(反対討論があります)
参院東日本大震災復興特別委員会は10日、福島復興再生特別措置法改定案を自民、公明、民進、維新などの賛成多数で可決しました。採決に先立ち質疑と討論に立った日本共産党の岩渕友議員は「原因者負担の原則を踏みにじり、東京電力の責任を免罪するものだ」と批判しました。
改定案は、東電福島第1原発事故の帰還困難区域に「特定復興再生拠点区域」を設け5年後をめどに帰還できるようにし、これまで東電が負担するとしていた除染費用も国が負担するというもの。
岩渕氏は、事故処理費用が21.5兆円に膨らむもとで安倍政権が国と東電の役割分担を強調しているとして、「結局は東電救済だ」と批判。国費投入となれば費用対効果が問題となり、除染地域が限定されかねないとの浪江町長の声を示し、「東電に求償すべき」だと迫りました。吉野正芳復興相は、「東電救済が目的ではない」という従来の政府答弁を繰り返しました。
岩渕氏は、3月末に避難指示が解除された浪江町の住民説明会で、帰還しても生活の一部だった魚釣りやキノコとりができないなら「人間らしい生活といえるのか」との訴えに、国側が「キノコが食べられないのは避難区域だけではない」と言い放ったと告発。「こうした対応が、解除ありきを示している」と厳しく指摘しました。
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○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
岩手、宮城、福島の三県で山火事が発生をし、岩手県の釜石市、福島県浪江町では今も消火活動が続いています。被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げるとともに、国が万全の対策を取ることを求めるものです。
それでは、福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律案について質問をいたします。
初めに、吉野大臣にお聞きいたします。
先日の質問で大臣に対して、避難指示区域外から避難をする方々の住宅無償提供が三月末で打ち切られたことで、そもそも経済的に困難だったところに都営住宅への転居に費用が掛かって、ガスを引くことができずに一か月近くお風呂に入ることができないままだった、まともな食事も取ることができなかった、そういう方がいるんだという実態を示して、新たな住まいが確保できていない方だけでなく、転居せざるを得なかった方たちの暮らしがどうなっているかについても早急に実態を把握する必要があるんじゃないかということを求めました。大臣からは、経済的に困窮する方や心身のケアが必要な方について福祉部局等の関係機関と連携した対応を行っており、今後とも必要と考えている、確定済み、移転済みの世帯に対しても相談等を通じて必要な支援を継続する、相談状況について福島県との情報の共有、把握に努める、こういう答弁がありました。
実態の把握を進めているというふうに思うんですけれども、その後どうなっているでしょうか。
○国務大臣(吉野正芳君) 福島県においては、住まいが確定された方についても、必要に応じて戸別訪問や全国に二十六か所ございます生活再建支援拠点においていろいろな相談、よろず相談を応じておるところでございます。また、生活が困窮されている方については、避難先の福祉部局、社会福祉協議会及びボランティア等と連携をしながら、生活福祉資金貸付制度の紹介や転居や就業の支援、生活を安定させるための生活保護制度の活用などを行ったと伺っております。
引き続き、福島県と密接に連携し、避難者の御事情に応じた生活再建が果たされるよう全力で取り組んでまいる次第であります。
○岩渕友君 住宅無償提供が打ち切られるということで相談ダイヤルに片っ端から電話をしていったんだけれども、もう決まったことだからという答えしか返ってこなかったという方もいらっしゃいます。これでは一人一人に寄り添った対応とはとても言えないと。これまで家を出ていくようにというふうに言われたことはなかったと、自分の尊厳が非常に傷ついたという方もいらっしゃいます。原発事故さえなければ避難をする必要はなかったし、尊厳を傷つけられることもありませんでした。福島県がやるものだということではなくて、国が責任を持って転居された方の実態を把握して必要な対策を取るべきだ、このことを改めて強く求めておきたいと思います。
次に、なりわいの再建についてお聞きいたします。
中小・小規模事業者は、地域経済のみならず地域社会にとっても重要な役割を担っております。この中小・小規模事業者が原発事故によって大きな打撃を受けていますけれども、なりわいの再建は非常に重要になっています。
