2020年12月2日(水) 参議院 東日本大震災復興特別委員会
一般質疑(平沢復興大臣の所信的挨拶を受けて)
原発避難者 苦難なお
東京電力福島第1原発事故の避難者が健康問題や経済的困難から回復していない問題について、日本共産党の岩渕友議員は2日の参院東日本大震災復興特別委員会で、実態調査と対策を求めました。
岩渕氏は、早稲田大学などが行った首都圏での避難世帯へのアンケートで、避難生活による長期の強いストレスで持病が悪化した人が46・1%、年収200万円未満の世帯が震災前の2倍などの結果が出ていることを紹介。新潟県の避難世帯の平均収入が10・5万円減少したことや山形県の調査でも生活資金と健康への不安が5割を超えていたことも示しました。
避難世帯に対する国民健康保険料などの減免措置の期限が来年3月となっていることについて岩渕氏は「継続すべきだ」と要求。平沢勝栄復興相は「被災自治体の意見もよく聞きながら検討したい」と答弁しました。
岩渕氏は、政府が原発事故避難者の実態を把握せずに住民税減免措置や応急仮設住宅の供与などを次々と打ち切っていることを批判。「『被災者に寄り添いきめ細かな対応をする』と言うなら、国が責任を持って実態を調査すべきだ」と迫りました。平沢復興相は「実態把握することは施策の大前提。正確な実態把握にさらに力を入れたい」と答弁しました。
(赤字部分のリンクから別ウィンドウで開きます)
質問資料① 避難生活の実態【PDF版】【画像版】
質問資料② 全国漁業協同組合連合会「福島第一原理力発電所事故に伴う汚染水の海洋放出に断固反対する特別決議」(2020年6月)【PDF版】【画像版】
質問資料③ 東電福島第一原発 配置図(2020年11月)【PDF版】【画像版】
(ボタンをクリックやタップすると議事録が開きます)
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から九年八か月がたちました。被災者の生活となりわいの再建はこれからです。
こうした状況の下、被災地の基幹産業の一つである漁業は不漁が続いて、台風、豪雨災害、コロナ禍が重なるなど、被災地、被災者を取り巻く環境は厳しくなっています。国は被災者の生活となりわいの再建のために最後まで責任を果たすことを強く求めます。
原発事故によって、福島県内外で今も多くの方々が避難生活を強いられています。震災支援ネットワーク埼玉というところと早稲田大学災害復興医療人類学研究所というところが、福島県内七つの自治体の協力を得て首都圏に避難をする約六千世帯にアンケートを送付をして、そのうち先行回収分を分析した結果を基に、今年の六月に総理と復興大臣に対して要望を行っています。この要望の趣旨と要望の柱について紹介をしてください。
○政府参考人(開出英之君) お答えいたします。
本年六月、震災支援ネットワーク埼玉及び早稲田大学より、原発事故避難者に対するアンケート調査及びその分析結果に基づく要望書をいただきました。
その中で、避難生活が長期化する中での避難者の健康状態悪化に対する支援、失業状態の継続や生活費の不足などの経済的困難に対する支援、家賃補助の再開など住宅支援の再開と継続などにつきまして御要望をいただいたところでございます。
○岩渕友君 趣旨も紹介していただきたかったんですけど。
○政府参考人(開出英之君) これ、委員お話がございましたように、避難者の方にアンケートを行い、その分析を行った上で、国に対して必要な支援を検討するようにという形で、そういう趣旨で御提出いただいたものと考えております。
○岩渕友君 要望の中身に書いてある趣旨が非常に重要なので私から紹介しますけど、あの原発事故から九年が経過した今もなお、原発事故の区域内避難者及び区域外避難者共に甚大な精神的苦痛が持続している事実を真摯に受け止め、社会全体で避難者の苦難を共有し、苦痛をなくしていく努力を今後も長く積み重ねることを国として宣明した上で、継続的かつ実効的支援を行うことを求めると、こういう趣旨なんですね。これ、非常に重要だと思います。
調査の中では、避難生活によって高いストレス状態が長期にわたって続いて持病の悪化が認められたという方が四六・一%、震災後に新たな疾患を患った方が六二・六%にも上っています。首都圏への避難によって生活環境が大きく変化をしたこと、人間関係の喪失と悪化、なりわい、生きがいの喪失、こういったことが重なることで健康状態の悪化が広く認められるとともに、介護が必要な避難者の方も増加をしています。同時に、収入が二百万円未満の世帯が震災前と比べて約二倍になるなど、経済的に困難な世帯が増えているということなんですね。
一方、国は、国民健康保険、後期高齢者、介護保険の減免措置を縮小してきました。一部負担金の免除が現状では来年の二月末まで、保険税の減免が三月末までというふうになっています。
そこで、大臣にお聞きをするんですけれども、今御紹介をしたように、避難者の皆さんの健康の状態や財政的な状況を見れば、この減免措置は当然継続をするべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(平沢勝栄君) 国民健康保険等における一部負担金等の免除を行った保険者に対しまして、これまで、原子力災害地域の厳しい状況を踏まえつつ、国として財政支援を継続してきたところでございます。
