「軍縮・不拡散(核以外の大量破壊兵器等)」参考人質疑
(議事録は後日更新いたします)
参院外交・安全保障調査会は22日、「大量破壊兵器等の軍縮・不拡散」について参考人質疑を行いました。日本共産党の岩渕友議員は、岸田政権が敵基地攻撃能力保有など安全保障政策の大転換を進めるなか、米中対立をあおり武器輸出を正当化する主張や行為に対し、日本はどのような役割を果たすべきかについて質問しました。
羽場久美子青山学院大名誉教授は「防衛しなければという声もあるが、戦争のフロント(前線)になるということはどのような立場であっても日本国民を危機にさらすことになる」と強調しました。
岩渕氏は、政府が軍事につながる研究を援助している問題に言及。羽場氏は、戦争の反省のもと、日本学術会議が二度と戦争に貢献する学問は行わないと決めたことを挙げ、「議論されずに軍民両用が推し進められるのは危険だ」と指摘しました。
岩渕氏は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がクラスター爆弾製造会社の株を保有していると批判。目加田説子地雷廃絶日本キャンペーン運営委員は、同様の会社への投融資を規制する国内法が11カ国で整備され、40カ国が宣言を出していると紹介し、日本政府に積極的な対応を求めました。
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2023年2月22日(水) 参議院 外交・安全保障に関する調査会
「軍縮・不拡散(核以外の大量破壊兵器等)」
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
参考人の皆様、今日は本当にありがとうございました。
安保三文書が昨年末に閣議決定をされて、専守防衛から敵基地攻撃能力の保有ということで安全保障政策の大転換が進められようとしています。それに伴って、米国製の兵器を大量購入するだとか防衛装備移転三原則の見直しが進められようとする中で、こうした動きが大軍拡に向かうもので、今日のテーマでもある軍縮ということについて反するものだというふうに考えています。
そこで、参考人にお伺いするんですけど、まず目加田参考人にお伺いをします。
今日、クラスター爆弾をめぐって、投資に反対するキャンペーン、ダイベストメントの紹介がありました。一方、日本では年金積立金管理運用独立法人、GPIFですよね、がクラスター爆弾を製造する会社の株を保有をしているということで、こういう投融資をやめる、なくしていくということが必要だと思いますし、国としてやめさせていくということが必要だと思うんですけれども、参考人の考えを教えてください。(発言する者あり)
○会長(猪口邦子君) 目加田参考人。
○参考人(目加田説子君) あっ、済みません。御質問ありがとうございます。
御指摘のとおりでして、日本は、もう5、6年前になりますけれども、条約が発効した段階で、多くの銀行が、あるいは金融機関、その後、証券会社や保険会社も含めてですけれども、クラスター爆弾には投融資をしないという内規を取りまとめまして、銀行も銀行の協会として、全体としてそういった取決めをしておりますので、現実にはクラスター爆弾の製造をしている企業の株を保有するということは実態としてはなくなったんですが、今御指摘いただきましたとおりで、年金基金についてはそれが達成されておらず、我々といいますか、まあ長らくずっと継続的に審議もさせていただいておりますけれども、まあいろいろその制約等があって難しいと、その投資の方法などをめぐってですね、難しいということがございます。
ただ、先ほども申し上げましたけれども、クラスター爆弾を製造している企業というのは今や投資の世界では最大のタブーになっておりまして、これはノルウェー等々欧州から始まった元々は流れでございますけれども、年金基金も含めて昨今では投融資を禁止するという流れにございますので、是非、我々、本当に大多数の国民にとって切実な、そのとおり年金がこういった非人道的な兵器を製造するような企業に投融資をしないということを明確な姿勢として打ち出していただきたいと。資料にも書きましたとおり、既に11か国はそういった国内法を整備してございますし、40か国近い国が世界では宣言をしているということですので、日本政府にも是非そこは積極的に取り組んでいただきたいなというふうに考えているところです。
以上です。
○岩渕友君 ありがとうございます。
次に、土井参考人にお伺いをします。
政府が今その軍事につながる研究に援助をしたり積極的に後押しをしているという下で、その最先端の民生技術を取り入れた兵器の研究であるとか開発、そして軍事研究を進める動きがあります。その科学であるとか技術というものは、本来、人々の生活を豊かにするために使われるべきだというふうに思うんですけれども、こうした動きのその危険性ということについて参考人にお考えがあれば教えてください。
○参考人(土井香苗君) ありがとうございます。
技術というのが非常にすごいスピードで動いておりまして、先ほど申し上げた、触れさせていただいた人工知能などを使ったりしまして、本当に新しい、何というか脅威が生まれてきているというふうに考えております。そうですね、軍事はもちろんなんですけど、例えば警察とかの分野にもAIなども使われてきておりまして、様々な人権侵害につながってきたりしております。ということで、軍事の研究等々は、必要性があるものもあると思っておりますけれども、ただ、やはり人権面からの精査というものは非常に重要だと思っております。
そういった研究等もいろいろなところで行われておりますので、日本政府としましても是非積極的に動いていただきたい、あるいは、まあ日本の場合はビジネス界も非常にこういった分野での先端的なところもございますので、ビジネス界等も含めてなんですけれども、積極的にこの人権の面からの規制というものを定めることに積極的であっていただきたいというふうに考えています。その最たるものというのが先ほど申し上げた完全自律型兵器なんですけれども、それにとどまるものではないというふうに考えております。
以上です。
○岩渕友君 ありがとうございます。
次に、羽場参考人にお伺いします。
今、ロシアによるウクライナ侵略があり、そして、そうした下で米中対立があおられたり武器輸出を正当化するような声があるということに非常に懸念を持っています。そうした下で、今日参考人がお話をされた東アジアをどういう地域にしていくのかというお話非常に大事だというふうに思ったんですね。
戦争をさせないということがやっぱり大事だなというふうに思うので、東アジアをどういう地域にしていくのか、そして、ちょっと先ほど少し議論あったんですけど、日本がそこでどういう役割を果たしていくのかということについて、ちょっと改めて教えてください。
○参考人(羽場久美子君) ありがとうございます。
先ほどの御質問とも絡んでお答えしたいと思うんですけれども、現在、その安保三文書とかそれから防衛費の増額などを含めて、ほとんどその憲法の改正の議論がないままに進んでおります。私、ヨーロッパに住んでおりましたときには、結構司法の側から政策が違憲であるというような提案がなされるケースが多かったんですけれども、今回の場合、その出されている政策と憲法のすり合わせがなされないまま政策だけが進んでいるところに非常に危惧を覚えます。
おっしゃられたように、ロシア・ウクライナ戦争がある中で、なかなか旧来のように国民のレベルで今防衛が危ないというような方向よりは、むしろ防衛していかなければならないんではないかというような動きが、若者を含めて半分を超えているというような世論調査もあります。
ただ、先ほど地図でもお示ししましたように、日本列島が極めてアジア大陸に接近している中で、これが戦争のフロントとなる、仮想敵というのが明らかに指名されながら、その最前線となっていくということは、どのような立場であっても日本国民を危機にさらすことになるので、それを果たして分かった上で受け入れられているのかというところも含めて緊急に議論していく必要があると思います。
第1次大戦というのは、実は、その戦争が忘れられた頃にやってきた。若者たちはほとんど戦争を知らずに喜んで戦争に出ていき、そして帰ってこなかったというふうなことが言われておりますけれども、特に若者たちに対して、実態の戦争の教育というものをしていかないと非常に危うい状況にあるのではないかと思います。
