テーマ:破綻した原発避難計画
(議事録は後日更新いたします)
◎能登半島地震/自然・原子力災害の教訓/避難計画は破綻/原発ゼロ決断求める/岩渕議員が追及
日本共産党の岩渕友議員は19日の参院予算委員会で、能登半島地震により北陸電力志賀原発(石川県)でトラブルが相次いだが、避難計画は自然災害と原子力災害の複合災害に対応できず、「避難計画は破綻している。これでは住民の命は守れない」と批判し、原発ゼロの決断を迫りました。
岩渕氏は今回の地震で大規模な隆起が起き、地震活動が「北陸電力が想定した93キロの範囲を超えることが現実に起きた」と指摘。「隆起や沈降が原発周辺で発生した場合どういう問題があるか」と迫りました。
原子力規制委員会の山中伸介委員長は「原子炉建屋などが設置された地盤の変形、排水ポンプの貯水性に影響が生じる可能性がある」と答弁。岩渕氏は「原発の安全性にとって極めて重大だ。想定外のことが起きれば対応は難しい」と批判しました。
岩渕氏は、東海第二原発の立地する茨城県東海村の山田修村長が「複合災害を含めれば(避難計画は)ゼロから検討するしかない」と見直しを主張していると指摘。「原子力災害対策指針に基づき避難計画が策定される。指針を見直すべきではないか」とただしました。山中氏は「各自治体が地域防災計画を定める」と無責任な姿勢を示しました。
能登半島地震では、原発事故が起きた場合に高齢者や傷病者などが一時的に屋内退避する放射線防護施設が損傷し、使えなくなりました。岩渕氏は「複合災害で避難もできず、実効性ある避難計画もない」と指摘しました。
新規制基準に避難計画が入っていないことを挙げ、「実効性ある避難計画がなければ再稼働を認めるべきではない」と追及。林芳正官房長官はまともに答弁せず、岩渕氏が「アメリカでは避難計画が認められなければ再稼働できない」と重ねて質問。斎藤健経産相は「しっかりとした緊急時対応がない中で再稼働が進むことはない」と強弁しました。
◎福島原発事故/国・東電、海洋放出凍結を/岩渕氏「復興の努力台無しに」
日本共産党の岩渕友議員は19日の参院予算委員会で、東京電力福島第一原発事故から13年が経過し、多くの人がふるさとを奪われる中、同原発で昨年10月の汚染水による作業員の被ばく、今年2月の汚染水漏れとトラブルが相次いでいると指摘し、昨年8月に強行された汚染水(アルプス処理水)の海洋放出は漁業者との約束を破るもので凍結を求めるとともに、福島県民だけでなく国民的な議論を行うよう求めました。
岩渕氏は、国と東電が海洋放出の前提を「想定外の事態」を起こさないことだとしながら「今回の汚染水漏れはまさに、漁業者や福島県民の復興の努力を台無しにする重大な事態だ」と批判しました。
岩渕氏は海洋放出に漁業者や福島県民から怒りの声が上がっているとして、水産物の輸出実態を問いました。水産庁の森健長官は「中国向け水産物が前年比29.9%減だ」と明らかにしました。
さらに、海洋放出による損害賠償の実績をただすと、東電の小早川智明社長は「請求書発送が940件、支払い件数が50件で53億円だ」と答弁しました。
「できるだけ迅速かつ適切に賠償する」と述べた小早川氏に対し、岩渕氏は「復興の軌道に乗り始めたときの海洋放出。精神的な賠償もしてほしい」「ホタテの賠償が遅い」など漁業者からの訴えを示し、「切実な訴えだ。このような思いをどう受け止めるか問われている」と強調。小早川氏は「被害者の個別の事情に寄り添い対応する」と述べるにとどまりました。
岩渕氏は、地元の住民や研究者らでつくる福島円卓会議が「処理水」処分のあり方や復興と廃炉の両立について、県民や国民と、国や東電が対等に対話する場が必要だと呼び掛けていると指摘。「国と東電が勝手に決めるのではなく、海洋放出を凍結し廃炉、復興のあり方について議論を行うことを求める」と迫りました。
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2024年3月19日(火) 参議院 予算委員会
「一般質疑」(野党のみ)
○委員長(櫻井充君) 次に、岩渕友さんの質疑を行います。岩渕友さん。
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
能登半島地震から2か月余りがたちました。亡くなられた皆様に哀悼の意を表するとともに、被災をされた皆様に心からのお見舞いを申し上げます。
