日本共産党の岩渕友議員は18日の参院予算委員会で、岩手県大船渡市の林野火災について、直接被害を受けた人だけでなく、被災者を幅広くとらえた支援を行うよう求めました。
岩渕氏は16日に現地に行き、渕上清大船渡市長から、避難指示によってくらしや生業(なりわい)に被害が出た市民を含めた、幅広い支援を求められたと強調。坂井学防災担当相に「こうした声に応えて、被災者の範囲を広げて国の支援を行うべきではないか」とただしました。
坂井防災担当相は、「被災者生活再建支援金の迅速な支給など、応急的な住まいの確保を進めるなど必要な支援を行う」と答弁。被災者の範囲を広げることについては「現場の自治体と何が必要か話し、柔軟に取り組んでいく」と答えました。
岩渕氏は「東日本大震災津波に、今回の林野火災で何重にも大変な状況となっている。国の大規模な支援を強く求める」と強調しました。
(ボタンをクリックやタップすると議事録が開きます)
217-参-予算委員会-009号 2025年03月18日
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
おととい、岩手県大船渡市に行ってきました。林野火災で甚大な被害となっています。渕上市長から、直接被害を受けた方だけでなく、避難指示によって養鶏場で鶏が死ぬなど、暮らしやなりわいに被害が出た市民も含め、被災者を幅広く見てほしいんだ、こういうふうに求められました。
坂井大臣、大臣も同じ日に現地に行かれています。現場で実情をお聞きをしていると思うんですね。こうした声に応えて、被災者の範囲を幅広く捉えて国の支援を行っていただきたい。是非検討すべきではないでしょうか。
○国務大臣(坂井学君) 一昨日に大船渡市を訪問いたしまして、林野火災による林業、漁業の被災現場や家屋が焼失した集落、市民の皆様が避難されている避難所を視察をいたしてまいりまして、改めて被害の甚大さを実感をしてまいりました。被災自治体と緊密に連携し、被災された方の生活再建に取り組む決意を新たにしたところでございます。
これまで、岩手県とも連携して、災害救助法や被災者生活再建支援法を既に適用するなど、また激甚災害の指定の見通しの公表も行ったところであり、被災者の方々の生活再建に政府一丸となって取り組むこととしております。
例えば、森林の復旧については、焼けてしまった樹木の伐採、搬出、跡地での植林、さらには数十年に及ぶ育林まで息の長い支援を行う。また、焼損した漁具倉庫の再建や定置網のリースなどについて、農林水産省の浜の活力再生・成長促進交付金、また水産業成長産業化沿岸地域創出事業を有効に活用していただくべく、制度活用に向けた助言を行っておりましたり、延焼した家屋等から発生する災害廃棄物の処分については、環境省の災害等廃棄物処理事業費補助金により財政支援を行うこととしております。
引き続き、良好な避難生活環境の確保や被災者生活再建支援金の迅速な支給、そして応急的な住まいの確保を進め、政府一体となって地元に寄り添った必要な支援を行ってまいりたいと思っております。
○岩渕友君 被災者の範囲を幅広く捉えた国の支援の検討も是非お願いしたいんですけど、もう一度、いかがでしょうか。
○国務大臣(坂井学君) 地元自治体ともその辺もよく話をして、何が必要かということは柔軟に考えて、被災者のためにということで取り組んでまいりたいと思っております。
○岩渕友君 今お話ししたのは現場の声ですので、是非応えていただきたいというふうに思っています。東日本大震災津波に今回の林野火災が重なってもう何重にも大変な状況ですので、国の大規模な支援、強く求めておきたいと思います。
その東日本大震災津波と東京電力福島第一原発事故から十四年です。原発事故によって今も数万人の方々が避難を強いられています。
帰還困難区域だったところで住宅の解体が進められています。家族との思い出が詰まった自宅、これ生きたあかしですよ。それが目の前で無残にも壊されていくことは、生爪を剥がされるような、骨と肉を剥がされるような、今まで感じたことのない痛みだという。大臣、この痛みが分かるでしょうか。
○国務大臣(武藤容治君) 東日本大震災及び東京電力の福島第一原子力発電所の事故から十四年が経過をしました。震災によって亡くなられた方々に改めて心から哀悼の誠をささげるとともに、御遺族の方々や被害に見舞われた全ての方々に心からお見舞いを申し上げます。また、住み慣れたふるさとの御自宅を解体しなければならない被災者の心中もお察し申し上げるところであります。
帰還される方、またやむを得ず御自宅を解体せざるを得ない方など、事故で被災された方の事情はそれぞれ様々であると思います。これまでも政府として、避難先での事業再開や心のケアなどを含むコミュニティーの復興を支援してきたところであります。