もう一つは、その軍事と学問ということなんですけれども、御存じのように、日本は、どの国もですけれども、戦争のときに軍事の拡大に貢献してきた歴史があり、第2次世界大戦が終わってから、日本の学術は二度と戦争に貢献するような学問は行わないということで取決めをしました。
そして、それは3回にわたり継続してきたわけですけれども、今回、その学術会議が再編されるというような方向も出てきていて、確かにDARPAなどを考えると、学問が今ITやAIの時代に入っているときに軍事に協力しないということは、軍事の、何でしょう、最前線、科学的なその発展にとって極めて弊害があるということは確かかもしれないんですけれども、では、どこまで協力できるのか、何が人道的であり、どこが人道を超えていくのかということが議論されないままに軍事と学問のデュアルユースが行われていくことは非常に危険なことだと思っております。
地政学的に日本が戦争に参加していったときに最も危ない位置にあるということは先ほども述べましたけれども、そうした中で、周辺国とともに、また、政府レベルではなくて、一番その周辺国に近いボーダーにあるような自治体や市民たちが直接に隣国と話し合いながら、一体、本当に私たちにとって隣国が危険なものなのか、そして、その危険を取り除くためには何をしていく必要があるのかというのを、膝を突き合わせて話し合う場を政府レベルだけではなく民間レベルでもつくっていくことが緊急なのだと思います。その意味で、政治家の皆さん方に是非それを実行していただきたいと思っております。
ありがとうございました。
○岩渕友君 以上で終わります。ありがとうございました。
2023年2月22日(水) 参議院 外交・安全保障に関する調査会
「軍縮・不拡散(核以外の大量破壊兵器等)」
青山学院大学名誉教授・神奈川大学特任教授 羽場久美子 参考人
○参考人(羽場久美子君) この度は、非常に貴重な参議院の外交・安全保障に関する調査会にお呼びいただき、誠に光栄に存じます。
21世紀の戦争と平和と解決力、新国際秩序の構築ということこそ、冷戦終えん後ずっと考えてきたテーマでありますし、また、本日の会長の猪口邦子先生が「戦争と平和」の著書で考え続けてこられたテーマでもあります。国際政治学者として、最初に、大きな視点から、世界平和と新国際秩序、日本の役割を考えたいと思います。
ちょうど今年の初めに、「100 Years of World Wars and Post-War Regional Collaboration:How to Create ‘New World Order’?」という本を出しました。まさに新国際秩序をどうつくるかということで、先生方とともに考えていきたいと思います。
本日の話は、大きく二つに分けて、今はどういう時代なのかということをデータと世界平和の観点から分析します。最も重要なことは、戦争を生まないメカニズムは何なのか、市民が犠牲にならないためにはどうしたらいいのかということを考えたいと思います。
そして、米英の戦略、そしてアジアの戦略の違いをそれぞれ見た後、これらを理解した上で、新世界秩序をどのように平和と繁栄によって構築していけばいいのか、市民の犠牲や地球の荒廃を招かない形で新しい世界秩序を21世紀につくっていくにはどうしたらいいのかということを考えていきたいと思います。
それでは、お手元に資料があると思いますので、こちらの方を御覧くださいませ。
まず、データを4つ、5つ紹介したいと思うんですけれども、まず表の1の1は、アジアが今後急速な発展をしていくという自明のことが、アンガス・マディソンが2007年に、西暦ゼロ年、西暦1年から2030年までの長期にわたるGDPをメガコンピューターで打ち出したものです。これで見ると、実にインドと中国が西暦ゼロ年から1820年まで18世紀の間、世界の経済を引っ張っていっていたということが分かります。その後の欧米近代というのは200年続くわけですけれども、その間に2つの大戦があり、大戦後に再び中国、インド、アジアの国々が成長していくということが示されています。これをアンガス・マディソンは、今のアジアの成長というのは奇跡ではない、過去に回帰しているのだという有名な言葉を残しました。
次のページを御覧ください。
これは現在のGDPとPPPベースのGDPですけれども、見ていただくように、現在のGDPでアメリカに次いで中国が世界第2位の地位に来ています。中国が日本を抜いたのは2010年ですけれども、その後の13年間で日本の4倍に成長し、そしてインドが5位に上がってきているというような状況があります。赤いBRICSの国々が次々に10位以内に入ってきている。また、その横のPPPベースのGDPを見ていただきますと、既に、購買力平価のGDPは新興国に有利と言われていますが、これが10年後の名目GDPになると世銀やIMFが言ってから非常に注目されるようになりました。中国は2014年にアメリカを抜き、インドは2013年に日本を抜いて今や一位、三位の地位に来ています。
表2を御覧ください。
これは、デモグラフィーなんですけれども、世界人口の推移です。現在80億人ぐらいいますが、21世紀の間に100億人を超え、2100年には110億人弱になると言われていますが、そのうちの8割がアジア、アフリカ、黄色がアジア、赤がアフリカで水色がラテンアメリカなんですね。そうすると、いわゆるAALA、アジア、アフリカ、ラテンアメリカを合わせて9割になる、米欧は1割を切る時代があと80年で到来するということです。
そしてさらに、パンデミックですけれども、次の2枚はパンデミックですけれど、2020年のコロナ禍、パンデミックの感染の死亡者数をファイナンシャル・タイムズが詳しく追っています。青が欧州、ネズミ色がアメリカで、当初の段階では実に9割が米欧、そして現在に至っても5割が米欧と言われています。パンデミックに非常に脆弱な欧州ということが、欧州、アメリカということが見て取れると思います。
表4は、現在のコロナ感染です。最近、日本や韓国が大きく上がってきておりまして、日本が6位、世界の中で6位、韓国が7位ということで、感染率が高まっています。中国は表に出てこないんですけれども、まあ8億人近くが感染しているのではということも言われます。
ただし、東アジアについて言えば、右側の死亡率ですが、死亡率が全く違います。米欧が主に1%から0.5%なのに対して、日本は0.01%、韓国は0.004%、日本の半分ですね。つまり、欧州やアメリカの10分の1ないしは5分の1の死亡率ということで、これをナカムラ、山中、ノーベル賞の受賞の先生は、アジアやアフリカ起源のパンデミックであって、非常にその米欧に影響力が拡大していると言えるのではないかというふうに言われています。
これらを見てくると、まああと100年もしないうちにアジアの時代になる、それも世界の半分が飢えるとスーザン・ジョージが言った20世紀のアジアではなくて、豊かさ、経済力、IT、AIなどを身に付けた豊かなアジアの時代がやってくるということだと思います。
最後に、日本の変化なんですけれども、御存じのように、少子高齢化と労働者不足の中で、日本の人口は2060年には労働者人口が半減すると言われています。つまり、今の20歳の若者たちが60歳、老人になる頃、老人人口は40%、つまり1人が1人を見なければならない時代になってくる。
こうした中で、入管法の改正や移民の受入れも始まりましたけれども、これらの流れを見てくると、私たちは、近隣国のアジアあるいは成長するアフリカと連携して、日本や欧州、先進国の少子高齢化にも対応していかなければならないという時代になりつつあります。これらについて、この間、ナショナリズムではなくて軍縮と地域協力、あるいはアジアの地域協力の重要性や欧州に学ぶ和解、敵との和解とエネルギーの共存ということがいかに重要なのかということを書きましたので、もしよろしければお使いください。寄贈させていただきました。
次のページ、御覧ください。にもかかわらず今危機の時代が広がっているということが次のところです。
アジア、特に日本ですけれども、近隣国との友好が不可欠であるにもかかわらず、この間、米中の経済対立から日本も、御存じのように、防衛費の増額や、それから武器の配備が始まっています。沖縄諸島にミサイル配備が開始され、沖縄タイムズや琉球新報では、様々な形でミサイル配備に反対する住民の方々の声が書かれています。沖縄は、御存じのように、歴史的にも、中国との関係で朝貢や冊封体制を続けてきて友好関係をつくってきた国々です。目と鼻の先にある中国に対してミサイルを配備することに対する危惧が住民の間に広がっています。
