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日本共産党の岩渕友議員は21日の参院東日本大震災復興特別委員会で、東京電力福島第1原発事故による避難指示区域外からの避難者に対する住宅無償提供について、3月末で打ち切る方針を批判し、国の責任で継続するよう求めました。
復興庁は、岩渕氏に対し、4月以降の住まいが確保できていないのは227世帯で、不在のために意向確認できていないのは116世帯だと答弁(3月10日現在)。人数は把握していないと答えました。
岩渕氏は、「家賃を払うと完全に赤字になる」などの被災者の実態を示し、避難者を受け入れている地方議会からの無償提供の継続を求める意見書採択が約100件にのぼると指摘。「自治体の支援には限界があり、国が一律の支援策を打ち出すべきだ」(兵庫県宝塚市長)と国の責任を問う声があるとして、打ち切りは許されないと迫りました。
今村雅弘復興相は「一義的には福島県が対応する」としながらも、「個別には、柔軟な対応も必要だ」と答弁しました。
岩渕氏は、原発事故で国と東電の過失責任を認めた前橋地裁判決(17日)を示し、「生活の最も基盤となる住まいは人権だ。命綱である住宅の無償提供を国の責任で継続すべきだ」と求めました。
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資料:避難指示区域以外からの避難者の4月以降の住まいに関する意向
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○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
福島第一原発事故から六年がたちました。いまだに八万人もの皆さんが避難生活を強いられています。政府は今年の三月末までに、帰還困難区域を除く全ての地域の避難指示解除と一体に、避難区域外避難者の住宅無償提供を三月末で打ち切ろうとしています。
そんな中で、三月十七日、前橋地方裁判所は、東京電力福島第一原発事故で国と東京電力の過失責任を認める判決を言い渡しました。賠償をめぐっては、避難区域外から避難をした人たちが取った行動には合理性があることを認めています。政府はこの判決を重く受け止めるべきです。
こうした状況を踏まえ、今日は区域外避難者への住宅無償提供の打切り問題について質問をいたします。
原発事故によって避難区域外から避難をしている方は今一体どのくらいの数になりますか。そして、資料を御覧ください、いまだに住まいが決まっていない世帯は二百二十七となっていますけれども、決まっていない世帯ではなくて方は一体何人になるでしょうか。
○政府参考人(関博之君) お答えいたします。
まず、避難指示区域外から自主的に避難されている方の数でございますが、福島県の推計によりますと、平成二十八年十月時点で約一万四千人と承知をしております。また、人数、二百二十七世帯、百十六世帯の人数でございますが、福島県に確認しましたら、人数につきましては集計は行っていないということでございました。
なお、仮にでございますが、平成二十九年二月現在の仮設住宅の入居戸数とその入居者数から求めた一世帯当たりの平均人数である二・二人を用いて推計いたしますと、未確定の世帯の方の人数は約五百名、また、同様に不在の世帯の人数を推計しますと、約二百五十名から六十名ということになります。
○岩渕友君 福島県はというふうに言ったんですけれども、国だって一人一人の状況をきちんと把握していないということじゃないでしょうか。しかも、会うことができなかった世帯が百十六世帯もあると。二百五十人くらいの方がいらっしゃるんじゃないかということだったので、この住まいが決まらないという方はもっと増えるということです。
なぜ住まいを決めることができないのか。週三回透析を受けている、引っ越すことになれば病院が遠くなって大変という方、子供がいじめに遭って転校してきた、これ以上転校させたくないなど、やむにやまれぬ事情があります。さらに、家族で東京に避難、仕事が決まらずに借金をした、ようやく仕事に就いたけれど収入は低く、借金を返済しながらの生活、家賃が掛かるようになったら完全に赤字になる、しかも都営住宅の入居要件を満たすことができないなど、無償提供を打ち切られたらたちまち暮らしが行き詰まるという深刻な実態があります。期限が来たからと追い出すことになれば路頭に迷う方が出かねない、これが実態です。