今後も、帰還の判断に迷われる方のための複数回の帰還意向調査の実施でありますとか、帰還意向のある方にお帰りいただくための生活環境整備を含め、被災者お一人お一人のお気持ちを踏まえて丁寧に対応していきたいというふうに思っております。
○岩渕友君 一人一人の気持ちと言うんですけどね、原発事故はこんな苦しみもたらすんですよ。しかも、原発事故は終わっていません。それなのに、何で原発の最大限活用なんでしょうか。
第七次エネルギー基本計画では、原子力の依存度を可能な限り低減するという言葉が削られて、原子力の最大限活用が書き込まれました。既設原発の再稼働、新増設を進めるというふうにしています。
原発事故を終わったことにして原発回帰の大転換は許されません。エネルギー基本計画で原発事故の真摯な反省と言っているのではないですか、武藤大臣。
○国務大臣(武藤容治君) 岩渕委員とは臨時国会でもお話をさせていただいたところでありますけれども、福島復興と東京電力福島第一原子力発電所の安全かつ着実な廃炉は経済産業省の最重要課題であります。原発事故の経験、反省と教訓をひとときも忘れることなく取り組むことは揺るぎないエネルギー政策の原点であります。政府として、原発事故の反省と教訓を踏まえ、規制と利用の分離、また安全対策が抜本的に強化をされた新規制基準の策定と運用を進めているところで、事業者も不断の安全性向上に取り組んできているところであります。
こうした反省また教訓の上で、日本の低い自給率、火力発電への依存、そして電力需要の増加見通しなどといった我が国が直面しているエネルギーをめぐる困難な状況を考えれば、脱炭素電源を最大限活用していくことは、安定供給、経済成長、脱炭素のいずれの観点からも必要であると思っています。このため、再エネも原子力も最大限に活用していかなければならないと考えているところであります。
○岩渕友君 真摯な反省とか、原点どこに行っちゃったんですか。
日本世論調査会の調査では、原発を今後段階的に減らして将来的にはゼロにするというふうに回答した方が五八%に上ります。そのうち六八%が、福島第一原発事故のような事態を再び招くおそれがあるからだと答えているんですね。
武藤大臣、このおそれが現実のものにならないと言えますか。
○国務大臣(武藤容治君) 東京電力福島第一原子力発電所事故への教訓から、規制と利用の分離や、安全対策が抜本的に強化をされた新規制基準の策定と運用が進められているところであります。この新規制基準では、事故は起こり得るという前提に立って、放射性物質を低減しつつ放出することにより格納容器破損を防止する対策や、また、仮に格納容器が破損したとしても放射性物質の拡散を抑制する対策も確認することとされているところであります。
また、規制基準に適合すれば絶対に安全であるというこの安全神話に陥ってはならないという考えの下、経済産業省としても、原子力事業者に対して、最新知見の活用ですとか有識者による外部評価を通じた改善など、安全性向上に不断に取組を指導してきているところであります。
こうした安全性向上の取組を実施しているところでありますけれども、御指摘のような世論調査のように、原子力の安全性に関する懸念の声があることは真摯に受け止める必要があると思います。今後も、国が前面に立って、幅広く国民理解醸成に向けて取り組んでいくとともに、不断の安全性向上に取り組んでまいりたいと思います。
○岩渕友君 現実のものにならないと言えないわけですよね。
そして、今、安全性という話がありましたけれども、武藤大臣、誰が安全性を判断するのでしょうか。
○国務大臣(武藤容治君) 原子力規制委員会設置法がございますけれども、原子力規制委員会が原子力利用における安全の確保に関する事務を一元的につかさどることとされているところであります。
その上で、原子炉等規制法に基づき、重大事故への対応を含めて新規制基準へ適合する対策が取られていることを確認することで、原子力発電所の設置の可否、また施設の使用停止の要否等について判断していると承知をしているところです。エネルギー基本計画でも、こうした安全性については原子力規制委員会の判断に委ねるとしております。
他方、福島第一原発事故の反省と教訓を踏まえれば、施設が規制基準に適合すれば絶対に安全であるという、先ほど申し上げました安全神話に陥ってはなりません。原子力事業者には、最新知見の活用や有識者による外部評価を通じた改善など、安全性向上に不断に取り組むことが求められており、経済産業省としても事業者を適切に指導してまいります。
○岩渕友君 今、規制委員会という話が出ましたけれども、規制委員長にお伺いをいたします。
規制委員会が安全性を判断するんでしょうか。審査に合格をすれば原発は安全だということなんでしょうか。
○政府特別補佐人(山中伸介君) お答えいたします。
原子炉等規制法上、事業者には原子力発電所を規制基準に適合するよう維持する義務が課せられております。これらの基準に適合し得ない原子力発電所は運転できないという仕組みになっております。規制基準への適合性につきましては、審査、検査を通じて確認することは規制委員会の役割であると認識しております。