また、日本列島の南部を含め、南西諸島と沖縄に地下の司令塔がこの1月に入って配備されることが決まりました。単に沖縄だけではなくて、大分や青森にも、日本全土に司令塔やミサイルが配備されるということで、住民の間に不安が広がってきています。今見たように、そのアジアの経済力とITや平和の力、あるいはパンデミックに強靱な力を持って21世紀を生きていくためには、アメリカとともに、アジアの国々との連携が極めて重要になってきているのだと思います。
他方で、また危機ですけれども、目と鼻の先に北朝鮮の弾道ミサイルの危険が迫ってきています。今年に入り、の前に、2022年の11月の段階で、火星17はICBM、1500キロで、米国全土と欧州が射程に入るようなミサイルを開発し、繰り返し、日本列島の周りで実験を繰り返しています。
このような中で、御存じのように、東アジアの安全保障が全く新しい形で準備されてきています。それが17ページのところです。東アジアの安全保障として、クアッド、クアッドプラス、そしてAUKUS、ファイブアイズのような動きが出てきています。
クアッドは、御存じのように、米英、あっ、ごめんなさい、日米豪印の4か国の戦略対話ということで安倍首相が提唱したと言われていますけれども、ひし形の形でアメリカと日本とインドとオーストラリアが結ぶ形となっています。そして、クアッドプラスというのは、それを補強する形で、韓国、ベトナム、ニュージーランド、そして台湾などがこれに協力する形となっています。
ところが、インド、今回ちょうど訪問して先週帰ってきたところなんですけれども、インドの位置が非常に重要であり難しい位置にあって、クアッドに対しては比較的懐疑的で、インドはロシアとも軍事関係、経済関係を結び、そしてアジアの何よりも盟主ということで、独自に非同盟の関係を結ぼうとしています。
そうした中で今始まってきているのが、AUKUSと、それからファイブアイズという動きです。これは、アジアの国を含まず、頭文字として、オーストラリア、アメリカ、イギリスの軍事情報三国同盟として4億人を超える同盟が結ばれ、そして、これにカナダとニュージーランドを含めてファイブアイズという諜報網も形成されています。
この二つは、まあいわゆるアングロサクソン、米、英、豪、ニュージーランド、カナダの協力関係と言われているんですけれども、特徴的なのは、ヨーロッパ大陸が入っていない、そして日本や韓国の同盟国も除外されているということです。これはウィキリークスで、同盟国や欧日にも盗聴器が仕掛けられたということも言われていますけれども、現在そうしたそのアングロサクソンの同盟関係が強まっている中でアジアがどういうふうにしていくかということがとても重要な意味を持ってくることになります。
次のページを御覧ください。
日本列島は、アジア大陸の端っこにくっつきました、アジア大陸から多くの歴史的な、あるいは宗教的な、文化的な、慣習的な影響を受けてきた地域でありますけれども、現在の枠組みの中では、3000キロにわたるフロントラインを形成するような形になっています。この小さくて長い3000キロのフロントラインを横に倒してみますと、単に中国だけではなくて、朝鮮半島それからロシアを含む非常に長大なフロントラインになっている。
この細腕で、弁慶のように、もしロシアや北朝鮮や中国の三方から飛んでくるミサイルに対して1億2500万人の国民を守れるのかということで考えると、私たちにとって考え得ることは、ここにミサイルを配備するということではなくて、アジアともアメリカとも関係を強めていくブリッジになっていくことが極めて重要なのではないかと思います。
右を見ていただけますでしょうか。
もし東アジアという非常に狭い地域に数億人が住んでいる、10数億人が住んでいるところで戦争が起こったらどうなるかという図ですけれども、最近、ノルウェー、スウェーデンの調査によれば、チェルノブイリから30年以上たった後、ノルウェーやスウェーデンのトナカイの肉やキノコに放射能が出てきた、屠殺せざるを得ないような状況が出てきたというふうに言われています。
この1200キロをもし北朝鮮で核爆発が起こったらということで円を描いてみますと、実に驚愕の事実が出てきます。北朝鮮で起こっただけで日本列島のほぼ全域が入る。網走や沖縄を除くほぼ全域が入り、朝鮮半島はもちろんのこと、北は極東のロシアから、南は北京から上海などを含むほとんどの経済領域が壊滅してしまうことになります。これが東アジアの状況です。台湾や沖縄で有事が起こった場合には、ちょっと手で描いてみましたけれども、日本列島の半分あるいは中国が、経済圏が壊滅するような状況が起こってくる可能性があります。この狭い領域で戦争を起こすことが極めて危険なことであることが分かると思います。
どうしたらよいのか、どうなっているのかというのを次に新興国のレベルで見てみたいと思うんですが、非常に興味深い動きがあります。
アジア周辺大国の地域協力です。
中国は、地域の協力関係を重視して、西では、あっ、済みません、東ではなく西の方向、クアッドやAUKUSとの対抗を避けて、陸と海の経済投資とインフラ、IIといいますけれども、AIIBですけれども、地球を半周するような経済協力をインフラと経済投資で進めています。様々の問題も起こしていて、ギリシャの港を買い占めたりとかいうようなこともありますけれども、基本的には経済拡大、地域協力でやっていこうとしています。
また、ロシアも同じように、ソ連邦が崩壊してから、スラブ・ユーラシア連合というものをつくり、欧州、アジア、アメリカに石油や天然ガスや穀物の供給で経済関係をつくろうとしている。
更に興味深いことに、14億のインドも、次のページなんですけれども、周辺協力を、地域協力を行おうとしています。二つの段階があり注目しているんですけれども、SAARCという南アジア地域連合と、それからもう一つは、BIMSTECと呼ばれるベンガル湾多分野技術経済協力イニシアチブと言われるものです。この度、SAARCの大学に訪問して講演をしてきましたけれども、そこには、アフガニスタンやパキスタン、スリランカの子供たち、大学院生が学び、共にこの地域を発展させるために勉強していたことが非常に印象的でした。
そして最後に、ASEANの地域協力ですけれども、ASEANの重層的なグッドガバナンスというのは世界的にも有名で、国内にも国境線をめぐり対立を持っていますが、経済それからパンデミック、さらには社会保障や政治関係も含めて、教育関係も含めて協力し、世界経済をリードするというような状況が言われています。日本もRCEPやCPTPPなどでこうしたアジアの経済協力関係に加わってきています。
では、どうしたらいいのか、日本がどうしたらいいのかということを最後に考えて終わりにしたいと思います。
以上のように見てくると、日本は防衛準備ではなくて、日本を中心とした平和のハブをつくってはどうか、特に沖縄、台湾を平和のハブにしていくということが極めて重要なのではないかと思います。
東アジアで戦争をしないということを念頭に置きつつ、かつ、次のページを見ていただくと分かるように、沖縄は、中国やASEANや日本を含めて、あるいは韓国を含めて、実に人口約20億人の巨大マーケットのセンターにあります。そして、歴史的にも、シャムや周りの国々と長い友好関係を持ち、発展してきました。この地域にミサイルを配備するのではなくて、アジアの平和と市場のセンターにしていくことが極めて求められているのではないでしょうか。
中国とも日本とも韓国とも、そして東南アジア諸国とも連携をしてきた、一度もその琉球時代に軍事を持ったことがなかったという琉球王国の伝統を踏まえながら、この地域を平和の地にしていくことというのが極めて大事なのではないかと思います。
きらびやかな文化、芸能の写真がありますけれども、首里城に東アジアの国連をというのが、今私たちが考えている新国際秩序、21世紀後半の新国際秩序です。沖縄は、多文化や多芸能、文化都市としての平和のセンターとして近隣国と友好、話合いを継続していく位置にあります。