南相馬市小高区に戻ってデイサービスを開設しようとされている方から話をお聞きいたしました。事業再開のための設備の整備ということで、福島県原子力被災事業者事業再開等支援補助金、これを活用しようと思ったけれども、汎用性があるものは駄目だというふうに言われて、車、机、パソコン、介護専用のパソコンのソフトも該当しないというふうに言われて申請もできなかったと。リフト付きのお風呂だけは申請できたんだけれども、せっかく補助金があるのに使い勝手が悪いというふうに話をされておられました。小高は昨年七月に避難指示が解除をされたばかりです。原発事故前は大家族で暮らしていたんだけれども、避難指示が解除されても戻るのは高齢な御夫妻だけとか、お一人で戻っている方も多くいらっしゃるといいます。このデイサービスを開設しようという方は、独りぼっちになる人をなくしたい、せっかく自宅に戻ってくるんだから楽しい時間を過ごしてほしいという思いでこのデイサービスを開設することにしました。
この補助金は、その目的を、事業者の帰還、事業、なりわいの再建を通じ、働く場の創出や買物をする場など、町機能の早期回復を図るためということを目的にしています。この目的に照らして、地域に戻って住民の役に立ちたいんだ、地域を活性化させたいんだというふうに頑張る方々が安心して事業を再開できるように補助金の使い勝手を良くするべきではないでしょうか。これ、経産省にお聞きします。
○政府参考人(田中繁広君) お答え申し上げます。
被災十二市町村の事業者の方々への支援につきましては、福島相双復興官民合同チームが被災事業者の方々に個別訪問をさせていただきまして、そういった折にお伺いした多様なニーズに応えられるよう様々な支援策を措置してきているところでございます。
御指摘のございました事業再開等支援事業でございますけれども、十二市町村内の再開では、例えば四分の三の補助率といったようなこともやってきておりますけれども、本年度から、これまたいろんな要望を受けまして、帰還困難区域の事業者の方々ですけれども、十二市町村外での再開の際の補助率を引き上げるなど、ニーズを踏まえながらいろんな見直しもこれまでも柔軟に行ってきているところでございます。
今後とも、事業者の方々のニーズを官民合同チームの個別訪問等を通じてきめ細かく把握をさせていただきまして、支援策を十分に御活用いただけるよう、事業者お一人お一人に寄り添った支援をしっかりと進めてまいりたいと考えております。
○岩渕友君 今答弁にあったように、ニーズに応えて柔軟な対応をしたいというふうに考えていらっしゃるというふうに思うんです。この汎用性があるものは駄目だと言われている声がほかにも上がってきているというふうにお伺いしているので、本当にニーズに応えるということであれば、いろんなハードル設けるということではなくて、本当に使い勝手良くするように是非検討していただきたいというふうに思います。
営農再開についてもお聞きをします。
福島県営農再開支援事業という事業があります。この事業の目的、予算規模、利用実績がどうなっているか、農水省、お答えください。
○政府参考人(鈴木良典君) お答えをいたします。
福島県営農再開支援事業については、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響により農畜産物生産の断念を余儀なくされた避難区域などにおいて、農業者が円滑に営農活動を再開できることを目的として事業を推進しているところでございます。
具体的には、除染後の農地などの保全管理のための除草や地力増進作物の作付け、営農再開に向けた作付け実証のための資材購入、新たな農業への転換のための機械、施設リースなどの取組を支援しているところであります。
予算規模につきましては、平成二十四年度補正予算において福島県原子力災害等復興基金として二百三十二億円を措置しており、執行実績は平成二十八年度末現在で約百二十五億円となっているところでございます。
○岩渕友君 どれぐらいの件数が利用されていますか。
○政府参考人(鈴木良典君) 済みません、件数につきましては、今手元にちょっと資料がございませんので、ちょっとお答えが。申し訳ございません。
○岩渕友君 お聞きしたときには四百件程度利用があるんじゃないかというふうな話もあったんですけれども、非常に活用されているということかなというふうに思うんですね。
この事業の実施期間が二〇一二年度から二〇一八年度というふうになっているんですけれども、現在利用されている方から、この事業が二〇一八年度で終わってしまうのか、なくなってしまうんじゃないかと、これなくなったら困るという不安の声が上がっているというふうに聞いています。
