2021年3月23日(火) 参議院 東日本大震災復興特別委員会
「2021年度予算」委嘱審査
日本共産党の岩渕友議員は23日の参院東日本大震災復興特別委員会で、東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域の避難指示について、除染せずに解除できる方針を国が示したことを厳しく批判しました。
除染して居住を可能とする「特定復興再生拠点区域」は、福島県内の帰還困難区域の8%にすぎません。拠点外の土地活用を自治体が認めた場合、除染せずに避難指示を解除できる方針について、岩渕氏は「安心して立ち入れない」という避難者の声を突きつけました。平沢勝栄復興相は「個別に各自治体の課題・要望を丁寧に聞き、避難指示解除に向けた方針の検討を加速化させる」と述べるにとどまりました。
岩渕氏は、浪江町議会が「除染なき解除」の撤回を求める意見書を採択したことや、「新たな分断が生じかねない」という自治体首長などの声を示し、全区域の除染方針を早く示すよう要求。平沢復興相は「検討を加速する」と繰り返し、岩渕氏は「いつまでも(時間を)かけていいわけではない」と批判しました。
岩渕氏は、浪江町では拠点区域につながる主要道路沿いの除染しか示されていないとして「住民は『家までやるのが約束。自分たちは捨てられたようだ』と訴えている」と述べ、帰還困難区域全体の除染を強く求めました。
さらに、福島県内外問わず、避難者の生活状況も含め、国の責任で実態把握するよう求めました。
(赤字部分のリンクから別ウィンドウで開きます)
質問資料 特定復興再生拠点区域の面積(2020年3月10日以降)【PDF版】【画像版】
(ボタンをクリックやタップすると議事録が開きます)
2021年3月23日(火) 参議院 東日本大震災復興特別委員会
「2021年度予算」委嘱審査
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から十年がたちました。しかし、被災者の暮らしとなりわいの再建は今なお途上であり、時間の経過とともに新たな困難も生じているところに相次ぐ災害やコロナ禍が重なっています。十年で支援策を縮小、打ち切ることなく、被災者が生活となりわいを再建させるまで国が責任を果たすこと、これを強く求めたいと思います。
福島県は、原発事故によって最大十六万人を超える方々が避難をして、五万人を超える方が自主的に避難をしたと言われています。県の発表では今も約三万六千人が避難生活を強いられていて、少なくても八万人を超えていると言う方もいらっしゃいます。
一月に共同通信が避難者の数をめぐって、県内の各自治体が避難者とする総数は少なくても六万七千人を超えていて、県の発表と三万人以上の開きがあるというふうにしました。なぜこんなことになっているのか、国の認識を伺います。
○国務大臣(平沢勝栄君) 避難者の、県外避難者の数でございますけれども、これにつきましては、全国の避難先の自治体の御協力を得まして当該自治体に所在する避難者数を把握して、復興庁は毎月公表しているところでございます。
一方で、福島県の市町村におきましては、独自の基準で避難者数を把握されて公表されているわけでございます。独自の基準というのは、例えば、大震災の日に住民票がありまして、その住民票に基づいてその数字を発表しておられるといったようなことなんですけれども。
したがって、復興庁の数字と福島県の市町村が発表される数字とではギャップが、今おっしゃられたように大きなギャップが出るわけでございまして、それぞれの考えに基づいて取りまとめているところではありますけれども、しかし、このギャップがあるというのは決して、いろいろこれからいろんな施策をやっていく上で好ましいとは思わないわけで、何とかこれギャップを埋めることはできないかと。
いずれにしましても、復興庁としても、引き続き避難者数の正確な把握に努めていきたいということで考えております。
○岩渕友君 大臣は、時間の経過によって被災者、被災地の置かれた状況が多様化する中で、引き続ききめ細かい対応をしていく必要があるというふうに述べています。避難者数つかむということは、その大前提ですよね。今大臣からも少し答弁あったんですけれども、復興庁と福島県で県外避難者の登録情報について大規模な実態調査に乗り出すとしています。要するにギャップ埋めると、避難者の実態つかむということですよね。