今回の地震によって、家屋の倒壊、道路の寸断、集落の孤立など甚大な被害が発生をし、志賀原発でもトラブルが相次ぎました。震源となった珠洲市には原発の建設計画がありましたけれども、住民の反対で凍結をされました。珠洲市北部では大規模な隆起も起こり、原発がなくて本当によかったという声が上がっています。
地震による隆起、地震活動の範囲について説明をしてください。
○政府参考人(千原由幸君) お答え申し上げます。
地震調査研究推進本部では、令和6年1月1日に発生しました能登半島地震の評価を行っております。
これらの評価によりますと、1月1日以降の地震活動は、能登半島の北部を北東から南西方向に縦断する150キロメートル程度の範囲に広がっており、現在も依然として活発な状態です。
また、地震に伴い能登半島を中心に大きな地殻変動が見られており、陸域観測技術衛星「だいち2号」が観測した合成開口レーダー画像の解析により、輪島市西部で最大4メートル程度の隆起、珠洲市北部で最大2メートル程度の隆起が検出されております。
○岩渕友君 北陸電力が地震活動の範囲を96キロというふうに想定をしていましたけれども、今150キロ程度ということですので、想定を超えることが現実に起きたということです。
資料の1を見ていただきたいんですけれども、この写真は藤野保史前衆議院議員が珠洲市で撮影をしたものです。黒くなっている部分は元々海面から出ていた部分です。白い部分が隆起をした部分なんですね。国内最大級と言われる隆起となっています。この地域では、昔から繰り返し地震が起き、そのたびに海岸が隆起をしてきました。
隆起や沈降が原発敷地内周辺で発生をした場合、どういった問題が発生する可能性があるでしょうか。
○政府特別補佐人(山中伸介君) お答えいたします。
仮に、原子力発電所の敷地に影響のあるような大規模な隆起や沈降が生じた場合には、原子炉建屋等が設置された地盤が変形したり、海水ポンプ等の取水性に影響が生じたりする可能性がございます。
○岩渕友君 今答弁があったとおりで、原発の安全性に極めて重大な問題だということです。
原発の設備は隆起を想定して設計をされているのでしょうか。
○政府特別補佐人(山中伸介君) お答えいたします。
原子力発電所の敷地周辺の断層につきましては、詳細な調査を基に活断層を抽出し、地震動評価を行った上で、原子炉建屋等の重要な建物、構築物の基礎地盤が地震時にその建物、構築物を支持できるものであること、また、地震に伴う隆起、沈降などを含む地盤の変形により安全機能が損なわれない設計であることを確認しております。
また、津波による発電用原子炉施設に対する影響評価には、津波による水位変動に加えて、基準津波の発生源における地震に伴う隆起、沈降も考慮した上で保守的な評価が行われるということを確認しております。
○岩渕友君 ちょっと続けてお伺いするんですが、想定外の隆起であるとか沈降などが起きた場合というのはどうなるでしょうか。
○政府特別補佐人(山中伸介君) お答えいたします。
新規制基準では、既設の海水取水設備とは別に、海から水を供給するための可搬型設備を備えることを求めております。審査においては、各プラントには大型ポンプ車やホース等が設置されておりまして、仮に既設の海水取水設備が隆起、沈降等で使えなくなった場合でも原子炉の冷却等に必要な水を供給できる能力があることを審査の中で確認しております。
○岩渕友君 今回の地震を見ても想定外のことが起き得るということなんですね。想定外のことが起きれば、対策取っているといってもやっぱり対応は難しくなるわけですよ。
地震や津波などと原子力災害が起きる複合災害による避難計画の実効性がこれまでも問題になってきました。けれども、今回の地震によって破綻が明らかになったという指摘が相次いでいます。世論調査でも、避難計画の見直しが必要という声が九割を超えています。
志賀町の稲岡町長は、再稼働の道筋が見えてこない、防災計画の見直しを検討すると述べたと報道をされ、東海第二原発が立地をする茨城県東海村の山田村長は、複合災害の場合を含めればゼロから検討するしかないと、こういうふうに言っています。
伊藤大臣、この避難計画は破綻しているのではありませんか。
○国務大臣(伊藤信太郎君) お答え申し上げます。