モデルはあります。ヨーロッパが冷戦の二極化で一番緊張が高まったときに、中立国のフィンランド・ヘルシンキでCSCE、欧州安全保障協力会議というものを打ち上げました。これは、東と西の国々が互いに対話をしながら問題を解決していくというカウンセル、会議の組織だったんですけれども、それが立ち上がって15年間、冷戦が終えんし、この組織はオーガナイゼーション、機構に変容しました。まさに欧州の危機を乗り越えるための対話の組織、欧州の国連がCSCEとしてあったとすれば、アジアで今危機が高まる中で、むしろ米中のブリッジとしてCSCAないしは欧州の国連を日本がつくっていくことがとても大事なのだと思います。
最後にですけれども、アジア、東アジアは世界の最強の6か国が集っています。アメリカ、ロシア、中国そして南北朝鮮と日本です。誰が戦争を止め、誰が平和をつくっていくことができるでしょうか。もし大国の指導者に任せることが困難であるとすれば、市民や自治体の側からそれをつくっていくことができるのではないかということで、今沖縄の玉城知事が既に自治体外交室を作成して独自に米、中、韓国、台湾と対話を始めています。このような形で、平和の自主外交を市民からしていくことが大切なのではないかと思います。
最後にまとめですけれども、21世紀はアジアの繁栄の時代になっています。脅威ではなくて、平和と軍縮をアジアから、沖縄や日本を平和のハブにし、東アジアの国連を市民からつくっていく。SDGs、誰一人取り残さないという状況を日本がリードしていくことがとても重要なのではないかと思っています。アジア人同士の戦争は、この狭い東アジアで行わない。米、欧、ASEANと連帯して平和を学び、EUのように沖縄に東アジアの国連を設け、東アジアで是非ノーベル平和賞を実現したいと思います。
以上です。御清聴ありがとうございました。
2023年2月22日(水) 参議院 外交・安全保障に関する調査会
「軍縮・不拡散(核以外の大量破壊兵器等)」
国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表 土井香苗 参考人
○参考人(土井香苗君) お手元にこちらの資料を用意しております。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本の代表をしております土井香苗と申します。
本日、参議院の外交・安全保障に関する調査会におきまして、軍縮・不拡散に関する調査について参考人としてお招きいただきましたこと、ヒューマン・ライツ・ウォッチを代表しまして、お礼を申し上げます。
ヒューマン・ライツ・ウォッチですけれども、独立した国際人権NGOとして、世界90か国以上で人権侵害の調査活動に従事しているNGOになっております。世界中で人権侵害を調査、記録して、詳細な報告書に取りまとめて発表しております。1年間に約80冊程度、調査報告書を発表しております。こうした調査に基づきまして、法律や政策、実務の改善を求めるアドボカシーに取り組んで、人権侵害を是正、防止することを活動の目標にしております。戦時下で弱い立場に置かれるマイノリティーや文民から、難民そして困難の中にある子供たちまで、最も大きな危険にさらされている人々を守るための活動をしております。日本国内におきましても、社会的養護、LGBT、スポーツの中での子供の体罰等を調査報告をいたしまして、政策提言活動をさせていただいております。
世界に目を転じますと、大規模かつ深刻な人権危機があちこちで発生している状況です。例えば、ウクライナ、ロシア、エチオピア、中国、アフガニスタン、ミャンマー、北朝鮮、南スーダン、イラン、イエメンなどなどとなっております。私どもの調査も、こうした国々についてたくさんしなくてはならないという状況が続いております。こうした現状を踏まえますと、新たなフレームワークと新しい行動モデルの構築が喫緊の課題と考えます。戦争中であろうと平和であろうと、現代世界の重大な課題と脅威を、人権という視点から捉えることによってこそ、危機の根本原因を解明し、それに対処する指針が引き出せるというふうに考えております。
続きまして、21世紀における人道的軍縮の推進について述べさせていただきます。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、人道的軍縮型のアプローチに注力し、戦闘員と文民を区別できない無差別型の兵器など、許容できない被害をもたらす兵器に対処してきております。このアプローチは、国家安全保障上の利益によって推進されるこれまでの軍備管理型、不拡散型の取組とは対照を成すフレームワークとなっております。
この人道的軍縮が最優先するのは、人々を支援し、人道上の悪影響に対処することです。人道的軍縮の特徴は、各国の政府、国連機関、赤十字国際委員会、市民社会とのパートナーシップにあります。そこでは重要な役割を果たすのが、私どもヒューマン・ライツ・ウォッチのような非政府組織、NGOとなっております。NGOがグローバルな連合体をつくって、緊密に連携して活動を進めるというやり方が典型的になっております。
具体的に、まず対人地雷について述べさせていただきます。
1997年の対人地雷禁止条約、オタワ条約ですけれども、このアプローチの先駆けでありまして、人道的軍縮アプローチの基礎を築いたとみなされております。この条約は、対人地雷を包括的に禁止をし、貯蔵地雷の廃棄を義務付けております。また、人道規定として、埋設地雷の除去や地雷被害者の支援も求めています。
オタワ条約によって何十万人もの人々が命や手足を失わずに済んだということは確実です。これまで日本を含む164か国が条約を批准しています。各国はこれまでに貯蔵対人地雷5500万発以上を廃棄しております。日本政府は2003年2月、約100万個の貯蔵の廃棄が終了したということです。
日本政府は世界各地での地雷除去作業にも金銭的な支援をしてきました。また、条約を批准していないあらゆる国に対して、できるだけ早く批准を行うよう繰り返し訴えています。こうした行動は、地雷のない世界という共通の目標を達成する上でなくてはならないものと言えると思います。
一方で、日本政府は、このオタワ条約が確立した規範を守るために、対人地雷の新たな使用を非難するべきというふうに考えます。ミャンマー軍事政権が対人地雷を使用し続けていることは極めて大きな問題だと考えます。お手元の資料の中に、私どもが様々なステートメントを発表していますけれども、ミャンマーの軍政が地雷を使用しているということのリリースを含めております。
また、ロシアがウクライナに全面侵攻して1年がたちますが、この間、ロシアが対人地雷を大量に使用していることも極めて憂慮すべき事態であります。また、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、先月、ウクライナ政府が対人地雷を使用した疑いがあるということも発表しております。このプレスリリースの方も資料の中に含ませていただいております。日本政府は、ウクライナ政府に対して、協力的なコンプライアンスの精神に基づきまして、ウクライナ政府に実態調査を促すべきであると考えております。
次に、クラスター爆弾について申し上げます。
2008年のクラスター弾に関する条約もまた人道的軍縮を代表する存在の一つです。クラスター弾は、子弾を広範囲にわたり無作為にばらまくことで、紛争下の文民に直接的な脅威を与えます。また、あわせまして、多くの子弾が着弾時に起爆をしないために、除去、破棄されるまでに長年にわたる脅威となります。
日本政府は2009年、クラスター弾に関する条約をいち早く批准した国となりました。そして、2015年に貯蔵クラスター弾1万4000発以上を廃棄、そして国際法上の重要な義務を果たしたと言えると考えます。しかし、世界におけるクラスター弾全廃はいまだに遠い道のりでありまして、ヒューマン・ライツ・ウォッチは日本政府がこの条約を一貫して支持、支援していることに感謝を申し上げます。
現在、110か国がこの条約を批准いたしました。しかし、中国、ロシア、アメリカなどは未批准です。この10年間、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、シリア政府がロシア政府の積極的な支援を受けて、クラスター弾を大量に使用して文民に被害を与えていることを幾つもの調査報告書を通じて詳しく明らかにしてまいりました。
それであればこそ、ウクライナ戦争で、ロシア政府がまたクラスター弾を発射するロケット砲を広範囲に使用している現実には愕然とさせられます。日本政府は、ウクライナでのクラスター弾の使用を非難して、この条約の普遍化と履行の促進に一層力を入れるべきだと考えます。
次に、化学兵器について触れさせていただきます。
