(資料があります)
日本共産党の岩渕友議員は22日の参院東日本大震災復興特別委員会で、国の一方的線引きによる避難指示解除にともなう住宅無償提供打ち切りなどを厳しく批判し、国による実態把握と支援策の継続を強く要求しました。
岩渕氏は、「精神的苦痛は永久に残る」という避難者の声を紹介。昨年4月1日までに4町村の帰還困難区域を除く避難指示が解除されたものの、2月1日時点の帰還率は平均で5.9%に過ぎないのに、昨年3月には避難指示区域外からの避難者への住宅無償提供が打ち切られたとして、復興庁は避難者数や生活実態を正確に把握しているのかとただしました。
吉野正芳復興相は、実態把握は「重要だ」としながら、東京都と新潟、山形両県の避難者実態調査への「生活資金に困っている」などの回答に触れただけでした。
避難指示区域外避難者について岩渕氏は、東京都の調査で住宅無償提供打ち切り後も約67%が避難を継続し、月収20万円未満世帯が過半数を占めたと指摘。今月も京都、東京両地裁で損害賠償を命じる判決が相次いだとして、「原発事故加害者の国が避難実態をつかみ、生活と生業(なりわい)の再建に責任を果たすのは当然だ」として、住宅無償提供再開を強く要求しました。
また、原子力規制委員会が20日、避難区域が設定されている12市町村以外の福島県内の放射線モニタリングポストの撤去方針を決めたことへの不安が高まっており、事故も収束していないもとで「撤去などとんでもない」と厳しく批判しました。
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○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
質問に入る前に、森友学園をめぐる公文書改ざんについて行政府が国政調査権を持つ立法府を欺いていたということは、民主主義の根幹に関わる大問題であり、内閣総辞職に値する問題だという認識に立つべきだということを大臣に申し上げておきたいと思います。
東日本大震災と東京電力福島第一原発の事故から七年がたちました。先日、当委員会の委員派遣で、福島市にある飯舘村の仮設住宅で住民の皆さんから話をお聞きいたしました。避難は当初二年と言われていたけれども七年にもなった、精神的苦痛はなくならないし永久に残ると思うと訴えられました。これが原発事故です。
昨年の三月三十一日と四月一日、四町村で帰還困難区域を除く避難指示が解除されました。しかし、二月一日時点の帰還率は、四町村の平均で約五・九%です。原発事故はいまだに収束せず、被害は続いています。被害の実態をつかみ、それに応じた対策が必要です。一体どれだけの方が避難をしているのか、これが実態把握の前提となります。
復興庁は、各都道府県からの報告を受けて避難者数を出しています。昨年の三月末で避難指示区域外から避難する方々の住宅無償提供が打ち切られたことに伴って避難者としてカウントしなくなった自治体もあり、復興庁が公表をしている避難者数は正確な実態を示しているとは言えません。どこに聞いても、どれだけの方が避難をしているのか今結局分からないという状況です。大臣は、区域外からの避難者は避難者だと思っていないということなのでしょうか。
昨年七月から今年の一月にかけて東京都、新潟県、山形県が避難をしている方にアンケートを実施しています。避難をしている方の生活の実態を、大臣、どう受け止めているでしょうか。
○国務大臣(吉野正芳君) お答えを申し上げます。
避難者も大きな被災を受けた方々という理解で、私は、避難者も被災者も同じく支援をしていきたい、このように考えています。特に、区域外避難者を含め避難者の実態を把握することは重要なことと認識をしております。
東京都、新潟県、山形県の三県の実態調査において、友人、知人とのつながりが薄くなっている、また、避難先自治体に引き続き生活する予定である、また、生活資金に困っている、心身の不調を感じている等の回答をしている方が多いと伺っております。
被災者が抱える課題が個別化、複雑化している中、避難先自治体等とも連携して、それぞれの方の御事情に応じた生活の再建が果たされるよう、被災者支援にしっかりと取り組んでまいる所存でございます。
○岩渕友君 今少しアンケートの中身も紹介をいただいたんですけれども、資料を御覧ください。
