(資料があります)
東京電力福島第1原発事故から7年目に入るのを前にして、日本共産党の岩渕友議員は9日、参院経済産業委員会で、東電の広瀬直己社長に“賠償打ち切り”の実態を突き付け、是正を迫りました。
岩渕氏は、原発事故で利益が減少したのに、避難区域外の事業者の59%が賠償請求したことがないという福島県商工会連合会のアンケートを提示。東電が事業者を門前払いしている事例があることも告発しました。
また、事故による減収分の2倍が賠償されるはずなのに、大部分は1倍に値切られるか全く支払われない実態を指摘。事業者が東電に電話すると「相談窓口はない」と回答されたことを指摘しました。
広瀬氏は、電話対応について「事実とすれば不適切だ」として改善を約束する一方、賠償額については「因果関係を認めることが困難な事例もある」と開き直りました。
事業者に対する賠償額は、当初見積もりより既に約1兆円超過しているにもかかわらず、政府は昨年12月の賠償見積もり額(全体で7.9兆円)が上限であるかのように発言しています。
岩渕氏が「上限ありきは許されない」と迫ったのに、世耕弘成経済産業相は「被害が続く限り賠償を続ける方針に変更はない」と述べました。岩渕氏は、政府が賠償費用を電気の託送料金に上乗せし、新電力も含め国民に負担させようとしていることを批判。株主や大銀行、原子炉メーカーにこそ負担を求めるべきだと主張しました。
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(ボタンをクリックやタップすると議事録が開きます)
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
東日本大震災と福島原発事故からあさってで丸六年になります。しかし、原発事故によって、福島県内外に約八万人もの皆さんが避難生活を強いられています。
大臣は所信で、福島の復興と安全かつ着実な廃炉・汚染水対策は経済産業省が担うべき最重要課題と述べています。原発事故の被害者が生活となりわいを再建させるまで、国が責任を持って取り組むことが福島の復興の大前提です。今日は、原発事故によって被害を受けた商工業者の事業再建に係る問題についてお聞きをいたします。
まず初めに、大臣にお聞きします。原発事故によって被害を受けた商工業者のなりわいの現状について、大臣はどのように認識をしていますか。
○国務大臣(世耕弘成君) 特に福島県においては、東北地域の中でも事業活動の回復状況が相対的に遅れているというふうに見ております。
例えば、鉱工業生産指数は震災による工場の被災等によって大きく低下をしました。震災前を一〇〇としますと、昨年十一月、東北全体の数値で見ますと九九・五まで回復という形になっていますが、福島県の数値は八四・六にとどまっているという状況であります。こういう状況を踏まえて、福島県全域においてなりわいの再建を強力に支援をしていく必要があるというふうに認識をしています。特に、原子力被災十二市町村については避難指示等がなされていた地域でありまして、事業再開やなりわいの再建に向けてよりきめ細やかな支援を行っていく必要があると認識をしております。
今後とも、官民合同チームを通じた被災事業者へのサポートを始めとして、あらゆる支援策を活用して、事業者のなりわいの再建を後押ししてまいりたいと考えております。
○岩渕友君 大事なことなので改めて大臣に確認をしたいと思うんですけれども、原発事故は中小・小規模事業者にとって大きな打撃となっています。これは今大臣も述べられたとおりだと思います。中小・小規模事業者は、地域に根差して、地域の構成員として例えばお祭りの担い手であったり災害時の対応を行うなど、地域経済のみならず地域社会にとっても重要な役割を担っているんだというふうに考えます。
そういう役割を踏まえて、中小・小規模事業者の生活となりわいの再建の重要性についてどのように考えておられますか。また、原発事故で被害を受けた事業者の再建が福島県の経済全体にとってどういう意味を持つとお考えでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 中小企業・小規模事業者の存在というのは、もちろん、これ全国的にどこでもそうでありますけれども、被災地の復興という観点からも非常に重要だというふうに思います。この方々の仕事、生活がしっかりと再建をできない限り、本当の意味での復興はないというふうに思っております。