人道的軍縮のもう一つの特徴は、今申し上げたような条約が、国際人道法と国際人権法において、考えられる最も強力な基準の確立を目指しているという点にも認められると考えます。1972年の生物兵器禁止条約、BWCが細菌剤や毒素の兵器使用を包括的に禁止しているということもその一つと言えると考えます。
また、このことは、1993年の化学兵器禁止条約、CWCでの厳格な禁止にも明らかであります。日本政府など193か国が批准しているこの条約は、極めて多くの国が支持をしている兵器条約になります。この条約は、各国に対して、保有する化学兵器と化学兵器生産施設の廃棄を義務付けております。現在、保有国が申告した化学兵器のうち、実に99%が廃棄済みであるということには勇気付けられます。
ほとんどの国は条約の規定を遵守しています。しかし、深刻な課題も依然として存在しております。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、化学兵器禁止機関、OPCWも指摘しているところですが、シリア政府が禁止対象の化学兵器を使用した事例というものを複数明らかにしてきております。
しかし、化学兵器による一連の攻撃に責任のあるシリア政府の当局者のアカウンタビリティー、すなわち法的責任を追及する試みは全く進んでおりません。次回の化学兵器禁止条約運用検討会議は来る2023年5月に開催をされますが、これは日本政府にとって、化学兵器禁止条約が確立した規範を守り、化学兵器使用に対するアカウンタビリティー、責任追及の取組を支援する重要な機会と考えます。
次に、焼夷兵器について述べさせていただきます。
焼夷兵器は、化学反応によって火災を発生させるため、化学兵器と混同されることがありますが、それとは異なる兵器となっております。ガソリンをゲル化させたナパーム、アルミニウムと酸化鉄の粉末を混合したテルミットなどの可燃性物質を含みます。この兵器の使用は、人に耐え難い重症のやけどを負わせるとともに、文民の住居施設や商業施設、インフラを火災によって破壊いたします。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、近年、アフガニスタン、パレスチナのガザ地区、イラク、シリア、ウクライナ、イエメンで焼夷兵器が使用され、文民が被害を受けたことを調査報告書にて明らかにしております。焼夷兵器の使用は第二次世界大戦に遡り、1945年3月の10日は、ここ東京の大空襲で10万人以上を殺害し、筆舌に尽くし難い被害を生じさせたということは御存じのとおりです。
1980年の特定通常兵器使用禁止制限条約、通常兵器禁止条約、CCWなどと呼ばれていますが、この議定書の、第三議定書ですけれども、焼夷兵器の使用を規制しております。しかし、二つの深刻な欠陥があるため、文民を十分に保護することができておりません。まず第一に、焼夷兵器の定義に多目的弾が含まれていません。例えば、白燐弾や発煙筒です、あっ、発煙弾です。これらもやはり焼夷効果を発揮いたします。第二に、民間人居住地域での空中投射型の焼夷兵器の使用を禁じてはおりますが、一定の状況下での地上発射型の焼夷兵器の使用を容認しております。文民地区での焼夷兵器の使用は、空中投射であれ地上発射であれ、全面的に禁止されるべきであります。
CCWの締約国である日本政府は、第三議定書の有効性をそいでいるこうした欠陥への対処に取り組むべきと考えます。また、2023年にCCWの枠組み内外を問わず、焼夷兵器に特化した議論が行われるように取り組むべきであると考えます。
次に、人口密集地における爆発性兵器について述べさせていただきます。
人道的軍縮における規範というのは、法的拘束力のある文書に限られるものではありません。2022年11月、日本など83か国が、人口密集地における爆発性兵器の使用、EWIPAから文民を保護するための重要な政治宣言を支持いたしました。
この宣言は、都市部での爆発性兵器の使用の制限及び抑制を通じて、文民被害の発生を防ぐための国家レベルの政策と実務を策定、実施することを各国に求めております。
ダブリンでの採択式で発表されたステートメントで、こちらにいらっしゃいますけれども、吉川ゆうみ外務大臣政務官、武力紛争下での文民保護の重要性と国際法の遵守の必要性を確認されました。
日本政府は、文民を最大限保護するようにこの宣言を解釈、履行することで宣言の目的へのコミットメントを示すべきであり、かつ宣言の普遍化のための努力に貢献することができるというふうに考えております。
次に、自律型兵器について述べさせていただきます。
人工知能及び関連技術の軍事的応用に多額の投資を行って、陸海空での自律型兵器システムを開発する国が増えております。こうした開発の行き着く先では、一旦起動すれば、以降は人間の介在を全くなくして目標を選択し交戦する、いわゆる完全自律型の兵器システムが開発されてしまうという懸念には、十分な根拠があります。
国連のグテーレス事務総長は、機械単独の判断で人間を標的にして攻撃をするような兵器システムには、国際的な合意に基づく制限を定めるべきだと訴えています。そして、こうした兵器には、道徳的に忌むべきものであり、政治的にも受け入れられないと述べています。世界の70を超える国の政府と赤十字国際委員会、そしてヒューマン・ライツ・ウォッチが共同設立者となっておりますストップ・キラーロボット・キャンペーン、連合は、こうした自律型兵器の禁止及び制限を定める新しい条約が緊急に必要かつ実現可能であると考えております。
日本政府の立場ですけれども、人間が有意な関与をしない致死性兵器を開発する意図はないと繰り返し述べています。しかし、残念ながら、自律型兵器システムを対象として、新たに法的拘束力のある条約の交渉を開始するということについては支持しておりません。
行動規範や政治宣言などの自主的なコミットメントを自律型兵器システムの開発の指針にすることでは、この問題の解決策にはなりません。自律型兵器は、戦争の本質を根本的に変え、武力行使の閾値を下げかねません。
CCWの枠組みでのキラーロボットに関する協議は、外交的な行き詰まりを見せております。その打開が必要です。ヒューマン・ライツ・ウォッチが最近の報告書で示しました、こちらもプレスリリースの方を資料で入れておりますけれども、こちらの最新の報告書で示したとおり、人道的軍縮に関する条約の歴史は、より効率的かつ効果的な方法が別にあるということを示しております。日本政府は、人類を守るため、CCWに代わる代替的プロセスで自律型兵器システムを禁止、規制する新条約の交渉を行うという提案を支持するべきだと考えます。
これまでの人道的軍縮の歩みから、重要な教訓が一つあります。CCWのようなコンセンサス方式の交渉ではおおむね成功はしないという教訓になります。したがって、コンセンサス方式とは別の代替プロセスによって規範を定めた条約、これを策定して実施し、兵器が引き起こす人間の苦しみに対処することこそ目指すべき方向であります。こうした人道的軍縮アプローチこそが、より効果的、包括的で結果も出しているということは既に実証されております。
最後に、人権の新たな国際的な包容に向けてということで意見を述べさせていただきます。
人権危機がもたらす世界的なインパクトについてなのですが、基本的人権と自由の侵害、経済的、社会的権利の剥奪、マイノリティー集団への大規模な暴力、そうした数々の人権侵害の責任が問われない状況、こういった先にあるのが人権危機であります。人権危機がもたらすのは、人道に対する罪、国内避難民や難民の発生、耐え難い苦しみ、無数の残虐行為にまみれた紛争、内戦などになります。
第二次世界大戦がもたらしたおぞましい惨状は、一つの教訓を後世に残しました。そして、1948年の世界人権宣言の前文にはこう記載されております。人間が専制と圧迫とに対する最後の手段として反逆に訴えることがないようにするためには、法の支配によって人権保護をすることが肝要である。
各国政府には、自国で人権を守る法的義務が課されております。しかし、各国政権がこの義務を果たさない場合、国内には不満や不安定、そして最終的には危機へと至る不満の種がまかれていきます。人権侵害に手を染めるこうした政権は、阻止、牽制されなければその行動をエスカレートさせ、そして腐敗や検閲、不処罰、そして暴力こそが自分の目的達成のために最も効果的な手段だという信念を強めていくことになります。人権侵害の放置は大きな代償を伴います。その波及的効果を過小評価するべきではありません。