ただし、規制基準への適合は、リスクがゼロになるということを保証するものではございません。一〇〇%安全を保証するというものでもございません。
東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓である、いわゆる安全神話に陥ることのないよう、リスクは決してゼロにはならないという認識の下、残されたリスクを低減させるべく継続的な規制の改善に努めることが原子力規制委員会の使命であり責任であると考えております。
○岩渕友君 規制委員長、規制委員会が安全を判断するわけではないということでいいんでしょうか。
○政府特別補佐人(山中伸介君) お答えをいたします。
先ほどもお答えをさせていただきましたように、原子炉等規制法上、規制基準に適合していない原子力発電所については運転ができないという仕組みになってございます。一定程度の安全性を担保した原子力発電所は、この規制基準に適合するという義務が果たせているというふうに考えることができるかと思います。
ただし、この規制基準に適合するということがリスクがゼロであるということを保証するものではないということ、一〇〇%の安全を保証するものではないということを付け加えてお話をさせていただきます。
○岩渕友君 規制委員会が安全を判断するものではないと。
武藤大臣に伺うんですが、先ほど武藤大臣は安全性の判断誰がするかお答えになりませんでしたけど、これ一体誰がするんですか。
○国務大臣(武藤容治君) 今規制委員長から御答弁ありましたとおり、一〇〇%安全というものはないということをおっしゃられて、より安全性の強化された規制基準への整合性を原子力委員会が確認するとともに、残されたリスクについても低減すべく、事業者また規制当局も継続的に努力を続ける、そして原子力発電所の最大限の安全性確保に向けて不断に取り組んでいるものと認識をしているところであります。
○岩渕友君 エネ基では安全性の確保と言うんですけど、誰も責任持っていないということなんですよ。しかも、ゼロリスクとは言えないと言うんですけど、事故が起きるおそれが現実のものになりかねないってことじゃないですか。
再稼働がどれほど危険なものか、北海道電力の泊原発はどうか、見ていきたいと思います。泊原発三号機の再稼働に向け、来月には新規制基準に事実上の合格かというふうに報道がされております。
資料の一を見ていただきたいんですけれども、泊原発は、隆起をした約四十メートルの崖を切り崩して、その土を使って海を埋め立てた上に建てられているんですね。泊原発の敷地面積と、そのうち埋立地の面積、それぞれ幾らか教えてください。
○政府参考人(大島俊之君) お答え申し上げます。
御質問の北海道電力泊発電所の敷地面積でございますけれども、泊発電所におきましては三基の原子力発電所が建っております。その総面積につきましては、設置変更許可申請書において約百三十五万平方メートルと記載をされております。また、埋立面積についてでございますけれども、まず一号機と二号機、これが同時に設置許可申請書が出されておりまして、それについては約二十一万平方メートルでございます。また、三号機が、三号炉が増設をされております。この三号炉の設置変更許可申請書において、埋立面積は約七万平方メートルということになってございます。
○岩渕友君 敷地といっても、実際には整地をされていない部分が多く含まれているので、原発施設のある部分の半分以上が埋立地なんですよね。国内の原発でこれだけの埋立地に建設された原発はあるでしょうか。
○政府参考人(久米孝君) お答え申し上げます。
原子力発電所の海面の埋立面積につきましては、委員からの御依頼を受けて、現在、資源エネルギー庁から事業者に確認を依頼しているところでございます。
現時点で確認できた範囲で申し上げますと、泊発電所ほどの埋立面積ではないものの、例えば、四国電力伊方発電所で十五万平方メートル、九州電力川内原子力発電所で十万平方メートルの海面の埋立てがなされており、他の発電所においても一定程度埋立てがなされているものがあると承知してございます。
○岩渕友君 全国の原発確認した限りでは、泊原発ほどの埋立地はないんですよね。
資料の三、見ていただきたいなと思うんですけれども、しかも、泊原発のように、耐震重要施設である取水路や取水口など、原発を冷やすために欠かすことのできない施設が埋立地にある原発もないんです。
埋立地で心配なのは液状化です。地震による泊原発の液状化について、規制委員会はどう認識しているでしょうか。また、耐震重要施設はどういった施設に設けることになっているか、山中委員長、お願いします。
○政府特別補佐人(山中伸介君) お答えいたします。