ですからこそ、特に経済産業省は官民合同チームにかなり人材も派遣をしております。こういう人たちが被災事業者にしっかりと寄り添って、それぞれの状況を伺いながら個別のオーダーメードの形で支援策をしっかりと展開をしていく、そしてそれをずっとフォローアップをしていくということが非常に重要だというふうに考えております。
○岩渕友君 原発事故が商工業者に与えている影響というのは、事故から六年たとうとする今でも深刻だということ、そして地域に根差す事業者のなりわいを再建するということは、地域経済、地域社会、福島県の経済全体にとって重要だと。
今大臣も、事業者の生活、なりわいというものが再建しなければ本来の意味での復興はないというふうにおっしゃられましたけれども、認識は一致しているのかなというふうに思います。
初めに、期限が迫っている問題があるので、お聞きをいたします。
東日本大震災で直接被害を受けた中小企業向けの東日本大震災復興緊急保証制度というものがあります。この期限が三月三十一日になっています。被災地の復旧復興にはまだまだ時間が掛かるということが今のやり取りでも明らかになったと思うんですけれども、これは当然延長するということでいいですよね。確認をいたします。
○政府参考人(吉野恭司君) 御指摘の保証制度でございますけれども、東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律に基づき、東日本大震災により被災された中小企業に対して信用保証協会が通常とは別枠で借入額の一〇〇%保証を行う制度でございます。
その実績は、平成二十三年度の制度発足からこの二十九年一月末時点までで約十三万件、約二兆六千億円となってきております。被災した中小事業者やその取引先の資金ニーズに貢献をしてきていると認識をしております。
この適用期限に関しましては、同法の政令で規定されておりますけれども、被災地におけるニーズも踏まえまして、これまで毎年度延長を行ってきているところでございます。現状の期限は、御指摘のとおり本年三月末でございますけれども、現在、来年三月末まで一年間更なる延長をするべくパブリックコメントなどの必要な手続を進めているところでございます。
今後とも、被災地の状況を注視しながら、復旧復興に取り組む被災中小企業に寄り添って、資金繰り支援に万全を期してまいりたいと思っております。
○岩渕友君 延長するべくパブリックコメントを今募集しているということでした。
今お話にあったように、一年ごとの延長ということになっているんですけれども、被災地の復興には時間が掛かるという現状を考えても、一定幅を持った延長期間にしていく、被災した中小企業を支えるという姿勢を示すということが必要なのではないかということを強く求めておきたいと思います。
さて、私は先日、福島県の商工会連合会に伺って話をお聞きしてきました。
県商工会連合会は、原発事故が県内の商工業者に対して与える影響を明らかにするために、事業者へのアンケートを実施しています。この結果を見ると、事業者の実態、何が必要なのかということを把握することができます。
お配りしている資料の一を御覧ください。避難区域内の商工業者が今どんな実態にあるのか。三月三日に発表されたアンケート結果では、いまだに四八%の事業者が休業中です。
資料二を御覧ください。再開事業者の七割で営業利益が減少をしています。
これ、大臣にお聞きをしたいんですけれども、避難区域内のこうした調査結果、どのように受け止めていらっしゃいますか。
○国務大臣(世耕弘成君) このアンケート、現時点においても休業している方々が五割程度、そして再開された方々においても顧客の減少などの理由によって七割以上が震災前より営業利益が落ちていると感じられていること。
私も、この間、南相馬市へ行きまして、再開された散髪屋さんでちょっとひげをそってもらいましたが、やっぱりお客さんは大体前の二、三割程度しか来てくれない、まだ戻ってきていない人たちが多いからというようなお話もありました。これは真摯に受け止めなければいけないというふうに思っています。