福島県は、復興公営住宅に入居した方々を避難者とはしていないんですね。けれども、研究グループの復興公営住宅入居者への調査では、入居すれば避難者であるという認識は持っていないという問いに対して、五四%がそう思わないというふうに回答しているんです。
県外避難者だけではなくて、福島県内に避難をする方々の実態把握も国の責任で行うべきだと思うんですけれども、どうでしょうか。
○国務大臣(平沢勝栄君) 復興庁が毎月公表している避難者数については、東日本大震災をきっかけに住居の移転を行い、避難元に戻る意思のある方を避難先自治体からの報告に基づきまして集計しているところでございます。
多くの被災者がおられる福島県などの被災県においては、どこまでを避難者として捉えるかは各県の状況を踏まえる必要がありまして、福島県では、県内の避難者につきましては、仮設住宅に多くの人が入居し避難生活を送られてきたことから、仮設住宅入居者等を集計していると承知しているところでございます。
いずれにしましても、今後とも県の方と連携しながら適切な把握に努めていきたいということで考えております。
○岩渕友君 大臣は、福島県内で避難されている方で復興公営住宅に避難を、入居されている方が避難者ではないというふうにお考えですか。
○国務大臣(平沢勝栄君) もちろん、復興公営住宅に入っておられる方は避難者の方がおられるのはもちろん、これは当然のことでございます。
○岩渕友君 だったら、今福島県は入居してしまえば避難者数には数えていないということで、こういう人たちの実態も含めて把握してほしいということなんですよ。
復興庁は、県外避難者の実態把握することによって避難者数が減ると見られているというふうにしているんですね。だけれども、全国避難者情報システムに登録していなくても避難を続けていらっしゃる方もいるし、区域外から避難をする方々もいらっしゃるんですね。こうした方々も含めて実態ちゃんとつかむことで対策できるということだと思います。
福島大学の天野和彦特任教授は、避難者かどうか、暮らしが取り戻せているかで判断するべきだと。住まいが安定をしても、コミュニティーが失われ、深刻な悩みを抱えている人も多くて、きめ細やかで息の長い支援が必要だとしています。この考え方、非常に大事だと思うんですね。
では、避難する方々の実態がどうなっているかということで、浪江町では、二〇一五年に二世帯だった生活保護世帯が二〇二〇年には八十二世帯、五年間で四十一倍に急増しているんですね。突発的な出来事があればすぐにでも生活が困窮する状況だという声や、家賃や食費など事故前には必要のなかった経済的な負担が増えて、損害賠償も打ち切られて、公共料金を支払うことも大変だという実態も寄せられているんですね。
大臣、こうした実態をそのままにはできないんですね。避難する方々の暮らしの実態だとか健康状態だとか、こうしたことも国の責任でつかむべきではないでしょうか。
○国務大臣(平沢勝栄君) 避難者の中に経済的に困窮しておられる方がおられるということでございます。
福島県が全国に設置している生活再建支援拠点では、避難者の住宅、生活、健康など様々な課題を把握して、必要に応じて関係機関と協力して解決につながるよう努めているところでございます。県は、このような拠点等の相談窓口の情報を避難者に対し定期的に周知しまして、個別の状況に応じた相談に対応するほか、戸別訪問も実施しているところでございます。
引き続き、こうした取組を通じて、福島県や避難先の関係団体と連携し、避難者の生活の実態把握や再建の支援に取り組んでいきたいということで考えております。
○岩渕友君 きめ細かな対応ということであれば、向こうから相談に来るというのを待っているということではなくて、どんな暮らしの状態になっているのか、それをこちら側から、復興庁の側からつかまなければ対策できないということですよね。
福島大学の西田奈保子准教授が被災三県の復興公営住宅で行った調査では、福島県は無職の方が七六・八%、世帯収入百万円未満は三三・五%ということで、岩手や宮城より高い割合になっています。福島大学未来支援センターが二〇一七年に行った避難者調査では、うつ症状に近い状態であるという方が五六・五%にも上っていて、経済的に不安だというふうに答えた方が七四・三%にも上っているんですね。経済的にも、そして精神的にも追い詰められているというのが実態なんです。国の責任でこうした実態もつかむべきだということを強く求めます。
次に、帰還困難区域の避難指示解除について聞きます。
将来にわたって居住を制限するとされてきた帰還困難区域に、避難指示を解除して居住を可能とする特定復興再生拠点区域が定められました。帰還困難区域のうち特定復興再生拠点区域の割合、どのぐらいでしょうか。