まず①は、東京都の調査なんですけれども、住宅無償提供が打ち切られた後も六七%の方が避難を継続しています。そして②の資料では、現在の世帯の月収は二十万円未満の世帯が過半数を占めているという実態を示しています。そして③は、新潟県の調査なんですけれども、これは全国の都道府県に照会をしたものです。区域外避難者の七九%が現在も避難を継続しています。そして④も新潟の調査なんですけれども、これは全国というふうに書いてありますが、新潟県内の調査ということで訂正いただきたいんですが、避難によって支出は増えたのに毎月の収入は八・二万円も減少をしているという実態です。
避難の継続には、放射線の不安がある、子供の入学、入園や卒業、卒園までなど、やむにやまれぬ事情があります。避難は被害者の責任ではありません。ところが、山形県米沢市の雇用促進住宅に避難をした区域外避難者が提訴されるという事態が起きています。追い出しなどとんでもないことです。避難者の生活の実態を把握するのは本来国が行うべきことです。
大臣、先ほども答弁いただきましたけれども、国が避難指示区域の内外を問わず避難者の実態を把握するべきではないでしょうか。
○国務大臣(吉野正芳君) これまで福島県において様々な意向調査をするとともに、戸別訪問も実施し、実態把握に努めてまいりました。また、生活再建支援拠点、いわゆる全国の二十六か所のよろず拠点等、被災者の生活再建支援に携わっている支援団体を通じ実態を把握していくことは、被災者の生活再建のため、重要と認識をしているところです。
私も全国の拠点を訪問し、支援に直接携わっている方々と意見交換をしてまいりました。これまで十八か所、二十六か所のうち十八か所を訪問して、いろんな、特にNPO等々の方々ですけど、基本的には生活再建をどうすればできるかという全ての相談業務に当たっておられるということで、本当に支援をしている方々に感謝の気持ちを持ったわけであります。
先ほども申し上げたとおり、県と引き続き連携するとともに、支援団体との意見交換も行い、実態把握に努めてまいりたいと考えております。
○岩渕友君 東京都は、先ほどの調査の目的を、応急仮設住宅を退去された福島県からの避難者の生活環境の変化等を把握し、関係機関において情報共有し、今後の生活再建に向けた効果的な支援へつなげるためとしています。山形県も、避難生活が長期化する中で避難者の方々がどのようなニーズを持っているか、どのような支援を望んでいるか等を調査し、今後の避難者支援策に資することを目的としています。
先ほど大臣がよろず支援相談のことをお話しされていましたけれども、ここは区域外避難の皆さんの相談、とても多いんですよね。この皆さんの実態も国が責任持って把握するべきです。
国は、二月七日に被災者の生活再建に向けて関係九府省庁会議を開いています。この中で、区域外避難者はどう位置付けられているでしょうか。
○政府参考人(星野岳穂君) お答え申し上げます。
お尋ねの関係府省庁会議でございますが、この会議は、避難指示区域等における被災者の方々が帰還に向けた環境整備が進展する一方で、家賃等に対する一律の賠償の終期をお迎えになることや、あるいは応急仮設住宅の供与期限が順次到来するなど、生活再建の節目にあることを踏まえて立ち上げた会議でございます。
具体的には、本会議におきまして、被災者の生活の根幹であります住まい、就労、健康的な暮らしを中心に関係府省庁の連携を強化し、生活再建支援に携わる方々からの現場の声をよくお伺いした上で、支援機関間の連携強化や施策の改善等の必要な体制を検討して実施してまいるものでございまして、これらの対応につきましては、避難指示が出された地域の被災者の方々だけにとどまらずに、区域外の避難者の方々にとってもよりきめ細かな支援の実施につながっていくものと私どもとしては想定をしている次第でございます。
今後とも、被災者、避難の方々の一日も早い生活再建に向けて、関係府省庁や福島県と連携をしながら対応をしっかりと進めてまいりたいと考えております。
○岩渕友君 先ほどの調査を見ても、区域外避難者の皆さんは生活に困窮をしています。特に、生活の根幹である住まいの問題は重要です。関係省庁会議の開催を報じた記事には、自主避難を含む県外避難者の支援策も再検討とあって、期待がすごく高まったんですよね。だけど、先ほど、住まいの問題などについては特段触れられておりませんでした。
原発事故によって避難をした方たちが損害賠償を求めた訴訟の判決が三月十五日に京都地裁、十六日に東京地裁と相次いで出されています。国を断罪する判決は四件となって、区域外避難について合理的だと認められる判決となりました。