こういう状況に対応すべく、まさに官民合同チームの役割があるんだろうというふうに思っています。これまで約四千六百の被災事業者の方々を個別に訪問して、事業者お一人お一人に寄り添ったオーダーメード型の支援を行わせていただいています。この支援によって事業の再開に何とかこぎ着けたという方、あるいは新たな販路の開拓ができて利益が上向くようになったとか、そういった事例も出てきつつあります。
私も、これまで、その散髪屋さんも含めて、福島を就任以来四回訪ねています。滝波さんの基準だとまだまだだと思いますけれども、そうした事業者の方々と意見交換もずっと行ってきています。本当に前向きに頑張ろうとされている方々だというふうに思っていまして、そういった前向きな気持ちに大変感銘を受けました。
今後も、官民合同チーム、これしっかり連携をして、避難指示区域内の事業者の方々の事業の再建、なりわいの再建に全力で取り組んでまいりたいと思います。
○岩渕友君 今、顧客の減少という話があったんですけれども、事業を再開できない理由で最も多いのは商圏の喪失で、八四・八%に上っています。営業利益が減少した最大の理由も、なじみの客が減ったから、まさにそのとおりで、これも約八割に上っています。避難先で事業を再開をしていても、その多くは避難元での事業再開を断念しています。商圏が喪失した中でどうやって事業を再建していくのか、そしてその後も継続をしていくのか、事業者の皆さんの努力と苦労は計り知れないものがあるんだというふうに思います。
このアンケートの調査の結果を受けて、商工会連合会では、事業再開の支援に加えて、再開事業者が事業を継続するための支援の必要性が浮かび上がった、こういうふうに分析をしています。事業者が事業を再開してその後も継続をするために、先ほど話もありましたけれども、官民合同チームと商工会や商工会議所、そして地元自治体との連携を強めるということが必要だと考えますけれども、改めて、ちょっとこの連携についてお答えください。
○政府参考人(星野岳穂君) お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、被災事業者の方々と事業、なりわいの再建を進めていく上では、官民合同チームと商工会、商工会議所や自治体との連携というのは大変重要だと私どもも認識をしてございます。
官民合同チームは、これまでも被災事業者お一人お一人に寄り添った支援を行ってまいりましたけれども、商工会あるいは商工会議所との関係におきましても、被災十二市町村の商工会や商工会議所が、御要望に応じまして、同商工会議所、商工会が行います補助金申請の相談業務のサポートなどの支援を行ってまいりました。
また、それに加えまして、本年一月から新たに官民合同チーム内に地域・生活支援グループというものを創設いたしまして、チーム員が各市町村を個別に訪問するなど、課題解決に向けたサポートを行う体制を整えているところでございます。
引き続き、被災事業者の方々の事業、なりわいの一日も早い再建に向けまして、官民合同チームと商工会、商工会議所、自治体との一層の連携強化に努めてまいりたいと思います。
○岩渕友君 商工会には、会員さんから、官民合同チームで取り組んでいる補助金の申請など、こうしたものの問合せも多く来ているというふうに伺っています。だけれども、実際には今いる職員の皆さんだけで対応するというのは非常に困難な状況です。この時期は確定申告が行われていて商工会が忙しいということで、官民合同チームから商工会に人を配置しているんだというふうに聞きました。官民合同チームは、商工会から要請があればそのたびに要請に応えているんだというふうにも聞いています。
確定申告の時期だけ、要請があったときだけといった一過性ということではなくて、これだけ大変な業務の実情があるということを踏まえて、人を例えば恒常的に配置するとか、積極的な連携がもっと必要なんではないでしょうか。
○政府参考人(星野岳穂君) お答え申し上げます。
今御指摘をいただきましたとおり、被災十二市町村を始めとする商工会あるいは商工会議所におきましても、被災事業者の方々の事業、なりわいの再建に向けて全力で支援に取り組まれており、大変重要な役割を担っておると承知しております。そのため、御指摘ありましたとおり、業務が非常に多忙を極めているという現状についても存じ上げております。
