(資料があります)
復興相「原発事故」触れず
衆参の復興特別委員会は28日、吉野正芳復興相に対する質疑を行い、日本共産党の高橋千鶴子衆院議員と岩渕友参院議員が認識をただしました。両議員が、東日本大震災について「東北でよかった」とした今村雅弘前復興相の暴言を厳しく批判し、いまも苦しみが続く被災地の声を突き付けたのに対し、吉野氏は従来の政府答弁から一歩もでない姿勢に終始しました。
暴言について高橋氏は「東北の人間の一人としてどんな言い訳をしても許せない」と強調。福島県に住む岩渕氏も「心ない言葉でどれほどの方が傷つけられたか、怒りと悲しみはあまりに大きい」と訴えました。吉野氏は「復興相に最も大切な被災地の信頼を損ねた」と述べ、引き継ぎの際に今村氏に直接抗議すると約束しました。 岩渕氏は、今村氏がこれまでも東京電力福島第1原発事故の「自主避難者」に「ふるさとを捨てるのは簡単」「自己責任」などと暴言を繰り返してきたと指摘。安倍首相がかばい続けたことが被災地を傷つけたとし「被災地に対する政府の姿勢が問われている」と批判しました。吉野氏は「安倍政権は復興第一で取り組んでいる」と強弁しました。
高橋、岩渕両氏は、吉野氏の所信に「原発事故」という言葉がなかったと追及し、福島第2原発の廃炉を要求。吉野氏は、「チェックが足りなかった」と釈明する一方、廃炉については「政府の一員となったからには事業者が判断するという答弁だ」と述べました。
被災者の実態に背むけ 官僚の答弁書棒読み
吉野正芳復興相に対する初の質疑となった4月28日の衆参両院の復興特別委員会。就任時に原発事故で苦しむ福島県選出議員として「被災者の気持ちは誰よりも分かる」と語ったものの、質疑では被災者の深刻な実態から目をそむけ、官僚がつくった答弁書に視線を落とす姿が目立ちました。
日本共産党の岩渕友参院議員は、原発事故で福島市から東京に障害を持つ息子と避難している女性の事例を紹介。女性自身にも障害があり半年前に手術したばかり。「自主避難者」への住宅無償提供の3月末での打ち切りでアパートの退去を迫られました。都営住宅に引っ越したものの、経済的不安からガスも引けず、周囲が支援するまで1カ月も入浴できず、病院で処方された栄養ドリンクが食事という状況でした。
岩渕氏がこうした事態を把握していたかとただすと、吉野氏は答弁書に目を落として国や福島県の相談体制を説明するだけ。委員会室からため息が漏れました。
日本共産党の高橋千鶴子衆院議員は、国が避難指示を解除した川内村の避難者が苦渋の決断を迫られたと告発。3月末で閉所した郡山市の仮設住宅で、通院などの事情で避難解除後も残ってきた住民の「4月で電気、ガス、水道が打ち切られると思ったから仕方なく帰った」との言葉を紹介し、国として避難者の追跡調査が必要だと訴えましたが、吉野氏は「福島県と情報共有していく」と繰り返すばかりでした。
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資料:住宅無償提供終了後の住まいの確保状況/4月以降の住まいの確保先
(ボタンをクリックやタップすると議事録が開きます)
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から六年二か月がたとうとしています。約二万人の死者、行方不明者を出し、約四十七万人もの方々が避難をされていたこともあります。いまだに十二万人もの皆さんが避難生活を強いられ、仮設住宅で暮らす被災者は三万人に上ります。被災地の復興はこれからが正念場です。それにもかかわらず、今村前復興大臣が、東日本大震災の復興は着々と進んでいます、まだ東北で、あっちの方だったからよかった、これがもっと首都圏に近かったりすると莫大な甚大な被害があったと思うと述べたことに、大きな驚きとともに、震えるほどの怒り、そして悔しさと悲しさでいっぱいです。
この発言に対して、被災地が見捨てられた感じで、東北の人は死んでしまえと言われたよう、いつ元の場所に戻るのか、頑張る気力もなくなるという岩手県釜石市の方、ショックで言葉も出ない、被災地にはまだ生活で苦労をしている人がたくさんいるという宮城県石巻市の方など、東北の皆さんから一斉に怒りの声が上がりました。私のところにも、言語道断だ、ひど過ぎる、悔しい、自分たちの大変さなんて何一つ分かっていないという怒りの声が次々と寄せられています。復興大臣の心ない言葉でどれほどの方が傷つけられたのか、その怒りと悲しみは余りにも大きいものです。