避難指示区域内か区域外か、これは政府によって一方的に線引きされたものです。原発事故の加害者である国が避難の実態つかんで、生活となりわいを再建させるまで責任を果たすのは当然であり、国の責任で区域外避難の皆さんの住宅無償提供、これを再開するべきです。
昨年、国連人権理事会UPR作業部会が日本政府に出した勧告には、原発事故被災者の対応に関わる四か国の勧告があります。その中には、住宅などの生活援助や定期的な健康モニタリング等支援の継続など、区域外避難者に言及しているものもあります。
十九日、国連人権理事会で、福島県郡山市から避難し、大阪市で子供さんと暮らす森松明希子さんがスピーチを行いました。森松さんは、放射線による被曝から免れ、健康を享受するというのは人の命に関わる基本的人権だと訴えています。この声に応えるのは政府の責任です。
これまで避難区域だったところでも、避難指示解除に伴って、今後、避難は自主的なものということになっていきます。全町避難をした楢葉町も今月末で仮設住宅の供与が打ち切られるということで、先日の参議院の予算委員会でこの問題について質問があって、大臣も実態把握すると答えています。その後、実態把握されたのか、で、どんな実態になっていたでしょうか。
○国務大臣(吉野正芳君) 楢葉町の実態調査ですけど、供与の終了は、市町村の意向や復興公営住宅の整備状況などを踏まえ、福島県が適切に判断し、内閣府への協議を経て決定されるものというふうに承知をしておるところです。
復興庁においては、被災者の生活再建を支援するため、戸別訪問の実施、住宅・生活再建支援の相談活動に取り組む自治体への支援を実施をしているところです。
今後とも、被災者の方々の一日も早い生活再建に向けて……(発言する者あり)楢葉町は、九百四十世帯、二月末時点でございます。このうち、九百四十世帯の方々が未定でございましたけど、九百十八世帯が既に住まいの見通しが立っております。残り二十二世帯となっているところです。
復興公営住宅等々、きちんと用意しておりますので、この二十二世帯の方々に対してこれからいろんな相談業務をしてまいりたいと、そのように考えています。
○岩渕友君 来年の三月末には、五市町村が仮設住宅の供与を終了する予定になっています。しかし、福島県の調査では約半分の方がそれ以降の住まい決まっていないということで、こうした実態から考えると、国の責任で仮設住宅の供与を延長するべきだと思います。
同時に、安心して暮らすことができる福島県をつくることは重要です。
三月二十日、原子力規制委員会が、福島県内の放射線量測定について、避難区域が設定されている十二市町村以外のモニタリングポストを順次撤去して再配置する方針を決めたことに、県内各地から不安の声、次々上がっています。これ、要望があれば個別に協議をするということになっているんですけれども、住民の声を聞く場を設けて意見をよく聞いて、一方的な撤去は行わないということ、そして観測体制を住民の声に基づいて維持をするということを大臣に確認したいと思います。
○国務大臣(吉野正芳君) モニタリングポストもそうですけど、それ以外の、いわゆる復興住宅、復興に関する避難を受けた皆様方の意見というのは、これが一番大事です。町当局、また議会等を通じて、被災を受けた方々の意見、これを基に我々復興行政をやっている、このように考えているところです。
モニタリングポストに関しては、リアルタイム線量測定システムの配置の見直しに当たっては、住民の方々が不安を抱かないよう、原子力規制庁は地元の方々への丁寧な説明や情報発信に努めることが重要でございます。復興庁としても、原子力規制庁に対し、住民の方々に対する丁寧な説明を求めているところでございます。
過日、私のところに規制庁やってまいりました。モニタリングポストを順次なくしていくというお話でしたけど、特に学校等々にはかなりのモニタリングポストがございます。まず、校長先生の意見を聞いたのかというところを指摘をさせていただきました。私のところに来たときには、まだ校長先生の意見等々は聞いておりません。そういう意味の、丁寧な説明、丁寧な対応、これを求めたところでございます。
○委員長(江島潔君) 岩渕友君、時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。
○岩渕友君 はい。
原発事故が収束していない、いつ何が起きるか分からないという住民の不安がある中で、モニタリングポストの撤去などとんでもないことです。先ほど言ったように、住民の声をよく聞く場を設けて、一方的な撤去を行わないと、観測体制を住民の声に基づいて維持するということを強く求めて、質問を終わります。