このため、官民合同チームは、商工会あるいは商工会議所を常日頃から頻繁に訪問してございまして、御要望に応じまして、例えば補助金の申請の業務サポートを行うなど、できる限りの支援に努めてきたところではございます。
また、この官民合同チームの中核であります福島相双復興推進機構というものを、今般、福島復興再生特別措置法に位置付ける改正案を国会に提出してございまして、この改正案がお認めいただけましたら、国の職員のその当機構への派遣を可能にするなど体制を強化してまいりますので、委員御指摘の点も含めまして、引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと考えてございます。
○岩渕友君 事業の再開、そしてその後の継続、一つ一つの事業者に寄り添った取組が必要だということは、商工会も、そして官民合同チームも一致できる中身なんだと思うんですね。だからこそ、商工会も官民合同チームの取組に協力をしているということです。その思いに応えて、あらゆる面でやっぱり連携を強化することが必要だということを強く求めておきます。
そして、資料の三を御覧ください。商工会連合会は、昨年五月にもアンケート調査を行っています。このアンケートは、避難区域外事業者へのアンケート調査です。原発事故から五年経過をしても、原発事故によって七割が営業利益が減少をしたというふうに回答をしています。そして、営業利益が減少した理由として、五割の事業者が風評被害を感じているという結果が出ています。避難区域外でも深刻な被害が続いているということをこのアンケート調査の結果は示しているというふうに考えるんですけれども、この避難区域外の事業者の実態について、大臣はどのように認識していますか。
○国務大臣(世耕弘成君) 避難指示区域外の事業者にも影響出ているということは、このアンケート調査からも、あるいは県全体の鉱工業生産指数が東北全体九九・五なのに八四・六にとどまっているというところに表れているのかなというふうに思っています。
こういう状況を踏まえて、経産省としては、被災地における雇用の創出を通じて地域経済の活性化を図るため、津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金によりまして、福島県の避難指示区域外も対象にして工場の新増設などを行う企業を支援をさせていただいています。投資額に応じた一定の雇用の創出を要件として、用地取得、工場建設、設備の取得の費用を支援をさせていただいています。避難指示区域外における補助率は、中小企業が二分の一以内、大企業が三分の一以内となっています。こういう補助金を活用して、例えばいわき市内にフリーズドライの食品製造工場が建設をされて、二十四名の新規雇用が創出されるというケースも出てきております。
また特に、今お話があったように、風評被害、これがまだ続いているのはこれも明らかだというふうに思います。先日も私、復興再生協議会で福島の首長さんたちあるいは商工会議所の代表の方と話をしましたが、やはり風評被害が県全体として深刻であると。例えば、会津地方でも、大河ドラマがあったにもかかわらず観光客が戻らない、修学旅行もなかなか回復をしないということをおっしゃっておりました。
まず、県の産品ですとかサービスですとか、あるいは観光地としての価値を全国の消費者に正しく伝えることができるよう、関係省庁と連携をして国内外に福島の魅力を発信をしていきたいというふうに思います。
引き続き、被災地の皆さんの御要望も伺いながら、避難指示区域外も含めて、福島の産業復興を強力に支援をしていきたいと思います。
○岩渕友君 官民合同チームの対象はあくまでも避難区域内だということで、避難区域内では官民合同チームが一件一件事業者を訪問して、それかなり丁寧な訪問しているということなんだと思うんですよね。そういう丁寧な対応というのが、今大臣が言ったように避難区域外もこれだけの被害が続いているということを考えれば、それぐらい丁寧な対応が必要ではないかということなんですけれども、そこら辺、どうですか。