まず、今回の能登半島地震では、志賀原発についての原子力施設の安全機能に異常はなく、住民の避難を要する事態にはならなかったということを認識しております。
内閣府では、原子力発電所の立地地域ごとに設置している地域原子力防災協議会の枠組みの下、地域の実情を踏まえ、既に大規模な自然災害と原子力災害との複合災害、これを想定し、道路が寸断した場合の避難経路や家屋が倒壊した場合の防護措置も含め、緊急時対応を取りまとめ、あるいは取りまとめに向けた検討を進めております。
複合災害を想定した対応としては、具体的には、避難経路を複数設定するとともに、適宜必要な代替経路を設け、陸路が制限される場合には道路啓開に着手しつつ海路避難や空路避難を行い、また避難の準備が整うまでは屋内退避をするということをしております。そして、必要な場合には、警察、消防、自衛隊などの実動組織が住民避難の支援をする、支援を実施するということをしております。また、家屋倒壊により自宅での屋内退避が困難な場合には、近隣の避難所にて屋内退避をしていただくこととしており、さらに、近隣の避難所での屋内退避が困難な状況であれば、30キロ圏外の広域にあらかじめ定めている避難先への速やかな避難をしていただくことをしております。
今回の地震で得られた教訓も踏まえながら、自治体の声もしっかりお聞きして、原子力災害の対応の更なる実効性向上に取り組んでまいりたいと思います。
○岩渕友君 今御答弁いただきましたけれども、そういうことがもう破綻しているということが明らかになったのが今回の能登半島地震だったんじゃないでしょうか。
今、実効性の向上だというふうにおっしゃいましたけれども、じゃ、今複合災害起きたら、これ避難できないということになるんじゃないですか。
○国務大臣(伊藤信太郎君) 今お答えしたとおりで、避難できるようにしていると思いますが、更に実効性の向上を図りたいと思います。
○岩渕友君 その実効性が問われているわけですよ。で、避難計画が破綻しているということをお認めにならないんですか。
○国務大臣(伊藤信太郎君) 今回の地震では、まず原子力災害は発生しておりまして、あっ、発生しておりませんので、仮定の質問へ断定的なお答えは差し控えたいと思いますが、今回の被災状況をよく検証して、志賀原発の緊急時対応の取りまとめ作業にも更に反映してまいりたいと思います。
いずれにいたしましても、今回の地震を通じて得られた教訓も踏まえながら、自治体の声をしっかりお聞きして、原子力災害対応への更なる実効性向上に取り組んでまいりたいと思います。
○岩渕友君 この問題、志賀原発だけの問題ではないんですよね。いつ災害が起きるか分からないわけですよ。
そもそも、避難計画の策定、これがどうなっているかということについて説明をしてください。
○政府参考人(松下整君) お答えいたします。
原子力災害に備えた地域防災計画、避難計画につきましては、原子力災害対策特別措置法の規定により、防災基本計画及び原子力災害対策指針に基づき、自治体が作成することとなっております。国は、この自治体の地域防災計画、避難計画の具体化、充実化を支援することとしております。
また、内閣府は、原子力発電所の所在する地域ごとに関係省庁及び関係自治体を構成員とする地域原子力防災協議会を設置しておりまして、地域の避難計画を含む緊急時対応、緊急時対応の取りまとめを行っております。この緊急時対応につきましては、地域原子力防災協議会で原子力災害対策指針等に照らして具体的かつ合理的であることを確認し、その上で、総理を議長とする原子力防災会議で了承することとしております。
○岩渕友君 資料の2を御覧ください。今御答弁いただいた中身です。規制委員会も、そして国も、あくまでも支援ということなんですね。これ、一体誰が責任持つのかということが問われるわけです。
原子力災害対策指針に基づいて避難計画が策定をされますけれども、避難も屋内退避もできないということがいよいよ明らかになっています。指針の見直しが必要ではありませんか。
○政府特別補佐人(山中伸介君) お答えいたします。
原子力災害対策指針、これは、地方自治体が地域防災計画を策定し、又はその計画を実施する際に必要となる放射線防護に関する科学的、客観的判断を支援するため、規制委員会において定めたものでございます。
