々あることが明らかになりました。今国会の成立が求められていますが、統一協会による加害行為の実態に即して実効性のある内容にするためにも、十分な審議と必要な修正を行うことを求めるものです。
財政法上、補正予算による支出は、特に緊要となった経費に限られます。ところが、本補正予算案は、最も急がれる物価高騰から暮らしを守るという点で全く不十分な一方、緊急性がない多額の予備費や基金、軍事費などを計上しており、暮らしの実態からも、財政法に照らしても認められません。
10月の全国消費者物価指数は、前年同月比で3.6%上昇し、40年8か月ぶりの上昇率となりました。今月から食料品約150品目が値上げとなり、年明けには2000品目を超える値上げが予定されるなど、暮らしに密接に関わるものの値上げが家計を直撃しています。
ところが、政府の物価高騰対策は、ガソリンや電気、ガスといった大手石油元売や電力、ガスの独占企業を救済する部分的な価格抑制策であり、不十分です。
全ての物価を引き下げる消費税の減税こそ最も効果的な対策です。小規模事業者やフリーランスで働く方たちに深刻な負担増をもたらすインボイス制度は中止するべきです。
物価上昇に負けない賃上げというのであれば、雇用の7割を支える中小企業への賃上げ支援が重要です。ところが、現在行われている業務改善助成金の実績は昨年度で事業者全体の0.1%にしかすぎず、中小企業全体の賃上げ支援策が必要です。
地方最低賃金審議会からは中小企業への社会保険料、税負担の軽減策の要望が上がっています。総理は慎重な検討が必要と述べるだけでしたが、要望に応えるべきです。
日本共産党は、アベノミクス以降に増えた大企業の内部留保に2%、5年間限定の課税で10兆円の財源をつくり、中小企業の賃上げ支援に充てることを提案しています。内部留保が国内投資にも回らず、労働者全体の実質賃金が下がる一方で、大企業の中に積み上がっていくというゆがみにメスを入れてこそ、構造的な賃上げを実現することができます。
日本が賃金が上がらない国になった背景には、政府が労働法制を次々と規制緩和するなど、正社員から非正規雇用への置き換えを構造的に進めてきたことがあります。ところが、審議を通じて、総理を始め政府に、政策によって非正規雇用を増やしてきたことへの反省がないことが明らかになりました。最低賃金1500円、安定した働き方を希望する人に無期雇用を保障することは政治の最低限の責任です。
新型コロナの第8波の下で、命を守る対策が急がれます。既に感染が広がる北海道では、コロナ患者受入れのための病床を緊急に確保するために、9月で打ち切られた新型コロナウイルス感染症患者等入院受入医療機関緊急支援事業の復活を求める声が現場から上がっています。全国知事会の緊急提言も支援事業の実施について早期の検討を求めており、総理の判断ですぐにでも再開するべきです。
異常円安と世界的な農産物、エネルギー価格の高騰は、食料とエネルギーを外国に依存し続ける経済の危うさを浮き彫りにしています。
一昨日、畜産、酪農の危機打開を求める緊急行動が農水省前で行われました。餌代が2年前の2倍になるなど様々な費用が高騰する一方で、農畜産物の販売価格は低迷し、乳価は据え置かれたままです。餌代や肥料代の値上がりは農家の責任ではありません。畜産、酪農は、日本の農業生産額の36%を占める重要な事業です。本補正予算案には、生産現場が求める直接補填が盛り込まれていません。飼料や肥料価格の高騰分を農家に直接補填するべきです。
日本のエネルギー自給率は、先進国の中でも極めて低く、僅か10%です。日本は資源がない国ではありません。省エネと100%国産で地域とともに進めることができる再生可能エネルギーの導入で、安定供給を図り、気候危機打開への責任を果たすことができます。
ところが、政府は、安定供給や脱炭素を口実に、原発再稼働を加速させ、リプレースや運転期間の延長を進めようとしています。ふるさとを奪い、事故前の当たり前の日常を奪い続けているのが東京電力福島第一原発事故であり、事故を終わったことにして原発回帰への大転換は断じて許せません。
本補正予算案には、ALPS処理水の海洋放出に伴う影響を乗り越えるための漁業者支援事業が計上されています。政府は、2015年、福島県の漁業者と、関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない、タンク保管を継続すると約束し、反対が続いているにもかかわらず、海洋放出の方針決定を強行させました。このまま海洋放出が行われることになれば、地域経済に大きな影響を及ぼし、10年の努力が水泡に帰す懸念があるという声が上がる下で、海洋放出を前提とした予算の計上を認めることはできません。
本補正予算案には、多額の軍事費が計上されています。次年度以降の歳出化経費を前倒しして盛り込むというやり方はやめるべきです。その多くが辺野古新基地建設や鹿児島県馬毛島の基地建設など、米軍再編経費です。沖縄県知事選挙でも辺野古新基地建設に審判が下され、馬毛島では、住民の安心、安全な日常と豊かな自然、なりわいを壊すものだという声が上がっており、建設は中止するべきです。
総理は、軍事費を2027年度にGDP比2%、現在の二倍となる11兆円もの増額を指示しました。しかも、相手国の領土を攻撃することを目的としたトマホークを最大500発購入することを検討し、先月行われたバイデン米大統領との首脳会談で、購入のための交渉を進める方針を確認したと報道されています。
11月22日に提出された有識者会議の報告書は、憲法違反となる敵基地攻撃能力の保有を不可欠としました。軍拡の財源について、国民全体での負担、幅広い税目による負担が必要だと言及しており、総理は軍事費のための増税を否定していません。軍拡のために増税を押し付けることは許されません。
米国政府と一体で進めてきたミサイル防衛は軍縮につながったのか、総理はまともに答えることができませんでした。これまで保有できないとしてきた相手国を攻撃するミサイルを配備する敵基地攻撃能力の保有という大軍拡に突き進むことは、周りの国の日本に対する見方を変え、日本の安全を脅かすことになります。
先月、トルコのイスタンブールで開催された第11回アジア政党国際会議には、30か国、1地域が参加しました。全会一致で採択された宣言は、対話と交渉が国際法に基づく紛争解決への唯一の道だと強調し、ブロック政治を回避するとして、世界を分断し、対立を激化させるのではなく、地域の全ての国を包み込んだ平和な枠組みをつくるとしています。
これがアジアの本流です。憲法9条を持つ国として、軍拡ではなく平和を構築する外交努力こそ行うべきだと述べ、討論といたします。(拍手)