日本共産党の岩渕友議員は25日の参院東日本大震災復興特別委員会で、市の面積の約9%が焼失しあらゆる分野に深刻な被害が発生した岩手県大船渡市の林野火災について、16日に現地で懇談した渕上清市長や漁協関係者の要望を示し対策を求めました。
岩渕氏は、林野火災がワカメ漁の時期と重なり被害が拡大した実態を示し、「無担保・無保証融資の検討が必要だ」と指摘。水産庁の河南健漁政部長は「民間資金について実質無担保・無保証人での融資を可能とする事業を措置している。日本政策金融公庫の農林漁業セーフティネット資金を利用できる」と答えました。岩渕氏は「今ある制度を活用し、足りないところがあればさらに必要な対策を」と求めました。
さらに岩渕氏は、「直接被害にあった方々だけではなく、被災者を広く捉えて国の支援をお願いしたい」との渕上市長の要望に言及。大震災津波、ALPS処理水の海洋放出や漁業不漁に加えての林野火災という何重にも困難な状況を踏まえ、一人ひとりに寄り添った支援が必要だと主張しました。伊藤忠彦復興相は「教訓と知見は今回の林野火災への対応においても活用されるべきだ。現場主義を徹底しつつ、関係省庁と連携したい」と答えました。
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217-参-東日本大震災復興特別委員会-003号 2025年03月25日
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
私からも、初めに、岩手県大船渡市の林野火災について質問をいたします。
市の面積の約九%に当たる二千九百ヘクタールが焼失をして、あらゆる分野に深刻な被害が発生をしているんですね。東日本大震災津波で家を失って、再建した家を今度は火災で失ったという方もいらっしゃいます。十六日に現地に行って、渕上市長、そして漁協の方々ともお会いをして、被害の実態と要望を伺ってきました。漁業への被害が深刻ですけれども、被害の実態と対策どうなっているか、教えてください。
○政府参考人(中村隆君) お答えいたします。
今回の林野火災により、地域の基幹産業である漁業についても、漁具倉庫や倉庫内に保管していた漁具が焼損したほか、養殖ワカメ等の操業に影響があったと承知しております。今後、岩手県や大船渡市とも連携して、漁業の円滑な再開、継続の前提となる経営安定対策、被災した施設の整備や漁具の導入等の支援制度を活用し、被災された方々に寄り添った丁寧な対応を行っていくこととしております。
○岩渕友君 養殖ワカメというお話もあったんですけれども、被害はそれだけではないので、よくやっぱり実態の把握必要だなというふうに思うんですけれども、漁業の環境を整えてほしいという願い、非常に切実なんですよね。
それで、そのワカメ漁の話でいえば、その火災があった時期と漁の時期が重なって、まあ漁は再開というか、できるようになってはいますけれども、塩蔵のための機材が使えなくなっていて、生で出荷をしているということでした。それで、生だったら一キロ当たり約百五十円、塩蔵だったら約三千円と価格が大きく違ってくるというわけですよね。これ、非常に大きいなというふうに思いました。
焼失した定置網はオーダーメードで、どんなに急いでも半年以上掛かるというわけですよね。しかも、億単位のお金が掛かるというふうにお聞きもいたしました。その間の雇用をどうやって維持するのかということで不安は尽きないというようなお話だったんですね。
漁協では、無担保無保証の融資ができないかという要望をいただきました。これ、検討が必要ではないでしょうか。
○政府参考人(河南健君) お答え申し上げます。
漁業近代化資金を始めといたします民間資金につきまして、実質無担保無保証人での融資を可能とする事業を措置をしているところでございます。今回被災をされました養殖業を営む方々などに御活用いただくことが可能となっております。また、日本政策金融公庫の農林漁業セーフティネット資金を利用いただくことも可能であります。
農林水産省といたしましては、被害の状況や現地の御要望などを踏まえまして丁寧に対応してまいりたいと考えております。
○岩渕友君 既にある制度もいろいろあるんだということだと思うんですけれども、被害に遭ったところはワカメの養殖だけではないので、今ある制度も活用をするし、やっぱり足りないところがあれば必要な対策を更に取るということなんだというふうに思うんですね。それも強く求めておきたいというふうに思います。