原災指針では、住民等の被曝線量を合理的に達成できる限り低くすると同時に、被曝を直接の原因としない健康等への被害をも抑えることが必要であるといった基本的な考えを示しております。つまり、原災指針の基本的な考え方には、自然災害によって家屋の倒壊や道路の寸断が発生した場合において身体や健康への影響を勘案すべきということも元々含まれていることから、能登半島地震の状況を踏まえまして原災指針を見直すことは考えておりません。
このような自然災害によって生じる状況に対して、住民の避難場所や避難経路の確保のためにどのように備え対応するかについては、地方自治体が策定する地域防災計画の中で各地域の実情に応じて具体化されるものと承知しております。
○岩渕友君 山中委員長は記者会見の中で、自然災害への防災は範疇外だというふうに言っているんですけど、これはそうなんでしょうか。
○政府特別補佐人(山中伸介君) 我が国では、避難に対する計画は、災害対策基本法に基づいて、地域ごとの実情を極めて細かく熟知する自治体が地域防災計画を定めることとされております。
その上で、各自治体の地域防災計画で定められた避難計画を含む緊急時対応が原子力災害対策指針に照らして具体的かつ合理的なものであることを、原子力施設周辺地域ごとの地域原子力防災協議会にて確認することとしております。
この地域原子力防災協議会においては、内閣府原子力防災が中心となりつつ、原子力規制庁を含む関係省庁が関係自治体と一体となって緊急時対応の具体化、充実化に取り組んでいるところでございます。さらに、私も参画いたします国の原子力防災においてその緊急時対応を了承することとしております。
原子力規制委員会としては、このようなプロセスの中で、専門的、技術的観点から、与えられた役割を引き続き果たしていきたいと考えております。
○岩渕友君 自然災害と原子力災害の対応というのは一体のものなんですよね。今の答弁、ちょっと無責任だと思いますよ。
東京電力福島第一原発事故で避難を強いられた浪江町では、津波で被災をされた方々の捜索打ち切らざるを得なかったと。泣く泣く、あしたの朝助けるからというふうに待機していたのに、翌朝、原発から10キロ圏内の住民の避難が発表をされて、助けることができなかった、言葉にならない痛ましいことが起きたんですよね。原発事故によって自然災害への対応ができないということが実際に起きたんですよ。これが複合災害ということなんです。
こういう事態を規制委員会はどう考えているんですか。
○政府特別補佐人(山中伸介君) お答えいたします。
東京電力福島第一原子力発電所の事故の際に得られた教訓、入院されていた方々が避難行動の最中に亡くなられているという悲惨な教訓を我々学ぶことができました。
原災指針では、被曝線量の低減と同時に、被曝線量以外の健康等への影響を抑えることを基本的な考えとして、我々原子力規制委員会の役割を果たそうとしておるところでございます。
○岩渕友君 学ぶことができましたじゃないですよ。もう全く今の答弁になっていないですよね。
今お話ありましたけど、さらに、能登半島地震では、原発事故が起きた場合に高齢者や傷病者などの要配慮者の方などが一時的に屋内退避する放射線防護施設が損傷しました。志賀原発の30キロ圏内にある施設で使うことのできなかった施設の数とその理由について紹介してください。
○政府参考人(松下整君) お答えいたします。
志賀地域の原子力災害重点区域内、これは原発から30キロ圏内でございますけれども、には放射線防護施設が21施設所在しております。
これらの施設の被災状況については現在確認中でございますけれども、現在までのところ、志賀町の2施設において、施設内への浸水、これはスプリンクラーの作動によるものというふうにお聞きしておりますけれども、施設内の浸水により入居者が施設内の他の場所又は他施設に移動することになったと聞いております。また、志賀町の2施設においては、建物の危険性が判明したため避難者を別の施設に移動することになったというふうに聞いているところでございます。
○岩渕友君 資料の3を御覧ください。外気の侵入を防ぐ陽圧化装置が十分に機能しなかった施設もあるというんですね。
原子力災害時の要配慮者の防護措置について、規制委員会はどのような考え方を示しているでしょうか。
○政府特別補佐人(山中伸介君) お答えいたします。