二つ事例を取り上げます。
まずは、ロシアによるウクライナの軍事侵攻です。国際社会がロシアのプーチン大統領の法的責任、アカウンタビリティーを追及すべく一致団結した行動をもっと早くから取っていれば、今このような事態にはなっていなかったかもしれません。ウクライナ東部で紛争が始まった2014年、シリアでの人権侵害が問題視された2015年、そして、ロシア国内で人権弾圧が激化した過去10年間に一致団結した行動を取っていればと考えます。各国政府は反省をすべきだと考えます。
次に、中国です。
中国は、今、日本にとって安全保障上の最大の脅威と言われています。1989年の天安門事件に対し、日本政府は西側諸国の制裁にむしろ抵抗する姿勢で臨みましたが、もし日本政府が、1989年以降、中国政府の人権侵害の法的責任、アカウンタビリティーを追及して、法の支配を要求するという国際的取組をリードし続けるという対照的なアプローチを取っていたらと考えてみてください。当時の日本のGDPは中国の6倍を超えていました。今とは異なる状況があり得たと考えます。
人権尊重こそ安定への処方箋ということで、今世界各国が取り組むべきなのは、ウクライナへの軍事侵攻に対する国際社会の一致した対応の特に良い事例に学び、これを再現するとともに、人権状況の改善のために世界各地の危機を解決する政治的意思を倍増させることにあると考えます。
日本政府を始め、人権尊重を掲げる政府には、必要な人権状況の改善が実現するように、政治的なスタミナ、これを使い続け、かつ政治的関心を払い続けるということが必要であると考えます。日本政府にも、意思さえ持てば可能だと思います。
北朝鮮に関して、2013年、当時の安倍晋三首相が外務省に指示を出して、北朝鮮での人道に対する罪の証拠を収集する調査委員会、コミッション・オブ・インクワイアリーといいますが、これを設立するための国連人権理事会での決議案の採択をリードしました。当時、多くの国々はこのCOI、調査委員会の設立までのやる気はありませんでした。しかし、このとき日本政府が指導力を発揮した結果、COIが設立をされ、今では、北朝鮮政府高官らは将来、人道に対する罪で国際法廷に立たされ得る状況になっております。
最後に、この場をお借りしまして、日本政府が人権で世界のリーダーとなるための十か条の提案というものをさせていただきます。
一つが、日本外交を導く実質的かつ強固な政治レベルの文書としての人権原則、計画を作成し、国会で採択をすること。
二、外務省の構造改革を行うこと。予算の増加、ハイレベルかつ強力な専任のヘッドを頂点とするチーム構成で人権外交に当たる。
三番、いわゆるマグニツキー法、人権侵害法、あっ、人権侵害制裁法を制定を、他国のように制定をしていくこと。
主要関係国について、年次の人権報告書を作成、発表すること。英国、米国、スウェーデンなどのように、こうした報告書を発表するということですね。
人権の守り手及び開かれた市民社会を支援するプログラム及び基金を創設すること。
人道的軍縮を推進する国際的な取組を支援、主導し、外交政策の柱とすること。
普遍的管轄権の概念に基づく国際法に違反する重大な犯罪行為に関する司法手続を支援、支持すること。
貿易政策を改革をすること。深刻かつ組織的な人権侵害国に対する特恵関税措置からの除外、貿易協定に人権条項の盛り込みを義務付ける。そして、サプライチェーンの問題の改革として、企業に対する人権デューデリジェンス義務というものを法制化すること、強制労働などの人権侵害を伴って生産された物品の輸入禁止の措置を導入すること。
九番、開発援助の政策、構造の見直しを行うこと。
十番目として、庇護希望者と難民の保護に関するグローバルな共同責任、日本への第三国定住を含む、これを受け入れ、果たすことです。
日本政府は、日本は、力強い民主主義国家であります。しかし、その外交姿勢については、国外の重要な人権侵害に声を上げるのをためらうという残念な評価が確立してしまっていると言えます。日本政府には、世界で人権を擁護するという自国の責任をしっかり引き受け、日本単独あるいは他国との協力の上で人権侵害の改善に向けた行動を取ること、特に、世界の最も深刻な事態に対処をするということが求められていると考えます。
日本政府には、次のことを是非御理解いただきたく存じております。人権の問題へ注力をするということは、高潔なことでも非現実的なことでもなく、人権は現実主義的リアルポリティークとしての外交政策の核心であるということになります。このことは、日本が2013年に北朝鮮の人権問題を国連で主導したことにも表れていると思います。2013年に日本が果たした役割を歴史の一こまで終わらせるのではなく、今後の日本外交のモデルとしていただきたいと切に願う次第です。
以上でございます。ありがとうございました。
2023年2月22日(水) 参議院 外交・安全保障に関する調査会
「軍縮・不拡散(核以外の大量破壊兵器等)」
中央大学総合政策学部教授 目加田説子 参考人
○参考人(目加田説子君) ありがとうございます。
本日は、本当に貴重な場にお招きいただきまして、特に地雷とクラスターの問題について説明をせよということでお声掛けいただきましたので、できる限り時間内に具体的なポイントも含めまして御説明させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
お手元に人道的軍縮についてというタイトルの資料が届いているかと存じます。今の土井参考人とかなり重複する部分もございますので、その辺ははしょりながら進めてまいりたいと思います。
まず一番最初に、トランスナショナル・シビルソサエティーの顕在化というところから話を進めてまいりたいと思います。
これはどういうことかと申しますと、従来の軍縮のアクターがかなり多様化してきていると。つまり、従来は、政府対政府による外交というものを通じた軍縮ということが主流だったわけでございますけれども、昨今においては、それ以外のアクターというものがそれぞれの役割を果たすことによって、多様なアプローチ、多様な考え方というものが主流になってきているということでございます。
そのトランスナショナル・シビルソサエティーの顕在化というページの一番最後を御覧いただきますと、軍縮の定義の拡大というふうに記しておりますけれども、これは軍縮の守備範囲の拡大というふうにも言えるかと存じます。すなわち、軍縮というものは、ある特定の兵器を規制するということにとどまらず、もちろんそれは極めて大事ですけれども、同時に、その軍縮、その特定の兵器がもたらす被害、そこに着目をし、人道的側面から、例えば被害者であったり、それから、昨今では被害者の家族であったり、あるいは被害を被るコミュニティーであったりというもの全員、全体が被害者だというふうに、ビクティムというふうに捉えておりますので、その全体を支援するというふうになってきております。
更に申し上げると、軍縮というのは単にその二点にとどまらず、環境問題、例えば軍縮、具体的に兵器が環境に及ぼす影響であったりとか、それから、あるいは動物などにもたらす影響、例えば家畜の被害と、今ウクライナでも報告されているところですけれども、そういったことも含めて軍縮ということの概念が膨らんできているということでございます。
この背景には、先ほど申し上げたような市民社会ネットワークであったり、それから、もちろん企業であったり自治体だったり被害者であったり国連であったりという様々なアクターが関わるようになってきたということは非常に大きいかと思います。
次のページに対人地雷禁止条約及びクラスター爆弾禁止条約成立の歩みと国際情勢というチャートを二枚、二ページにわたって掲載しております。これは、どういった時代背景の中で今このような人道的軍縮というふうに特徴付けられるような流れができてきたのかということを御理解いただくために、この斜めの線の右上の方が国際的ないろいろな出来事、そして、その線の下側ですけれども、が対人地雷を中心とした人道的軍縮の流れを簡単にまとめたものであります。また後ほどお時間がある際に御覧いただければと思います。
早速ですけれども、対人地雷について、個別にどのようなことがこれまで過去30年にわたって進められてきたのかということに話を進めてまいりたいと思います。
対人地雷をめぐる現状一というページを御覧いただければと思います。