○政府参考人(鍜治克彦君) ただいまの大臣御答弁とやや重複した御答弁になりますが、大臣からも御説明いたしました避難指示区域外の津波補助金、これは平成二十九年二月末時点で九十四件三百五十五億円の交付決定を行ったところでございまして、これの事業によります雇用予定人数は一千二百七十八人を予定している、想定しているところでございます。
それから、風評被害対策でございますけれども、これは復興庁、農水省、観光庁などの関係省庁共同での対策のタスクフォースというものができてございまして、福島県産品の販売促進の要請あるいは観光誘致に向けまして、各省庁のいろいろな政策を持ち寄って、まさに総合的にやらせていただいているところでございます。
さらに、官民合同チームについての御指摘も頂戴いたしましたけれども、私どもの東北経済産業局が参画してございますオールふくしま中小企業・小規模事業者経営支援連絡協議会で専門家による経営相談なども行っておりまして、こういった様々な支援措置を併せることによりまして、福島県避難指示区域外の事業者に対しても引き続き丁寧な支援を行ってまいりたいと考えております。
○岩渕友君 昨年、今年一月からの農林業の営業損害賠償素案が示されたときに、先ほどもありましたように、会津地方の全ての市町村長と議会議長でつくる会津総合開発協議会というところから素案に反対をする緊急要望というものを受けました。第一原発から八十キロ以上は離れている会津地方で風評の影響は根強く、農業を始めとする各分野への影響をいまだに受けているというふうにありました。商工業の営業損害賠償についても、実際に被害が生じている間は賠償を打ち切ることがないように誠意を持って対応することというふうにもありました。商工業の被害が福島県全域で今も続いているんだということを確認しておきます。
この避難区域外のアンケートでは、驚くべき実態が明らかになっています。資料の四を見てください。それは、五九%にも上る事業者が損害賠償の請求をしていないということなんです。なぜ請求をしていないのか。自分の事業には賠償が出ないと思ったという理由が最も多くなっています。営業利益が五割以上減少をしている事業者の六五%がそう答えています。
なぜ自分の事業には賠償が出ないと思ったのか。商工会の会員事業者の多くは小規模で、賠償に必要な書類を用意できずに泣き寝入りするケースがあります。それだけではありません。事業者が東京電力に問合せをしたときに、あなたは賠償できないと言われたからだというふうにお聞きをしました。東京電力の対応が悪いことが理由で賠償できない事業者がいる、これは大問題です。
大臣にお聞きをします。こういう理由で賠償を請求していない事業者が多く残されたままでいいと言えるでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 東京電力は二〇一四年に策定した新・総合特別事業計画において、賠償をいまだ請求されていない方に対して、電話連絡や戸別訪問、ダイレクトメールの送付などの取組を通じて最後の一人まで賠償貫徹を行うという方針を明らかにしているところであります。東京電力がこうした取組をそのとおり適正に行って、該当する最後の一方までしっかりと請求をいただくことが重要だというふうに思います。
経産省としても、新・総合特別事業計画の履行状況の評価などを通じて東京電力の取組状況を確認をして、必要に応じてしっかりと指導してまいりたいと思います。
○岩渕友君 今度は東京電力に聞きます。
この商工会連合会では、請求をしていない千件以上の事業者に請求の意思があるかどうかを確認しようということで今一生懸命取り組んでいて、今の時点でやっと二百五十件の事業者に確認をして、約五十件が請求をしたいと言っています。五月の総会までには確認をし終えたいということなんですけれども、それには人手が必要です。本来だったら東京電力がやって当たり前のことです。
実態を把握して、商工会に人を配置して、例えば確認作業を行うとか未請求の事業者に請求を促すアナウンスをするとか、これ、東京電力が当然やりますよね。
○参考人(廣瀬直己君) お答え申し上げます。