怒りの声を上げているのは住民の方々だけではありません。県知事、市町村長からも、復興に向けて頑張っているときに許される発言ではなく情けない、震災で多くの方々が亡くなり崩壊しそうな地域もある、この方々への冒涜だと言わざるを得ない、被災地の実情を理解していない、県民を深く傷つけたという声が上がっています。住民の皆さんが少しでも早く元の暮らしを取り戻すことができるようにと駆け回っている自治体の職員の皆さんの努力や苦労も踏みにじる暴言です。怒りは東北だけではありません。全国に広がっています。
吉野大臣、こうした怒りや悲しみの声をどう受け止めていますか。
○国務大臣(吉野正芳君) 委員も福島県選出でございます。私も福島県選出、同じ東北に住んでいる者として、前大臣の、東北でよかった、東北で、あっちの方でよかった、これが前大臣の発言であります。あっちの方、ここがやっぱり私は一番引っかかるところでありまして、本当にとんでもない話をしたなと、このように理解をしているところであります。
でも、前大臣は、自分の発言を痛切に反省し、皆様方に大変申し訳なく、自らの身を処したいとのことで辞任されたというふうに思います。また、前大臣は、葛尾村、双葉郡の葛尾村で、ふたばワールドという、毎年一回、八か町村全部集まってのところにも出席をして、双葉郡の皆様方と本当に心を開いて、来年はくまモン持ってくるよと言うくらい心を開いたお話をしていたのを見て覚えております。
その大臣が何であんなことを言ったんだろう。あの発言は絶対に許すことのできない発言であります。私もまだ前大臣とは事務引継もしておりませんし、お話もまだしておりません。必ず、事務引継等々でお会いする機会があろうかと思います、そのときにはきちんと抗議をしてまいりたいというふうに思います。
私も現場主義でございますので、現場を歩いてきちんと被災地の皆様方の意見、特に岩手、宮城、ここの声は私は余り聞いていないものですから、宮城を、ここを最初に回っていろんな声を、そして課題を勉強していきたい、このように思っているところでございます。
○岩渕友君 今村氏の暴言は、今回だけではありません。福島の復興はマラソンで例えると三十キロ地点と、あたかも終わりに近づいているかのような発言をして、福島県知事から、まだスタートラインにも立っていない地域もあると厳しく指摘をされています。さらに、原発事故による避難指示区域外から避難をする方々にふるさとを捨てるのは簡単という驚くべき発言をして、東京に避難をしている方からは、ふるさとを捨てることができないから六年間も苦しんでいるんだと涙ながらの訴えがありました。さらには、避難を自己責任だと言い放っています。
今回の発言を受けて、安倍首相は、任命責任は私にあると述べました。しかし、問われているのは任命責任だけではありません。なぜこれまでの暴言を認めてきたのか、許してきたのか。もっと早く今村氏には復興大臣の資格がないと辞めさせるべきだったし、そうすれば多くの方を傷つけることはありませんでした。
宮城県保険医協会から届いた抗議文には、失言の背景にあるのは復興への国の姿勢そのものだと明記をされていました。安倍首相は、東日本大震災からの復興は政権発足以来安倍内閣の最重要課題だと述べており、今回の問題は、発言が問題だというだけでなく、被災地に対する政府の姿勢が問われています。
このことを大臣はどう受け止めますか。
○国務大臣(吉野正芳君) 確かに、前大臣のあの発言は、とんでもない話であります。
ただ、安倍政権が被災地復興を目指していないというのは、それは間違いでありまして、安倍政権は、震災復興、これを政権の第一の目的に掲げております。それを示すものとして、安倍総理、本当に忙しい合間を縫って被災地にもう何十回となく入っております。これも、いかに東日本大震災の復興が安倍政権の命であるかということを表していることだというふうに理解をしております。
○岩渕友君 最重要課題だと言いながら、何でこんなことが起きるのかということなんですよ。
今年の東日本大震災追悼式で安倍首相は原発事故という言葉を一言も使わなかったことに対して、原発事故を終わったことにしようとしているのかと批判の声が次々上がって、福島県知事は、県民感覚として違和感を覚える、原発事故、原子力災害という重い言葉、大事な言葉は欠かすことができないと述べています。大臣の所信にも原発事故という言葉が一言もありませんでした。原発事故による被害は終わっていません。