まず、規制や禁止条約について、対人地雷は二つございます。一つは、特定通常兵器使用禁止制限条約という、CCWというふうに一般的には呼んでいるものの第二議定書。これについては、もう1980年に既に成立をしておりました。ただし、対人地雷についての規制が非常に緩いということで、実質的に多用されていたようなプラスチック製の地雷等は禁止対象になってこなかったということがありましたので、何とか改正しようという声が盛り上がって、96年に改正し、98年に成立、発効したということがあります。
ただし、このCCWの第二議定書も改正が十分ではないということで、より全面的に禁止する必要があるという声が世界的に高まって成立したのが、対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約、通称オタワ条約、あるいはMBTというふうに呼んでおりますけれども、これが97年に成立し、99年に発効しております。
こちらは、現在加入しているのが164か国ということで、未加盟国が33か国ほどあるわけですけれども、またそちらについては巻末資料の方にもまとめておりますので、またお時間がある際に御覧いただければと思いますが、入っていない主要国としては、まあ大国、アメリカ、中国、ロシア、それから南北朝鮮半島ですね、北朝鮮、韓国、インド、パキスタン、イスラエル等々、あと中東諸国は入っていない国が多いんですけれども、逆に言いますと、これらの国々以外は既にこちらの全面的に対人地雷を禁止しようという条約に加盟しております。
それでは、その実態についてちょっと見てまいりますと、まず使用なんですけれども、これは、そこにウクライナ、ロシアとミャンマーというふうに書いたんですけれども、実は締約国で対人地雷を使用したという疑いが生じたのは今回ウクライナが初めてです。99年にMBTが発効されて以降、この164か国については対人地雷を使用したという記録は原則ございません。ただ、使用し続けていたのは、ここ数年はずっとロシアとミャンマー、この2か国、世界でも2か国のみです。先ほど、33か国が条約に加盟していないというふうに申し上げましたけれども、その中でも大半の国は実質的に使用しておりませんが、ロシアとミャンマーが継続して使用してきた。そして、今回、昨年の2月24日以降ですね、初めてウクライナが使用したのではないかということで非常に深刻な疑義が生じているということでございます。この点については後ほど、別途資料を準備してございますので、そちらで説明をしてまいりたいと思います。
それからもう一つ、対人地雷については今非常に深刻な状況にありますのが、むしろ対人地雷そのものを政府が使用するというよりは、ここに書いておりますNSAGsという、いわゆる国内の反政府であったりとか、まあ武装集団ですね、といったような主体が多様に使うようになってきております。これは被害の拡大にも直結した問題で、なかなか深刻な状況にあります。特にミャンマーの場合は、政府ももとよりですけれども、この非国家武装集団が大量に使用しているという現実がございます。
現在生産している国は11か国というふうに呼ばれて、言われておりますけれども、この実態については十分に掌握できていないということが指摘できると思います。御案内のとおり、対人地雷って大変小さいものですし、どこで生産しているのかということを、締約国に関しては、七条報告といって毎年国連事務総長宛てに報告する義務が生じますけれども、締約国になっていない国々、ここに書いてあります中国、キューバ、インド等々については実態が十分に把握されていないところですが、まあ11か国ぐらいだろうというふうに言われております。
それから、備蓄地雷ですけれども、その太文字のところでウクライナとギリシャが360万個ぐらい廃棄の義務を負っているというふうに書いてございますけれども、これはウクライナが昨年使用したのではないかという疑義が生じているということに直結するんですが、ウクライナは元々、もう、とうの昔にですね、全て保有している地雷については廃棄する義務を条約上負っていたんですけれども、それを果たしていなかったということで、約半分の、元々660万個ぐらい保有していたと言われていたもののまだ半分が残っていたということになります。
それから、汚染ですけれども、少なくとも68ぐらいの国や地域で現在も地雷が残されているのではないかというふうに言われております。
除去につきましては、これまで30か国が完了しておりますけれども、まだまだ、その30か国を引くと38か国と地域ですか、につきましては除去の課題が残っているということになります。
次のページに参ります。
被害ですけれども、少なくとも50か国で、これは2021年現在ですけれども、5544人が地雷あるいは爆発性戦争残存物、ERWの犠牲になっているのではないかということで、この点も、先ほど、政府だけではなくて反政府軍が地雷を使用することによって被害が拡大しているというふうに申し上げたんですけれども、地雷についても、厳密な地雷というだけではなくて、身近で手に入るようないろいろな素材を、造った簡易爆弾であったりとか、それから、その地雷と同じような効力を有してしまうような爆発物などが戦争終結後も残される結果によって被害が生じているということであります。
年齢は民間人、あっ、ごめんなさい、年齢が判明している民間人は、死傷者で言うと約半数ということになりますし、それから、その半数が子供であるということになります。すなわち、これも戦争犯罪あるいは戦争法の違反ということになってくるかと思います。
犠牲者の支援ですけれども、こちらについてはもう本当に地道な活動が多くの人道団体でしたり国際機関などによって進められているところですけれども、慢性的な資金不足ということで思うように進んでいないということと、それから、ここ3年はやはりCOVID-19の影響が非常に大きくて、例えば、従来であればリハビリであったり病院にかかることができたような被害者の方々が、どうしてもCOVID-19の患者さんなど、あるいは治療を優先させてしまう結果、そのしわ寄せで十分な手当てを受けられていないということがございます。
それから、その下に新たな課題というふうに書きましたけれども、先ほど冒頭で申し上げましたとおり、軍縮の定義というものが昨今拡大してきているという流れの中で、例えば、環境へのリスク、兵器の爆発で引き起こされる森林火災であったりとか、二酸化炭素や汚染ガスが放出されるということで温暖化が促進されてしまうのではないかというような懸念、あるいはごみ問題であったり、それから今現在は、地雷原に地雷が見付かった際は、オンサイトエクスプローションといって、その場を動かさずに、その場で爆発させるという処理を行っているわけですけれども、そうしますと、どうしても環境には負荷が掛かるということで、異なる方法が導入できるのではないかというような意見も出ておりますし、申し上げました動物への被害とあるいは家畜への被害ということも、アニマルライツなどの考え方が広まってくる中で新しい視点として浮上しているところでございます。
続きまして、クラスター爆弾をめぐる現状に移りたいと思います。
クラスター爆弾につきましては、対人地雷と異なりまして、兵器が拡散する前に対人地雷と実質的に同じような被害をもたらしてしまうクラスター爆弾を規制しようということで、ですので、拡散する以前に禁止法ができたということがございます。
そこに書いてありますとおり、クラスター弾に関する条約が2008年に採択されて2010年に発効しているわけですけれども、加入が110か国ということで一見非常に少ないんじゃないかと、対人地雷、164か国ですので、少ないというふうに思われがちですが、そもそもクラスター爆弾については保有している国あるいは生産している国等々が世界に圧倒的に少ないという状況がございます。
使用についてはロシア、そしてウクライナが指摘されているところで、ちなみに、ウクライナはこの条約には、クラスター爆弾禁止条約には入っておりません。加盟しておりません。もちろんロシアも入っておりません。
それから、生産は16か国、今、ブラジル、中国等々で進められているのではないかというふうに見られているのですけれど、その後段に書いてありますダイベストメントといいまして、こういった無差別兵器、非人道的な兵器を製造する企業に対しては融資をしないというような流れが昨今、ESGという言葉もSDGsとともに日本の社会でも一般的になってきていますけれども、そういった金融機関など、あるいは機関投資家などの動きによって規制されてきた結果、クラスター爆弾というのはある意味で投資対象としては最大のタブーというふうに言われておりますので、実質的には、新たに生産しているというのは本当にごく限られた国になってきているという状況があります。なお、移譲については締約国では確認されておりません。