この避難指示解除された地域では、そもそも帰還がこれからだという方もいらっしゃって、それから営農再開に踏み出していくわけですよね。富岡町からは、今年度からようやく事業のメニューを始めることができるということで、事業の延長を求める声が既に上がっているというふうにお聞きをしました。こうした意見や事情を考えれば、事業の延長をするべきだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(鈴木良典君) お答えをいたします。
福島県営農再開支援事業につきましては、まずは平成二十九年度の事業実施を推進することが重要であると考えているところでございますけれども、その進捗状況や被災地区などの営農再開に向けた取組の進捗状況を踏まえまして適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
○岩渕友君 農地面積の六割の営農再開を目指しているわけなんですけれども、今は実際には二割程度だというふうにお聞きしています。進捗状況ということだったんですけれども、営農再開という目的が達成されるまで支援をしっかり継続していく必要があるということを指摘をして、現場の声に応えて、これも延長を検討いただきたいというふうに思います。
安心して暮らしていく上で、徹底した除染をしてほしいという願いは切実になっています。そこで、福島市のフォローアップ除染をめぐる問題についてお聞きします。
福島市の渡利地区では、住宅除染後の放射線量が毎時〇・二三マイクロシーベルトを超えた住宅が全体の三分の一世帯に上っています。フォローアップ除染をすぐにでもやってほしいというのが住民の皆さんの願いです。ところが、福島市は、環境省から実際の年間追加被曝線量が一ミリシーベルトを超えることを証明してほしいというふうに言われて、実際の被曝線量を証明するためにはどうするかを考えているというふうに言っています。
住宅除染は、これまで空間線量が毎時〇・二三マイクロシーベルト以下を目指して取り組まれてきました。すぐにでも除染をしてほしいと願う住民の不安に応えるために、フォローアップ除染の基準はこれまでどおり空間線量が毎時〇・二三マイクロシーベルトを超えているところ、ここはフォローアップ除染をするということにするべきではないでしょうか。大臣。
○国務大臣(山本公一君) フォローアップ除染につきましては、追加被曝線量に加えて、汚染の広がりや程度、地形、一回目の除染で実施した手法等を総合的に勘案いたしまして、合理性や実行可能性を判断した上で実施をすることといたしております。
御指摘の〇・二三マイクロシーベルトという数値は、除染を含めた総合的な放射線防護策により達成すべき長期の目標として設定している個人の年間追加被曝線量一ミリシーベルトという数値を、安全側に立った特定の生活パターンの条件の下で便宜上空間線量率に置き換えたものでございます。生活空間の空間線量率が毎時〇・二三マイクロシーベルトを超えていても必ずしも年間追加被曝線量一ミリシーベルトを超過しないことが明らかとなっていることでございますから、追加被曝線量に基づきフォローアップ除染の実施に係る検討を行うことといたしております。
○岩渕友君 住民の皆さんは、この〇・二三マイクロシーベルトというのをやっぱり一つの目安というふうにしてきているわけなんですよね。そして、空間線量はその〇・二三マイクロシーベルトを超えるんだけれども、実際の年間の追加被曝線量がその一ミリシーベルトを下回るということになれば、モニタリングをしたんだから当然除染をされると思っていたのに除染されないのかと、こういう市民が出てくるんじゃないかということで、期待を裏切るようなことが起きるのではないか心配という話が福島市からもあったんです。
実際に、被曝する放射線量がたとえ一ミリシーベルト以下だったとしても、例えば自宅の庭に放射線量が高いところがあれば心配だと、ここ除染してほしいんだというふうに思うのは当然の思いです。実際の追加被曝線量が一ミリシーベルト以下だからフォローアップ除染ができないということでは、これ住民の皆さんの不安に応えることはできないというふうに思うんですね。
今まで目安としてきた空間線量〇・二三マイクロシーベルト、これを基準にするというのが県民が納得できるやり方です。福島市もできればそうしたいというふうに言っています。こうした声に応えるべきではないでしょうか。大臣、もう一回。
○国務大臣(山本公一君) 繰り返しになりますけれども、生活空間の空間線量率が毎時〇・二三マイクロシーベルトを超えていても、必ずしも年間追加被曝線量が一ミリシーベルトを超過しないことが明らかとなっております。ただ、いずれにいたしましても、自治体と十分にコミュニケーションをこれからも取っていきたいというふうに考えております。