原災指針においては、直ちに避難を実施することによりかえって健康のリスクが高まると判断される方については、安全に避難が実施できる設備が整うまで、近隣の放射線防護対策を講じた施設、放射線の遮蔽効果や気密性の高い建物等に一時的に屋内退避させるなどの措置が必要であるとしております。
こうした考え方を踏まえ、地域の避難計画では、耐震性の高い放射線防護施設を確保するなどにより要配慮者に対する原子力災害対策の実効性を更に向上させることが重要であると考えております。
○岩渕友君 防護施設使うことができなかったら、防護措置とれないということじゃないですか。これでは住民の命や安全守ることできないわけですよ。
新規制基準に避難計画は入っていません。実効性ある避難計画がなければ再稼働を認めないとするべきではないでしょうか。規制委員長と官房長官にお聞きします。
○政府特別補佐人(山中伸介君) お答えいたします。
我が国では、避難に関する計画は、災害対策基本法に基づき、地域ごとの実情を細かく熟知する自治体が地域防災計画で定めることとされております。
原子力規制委員会としては、引き続き、地域原子力防災協議会等の枠組みの下、専門的、技術的な観点から、与えられた役割を果たしていきたいと考えております。
○国務大臣(林芳正君) この原子力発電所の再稼働につきましては、高い独立性を有する原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めない限り原発の再稼働は認められることはないと、これが政府の方針でありまして、この方針は変わらないところでございます。
○岩渕友君 官房長官、もう一度答弁お願いします。これで実効性ある避難計画できるのかと。でなければ再稼働を認めないとするべきではないですか。
○国務大臣(林芳正君) 新規制基準そのものについては今委員長から御答弁があったとおりでございまして、それを踏まえての政府のこの考え方について先ほど御答弁したとおりでございます。
○岩渕友君 自治体任せだと、そして責任も持たないということですよ。
アメリカでは、避難計画が認められなければ再稼働できないというふうになっています。複合災害で避難も屋内退避もできない、実効性ある避難計画もない、こうした状況の下で原発再稼働などしてはならないのではありませんか。
○国務大臣(齋藤健君) まず、先般の原子力規制委員会において、志賀原発については原子力施設の安全機能に異常はなく、そのほかの原発についても安全確保に影響のある問題は生じていないとの見解が示されています。
地域の避難計画を含む緊急時対応につきましては、内閣府の原子力防災担当を中心に、それぞれの地域原子力防災協議会において取りまとめられるということになっています。それで、その地域原子力防災協議会の枠組みの下で、今般の地震で得られた教訓をしっかりと踏まえながら、緊急時対応の取りまとめや不断の改善充実を図り、原子力災害対応の実効性向上に取り組んでいくこと、これは重要であると思っています。
いずれにしても、しっかりとした緊急時対応がない中で、原子力発電所の再稼働が実態として進むことはないと考えています。
その上で、原子力発電所の再稼働については、高い独立性を有する原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めない限り原発の再稼働が認められることはないというのが政府の方針であって、この方針に変わりはありません。
○岩渕友君 今日の昼のニュースで、大臣が柏崎刈羽の再稼働に向けて新潟県の花角知事などに理解を求めたということを明らかにしたと報道されていました。これ、本当に再稼働するんですか。
○国務大臣(齋藤健君) 今丁寧に御説明させていただいたとおりであります。
○岩渕友君 資料の4を御覧ください。この図を見ると、地震と原発が重なっているのは日本だけなんですよね。
世論調査では、深刻な事故が起きる可能性があると思うと答えた方が8割にも上っているんですよ。地震国の日本に原発はあってはならない。志賀原発、柏崎刈羽原発を直ちに廃炉にして、原発ゼロを決断するべきだということを強く求めます。
ここで官房長官は退席いただいて結構です。
○委員長(櫻井充君) 林官房長官、御退席いただいて結構でございます。