未請求の方々に対しての東京電力としての働きかけ、取組ということでございますが、先ほどの大臣の御答弁と少し重なりますけれども、私どもとしましては、これまで、商工会、商工会議所、中小企業団体中央会、民主商工会などの団体に所属されて、仮払いの実績があるものの本賠償の請求がお済みでない法人の方あるいは個人事業主の皆様に電話で連絡をして、どうなっていますかということを問い合わせております。また、商工業様に限らず、いまだに御請求いただいていない被災者の皆様に対して、自治体の広報紙等へ記事を記載したり、役場等、パンフレットを置かせていただいたりというような呼びかけを行っているところでございます。
引き続き、最後のお一人まで賠償を貫徹すべく、こうした取組を続けていきたいというふうに思っております。
○岩渕友君 六割もの方が未請求だと言っているんですよね。
これ、本当に最後の一人までということであれば、一般的なことでは駄目だということですよね。本当に請求できるはずの方が東京電力の対応が悪くて請求できないと、そんなこと絶対にあってはならないことです。
昨年の臨時国会で大臣は私の質問に対して、東京電力は、事業者への説明などに当たって、福島県内に商工会や商工会議所含めて五十二か所の相談窓口を設けているというふうに答えています。だけれども、常設しているのは十二か所だけで、あとは一日数時間だけだとか週何日間だけだとか、常設ではないんですよね。
先ほどの実態踏まえれば、東京電力の相談体制を強化させることが必要ではないでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 現実に今、全体の相談件数は減ってきているわけであります。ですから、広報活動や相談窓口を設けるということに加えて、ここからはやはり戸別訪問の体制の強化とか、東電の対応体制は逆に私は維持強化されてきているというふうに考えています。
今後とも、これから相談件数が減ってきているという中で、個別の御相談に対してしっかり対応できる十分な体制を維持するよう東京電力を指導していきたいと思います。
○岩渕友君 避難区域外の商工業者の賠償実態と東京電力の対応はどうなっているか見ていきます。
避難区域外の商工業の営業損害賠償についてどう決めているのか、説明をしてください。
○参考人(廣瀬直己君) 避難指示区域外の商工業者様に対して今行っております賠償について御説明をさせていただきます。
二〇一五年の六月の閣議決定を踏まえまして、避難等対象区域外で営業、商工業を営まれている事業者の皆様に対して、当然、風評被害等、東京電力の事故との相当因果関係が認められる、その結果減収を被られているという方々につきましては、二〇一五年の八月以降、将来に発生する当社事故との相当因果関係の認められる損害相当分として、直近の減収に基づく年間逸失利益の二倍相当額を一括してお支払いしております。
もちろん、これでおしまいということでなくて、それ以降も、この仕組みで賠償をお支払いしたもの以上に損害が発生した場合には、改めてもちろん個別に事情をお聞きして適切に対応してまいりたいと思っております。
○岩渕友君 では、実際はどうなっているでしょうか。
福島市で中古車販売業を営む事業者は、ネットオークションに出した車が福島ナンバーだからと、同じ車種、同じ年式のほかの車と比べて二割から三割安く買いたたかれています。東京電力に損害賠償を請求すると、一倍しか払わないと回答がありました。福島民主商工会では、損害賠償を請求した会員のうち、二倍の賠償が支払われたのは一割のみで、圧倒的な会員は一倍に値切られるか支払われないという状況です。福島県商工会連合会の轡田会長は、提示された二倍額を受け取った商工業者は二〇%から三〇%にすぎないと言っています。二倍の賠償すらきちんと行われていないというのが実態です。しかも、なぜ二倍にならないのか理由も分からない、そのまま値切られている、払われていない。被害が続いているのにこういう実態を放置しておくわけにはいきません。
この東京電力の対応について、賠償の支払の内容について東電との間で考え方が異なる全ての方に対して、現地で直接訪問して個別の事情を確認していると認識しているんだと大臣は臨時国会のときに答えています。だけれども、実態はそうなっていないじゃないですか。理由も分からない状況があるということです。
これに対して、東京電力、どうですか。