その一方、本措置については、昨年末に閣議決定された復興の基本方針において、被保険者間の公平性等の観点から適切な見直しを行っていくとされたところでございます。
具体的な見直しの内容や時期については、厚生労働省と連携して検討を進めていきたいと考えております。
○岩渕友君 資料の一を御覧いただきたいんです。これは、新潟県原子力発電所事故による健康と生活への影響に関する検証委員会の生活分科会というところの検証結果案から抜粋をしたものなんです。これを見ていただくと分かるように、避難によって単身世帯と二人世帯が増加をして、就業形態の変化ということで、避難によって正規職員が減少をし、無職や非正規で働く職員の方が増加をしていると。そして、平均世帯収入が月十・五万円も減少をしたということを書かれているわけですね。
山形県も今年の七月に調査を行っているんですけれども、ここで、困っていること、不安なことという問いに対して、生活資金、身体の健康と回答した方が五割をどちらも超えているんですね。
医療費などが無料だから何とかなっているという声も寄せられていまして、先ほど大臣が復興の基本方針では適切な見直しをするというふうに言ったんですけれども、これ、福島県も自治体も継続求めているんですよね。これまでどおり継続しなければならない事態が実際起きているということなんです。なので、この継続を強く求めたいというふうに思います。
これだけではなくて、固定資産税も、避難指示解除後三年度分は二分の一減額をされるんです。その後は、各市町村による条例対応ということになるんですね。宅地の固定資産税は、住宅が建っている場合は減額措置があるんですけれども、住宅が解体をされて更地になると軽減措置がなくなると。で、その措置がなくなれば、最大で六倍の固定資産税が掛かるということになります。
既に避難指示解除をされている方の中からは、自宅の再建は諦めたんだけれども土地も売れずに固定資産税だけ払っているという方や、戻りたくても戻れないから苦渋の決断で住宅を更地にすると固定資産税がアップすると、減免をお願いしたいという声が寄せられていて、帰還困難区域に自宅があるという方からは、泣く泣く汚染された自宅を解体して税金だけを取られるのは理不尽過ぎると、特例措置延長してほしいという声が寄せられているんですね。
この固定資産税の減免を延長するべきではないでしょうか。大臣。
○国務大臣(平沢勝栄君) まず、保険料の減免措置の問題ですけれども、医療費の減免措置の、というか減免特例措置の問題ですけれども、これにつきましては、来年度の取扱いも含めまして、この減免措置の具体的な見直しの内容や時期については、被災自治体の御意見もよくお聞きしながら検討していきたいと考えております。被災自治体の意見を聞き……(発言する者あり)それから、固定資産税につきましては、避難指示区域における固定資産税等の課税免除につきましては、避難指示の、新たな避難指示が解除された区域のうち市町村長が指定する区域内の土地及び家屋に係る固定資産税等について、原則三年度分、その税額の二分の一が減額されるというのが現行の制度でございます。
今は、各自治体の判断で、復興の進捗や個々の固定資産の実態等に応じ特例終了後に同様の特例を設定するなど、個別の減免を条例で行うことが可能になっております。この減収分は、震災の復興の特別交付税により減収を補填されることになっているわけでございます。
現時点で本特例の延長に関する自治体からの要望については特段承知しておりませんけれども、いずれにしましても、適切に活用されますようしっかり努めていきたいと考えております。
○岩渕友君 冒頭、医療費の問題についても現場の声聞くと言ったんですけれども、現場は継続してほしいということを求めているので、これ是非継続してほしいということなんです。固定資産税のことは、自治体から声上がっていないという話でしたけれども、現場ではそういう声出ているわけですから、これもしっかり聞いて、実態に合った対応をこれも強く求めたいと思います。
こういった問題を含めて、時間の経過とともに、住民税の減免措置や応急仮設の供与など、もう次々打ち切られてきているんですよね。そうした中で、避難する方々の実態どうなっているかと。今日紹介をしたように、新潟県とか山形県とか、あと東京都なども、避難をする方々を受け入れる自治体や市民団体の皆さんが独自に調査を行ってきているんですね。
これまでも、こうした調査を紹介をしながら、国が責任持って実態を調査する必要があるんだということを求めてきました。山形県は、避難者のニーズを把握して今後の避難者支援に資することを目的として実施したといって調査をやっているんですね。これ実態つかまなかったら、これから何が必要なのか、何をすればいいかということ、分からないわけですよね。
だから、やっぱりこの実態の把握というのが大事だと思うんですけれども、被災者に寄り添ってきめ細かい対応をしていくと大臣も言うのであれば、避難者の実態つかむのは大前提だと。国が責任を持って実態を把握するべきではないでしょうか。
○国務大臣(平沢勝栄君) 避難者の実態をしっかりと把握することは私たちがいろんな施策を取っていく上での大前提でございますから、正確に間違いない実態が把握できるようにこれから更に力を入れていきたいと思います。