○政府参考人(角野然生君) お答えいたします。
帰還困難区域約三百三十七平方キロメートルのうち特定復興再生拠点区域約二十七平方キロメートルが占める割合は、面積ベースで約八%でございます。
○岩渕友君 資料を御覧ください。今答弁いただいたとおり、僅か八%しか解除のめどが立っていないんですよね。
昨年十二月二十五日、原子力災害対策本部で、拠点外の土地活用を主な目的として、除染しなくても避難指示を解除できるという方針を決定しました。除染なく避難指示を解除するということは、解除の要件に例外を設けるということになります。
飯舘村の帰還困難区域である長泥地区は、復興再生拠点から十六軒が外れているんですね。そのうちのお一人の方は、除染せずに避難指示を解除すれば安心して立ち入れない状況が続く、きれいにしてもらって、孫たちが墓参りぐらいできるようにしてもらわないと駄目だ、簡単に思われたらとんでもない話だと、怒りを持って訴えています。
本来、除染の費用は汚染の原因者である東京電力が負担するべきものです。けれども、二〇一七年の福島復興再生特別措置法の改定によって、帰還困難区域の除染を国費で行うと決めました。これ、大臣、帰還困難区域の除染を国が責任持って行うべきではないですか。
○国務大臣(平沢勝栄君) 帰還困難区域については、政府としては、たとえ長い年月を経たとしても将来的に帰還困難区域の全てについて解除するという、この考え方に全く変わりはございません。
私も福島に行きまして、大熊町の拠点区域外にある町長の御自宅などを実際に訪問させていただきました。いまだに多くの方々が避難生活を余儀なくされていること、そして、多くの方々はいつかは自分の家に戻りたいと、このように考えておられること、こういったお気持ちを痛感したところでございます。
帰還困難区域、この拠点区域外になるんですけど、拠点区域外については、個別に各地方公共団体の課題、要望等を丁寧に伺いながら避難指示解除に向けた方針の検討を加速化させて、将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除し、復興再生に責任を持って取り組んでいきたいということで考えております。
○岩渕友君 拠点内は国が除染すると、拠点外についても当然除染がしっかり行われるべきなんですね。
先ほど大臣もおっしゃっていましたけれども、帰還困難区域については、たとえ長い年月を要するとしても将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除するというふうに政府ずっと述べてきているんですね。なんだけれども、幾ら要望してもらちが明かないと、文言の賞味期限とっくに過ぎているという声が上がっているんですね。避難指示解除の大前提が除染です。福島県知事は、しっかり除染を行って、生活環境を整備しながら解除していくのが大原則と発言をしてきました。
帰還困難区域を抱える五つの町村でつくる協議会は、除染をして解除を行うことに基本的に変わりはないとして、浪江町の議会も、除染なき解除は撤回すべきだという意見書採択しているんですね。これ、そのとおりだというふうに思います。この協議会は、拠点区域以外の避難指示解除について、遅くとも六月までに具体的な方針示すように国に要望をしています。このままでは住民の生活設計成り立たないという声が上がっているんですね。
これ、帰還困難区域全ての除染方針について早く示すべきではないでしょうか。
○国務大臣(平沢勝栄君) 拠点区域外のその対応の基本方針については、現在、政府部内で検討中でございまして、引き続き各町村の課題、要望等を丁寧に伺いながら政府として検討を加速化させていきたいということで考えております。
○岩渕友君 長い年月が掛かってもと言うんですけれども、これ、いつまででも掛けていいということではないんですよね。
環境省は、富岡町の拠点外について、主要な道路沿いにある宅地や農地の除染を始めます。浪江町については、拠点につながる国道などの主要道から二十メートルの範囲で除染を始める方針が示されました。この方針を基に除染計画を示された住民からは、きれいにして元に戻してほしい、家までやるのが約束、自分たちは捨てられたようだというふうに訴えているんですね。富岡町の宮本町長は、新たな分断が生じかねないという懸念を示して、地域全体を除染すべきだというふうに述べています。
除染なくして避難指示解除なし、このことを強く求めて、質問を終わります。