○参考人(廣瀬直己君) 商工業の営業損害賠償につきましては、先ほど申し上げたとおり、事故との相当因果関係が認められる被害を被られている方々を対象として、将来にわたる損害相当分として二倍の一括払いをお支払いしているわけですけれども、内容を確認し、まさに先生御指摘のように個々の御事情を伺って内容を確認させていただいておりますが、ただ、その結果、必ずしも事故との相当因果関係を認めることが当社としては困難だというふうに考えられる請求も当然ございます。とはいえ、個々に御事情をお伺いしていく中で、そうした個別の事情を最大限配慮した上で一定額をお支払いさせていただくという場合もございます。そうしたことを今やらせていただいているということでございます。
○岩渕友君 請求している方が理由も分からない状況だというふうに言っているんですよね。これでどうして丁寧な説明とか支払われているというふうに言えるのかということです。
昨年の臨時国会の中では、商工業の営業損害賠償で一括賠償に応じた人たちから、賠償のことで東京電力に相談をすると、それについては答えられないと言われて、窓口すらなくなっているという実態について示しました。ところが、その後も同じような訴えが寄せられています。先ほど紹介をした福島市の中古車販売業を営む方も、東京電力に一倍の賠償しかしないというふうに言われたので相談窓口に連絡をすると、相談窓口はないと回答されたと言っています。
東京電力は、二倍の賠償が行われた事業者以外の事業者は相手にしていないということなのでしょうか。東電、答えてください。
○参考人(廣瀬直己君) 先生御指摘のようなケースがあったのであれば本当に不適切でございますので、しっかり改めてまいりたいと思います。
私どもとしては、繰り返しになりますが、今回の仕組みで二倍相当額をお支払いさせていただいている被災者の方々も、あるいは二倍に相当しない場合も含めてですが、これからもしっかりと個別の事情をお聞きして、当然、事態は動いておりますので、また新たな損害が出ないとも限りませんし、新たな御事情が発生するという場合も当然ございますので、そうした場合も含めてしっかり個別の事情をお聞きして適切に対応していきたいと思いますし、当然、電話等々で、私どものコールセンター等々で受け付けておりますので、その場合はなるべく、先ほどお話ありましたように、こちらから伺って個々の事情をお聞きするというような対応をさせていただいていると思っております。
○岩渕友君 さらに、相馬市のある事業者は、東京電力からの電話で被害が認められないので賠償はできないと言われたので、電話一本で払わないとはどういうことだ、理由を文書で出してほしいと言うと、三日後に一倍は払うと連絡があったそうです。実にいいかげんだと怒っています。電話一本で賠償が変わる、これで公平に賠償がされていると言えるのかと不信感を抱いています。
大臣は、東京電力が被害者に対して真摯に耳を傾けて丁寧に実情を確認し、適切かつ公平な対応をすることが重要と、昨年、私の質問に答えています。これで丁寧な対応、公平な賠償と言えますか。
○国務大臣(世耕弘成君) 個別の案件についてはちょっとコメントは控えさせていただきますが、いずれにせよ、被害者の方々が置かれた状況というのは様々でありまして、それに応じて東京電力が個別の状況をしっかりと踏まえて対応することが必要だというふうに思っています。その際には、公平かつ適切な対応となるよう今後とも東京電力をしっかり指導してまいりたいと思います。
○岩渕友君 個別の対応だから答えられないということじゃなくて、やっぱり東京電力の対応がこれだけ問題だということを指摘しているんですよね。事業者の皆さんからは、加害者である東京電力が被害者に風評被害を立証しろと迫り、被害の期間や支払う額などを一方的に決める、こんなやり方おかしいと。被害が続く限り、しっかり賠償をするべきです。
それでは、この賠償の実態は一体どうなっているのか。福島原発事故による賠償はこれまでどのぐらい行われているのか、支払われた額は一体幾らですか。
○参考人(廣瀬直己君) お答え申し上げます。
二十九年の一月、この一月末現在で、損害賠償としてお支払いした実績は六兆五百二十億円となっております。
○岩渕友君 資料五を見てください。資料五のとおりになっています。
先日、福島第一原発事故に係る処理費用が見直されました。賠償に係る費用について、当初の見通しが幾らで、今後の見通しは幾らになるというふうに見積もっていますか。