大臣は所信の中で、被災者の方々一人一人の置かれた状況を踏まえ、被災者に寄り添い、きめ細やかに対応していく必要があると言っています。四月からの住まいが決まっていない人たちに対して、先ほど大臣の答弁の中に、一人一人に寄り添って対応する、こういうものがありました。まさか追い出すようなことはないということでよろしいですね。
○国務大臣(今村雅弘君) 先ほど答弁したとおりであります。個別にいろんな事情があると思います。そういった方について、福島県が中心になってしっかりとそういった御相談に乗って対応していっていただくと。そして、我々もそれを後方からしっかり御支援をするということであります。
○岩渕友君 追い出すようなことはないと、そして、個別の事情があるので、福島県と一緒になって、国も責任持って対応するということです。
避難をする方々を受け入れている全国の議会で、住宅の無償提供の継続を求める意見書が次々と採択をされています。採択をされた意見書の数は今一体幾つになっているでしょうか。
○政府参考人(関博之君) お答えいたします。
意見書でございますが、随時様々なルートを通じて復興庁に届いております。現時点までに復興庁全体に寄せられた数を正確にお答えすることは難しい面もございますが、福島県が住宅支援の打切りを発表した平成二十七年六月十五日から現在までに復興庁で受け付けた、いわゆる自主避難者に対する住宅支援の継続などを内容とする地方自治法第九十九条に基づく意見書として確認できたものの合計数は百件程度と承知をしております。
○岩渕友君 百件程度というお答えありましたけれども、それだけ多くの自治体の議会がこの無償提供の継続を国の責任で行うべきだということを言っています。神奈川県相模原市議会の意見書の中では、最も基本的な生活の基盤を支える住宅支援の打切りは多くの避難者に直ちに経済的な困窮を招くばかりでなく、とりわけ自助努力で避難生活を続けている母子避難者にとっては、子供たちの未来をも断ち切ることになりかねない、こういうふうに述べています。
あと少しで卒業というところで学費が払えずに大学を辞めざるを得なくなった、そういう学生さんもいらっしゃいます。子供たちの未来を断ち切ることが現実に起きています。それでもなお、国は、これ福島県が決めたことだから知らないと、こういう態度でいるのでしょうか。大臣、答えてください。
○国務大臣(今村雅弘君) 避難指示区域以外の方の四月以降の住まいに関する意向調査というのが福島県でやられております。その中でいきますと、大体一万二千二百世帯の中で約九八%近い方がもう戻っておられるわけでありまして、あと、戻られない方、先ほど言いましたようにいろんな事情があるかと思います。しかし、そういったこと全体を踏まえた中で、どういうやっぱり事由で戻れないのか、そういったことは丁寧に対応して、そしていろんなまた支援措置も、受入れのための、帰還のための、そういったこともよく説明をしながら丁寧に進めていきたいというふうに思います。
○岩渕友君 こうした子供たちの未来を断ち切るような事態がないように、国が責任持って対応するということが求められているということです。区域外避難の方々を受け入れている自治体では、県職員公舎を二年間無償で提供するなど独自支援が広がっています。支援の必要性が切迫している、だからにほかならないと思います。
兵庫県の宝塚市の市長は、自治体の支援には限界があり、国が一律の支援を打ち出すべきだと話しています。この声を大臣は無視するんでしょうか。
○国務大臣(今村雅弘君) 決して無視するとは言っておりません。先ほど言ったように、丁寧に対応しますと言っております。
ただ、現実問題として、こういった災害救助法の仕組みでありますとか、あるいは各いろんな受け入れておられる自治体の事情等々含め、そして、現に、先ほども言いましたように、たくさんの方がそれぞれ五年も六年もたってまた戻るという、中にはもう学校をまた変わらなきゃいけないとか、そういう困難を押してでもやはりふるさとに帰るという選択をされた、いる方がこれだけおられるというこの現実も見ながら、こういったこれからの対応も丁寧にやっていきたいというふうに思います。
○岩渕友君 静岡県牧之原市議会の意見書には、政府の原子力災害対策本部は、復興の加速化を基に、避難指示区域指定の解除、区域外避難者の住宅支援を平成二十九年三月で打ち切り、精神的賠償を平成三十年三月に打ち切るという、原発事故被災者に打撃を与える方針を示したとあります。国がどんなに福島県が決めたことだと言っても、自治体は国の責任だというふうに見ているし、国の責任だということです。