○岩渕友君 自治体のコミュニケーションもそうですし、本当に住民の皆さんのそういう不安な思いがある、今すぐやってほしいという思いがあるということで、こうだということではなくて柔軟にやっぱり対応してほしい、その不安にすぐに応えてほしいということを指摘しておきたいと思います。
福島市民に憩いの場である信夫山を散策している方たちが、放射線量がどのぐらいあるのか知りたいということで、独自に、二〇一四年の十二月、二〇一六年の三月、今年の四月と三回にわたって、あずまやとか神社のおさい銭箱の前なんか二十六か所の地上一メートルの空間放射線量を測定しました。一度は除染されているんですけれども、高いところは減ったものの、〇・二三マイクロシーベルト以上の地点が二十二か所あるということで、日常的に利用をする場所の除染というのは切実な願いになっています。
福島特措法は基本理念で、原発事故の被害から、安心して暮らし、子供を産み、育てることができる環境を実現するとしています。住民が納得するまで徹底した除染を行う必要があります。
本法案は、将来にわたって居住を制限することを原則としてきた帰還困難区域の中に特定復興再生拠点区域を定めて、五年後をめどに帰還できるようにするとしています。そのために復興拠点の除染とインフラ整備、これを一体的に行って、その費用は東京電力には求償せずに国が負担をするとしています。そもそも、除染に係る費用は東京電力が負担をすることになっています。
改めて確認なんですけれども、この東京電力が負担をしている理由を述べてください。大臣。
○国務大臣(山本公一君) 放射性物質汚染対処特措法に基づき実施した除染に係る費用については、同法第四十四条の規定によりまして東京電力に求償をいたしております。
○岩渕友君 除染特措法によって原因者が負担をするということになっているわけですよね。汚染者負担の原則というのがあるということで、先ほどいろいろやり取りもありましたけれども、今答弁にもあったように、その除染は原因者負担の原則に基づいて、除染特措法によって東京電力の負担の下に実施をするんだというふうにこれまでずっとしてきました。原発事故さえなかったら自然豊かなふるさとが放射能で汚染されることもありませんでした。元に戻すために除染をするのは当然のことです。そして、これがやっぱり福島県民の願いです。
ところが、政府は、この本法案の中で、復興のステージに応じた新たなまちづくりとして実施するものであるから国の負担で行うんだというふうに言っています。これは、原因者負担の原則を転換する重大な問題であると同時に、事故を起こした東京電力の責任を免罪するものだ、これを指摘しなければなりません。
昨年末に閣議決定をされた原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針では、復興の進捗と相まって、廃炉、賠償等の事故処理対応費用の見通しが明らかになりつつあることを踏まえて、改めて国と東京電力の役割を明確化するんだというふうにして、国の行う新たな環境整備を示しています。
役割分担を明確化しなくてはならない理由について、東電改革提言では、原発事故の処理費用が十一兆円から二十一・五兆円に膨らんでいること、電力の全面自由化が始まる中で電力市場の構造的な変化に直面をしており、現状のままでは福島復興や事故収束への歩みが滞りかねない状況にあるとしています。
東京電力の廣瀬社長は、東京電力は破綻処理を免れていると発言をしていますけれども、普通の会社ならばとっくに潰れているのが東京電力の現状です。復興拠点の除染費用を東京電力に求償しないということは、要するに東京電力が大変だから国に負担をしてもらうんだということです。結局は東電救済ということになるのではないでしょうか。吉野大臣。
○国務大臣(吉野正芳君) 委員もおっしゃったように、帰還困難区域は将来にわたって居住を制限することを原則とした区域でございます。
今回、この困難区域において、従来の方針から大幅に転換して、前に踏み出しをして新たに住民の居住を目指す復興拠点を整備することとしております。この整備は、復興のステージに応じた新たなまちづくり、これは帰還する方々と新たにそこの事業所で働きたいという新たなコミュニティーをつくるわけでございますので、除染費用を国の負担で行うということをしたわけであります。したがって、改正法案は東京電力を救済することを目的としたものではございません。
○岩渕友君 帰還困難区域が面積の八割を占める浪江町の町長は、国費を投じる公共事業となると必ず費用対効果の議論が持ち上がる、戻る人数が少ないと事業を行わないということになり、全エリアの除染が行われない可能性が高いというふうに述べています。東京電力にこれ求償するべきです。