市の復興にやっぱり欠かせないのが漁業の再建だということで、漁業が再建されるかどうかということ非常に重要なので、しっかり見ていただきたいというふうに思っています。
昨年の当委員会の委員派遣で、大船渡で漁協と水産加工業者の方々と、いわゆるALPS処理水の海洋放出の被害についての意見交換を行ったんですね。吉浜アワビというブランドアワビがあるんですけれども、アワビとかナマコの単価が下がっているという、そういう実態が出されたんですね。大震災津波があって、ALPS処理水の海洋放出や基幹産業である漁業が不漁で魚種が変わっていくなど、漁業そのものにも深刻な影響があって、そういうところに今回の林野火災ということなので、これ何重にも困難な状況になっているわけですよね。
渕上市長からは、避難指示によって暮らしとなりわいに影響が出ていると、直接被害に遭った方々だけではなくて、被災者を広く捉えて国の支援をお願いしたいというふうに求められたんです。
それで、大臣、一人一人に寄り添った支援、柔軟な支援、必要ではないでしょうか。
○国務大臣(伊藤忠彦君) 実は、本年一月に、私、大船渡市を訪問させていただきましたときに、この渕上市長の御案内で、みなと公園内の祈りのモニュメントにおいて献花と黙祷を行わせていただきました。その対岸に広がっていた地域が今回の林野火災の被災地となってしまいまして、非常にびっくりしたと同時に、残念でたまらない気持ちでいっぱいでございます。
お亡くなりになられた方に謹んでお悔やみを申し上げるとともに、被災された全ての方々に心からお見舞いを申し上げる次第であります。
そして、暮らしをもう一度、なりわいをもう一度しっかり復旧復興させていただくに当たりまして、今朝、閣議で私も入って激甚災害の指定をさせていただきましたので、これによって様々な予算を使っていただいて、何とか復興に向けてしっかりと歩んでいってもらいたいという気持ちでいっぱいです。
東日本大震災から復旧復興関わる様々な教訓と知見というものは、今回の林野火災への対応においても活用されるべきものと捉えております。復興庁としても、現場主義を徹底して、様々な方からの声を聞きつつ、関係省庁とよく連携をして協力をしてまいりたいと考えております。
○岩渕友君 大臣にも寄り添った支援強く求めておきたいと思います。
次に、東京電力福島第一原発事故による被害に関わって質問をいたします。
今年の委員派遣では、原発事故によって避難を強いられている地域を抱える自治体にも伺いました。その一つが浪江町です。浪江町の津島地区というところは町役場から約三十キロぐらい離れた山合いの地域なんですけれども、帰還困難区域の一部が特定復興再生拠点区域として二三年の三月三十一日に避難指示が解除をされています。
初めに、避難指示解除の三要件について確認をいたします。
○政府参考人(川合現君) お答え申し上げます。
特定復興再生拠点区域の避難指示解除につきましては、平成三十年十二月二十一日の原子力災害対策本部決定に基づきまして、空間線量率で推定された積算線量が年間二十ミリシーベルト以下になることが確実であること、電気、ガス、上下水道、主要交通網、通信など日常生活に必須なインフラや医療、介護、郵便などの生活関連サービスがおおむね復旧し、子供の生活環境を中心とする除染作業が十分に進捗すること、県、市町村、住民の方々との十分な協議という三つの要件がおおむね充足された地域において、帰還準備のための宿泊を実施し、その上で、地元との協議の上で避難指示を解除することとされております。
○岩渕友君 インフラなどの日常生活に必要なものの復旧というんですけれども、津島地区には支所の前に自動販売機があるだけで、買物する場所がないんですよね。週一回移動販売車来るということなんですけれども、買物をするためには約三十分掛けてスーパーまで行かなくちゃいけないということなんです。
昨年十一月に実施をされた浪江町の住民意向調査の結果、速報版が出ていますけれども、帰還意向について、まだ判断が付かないと答えた方の割合と、その理由について主なものを教えてください。
○政府参考人(桜町道雄君) お答え申し上げます。
浪江町への帰還については、まだ判断が付かないと回答された方の割合は二三・三%でございました。その理由の上位として挙げられたものにつきましては、医療環境に不安があるからという方が六二・八%、避難先の方が生活利便性が高いからとお答えになられた方が四四・八%、生活に必要な商業施設などが不足しているからという方が四一・二%、元の住家を解体しており戻る家がないからという方が四〇・二%、いずれも複数回答で回答していただいております。
