日本共産党の岩渕友議員は4月25日の参院経済産業委員会で、原子力損害賠償・廃炉支援機構法改定案の質疑に関連して福島第1原発事故の処理費用21.5兆円について、東京電力が支払うべきものを国民に転嫁することは許されないと批判しました。
岩渕氏は、原発事故被害者に対する賠償費用の不足分を託送料金(電気料金)に上乗せして国民全体から回収するという政府の方針について、「原発の電気は使いたくない」と新電力を選択した消費者や団体から抗議の声が出されていることを紹介。「過去分」の定義、拠出義務者、拠出期間について法的根拠をただしました。
世耕弘成経済産業相は「福島への責任を果たすため、何らかの形で措置しなければならない」と弁明しました。資源エネルギー庁村瀬佳史電力・ガス事業部長は「回収期間については、昨年12月の閣議決定に記述されている」と言い訳に終始し、根拠となる法律の条文を挙げることはできませんでした。
岩渕氏は「法的な根拠もなく、今後40年にわたって電気代に転嫁するなど、国民の納得が得られるものではない」と述べ、「福島のため」を口実に東電の責任を免罪し国民にツケを押し付けるやり方は許されないと主張しました。
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○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
原子力損害賠償・廃炉支援機構法の一部を改正する法律案は、昨年十二月に閣議決定をされた原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針、東電改革提言を受けて提案をされました。基本指針は、福島の復興再生を一層加速していくために必要な対策の追加、拡充を行うとし、東電改革提言では、福島という原点に立ち返り、国と東京電力は何をなすべきかについて議論を取りまとめたもの、この東電改革が福島復興の礎にもつながるものと考えるとしています。基本指針でも東電改革提言でも、福島への責任を果たすため、福島を支えるんだといって、福島のための方針だということが強調をされています。しかし、果たして福島のためのものなのか、今日は具体的に聞いていきたいと思います。
初めに、大臣にお聞きをいたします。
基本指針では、復興の進捗と相まって、廃炉、賠償等の事故処理対応費用の見通しが明らかになりつつあることを踏まえて、改めて国と東京電力の役割を明確化するとして、国の行う新たな環境整備を示しています。
改めて、役割分担を明確化しなくてはならない理由と具体的な環境整備の内容について述べてください。
○国務大臣(世耕弘成君) まず、福島第一原発の事故に係る廃炉、賠償等の対応については、事故を起こした東電自らが最後まで責任を持って行うことが大原則であります。一方で、福島の再生を加速する観点から国も前面に立つという考えの下、平成二十五年十二月の閣議決定において、国と東電の役割分担を見直したところであります。
今般、復興が進捗してきたことと相まって、廃炉、賠償などの所要資金が増大をすること、一方で電力自由化というこれまでとは異なる環境となったことなどを踏まえまして、昨年十二月の閣議決定において、改めて国と東電が担うべき役割を明確にさせていただきました。
その際には、東電に対しては非連続の経営改革を求めていくとともに、国は、新たな環境整備のために東京電力が廃炉を確実に実施できるような必要な資金を充てることを可能とする積立金制度、そして福島第一原発の事故前には確保されていなかった分の賠償の備えについてのみ広く需要家全体の負担として託送料金で回収することなどを措置することとさせていただいております。
○岩渕友君 今大臣から、東電改革提言に示されている背景についても答えていただきました。
衆議院での本法案の参考人質疑の中で、東京電力の廣瀬社長が東京電力が破綻処理を免れているというふうに述べているんですけれども、普通の会社であればとっくに潰れている状況になっています。要するに、東京電力が大変だから国民の皆さんに負担をしてもらうんだということですよね。
今述べられた新たな環境整備とは別に、基本指針では、帰還困難区域の復興に取り組むということで、原発事故による避難指示区域のうち放射線量が高くて将来にわたって居住を制限することを原則としてきたこの帰還困難区域について、復興拠点を定めて五年後をめどに帰還できるようにするとしています。そのために、復興拠点の除染とインフラ整備を一体的に行うんですけれども、国の新たな政策決定を踏まえて、復興のステージに応じた新たな町づくりとして実施するものであるということで、その費用は東京電力に求償をせずに国が負担をするとしています。