この国の責任で住宅の無償提供を継続する必要があるんじゃないでしょうか。大臣、お答えください。
○国務大臣(今村雅弘君) 今の件でありますが、先ほどから言っておりますように、一応大筋のこの原則は決めて今までもやってきた、そしてまた、それに応じて、先ほど言ったように、もうほとんどの方が戻っておられるという現実もあるわけであります。そういったことを踏まえて、まだこうやって残っておられる方についても、先ほどから何回も繰り返し言っておりますように、個別の事情等々あるでしょうが、そういったものもよくしんしゃくしながら丁寧に対応していきたいというふうに思っております。
○岩渕友君 今大臣が言ったように、事情があると、そして丁寧に対応をしていく、そういう考えに立つのであれば、もう全国の議会も認めている、そして自治体もそうだと言っている、やっぱり国の責任で住宅の無償提供を継続する必要があるという現実が今ここにあるんだというふうに思うんです。
改めて大臣に聞きたいのは、これ、今避難をしている皆さんの実態を見ても、先ほど紹介したような実態があるわけですから、やっぱり国の責任でこの住宅の無償提供を継続する必要があるんじゃないでしょうか。これ継続するべきだと思うんですよ。大臣、改めてどうですか。
○国務大臣(今村雅弘君) 先ほどから何回も言っておりますように、この指針については、災害救助法等々の趣旨も勘案しながらこれまでやってきたところであります。
そして、あと大部分の方々もこうやって戻っておられる現実も踏まえて、そして、あと、まだまだ住宅の問題が残って戻られないという方については、先ほどから言っているように、これは国がきちんと責任持ってもちろんやるということも大事かと思いますが、まず一義的には、一番の窓口であります県が個別に対応をしていただいて、そして対応するということでこれはやっていくべきものだというふうに思っているところであります。原則は原則として、個別にはこういった柔軟な対応も必要だということを改めて申し添えます。
○岩渕友君 国が対応するんだというふうに言いながら、事情がある、丁寧に対応するんだと言いながら、最後はやっぱりこれ福島県がやることだ、そういうふうに必ず大臣言うんですよね。
三月十二日のNHKの「日曜討論」で今村大臣は、区域外避難者にふるさとを捨てるのは簡単だというふうに言い放ちました。この言葉を聞いた方から、ふるさとを捨てられないから六年間も苦しんでいるのにと涙ながらの訴えがありました。こうした気持ちを大臣は分かっていないということじゃないですか。
避難区域内か区域外かにかかわらず、国が原発を国策として進めてきました。そして、東京電力が起こした事故によって区域内も区域外も関係なく避難を強いられています。
国の責任を断罪した前橋地方裁判所の判決を受けて、日弁連の会長は、国に対して、区域外から避難をしている方たちへの住宅無償提供を三月末で打ち切ることの撤回を強く求めるという談話を発表しています。生活の最も重要な基盤となる住まいは人権です。住まいの追い出しなど絶対にあってはなりません。命綱であるこの住宅の無償提供を国の責任で継続する、このことを最後に重ねて強く求めて、質問を終わります。
○委員長(櫻井充君) いいんですね。(発言する者あり)分かりました。
○国務大臣(今村雅弘君) ふるさとを捨てる云々の話がありました。これ、非常に誤解がありますので申し述べさせていただきます。
これは、やはりふるさとに帰っていただかないと、どんどん、ただでさえ人口は減っております。そういう中で、やはり戻っていただけないとなると、もうふるさとは倒れてしまうんですね。そういう意味で、簡単に倒れてしまいますよという趣旨で言ったつもりでございます。
ですから、先ほどから言っているように、やっぱり多くの方が戻ってきていただいてきていますし、是非、そういった残りの方についても丁寧に対応してできるだけ帰っていただくようにということで、我々もしっかり支援をしていきたいということであります。
○委員長(櫻井充君) 時間が参りました。
○岩渕友君 今の発言が、事情を考慮するとか丁寧な対応をすると言っているやっぱり大臣のその姿勢が問われているということなんですよ。六年間苦しんでいるというふうに言っているわけですよね。改めてそういう本当に被災者に寄り添った国の対応を求めて、質問を終わります。