以上でございます。
○岩渕友君 戻らないというふうに決めている理由でも、医療環境に不安があるとか、生活に必要な商業施設が不足しているという回答多くあるんですよね。
国は戻りたい人が戻れるようにといって避難指示の解除を進めてきましたけれども、実際にはその日常生活に必要なインフラなどが復旧とはとても言えない状況だと思います。これで三要件は満たされているというふうにお考えでしょうか。大臣、いかがですか。
○国務大臣(伊藤忠彦君) 特定復興再生拠点区域の避難指示解除の要件については、経産省から説明があったとおりですけれども、浪江町の特定復興再生拠点区域の避難指示解除に当たっても、町や国による住民説明会や地元議会への説明等を踏まえた上で、要件を満たすものとして原子力災害対策本部にて決定をされたものと承知をいたしております。
二〇二三年の三月三十一日に解除された浪江町の特定復興再生拠点区域は、例えば、津島地域では再生賃貸住宅の整備ですとか、移動販売、今先生がおっしゃったとおりです、が進み始めていると。また、教育、医療、介護といった面では、地域のニーズを踏まえつつ、引き続き必要な対応を検討していくことが重要であると考えております。
復興庁としては、避難指示が解除された地域において住民の帰還が更に進んでいくように、生活環境の整備や、産業の、なりわいの再生に向けて、浪江町、福島県、そして関係省庁とも連携をして対応をしてまいる所存でございます。
昨日、浪江の吉田町長とも、直接私のところに来ていただきまして話を伺ったところでございます。
○岩渕友君 要件が満たされているとはとても言えないというふうに思うんです。自治体と話し合ってということだったわけですけれども、今後、自治体存続できるのかといったことなども含めて、いろいろ考える中で苦渋の決断だったというふうに思うんですね。しかも、避難指示が解除されれば、医療、介護の減免が段階的に廃止とされるなど、様々な打切りがもうされているわけなんですよね。
そして、既に戻っている方が帰還を決めた理由が、気持ちが安らぐからという回答が七割に上っているんですけれども、ところが、福島大学の筒井雄二教授、これは心理学を専門にされている教授ですけれども、が県内外に避難している浪江町の住民、戻った住民を対象に住む場所ごとにどの程度心の状態が異なるかを調査しているんです。
その結果、町に戻った住民が最も精神的ストレスを感じているということが分かったというんですよね。避難先で待ち遠しいと感じていた帰還だけど、今の生活は望んでいた暮らしとは程遠いと、原発事故で自分の一生涯の生きていく基盤とか希望だとか夢も砕かれた、こういうふうに訴える声が上がっているんですね。これまで、避難の実態をつかむように何度も復興庁には求めてきましたけれども、それさえ行われていないんですね。
大臣、これ戻った人も今も避難を続ける人も含めて、精神的な影響を始め国が避難の実態をつかんで施策につなげていくべきではないでしょうか。
○国務大臣(伊藤忠彦君) 東日本大震災と原発事故を契機に全国に避難をされた皆様方の実態を把握すべく、復興庁では、住民意向調査により帰還意向等を把握すること、あるいは、復興庁の大臣と、私自身ですけれども、避難者の方々の意見を直接お聞きをする場において、避難者の皆様方の声を伺っております。各自治体が避難先において住民の声をお伺いする懇談会に復興庁職員も同席をさせていただくなどして、住民の声を伺うといった取組も実施をさせていただいております。こうした取組に加えて、避難者の状況をよく理解している各自治体とともに日常的に連携を取ることによって、復興の現状や課題を把握させていただいて施策の反映をさせてきたところであります。
避難者の方に帰還に向けた希望を持っていただけるように、既に避難指示が解除された地域含めて、住まい、買物環境、そして教育、医療、介護といった生活環境の整備、イノベ構想やF―REI等の取組を通じた産業、なりわいの再生、そして未来に向けての希望、にぎわいの創出や創造的な復興に取り組んで、避難者のニーズや実情を踏まえて安心して暮らせる町づくりをしっかりと支援してまいりたいと考えております。
引き続き、現場主義を徹底し、被災者の皆様方に丁寧に寄り添って、福島の復興を取り組んでまいる所存です。
○委員長(小沢雅仁君) おまとめください。
○岩渕友君 はい。
意向調査では実態をつかむことはできないということだと思います。国が責任持って実態把握するということを求めて、質問を終わります。