この拠点整備の費用と先ほどの新たな環境整備と、あわせて、これまで東京電力が支払うべきとしていた費用について、今回制度を変えることでそれぞれどうなるか、お答えください。
○政府参考人(村瀬佳史君) 福島原発事故に係る費用ということで、全体像二十一・五兆円の内訳について御説明をさせていただきます。
本委員会でも、配付資料の中にもございますけれども、福島事故に係る費用ということでは、廃炉・汚染水対策費用、それから賠償の費用、それから除染の費用、中間貯蔵の費用といったようなものがあるわけでございます。
まず、廃炉につきましては、これまで主として燃料デブリ取り出し工程前の対応に充てられるということで二兆円用意されてきたものがございましたけれども、今般、燃料デブリの取り出しの実行の工程が始まるという中で必要となる資金の規模感を示すために、先ほど来議論がなされておりますとおり、機構が有識者のヒアリング結果を基に算出しました金額である六兆円を追加いたしまして、これが八兆円ということになってございます。この八兆円につきましては、東電がその改革の中で資金を捻出していくと、こういうことになっているわけでございます。
それから、賠償につきましてはこれまで五・四兆円を見込んでおりましたけれども、商工業、農林水産業における営業損害や風評被害などがいまだ終結していないことを踏まえながら、当面必要となる資金ということで七・九兆円を見込んでいるところでございます。
除染、中間貯蔵につきましてはこれまで三・六兆円、それぞれ除染が二・五兆円、中間貯蔵が一・一兆円と見込んでおりましたところ、労務費や資材費の上昇などにより約五・六兆円と見込んでいるところでございます。
これを総計いたしますと二十一・五兆円となるわけでございまして、そのうち大宗を東京電力が改革によって資金を捻出していくという方向性が示されているということでございます。
○政府参考人(小糸正樹君) お答え申し上げます。
御質問の中で、復興拠点に係る除染費用等の費用につきましてお答え申し上げます。
福島特措法の改正法案におきましては、市町村が特定復興再生拠点区域の復興再生計画を策定し、国がこれを認定するという仕組みとしております。改正法の成立後に各市町村において具体的な拠点の場所、規模等を定めていくこととなるために、現時点では、拠点の面積とか、あるいは除染を含めた事業費をお示しすることは困難でございますが、法案成立後に除染も含めた具体的な計画を地元と調整してまいりたいというふうに考えております。
○岩渕友君 今説明あったとおり、廃炉に係る費用は、従来の二兆円から追加費用が六兆円で、今回見込まれている額が八兆円となっています。大臣は、先ほどから繰り返し上振れしないんだということを言っているわけなんですけれども、改めて確認をします。この燃料デブリの取り出し後に掛かる費用はこの八兆円の中に含まれているでしょうか。
○政府参考人(村瀬佳史君) お答え申し上げます。
我々が二十二兆円、二十一・五兆円の総額について御説明している資料の中にも注として明確に記載させていただいておりますけれども、八兆円の中にはデブリ取り出し後に要する資金は含まれていないところでございまして、例えますれば、取り出した後のデブリ処理の処分の費用につきましては、現在では実際にデブリがどのような性状であるか若しくはどれだけの分量があるかといったようなものを見通せない中で試算することが困難であるといった理由により、これについてはこの内数に入れていないということでございます。
○岩渕友君 これまで繰り返し指摘をされてきていますし、先ほど大臣も少し触れていたんですけれども、送配電事業の合理化で捻出をした費用は本来なら託送料の値下げに充てて、東京電力の利用者に還元するべきものであります。そして、賠償の費用について託送料金として国民全体から回収するというのは、いろいろ説明聞いていますけれども、幾ら説明聞いても納得できないんですよね。
特に、原発の電気は使いたくないということで新電力を選択した消費者や団体からの抗議の声が殺到をしています。さらには、専門家の方も、エネルギー政策の失敗から出た問題なのに、しかも送配電に起因するコストではないのに託送に転嫁することはおかしい、こういうやり方を続けていくと行政に対する信頼の低下を招くというふうに述べています。
二〇二〇年から四十年間ということは、まだ生まれていなくて、これまで原発の電気の裨益を一切受けていなくても四十年間徴収するということになります。この賠償過去分を徴収するというのは、法律のどういう根拠に基づいて行われるものなのか、根拠条文はどうなっているか、お答えください。