そこで、避難指示区域外から避難をしている皆さんの住まいの確保に係る深刻な問題についてお聞きをいたします。
先月の委員会で、原発事故による区域外避難者への住宅無償提供打切りの問題について質問をしました。そのときに、四月以降の住まいがどうなっているのか、福島県の調査結果を示しています。今、この方たちの住まいの確保状況はどうなっているでしょうか。
○政府参考人(関博之君) お答えいたします。
福島県において実施した調査結果でございますが、本年三月三十一日時点で、対象世帯である一万二千二百三十九世帯の約九八・八%に当たる一万二千八十八世帯において四月以降の住まいが確保されているところでございます。一方、未確定の世帯は百十九世帯、不在の世帯は三十二世帯となっているところでございます。
○岩渕友君 お配りしている資料を御覧ください。
この住まいの確保状況について、答弁にあったように、未確定だと、不在で会うことができずに確認できていない世帯というのがまだあるんですよね。一人一人の実態について把握をして住まいを確保できるようにすることは国の責任です。
私は、この間、区域外避難者の住まいの問題について、生活の実態も示して、このままでは路頭に迷う人が出かねない状況であり、住宅無償提供を継続するべきだと求めてきました。住まいを確保した方の中にも深刻な状況になっている方がいます。
福島市から東京に避難をした女性は、障害を持つ息子さんがおり、御自身も障害を持っていて、半年前に手術をしたばかりです。住宅無償提供の打切りに伴って、借りていたアパートの退去を迫られました。業者に引っ越し代の見積りを出してもらったところ、三月末は引っ越しが多く費用が通常の三倍は掛かるということで、少ない年金で暮らしているのでせめて三月末の追い出しはやめてほしいと何度も言ったけれど、もう決まったことだからどうにもならないと言われて都営住宅へ転居しました。けれども、引っ越ししたものの、経済的な不安からガスを引くことができませんでした。この事情を知った方たちの支援でガスを引くことはできましたが、一か月もお風呂に入らないまま生活をしていたそうです。また、病院で処方をされた栄養ドリンクで食事をしていたということで、すっかり弱って、引っ越しの荷物もそのまま、急速に目も見えづらくなっているそうです。支援をされている方は、政府は、一番事情を分かっている福島県が対応して、国はそれを支援すると言っているけれども、そもそも住宅無償提供が打ち切られなければこんなことは起きなかったはずだと怒りをあらわにしています。
住宅無償提供を打ち切ったことで、こうした命に関わる重大な問題が起きているという実態を大臣は知っていましたか。
○国務大臣(吉野正芳君) 県が行っております戸別訪問や全国二十六か所に設置されている生活再建支援拠点での相談において、これまでも、経済的に困窮されておられる方や心身のケアが必要な方について福祉部局等の関係機関と連携した対応を行っており、今後とも必要と考えているところでございます。また、これらの生活再建支援拠点においては、よろず相談、全ての相談を実施しており、利用していただきたいと考えているところでございます。
復興庁としても、県が設置している生活再建支援拠点への支援など、引き続き県と連携して取り組んでまいりたいと考えております。
○岩渕友君 私は、そういう一般的なことを聞いたわけではなくて、大臣、こんな深刻な実態があること知っていますかというふうに聞いたんですよね。
今、相談拠点がある、相談するところはあるというふうに答えられたわけなんですけれども、本人から発信しなかったらこれ支援受けられないということなんですよね。住宅の無償提供の打切りによって転居せざるを得なかった方たちの暮らしがどうなっているのか、先ほど紹介をしたように、命に関わるこういうような問題が起きているんですよね。国の責任で、早急に実態を把握して、必要な対策取るべきだと思うんです。これ、大臣、どうですか。
○国務大臣(吉野正芳君) 確定済み、移転済みの世帯に対しましても、生活再建支援拠点における相談等を通じて必要な支援を継続していくものと認識をしております。
相談状況等について、福島県との情報の共有、把握に努めてまいりたいと考えております。
○岩渕友君 私は、国が責任持ってやるべきじゃないかというふうに言っているんです。