次のページに備蓄弾等々について書いてございますけれども、時間の関係もございますので、ちょっとそこはまた御覧いただいて、先に進めたいと思います。
四、人道的軍縮の特徴というところを御覧いただければというふうに思います。
先ほど土井委員からも御説明があったとおりですけれども、人道的軍縮というのは、個人の生命や生活、あるいは人権を重視するという点に非常に注目が、そのポイントがございます。
この人間を中心としたアプローチということで、武器が人間や環境に与える影響をできるだけ軽減しましょうということを目指しております。
何よりも、被害者への支援、それから汚染地の除去ということが非常に大事なポイントになります。つまり、従来保有している兵器を削減する、あるいは全て廃棄するということでは十分ではなくて、さらに、既に被害を被っているような人々の支援であったり、それから、被害地を元の人間が生活できるような場にしていくということが何よりも優先されるということがポイントです。
それから、その下の国家、国際機関、市民社会、サバイバー間の密接な協力、パートナーシップが不可欠であるということでございます。
そこに関わってくる主体についてまとめたのが次のページでございます。
成功の鍵、人道的軍縮などが成功する鍵というのは多様なアクター間のパートナーシップにありまして、緊密な協力、オープンなコミュニケーションというものが重要になってきます。
政府、市民社会、赤十字国際委員会、国連、サバイバー、世論等々、それぞれに重要な役割を担っているわけですが、特に政府については、志を一にするような国々と外交プロセスを始動し、それから、条約交渉を通じて条約を締結、規範形成、対策実践にコミットしていくということが重要になってまいります。
また、市民社会ですけれども、被害の実態を記録すること、データベースを構築し、障害者やコミュニティーを支援していくこと、そしてもう一つ、これからウクライナでも大変重要になってくるかと思いますけれども、リスクを回避するための教育というものを実践、それから、被害に遭った方の職業訓練、社会復帰を支援するような支援というものも大事になってきますし、その中核を担うのは間違いなく市民社会、そして一部の国際機関であろうかというふうに申し上げられると思います。
ちょっと時間の関係ですね、次のページはスキップさせていただいて、五、日本における課題と対策というところを御覧いただければと思います。
これは、私が、対人地雷禁止条約が成立される頃からですから、26、7年、ずっとこの問題に関わってきた中で実感してきた点をまとめたものなんでございますが、日本政府の対応には条約、分野によってかなりの温度差があるのではないかというふうに感じております。
対人地雷やクラスター爆弾については積極的に関与している一方、その延長線上にあって採択されたと言われる核兵器禁止条約、TPNWについては消極的であると。それから、分野で申し上げると、除去については非常に政府は熱心で、ODAなどを通じて積極的に支援をしていただいているんですけれども、例えば被害者支援、あるいは職業、先ほども申し上げましたけれども、訓練等を通じた社会復帰ということについては消極的であるということ。
しかし、人間の安全保障というのが日本の外交の一つの柱というふうになっている中で申し上げると、その人間の安全保障と親和性の高い人道的軍縮というのは日本の政府としては積極的に関与が可能な分野なのではないかなというふうに考えております。
それから、その下に、具体的に申し上げると、ルールメーカーなのかルールテーカーなのかということで、これは必ずしも軍縮の分野に限らないかと思いますけれども、国際社会で法の支配あるいは人道主義というものを日本政府が重んじるのであれば、やはりルールテーカーになるのではなくて、ルールメーキングを積極的に行っていくということが極めて重要になってくると思いますし、日本のプレゼンスを高めるという意味においても有効な方法になるかと思います。
それから、他の政策との整合性ということでございますけれども、例えば日本が早々に政府はウクライナに地雷除去機を提供するということが決定し、ニュースになっておりました。それは極めて重要な支援だと思いますが、冒頭申し上げましたとおり、ウクライナは締約国でありながら条約を遵守せず廃棄すべき地雷を大量に保有したままであったということ、さらに、その地雷を今般使用したという疑義が生じているということですので、これは明確に条約に違反しているということを厳しくウクライナ政府に伝えた上で、その上での支援でなければMBT違反になるということを是非お考えいただきたいということがありますし、それから、ミャンマー軍の関係者を受け入れて日本で訓練をしているということが伝えられておりますけれども、これ後ほど、もう時間が過ぎておりますけど、1分だけちょっと頂戴をしてミャンマーについて触れたいと思うんですけれども、ミャンマー軍は大量に地雷を使用し、民間人に多大なる被害が生じております。この辺の整合性をどう取っていくのかという一方で、軍に対する支援というようなことを行いながら地雷を例えば除去するというようなことはどういうふうに両立させていけるのかという、そのコンパティビリティーについて是非、より、何というんでしょうね、高い精度で御検討いただきたいということがございます。
それから、その一番下に政治的リーダーシップということを書きましたけれども、御存じの方も多いかと思いますが、対人地雷禁止条約につきましては、小渕恵三当時の外務大臣ですね、が多大なるリーダーシップを発揮してくださり、当時、日本政府は条約に加盟するということに消極的だったんですけれども、最後に政治的なリーダーシップによって加盟したということがございますし、それから、クラスター爆弾禁止条約についても全く同じパターンだったんですけれども、当時の福田首相が政治的なリーダーシップを取ってくださって条約に加盟するということが実現したということがございます。
ですので、今日の人道的な軍縮を含めた幅広い軍縮等々につきましても、是非政治的なリーダーシップ、それから今日、猪口委員に久しぶりにお目にかかっておりますけれども、当時、クラスター爆弾につきましても多大な御協力をいただき、日本政府が遅れることなく参加することができたということがございますので、是非同じように他の分野につきましても積極的に関与していただきたいということがございます。
時間が超過しておりまして誠に申し訳ありませんが、A4の資料でウクライナとそれからミャンマーというものもちょっと御準備させていただいておりますので、ごくごく簡単ですけれども触れさせていただきたいと思います。
まずウクライナですけれども、先ほど来申し上げておりますとおり、ウクライナはCCW、それからMBT、対人地雷禁止条約には加盟しております。一方、クラスター爆弾を禁止する条約には入っておりません。
そして、生産ですけれども、2009年の時点では対人地雷を過去、現在も製造していないということで、実態としては旧ソ連から大量に引き継いだ旧式のものが大半であるということのようでございます。
それから、使用については先ほど申し上げたとおりです。一方で、ウクライナの今紛争ではロシア軍が最小でも八種類の対人地雷を使用しているということで、これはもう様々なエビデンスが集められておりますので、ほぼ間違いないのかなというふうに言えるかと思います。
これまでもロシア、チェチェンですとかジョージアなどで使用しているということがございますし、2014年のクリミアでもドネツク州ですとかルハンスクなどで使用してきております。
また、ロシア製で発見されている地雷については、かなり最近製造されたものというものも発見されておりますので、コンスタントに、そして最新鋭のものも製造を継続しているのではないかなということが言えるかと思います。
一番下のところで、備蓄地雷……
○会長(猪口邦子君) 時間が来ておりますので、おまとめいただければと思います。
○参考人(目加田説子君) あっ、ごめんなさい。はい。じゃ、一応、とさせていただきます。時間オーバーして申し訳ございませんでした。
ありがとうございました。