○政府参考人(村瀬佳史君) お答え申し上げます。
過去分につきましては、まず託送料金について御説明をさせていただきますけれども、託送料金につきましては、電気事業法上、送配電網の維持管理に係る費用などに加えまして、離島の発電費用も含むユニバーサルサービス料金など、全ての消費者が広く公平に負担すべき費用を含めることができる制度となっているところでございます。
具体的には、電気事業法第十八条がございまして、この規定が託送料金について規定しているものでございます。これは、託送料金制度の導入に際しまして、供給信頼度や望ましい電源構成の維持等の公益的課題の対応に必要な負担は全ての需要家が公平に負うことが原則とされた考え方を踏まえまして措置をされているものでございます。
今回の賠償の不足分というものにつきましても、自由化の進展がある中で、原発事故の賠償に係る費用を負担しない消費者が増えていく環境下におきまして、消費者の公平性、これをどのように確保するのかという点を考えまして、これまでの規制料金の考え方等も総合的に勘案をした結果、この規制料金の考え方といいますのは、合理的に費用が認識できるようになった時点でこれを公平な形で規制料金の中で回収していくといった仕組みでございますけれども、これを総合的に勘案した結果、現行法下の下で、電気事業法下の下で措置をさせていただくと、こういう考え方になっているところでございます。
○岩渕友君 賠償過去分という新しいコストが発生したということになれば、法律でその定義、拠出義務者、拠出させる期間を明定しなければなりません。過去分を口実とした徴収はこれまで二回ありました。二〇〇〇年のいわゆる最終処分法、二〇〇五年のいわゆる再処理等積立金法ではそうしてきています。この公共料金にコストを転嫁するんだということであれば、範囲を法定化するのは当然です。
そこでお聞きをするんですけれども、この賠償の過去分の範囲がどうなっているでしょうか。この最終処分法では、一九六六年から法が制定をされる前の年に当たる一九九九年末までの分を十五年間掛けて回収をするというふうにしています。今回はこの過去分の範囲を一九六六年から二〇一一年までと説明されているんですけれども、法案には過去分の範囲はどこに書いてあるでしょうか。
○政府参考人(村瀬佳史君) まず、事実関係からでございますけれども、再処理について、託送で過去回収したことがあるという御指摘については、これは今回の措置と同様に、電気事業法の下で措置されたものでございます。したがいまして、託送料金で回収するものについて法律で規定されたことはないということでございます。
その上で、二点。二〇〇〇年の最終処分法や二〇〇五年の再処理の積立金法についてどのような根拠条文により措置されているかという御質問につきましては、いわゆる最終処分法、これは特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律でありますけれども、使用済燃料を発生させた事業者等に対しまして、使用済燃料の再処理等に伴って生ずる廃棄物の最終処分に係る費用を、最終処分の実施主体となる原子力発電環境整備機構、いわゆるNUMOに拠出することを義務付けるものとして二〇〇〇年に措置されたものでございますが、御指摘の点につきましては、制度措置前に発生していた使用済燃料の再処理に伴って生ずる第一種特定放射性廃棄物、いわゆるガラス固化体について最終処分法附則第四条の規定により拠出金を納付すると、このようになっているところでございます。
また、もう一点御指摘いただきました再処理等積立金法、これは正式には原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律でありますけれども、これにつきましては、使用済燃料を発生させた事業者にその再処理等の費用の積立てを義務付けるものとして、これは御指摘のとおり二〇〇五年に措置されたものでありますけれども、これについても、制度措置前に発生していた使用済燃料につきましては、積立金法附則第三条の規定によりまして、その再処理等のための費用を積み立てることと規定されているところでございます。
○岩渕友君 いろいろ言われたんですけれども、法律に書かれていないわけなんですよね。
じゃ、次に、拠出義務者はどうなっているのかと。賠償過去分は託送料を通じて回収するということでこれまで説明あったわけですけれども、拠出義務者は誰なのかということがどこに書かれているでしょうか。
○政府参考人(村瀬佳史君) これは託送制度とは別でございまして、最終処分法、再処理積立金法は、それぞれ先ほど申し上げた法律の目的に基づきまして、各事業者がその責務を果たすことが規定されているものでございます。