今でも例えば福島県なんかでは、定期的に避難者のところを、避難者に対して定期的にこういった相談の窓口などについて周知し、個別の状況に応じた相談対応や戸別訪問を実施していると聞いております。また、各生活再建支援の拠点では、住宅、生活、健康など様々な課題を把握し、必要に応じて関係機関と協力して解決につながるよう努めていると聞いておりますけれども、いずれにしましても、こうした取組を通じて福島県や避難先の関係団体と連携し、避難者の実態把握や生活再建の支援に力を入れて取り組んでいきたいと考えております。
○岩渕友君 福島県がということだけじゃなくて、国が責任持って実態つかんでほしいということなんですよ。いつも自治体から聞いていると言うんですけど、国がちゃんとつかまなければこれからの対策取ることできないということなので、これしっかり国が責任持ってやってほしいということを重ねて求めておきます。
原発事故から間もなく十年でどれだけの方が避難をしているのか、その人数さえも正確につかまれていないんですよね。
浪江町の帰還困難区域に自宅がある方からは、四世帯十人で住んでいたけれども六か所にばらばらになったと、借り上げ住まいの息子夫婦は住宅支援がなくなって家賃が発生して、自宅に帰ることができないのに納得がいかないという声や、自宅は草が背丈よりも高く生えて、家の中はイノシシなどが荒らし放題、原発事故への思いなど話したくないけれども悔しいという声が寄せられています。
原発事故の加害者である国が被害者の実態をつかむのは当然のことで、実態もつかまないのに対策打ち切ったり縮小したりするというのはとんでもないことです。改めて、国が責任持って実態把握するよう求めます。
次に、ALPSで処理をされた汚染水の取扱いをめぐる問題について聞きます。
今年の二月に国の小委員会が、海洋か大気へ放出することが現実的な選択肢だと、海洋放出の方が確実に実施できるという報告書をまとめました。これを受けて、福島県内では、県議会のほか、四十一の市町村議会で海洋放出に反対、慎重な対応を求める意見書が相次いで上がっています。
四月から七月末まで行われた意見募集ですけれども、意見ごとに切り分けて集計した、総数八千を超えるわけですね。そのうち、海洋放出への懸念は五千件を超えています。海洋放出の決定などとてもできるような状況ではありません。
資料二を御覧ください。これは、六月二十三日に全漁連が通常総会で、汚染水の海洋放出に断固反対する特別決議を全会一致で採択をしました。これ、非常に重いものだと思います。福島県の漁業者は血のにじむような努力を重ねて、今年の二月、ようやく全ての魚種の出荷制限が解除をされました。来年四月の本格操業を目指しています。決議は、海洋放出を行うことは、地元はもとより、全国の努力を水泡に帰すのみならず、我が国漁業の将来にとって壊滅的な影響を与えかねない重大な問題だと厳しく指摘をしています。
大臣は、十月二十日の会見で、全漁連と福島県漁連の会長からの要望を受けたということで、漁業関係者の思いを受け止めてどのように感じていますかというふうに聞かれて、漁業者の要望はごもっともで、私が漁連の皆さんの立場だったらもっと強く言ったかもしれないと、漁民の皆さんの思いを無視することなく取り組んでいきたいというふうに答えているんですね。
漁業者の皆さんは海洋放出に断固反対だと言っています。漁民の思いを無視することなく取り組むということは、海洋放出決定には当然反対だということでいいですね、大臣。
○国務大臣(平沢勝栄君) 処理水の海洋放出が決まったということは私はまだ聞いておりませんけれども、いずれにしましても、先ほど来の審議でもそうですけれども、処理水の取扱いについては、風評の発生への懸念あるいはそのほかのいろんな問題で様々な御意見があることは承知しております。政府としては、先日開催された廃炉・汚染水対策チーム会合も踏まえまして、こうした御意見に対しまして、風評対策や国内外への情報発信等について今検討を行っているところと承知しております。
いずれにしましても、処分の方針は、決定してから実際に処分が行われるまで二年くらいはあると思います、その間の。ですから、どういう決定がなされるか分かりませんけれども、決定が行われて、それから実際に処分が行われる二年間の間、その間はフルに使って、風評被害の払拭とか、そういったことにしっかりと努めていく必要があるんじゃないかなと思います。
○岩渕友君 風評被害というんですけど、関係者の御意見を伺う場の中では、風評被害じゃなくて実害なんだという声が上がったわけですよね。これ、私、そのとおりだというふうに思います。そしてさらに、この伺う場の中で、海洋放出というけど海洋放出しないのが一番の風評対策だという声も上がったんですよね。復興大臣なわけだから、経産省と同じことじゃ困るんですよ。海洋放出の決定駄目だってことを言ってくださいよ。
○委員長(杉尾秀哉君) 時間が来ておりますので、端的にお答えください。
○国務大臣(平沢勝栄君) 御意見としてはよく承りました。
○岩渕友君 時間が来たので終わりますけれども、復興のやっぱり妨げになるんですよね。
当面の陸上保管の継続を行うことを強く求めて、質問を終わります。