まずは、ぎりぎりまで住まいを決めることができなかった方たちの暮らしの状況がどうなっているのか、実態把握するべきじゃないですか。大臣、答えてください。
○国務大臣(吉野正芳君) 復興庁では、国土交通省と連携し、公営住宅への入居円滑化の支援などを実施するとともに、福島への帰還に向け、インフラの復旧復興、医療、教育、なりわいの再生など、生活環境に全力で取り組んでいるところでございます。
福島県においては、戸別訪問等で御事情を伺いつつ、必要な場合には福祉部局等と連携して対応するなど、個々の被害者の支援に丁寧に取り組んでおるところでございます。
また、生活再建に向け民間賃貸住宅の家賃補助等も実施しているところでございまして、復興庁といたしましても、引き続き、それぞれの方の御事情に応じて生活の再建を果たされるよう、全国の生活再建支援拠点への支援や帰還に向けた生活環境整備などを行うなど、福島県と密に連携し、支援を行っていく所存でございます。
○岩渕友君 国がまずは実態ちゃんと把握するべきじゃないですかというふうにお聞きしているんですよね。大臣が最後の一人まで支援するんだと、被災者に寄り添うんだって、そういうことなのかというふうに私思うんですよね。
福島特措法では、福島の復興及び再生がこれまで原子力政策を推進してきたことに伴う国の社会的責任を踏まえて行われるべきものだと、こう目的に明記されているんですね。子ども・被災者支援法でも、移動及び帰還の選択を自らの意思で行えるよう被災者がそのいずれを選択した場合でも適切に支援するものでなければならないとあります。戻っている人も残っている人も、大変な実態を抱えています。未曽有の災害で多くの方が犠牲になっています。政治の責任で、これ以上命が奪われるようなことがあってはなりません。区域外避難者についても、当然、国の責任で生活を再建できるように対策を取るべきです。
さらに、福島県民の切実な願いについてお聞きします。福島第二原発の廃炉です。
昨年十二月の福島県議会では、四度目となる第二原発の廃炉を求める意見書が全会一致で可決をされました。第二原発の廃炉は県民の総意です。政府は、廃炉は事業者の判断と言いますが、東京電力は国のエネルギー政策の動向を見て判断すると言っています。
国が責任を持って廃炉を決断するべきなのは明らかではないでしょうか、大臣。
○国務大臣(吉野正芳君) まず、最初の質問にお答えいたしたいと思います。
先ほど答弁したとおり、政府としては、福島県と連携して適切に取り組んでいると認識をしておるところでございます。引き続き、それらの方の事情に応じた生活の再建が果たされるよう、今後も丁寧に被災者支援に取り組んでまいる所存でございます。
廃炉の問題でございます。
私も福島県民の一人であり、福島第一原発事故で深刻な事故が起き、今なお多くの福島県民の方々が避難を余儀なくされているところでございます。福島県の皆様方が福島第二原発の全基廃炉を早急に実現してほしいという思いを持たれていることは、十分に私は理解をしております。政府の一員としては、福島第二原発については、地元の様々な御意見なども総合的に勘案しながら事業者が判断を行うものという認識をしているところでございます。他方、福島県民の心情を考えると、他の原発と同列に扱うのは困難であるとの認識も示しているところでございます。
いずれにせよ、事業者が地元の方々の声に耳を傾けていくことが重要であるというふうに思っております。
○岩渕友君 今の大臣の答弁、もう何度も何度も聞いてきているんですよ。大臣は福島県の出身ですので、もうそういう声、県民の皆さんから聞いてきていると思うんですよね。
東京電力は、経営のことを考えると第二原発だけを見て廃炉にすることはできないというふうに言っているんですね。結局、廃炉を決断しないのはお金の問題だということなんです。まさか再稼働しようとしているのか、こんな声が県民の皆さんから上がっているんですよ。
改めて聞きますけど、大臣、どうですか、第二の廃炉。
○国務大臣(吉野正芳君) 私も福島県民の一人であって、今度内閣に入ったわけであります。先ほど申しましたように、私の仕事は現場の声を政府に届けることでありますので、第二の問題についても、内閣においてきちんと伝えていくことをお約束したいと思います。
○委員長(櫻井充君) 岩渕さん、時間が来ております。
○岩渕友君 はい。
第二の廃炉は復興の前提なんですよ。これ、国が責任持ってやるべきだということを最後に強く求めて、質問を終わります。