○岩渕友君 そもそも、東電福島第一原発事故から13年、今も多くの方がふるさとを奪われたままです。事故は終わっていないどころか、政府が最重要課題とする廃炉・汚染水・処理水対策めぐって重大な事態が相次いでいます。
昨年10月、今月、あっ、今年2月と、汚染水設備のトラブルが相次いでいます。それぞれどのようなトラブルか説明してください。
○参考人(小早川智明君) 東京電力ホールディングスの小早川でございます。
まず、当社福島第一原子力発電所の事故により、今なお地域の皆様、広く社会の皆様に多大なる御心配と御負担をお掛けしておりますことにつきまして、改めて深くおわびを申し上げます。
ただいま先生から御質問の事案について御説明申し上げます。
一つ目は、昨年10月25日、福島第一原子力発電所におきまして、増設ALPS建屋内の配管洗浄作業中に、防護装備が不十分であったことなどの問題が重なり、洗浄水、洗浄した水が協力企業作業員の二名の方に飛散し、身体汚染を発生させた事案となります。
二つ目は、本年2月7日、セシウム吸着装置サリーの弁の点検作業におきまして、本来閉めておくべき弁を開けた状態で作業を行った結果、建屋の排気配管から汚染水を含む水の漏えいが発生した事案となります。
両事案に共通する問題点としては、震災以降、緊急的に整備してきた設備であったため、自動化できず、手動での対応とならざるを得なかったことに加え、手順やルールなどが必ずしも現場の実態を反映したものになっていなかったということと考えております。
これらの2つの事案は、作業員の健康被害や環境への汚染につながりかねない事案であり、私としては大変重く受け止めております。
当社といたしましては、単なる、本件を単なるヒューマンエラーとして対処するだけではなく、再発防止対策をしっかり行い、安全最優先で廃炉作業を進められるよう対応してまいります。
以上でございます。
○岩渕友君 深刻な事態ですよ。
規制委員会と経産大臣は、それぞれどのように対応したのでしょうか。
○政府特別補佐人(山中伸介君) お答えいたします。
原子力規制委員会としては、両事案共に、事案の発生直後から、現地の検査官が中心となりまして、発生要因等の確認を行うため保安検査を行ってきております。
昨年10月に発生いたしました身体汚染の事案につきましては、保安検査の結果を受けまして、2月21日の原子力規制委員会において軽微な実施計画違反に該当すると判断いたしましたが、当該作業で扱っている物質の放射能濃度を考えると、従業員に対する放射線安全について重大な違反になるおそれがあったと認識しております。
当該洗浄作業における再発防止策の確実な実施、同様の作業への水平展開、東京電力社員の意識改善への取組等などについて、引き続き保安検査の中で確認してまいります。
また、本年2月7日に高温焼却炉建屋から汚染水が漏えいした事案についても、当該作業管理に関して実施計画上の違反に当たる可能性が高いと考えております。詳細な発生経緯や要因を保安検査の中で確認しているところでございます。
いずれにいたしましても、東京電力には、福島第一原子力発電所で今回発生いたしました2事案の再発防止に緊張感を持って取り組むことを求めております。原子力規制委員会としても、東京電力の取組を引き続き厳正に監視、指導してまいります。
○国務大臣(齋藤健君) 福島第一原発における身体汚染や水漏れの事案につきましては、2月21日に、私自身から直接、小早川社長に対しまして、単なる個別のヒューマンエラーとして対処するだけではなく、経営上の課題として重く受け止め、東京電力自身が示している再発防止策に加えまして、更なる安全性向上のための対策に取り組むよう指導をいたしました。
具体的には、廃炉の着実な実施に向けて、他産業の例や外部専門家の意見を取り入れながら、高い放射線リスクにつながるヒューマンエラーが発生するような共通の要因がないか徹底的に分析するとともに、ヒューマンエラーを防止できるハードウエアやシステムの導入にはちゅうちょなく投資をして更なる安全性の向上に取り組むよう、厳しく指導いたしました。
今後とも、誠実な姿勢を持って地元の皆様に丁寧に御説明するとともに、廃炉作業における安全確保に万全を期すよう、経済産業省としても引き続き厳しく指導していく所存です。
○岩渕友君 重大な問題ですよ。
国と東京電力は、海洋放出の前提は想定外の事態を起こさないことだとしてきました。それは、これまでの漁業者や福島県民の復興の努力が一瞬にして台なしになってしまうからです。