具体的に申し上げますと、最終処分法に基づいては各事業者が発生させた使用済燃料、再処理積立金法につきましては各事業者が発生させた使用済燃料の再処理に伴う費用につきまして、各事業者がその自ら発生させた使用済燃料の量などに応じまして事業者が事業者ごとにその持分の応分の拠出や積立てを行うように求めていると、こういう規定でございます。
一方、原賠機構法は、被災者賠償に万全を期すために、相互扶助の考え方に基づきまして事業者に負担金の納付を求めるある種の保険のプールのようなものでございまして、これの制度の下で事業者に負担金の納付を求めるものでございます。
そういった観点から、最終処分法の拠出金や再処理積立金法の積立金と原賠機構法の負担金についてはその性格が異なっているということでございます。
○岩渕友君 四月十二日の衆議院の委員会のやり取りの中で、我が党の真島議員が、この最終処分法では過去分の拠出義務者に新電力は含まれているのかというふうに聞いたらば、法律で決められていないと、新電力は含まれていないんだというような答弁があったんですよね。だから、ちゃんと法律に基づいてやられているということなんですよ。
続けて聞きますけど、この回収期間についてはどうなっているでしょうか。先ほど紹介した最終処分法の中では、十五年掛けて回収するんだと言っているわけですよね。今回は、二〇二〇年から四十年間回収するというふうに説明されているんですけれども、これについてはどこに書かれているでしょうか。
○政府参考人(村瀬佳史君) 今回の措置の回収期間につきましては、先ほど御指摘のありました指針の中におきます閣議決定の中で明確に二〇二〇年から回収するということが記述されているところでございます。これ、その閣議決定の中でも二〇二〇年からの回収を始めるということでございまして、この方針はいわゆる東電委員会、それから貫徹小委員会におきまして専門家において徹底的な御議論をいただき、規制料金が撤廃されることが予定されている二〇二〇年からの回収と、それから回収額については明確に上限を定めるということで、二・四兆円、これ以上にならないという……(発言する者あり)閣議決定において規定されております。
○岩渕友君 今の答弁では納得できないわけなんですよね。私、法律のどこに書かれていますかというふうに聞いたけれども、今の話でいけば指針の中ですということでね。
この今回提案されている法律案は私も見ましたけど、この中では、条文の改正されることになっていないわけなんですよね。条文が改正されないのに賠償過去分の根拠になるというのは、これはおかしい話だと思うんです。結局は何の根拠もないということになります。法的な根拠もなく四十年間電気代に転嫁するということは、多くの国民の納得が得られるものではありません。
新電力に関わる方からは、賠償過去分転嫁の問題に危機感を抱いている、これでは消費者の選択が実現できないという声も上がっています。消費者の選択権を侵害するものです。しかも、福島のためだと言って国民に負担をさせる。消費者団体の方が、みんな福島の事故に心を痛めている、福島のためと言われると反対の声を上げにくいと述べています。一方、福島県民の中からは、ちゃんと賠償してほしいと思うけれども、国民負担となると賠償してほしいと言いにくいという声が出ています。国民と福島県民のこうした思いを利用して国民に負担をさせるということにほかならないものです。
大臣は、こうした消費者の思い、そして福島県民の思いをどう受け止めますか。
○国務大臣(世耕弘成君) ただ、やはり過去分の二・四兆円はこれ何らかの形で措置をしなければいけない、そうでないと福島の皆さんへの賠償を貫徹ができないわけであります。これは、国が責任ですから、じゃ、国が払いますと言った瞬間にこれは税金ということになるわけです。そうすると、今まで原発を一回も使ったことがない沖縄県の人からもいただくのかという話になるわけであります。
我々は、いろいろ考えた上で、託送料で負担をしてもらうことが、電気の使用の度合いとかそういったものに応じ、あるいは各地域ごとで原発依存度というのが異なっている、そういったものもちゃんと反映することができて最も公平に回収できるのではないかというふうに考えて、託送料で回収をさせていただくということにしたわけでありますけれども、引き続き丁寧な説明には努めていきたいというふうに思っております。
○岩渕友君 法的な根拠もない、こんなことで消費者も福島県民も納得できません。
こんな東電救済、国民へのツケ回しのやり方は許されないということを指摘をして、質問を終わります。