○政府参考人(村瀬佳史君) 賠償費用につきましては、二〇一三年の十二月の閣議決定におきましては当初五・四兆円と見込んでおりましたけれども、二〇一六年三月に改定されました東京電力の新・総合事業特別計画におきましては、営業損害、風評被害等への賠償の支払実績が増加していることなどを踏まえまして、合計で六・四兆円を想定していたところでございます。
内訳を御説明させていただきますと、まず、避難を余儀なくされた方の精神損害に対する賠償など、ここで提示いただいている一番上のところでいいますと約二・一兆円、それから営業損害や風評被害への賠償などの法人・個人事業主の方に係る項目として約二・六兆円、それから三つ目の、使用できなくなった住宅、土地に係る財物に対する賠償などの共通・その他と書いてあります三つ目の項目で約一・八兆円で、合計約六・四兆円を想定していたところでございます。
今般、この六・四兆円に商工業、農林水産業における営業損害や風評被害がいまだに終結していないことも踏まえまして、これらに係るこれまでの支払実績を勘案いたしまして、合計で約七・九兆円と見込んでいるところでございます。
○岩渕友君 資料でも、法人・個人事業主に係る賠償は二〇一四年一月時点で約一兆六千億円で賄えるというふうに見積もっていました。これに対して、今年の一月末現在の合意実績は約一兆円も増えています。当初の見積額ではとても足りない、被害は続いているし、これからも続くことは明らかです。
大臣は三月六日の予算委員会で、この賠償について、賠償、除染はそれなりにきちっと見積りをして算定していますからこれ以上増えることはないだろうというふうに思っていますというふうに答弁しています。この答弁聞いて驚いたんですよね。被害は続いていると、被害が続く限り賠償しろというのが福島県民の思いです。国も東京電力も被害が続く限り賠償すると言いながら、賠償打ち切られるのか、これ許せないことだと思うんですね。
大臣、どうですか。
○国務大臣(世耕弘成君) そこは部分的に切り取られると逆に誤解が広がりますから、私は、その今御指摘のこれ以上増えることはないだろうというふうに思っていますと、その続きがあるんですね。ただ、今後も風評が続くようであればより増えますから、そういう意味では風評被害対策ということも我々はしっかりやっていかなければいけないと思いますというふうに答弁をさせていただいています。
これは、蓮舫代表からこの二十一・五兆円が今後どうなるのかと言われましたので、特にこの賠償の部分については、これは七・九兆円というのは風評被害がまだこれからも続くということを前提で、それを踏まえて算定している金額だということを説明をさせていただいた答弁であります。
当然、被害が続く限り賠償するというこの方針は何ら変更はありません。
○岩渕友君 被害が続く限り賠償するということを東京電力にも強く求めます。原発事故さえなかったら失うことのなかった命があって、当たり前の暮らしがある。被害が続いているのに、加害者である東京電力が賠償を打ち切るなんてことはとても許すことができません。
福島第一原発事故処理に係る費用が十一兆円から二十一・五兆円に増えるという見積りが示されて、もっと膨らむんじゃないかということで、不安が国民から出されています。国は、国民全体で福島を支える、賠償の備え不足について新電力も含めて負担を求めるんだというふうにしています。これ、とんでもないことです。政府は福島県民のためだって言いますけれども、福島県内では、税金や電気料金というやり方で広く国民の負担にされることになれば、賠償してほしいと言いにくくなるじゃないかという声が上がっています。福島県民のためになるどころか、被害が続く限り賠償してほしいという当たり前の訴えを妨げるものになります。さらに、原発でつくった電気は使いたくないと新電力に切り替えた人たちも負担をすることになり、批判の声が今大きく広がっています。
国民に負担を押し付けるやり方はやめるべきです。国民に負担を押し付けるのではなくて、加害者である東京電力が負担をするべきです。そして、メガバンク、原子炉メーカー、ゼネコンなどが負担をするべきものです。
福島原発事故の責任を国民にツケ回すやり方は許されない、被害が続く限り東京電力が責任を持って賠償をするのは当たり前、このことを強く訴えて、質問を終わります。