東京電力と経産大臣に聞きますが、今回の問題は、まさに漁業者や福島県民の努力を台なしにするものではありませんか。
○参考人(小早川智明君) 昨年10月の作業員の身体汚染の事案、また今年2月に発生させました汚染を含む水の漏えいにつきましては、作業員の健康被害や環境への汚染につながりかねない事案であり、私としては大変重く受け止めております。
当社といたしましては、本件を単なるヒューマンエラーの事案として対処するだけでなく、外部有識者の視点を入れながら再発防止対策をしっかり行い、経営として、廃炉をより安全に進めるための追加投資や体制の強化を確実に実行してまいります。
地域の復興を成し遂げるためにも、廃炉の安全、着実な実施が御帰還や復興の大前提であることを肝に銘じ、引き続き、廃炉作業を安全最優先で進め、信頼確保に努めてまいります。
○国務大臣(齋藤健君) 福島第一原発における身体汚染や水漏れの事案につきましては、一つのミスでも地元や社会の信頼を失いかねないものであります。そのため、東京電力においては、地元の御心配や御懸念を踏まえて、最大限の緊張感を持って廃炉作業に取り組まねばならないと考えます。
今般の2つの事案は、いずれもALPS処理水の放出作業とは関係のないものではありますが、ただ一方で、東京電力においては、信頼を得るには長い積み重ねが必要だが、失うのは一瞬であることを肝に銘じて、再発防止策を含めた安全確保にしっかりと取り組んでもらいたいと思います。
○岩渕友君 怒りの声が上がっています。
海洋放出によって、輸出の実績は前年と比較してどうなっているでしょうか。
○政府参考人(森健君) 水産物の関係について、数字のみお答えさせていただきます。
2023年における全世界向けの水産物の輸出については391億円と、対前年比0.7%の増加となっておりますが、中国向けの水産物の輸出については610億円と、対前年比約29.9%の減少となっております。
○岩渕友君 損害賠償の実績はどうなっているでしょうか。
○参考人(小早川智明君) お答え申し上げます。
ALPS処理水放出に伴う賠償に関して、現時点で当社に約2400件の問合せをいただき、請求書を約940件発送しており、約320件の請求書を受領しております。そのうち約50件、金額にして約53億円をお支払いさせていただいております。
引き続き、ALPS処理水放出に伴う被害が生じた場合には、迅速かつ適切に賠償させていただきます。
○岩渕友君 小早川社長、漁業者の方からは、復興の軌道に乗り始めたときに海洋放出だと、精神的な賠償もしてほしいぐらいだという声や、ホタテの賠償が遅いという怒りの訴えがありました。
これで、迅速、丁寧なんていう対応、言えないんじゃないでしょうか。
○参考人(小早川智明君) 賠償につきましては、かかる被害を、損害を訴えられた方に対しては、できるだけ迅速かつ的確に賠償するように作業を進めているところでございます。今、事業者の各方の御事情をお伺いしながらですが、おおむね一か月程度で、最短で1か月程度で賠償ができるように、できるだけ迅速な賠償の対応に努めているところでございます。
○岩渕友君 現場では、遅いとか、その精神的な賠償もしてほしいぐらいだという本当に切実な訴えが出ているわけですよ。こういう思いをどういうふうに受け止めているのかということが問われていると思いますよ。
もう一度、いかがですか。
○参考人(小早川智明君) 被害を受けられた方の個別の事情にしっかり寄り添って、丁寧に対応してまいる所存でございます。
○岩渕友君 答えていないわけですよね。
そもそも、政府と東京電力は、漁業者との約束を破って海洋放出を強行させたわけですよ。
福島大学の先生方などが設立をした福島円卓会議は、ALPS処理水の処分の在り方や復興と廃炉の両立について、県民や国民、政府と東電も対等に対話する場が必要だというふうに呼びかけています。国や東京電力が勝手に決めるなということなんですよ。
海洋放出を凍結して、廃炉、復興の在り方について議論を行うこと、これを求めて、質問を終わります。
○委員長(櫻井充君) 以上で岩渕友さんの質疑は終了いたしました。(拍手)
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