今後、帰還困難区域に着手していくことになりますけれども、帰還困難区域以外の地域、どうなっているでしょうか。四月一日までに帰還困難区域を除く避難指示が解除されましたけれども、二〇一四年四月以降に避難指示が解除された五市町村での帰還率は約二割となっています。帰還のための整備が不十分、住民の納得が得られていないなど、解除ありき、期限ありきで避難指示解除が進められてきたということではないでしょうか。吉野大臣。
○国務大臣(吉野正芳君) 帰還困難区域を除く避難指示区域について、遅くとも原発事故から六年後までに解除できるよう環境整備に取り組むことを閣議決定をしております。解除ありきで進めてきたということではございません。
これまで避難指示が解除された自治体は、いずれも解除の要件である放射線量の低下、インフラ等のおおむねの復旧、地元との協議を満たしているところでございまして、このうち地元との協議については、各自治体当局と度重なる議論を積み重ねたほか、議会、住民にも丁寧に御説明をし、地元の声を真摯に聞いてまいりました。とりわけ地元首長の声も重く受け止める必要があるという認識をしております。
避難指示の解除は本格復興のスタートでございます。戻りたい、戻ってよかったと思えるような自治体のまちづくりを全面的に支援してまいりたいと思います。
○岩渕友君 浪江町の避難指示解除をめぐる住民説明会では、原発事故前は魚を釣って、キノコを取って、それが楽しみであり生活の一部だった、川も山も除染をされず、魚もキノコも取れない、家に帰ったとしてもそこにいるだけ、それで人間らしい生活と言えるのか、こう町民が訴えたのに対して、国は、キノコが食べられないのは避難区域だけじゃない、だから帰れないということにはならないというふうに言い放っています。
こうした対応が、解除ありきで避難指示解除を進めているということを示しています。避難指示が解除されれば、精神的損害の賠償が打ち切られ、住宅の提供も打ち切られていきます。
福島特措法は、東日本大震災による地震・津波被害に加え、東京電力福島第一原発事故という三重苦に見舞われた福島県の復興再生にとって、既存の法律や制度の枠を乗り越えた特別の立法措置が必要であるというふうにして成立をしました。その目的に、福島の復興及び再生がこれまで原子力政策を推進してきたことに伴う国の社会的責任を踏まえて行われるべきものだというふうに明記されて、基本理念では、原発事故の被害から、安心して暮らし、子供を産み、育てることができる環境を実現するとしています。
前橋地裁判決は、国の法的責任を認めています。戻った人も戻れない人も、どちらにも責任はありません。どんな選択を行っても、東京電力と国が責任を果たすべきです。
このことを強く求めて、質問を終わります。
○岩渕友君 私は、日本共産党を代表して、福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。
本法案は、東京電力福島第一原発事故による避難指示区域のうち、放射線量が高いことから立入りが禁止され将来にわたって帰還が困難であるとされてきた帰還困難区域の中に特定復興再生拠点区域を定め、東京電力ではなく国の負担で除染等を行うほか、被災事業者のなりわいの復興再生を担う組織の体制強化、福島県浜通り地域の新たな産業基盤の構築、福島県産農林水産物等の風評払拭等の規定を設けるとしています。
除染の費用を東京電力に求償しないということは、原因者負担の原則を真っ向から踏みにじるものです。原因者である東京電力の責任を免罪するばかりか、国費によって東京電力を救済し、そのツケを国民に押し付けるなど、断じて認めることはできません。これが第一の反対理由です。国費を投じる公共事業となると、費用対効果の議論が持ち上がり、戻る人数が少ないと事業を行わない、全エリアの除染が行われないことにつながりかねず、住民の願いに応えることができません。
反対理由の第二は、本法は、安心して暮らし、子供を産み、育てることができる環境を実現することを基本理念としていますが、法案の内容はそのための改正とは程遠いということです。避難指示区域であるかを問わず、国と東京電力の明確な責任の下、避難者の生活確保、徹底した除染、原発事故被害に係る完全賠償などを行うことが求められています。
避難指示区域外の避難者への住宅無償提供は三月末で打ち切られましたが、住まいが未確定の世帯がなお残されています。必死の思いで住まいを確保した世帯でも、大変な暮らしを余儀なくされています。東京電力福島第一原発事故がなければ引き起こされなかった事態です。避難指示区域外のフォローアップ除染についても、安心して暮らせる環境の実現には程遠い実態が明らかになっています。県民の総意であり切実な要求である福島第二原発の廃炉についても、国は願いに応えようとしていません。辞任した前復興大臣の暴言を始め、被災者と福島を切り捨てる政府の姿勢は断じて許せません。
以上を述べ、反対討論とします。