委員御指摘のように、地盤の液状化は、耐震重要施設の安全性に影響を与えるおそれがあることから、重要な審査事項の一つであると認識しております。
このため、審査におきましては、耐震重要施設が液状化の生じることのない岩盤の上に設置されていることを確認しております。さらに、耐震重要施設の周囲の地盤については、仮に液状化が生じた場合でも耐震重要施設の安全性に影響が与えないことを確認をしているところでございます。
具体的には、事業者は、敷地の地質調査、試験を行って、液状化のおそれのある埋め戻し土等については保守的な条件を設定した上で液状化を考慮した耐震評価を行っており、審査の中で耐震重要施設の耐震性が確保できる設計方針であることを確認しております。
○岩渕友君 設計方針と言うんですけど、実際にはもう耐震重要施設が埋立地の上にあるわけですよね。これ、一体どう対応するのかと。これで来月には適合審査に事実上の合格というのはあり得ないんじゃないでしょうか。山中委員長、いかがですか。
○政府特別補佐人(山中伸介君) 繰り返しになりますけれども、お答えをさせていただきます。
泊原子力発電所三号炉の審査におきましては、耐震重要施設が液状化の生じない岩盤の上に設置されていることや、その周囲が仮に液状化が生じた場合でも耐震重要施設に影響が与えないものであることを確認しているところでございます。
例えば、北海道電力は当初、防潮堤を岩盤の上に設置させないとしておりましたが、審査の過程で、防潮堤を直接岩盤の上に設置することにより、周囲の地盤に液状化が生じた場合においても防潮堤の安全性に影響のない設計を見直すということにいたしました。
○岩渕友君 設計方針には確認するだけで、審査に事実上合格するということなんですよ。しかも、具体的な評価結果の確認は、審査の後確認するというんですよね。これで大丈夫とはとても言えないんですよ。
問題は液状化だけではなくて、能登半島地震では最大四メートルの隆起が発生をしました。積丹半島でも大規模な隆起が起きる可能性があります。実際、北海道電力は、地震によって一・二八メートルの地盤隆起の可能性があるというふうに試算をしています。
能登半島地震での隆起を受けて、どんな対応をしているのでしょうか。
○政府特別補佐人(山中伸介君) お答えをいたします。
隆起を引き起こすような活断層につきましては、泊発電所の敷地及び敷地周辺の詳細な調査を基に活断層を抽出し、地震動評価を行った上で、原子炉建屋の重要な建物、構築物の基礎岩盤が地震時にその建物、構築物を支持できるものであること、また、地震に伴う地盤の変形により安全機能が損なわれないことを確認しております。
また、津波の影響評価の際には、津波による水位変動に加えまして、積丹半島北西沖での地震による地殻変動等により敷地で最大一・二八メーターの隆起が起こることも考慮した上で、海水ポンプの取水性に問題がないことを確認しております。
なお、新規制基準の適合性確認とは別に、能登半島地震を受けまして、北海道電力には、想定外の地盤隆起が発生した際の取水の可能性を検討し、取水可能な箇所を調査、特定する等、取水訓練を計画をし、この計画に基づく訓練を実施いたしました。その際には、原子力規制委員会の職員が立ち会い、代替水の実効性について確認をしておるところでございます。
○岩渕友君 今、取水訓練というお話がありましたけれども、北海道電力が行った取水訓練の報告を見ると、事故に対応する車両の走行には支障がないとか、あり得ない前提で訓練行われているんですよ。これでは大規模な隆起にとても対応できないということなんですよね。
それで、武藤大臣、これで原発の安全性確保など、とても言えないんじゃないでしょうか。原子力の最大限活用、やめるべきじゃないですか。
○国務大臣(武藤容治君) 原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めない限り、原子力発電所の再稼働が認められることはないというのが、先ほど来申し上げてきましたけれども、政府の方針であり、この方針は変わりません。
また、DXやGXの進展によって電力需要増加が見込まれる中で、脱炭素電源の確保が国力を左右する状況であると。低いエネルギー自給率や火力発電への高い依存といった課題を克服する観点でも、脱炭素電源の確保が求められているところであります。
原子力は重要な脱炭素電源であり、最大限活用していく方針を示したところですけれども、何よりも安全性の確保を大前提に活用してまいりたいと思います。
○岩渕友君 安全性の確保なんて誰も保証できないんですよね。
先ほど紹介した世論調査では、再稼働を進めれば深刻な事故が起きる可能性があるという回答が八三%にも上っているんですよ。これ、当然の声だと思います。
原子力の最大限活用は見直して、原発ゼロ、省エネと地域と共生する再生可能エネルギーの導入を増やすことこそ行うべきだと、エネルギー政策の大転換を求めて、質問を終わります。
