(資料があります)
日本共産党の岩渕友議員は18日の参院経済産業委員会で、商工中金の不正行為の背景に政府の完全民営化方針があると批判し、中小企業の資金繰りを支える政策金融として位置づけ直すべきだと主張しました。
政府系金融機関の商工中金は、自然災害や原材料コスト高などへの「危機対応業務」として、政府の出資金などで中小業者に低利貸し付けを行っています。民営化方針のもと「危機対応」貸付実績をノルマとしたことで、要件に該当しない案件にも書類を改ざんするなどして貸し付けていたことが問題となっています。
岩渕氏は「民間金融機関の貸し付けが落ち込んでいるときに、政府系が資金繰りを下支えする役割を果たしている。株式会社として営利を追求することと公的役割を求めることは矛盾している。商工中金の完全民営化方針は見直すべきだ」と迫りました。
世耕弘成経産相は「商工中金の危機対応業務はじめ、政府系金融機関が中小企業の資金繰りに重要な役割を果たしていることは疑いない」としながら、民営化路線に固執する姿勢を示しました。
(画像をクリックやタップすると、質問資料が別ウィンドウで開きます)
資料3:政府系金融機関と民間金融機関による中小企業向け貸出残高の推移(対前年度比増減)
(ボタンをクリックやタップすると議事録が開きます)
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
商工中金の質問に先立って、昨日、関西電力が福井県の高浜原発四号機の再稼働をした問題について一言申し上げます。
四号機はトラブルが相次ぎ、地震や津波の想定や安全対策、避難計画などへの不安は払拭をされておりません。福井地裁は、新規制基準について、緩やかに過ぎ、これに適合しても本件原発の安全性は確保されないと根本的な疑問を突き付けました。避難計画の策定が義務付けられている三十キロ圏内には京都府と滋賀県も含まれており、避難の対象となる人口は約十八万人に上ります。滋賀県知事は、再稼働を受けて、実効性ある多重防護体制の構築は道半ばであり、県民に原発に対する不安感が根強く残る現状では、再稼働を容認できる環境にないとコメントをしております。
福島原発事故の原因も究明されていないのに、原発再稼働などあり得ません。国民多数の声に反し原発再稼働を推進する国のエネルギー政策を見直すべきだということを強く求めて、質問に入ります。
商工中金は、中小規模の事業者を構成員とする団体及びその構成員に対する金融の円滑化を図るために必要な業務を営むことを目的としている、中小企業による中小企業のための金融機関です。政府系金融機関である商工中金で不正行為があったことは非常に重大です。この不正行為に関わって、幾つか確認をいたします。
まず、大臣にお聞きいたします。
今年の二月末までに実行した危機対応業務口座二十二・一万件のうち、第三者委員会が約一二・六%に当たる二・八万件の口座について調査をした結果、不正行為が判明をした口座は三十五支店、不正行為の疑義を払拭できなかった口座は二十三支店で、不正行為が判明した支店との重複を除くと、四十三支店で不正行為があったことが判明をしております。約一割の調査で既に約半数の支店で不正行為があったことが明らかになったことは非常に重大です。なぜ不正行為がこれほど大規模に起きたのでしょうか、大臣にお聞きします。
○国務大臣(世耕弘成君) あくまでもこれ、商工中金からの報告による商工中金が行った第三者委員会の調査結果ということになりますが、その調査結果によれば、不正行為に対する認識が甘く、管理体制が不十分だったこと、あるいは、予算管理の観点から危機対応業務の支店ごとの量的目安が示され、それがかつ業績評価の対象となっていたということが主な要因だというふうに考えております。
○岩渕友君 経済産業省は、主務省として関係省庁と連携をしつつ徹底した立入検査を実施する、調査未実施の危機対応貸付けについて全件調査を実施するとして、商工中金に対して、調査未実施の危機対応貸付け全体について外部の専門家のチェックを受ける等により調査を継続することを求めています。
先ほどからもいろいろ質問でありましたけれども、内部調査で不適切な対応があったことから考えると第三者による調査が必要なことは明らかだと思いますけれども、どうでしょうか。
○政府参考人(宮本聡君) お答え申し上げます。
ただいま御指摘がありましたように、この五月九日に商工中金に対して政府としては業務改善命令を発出いたしまして、調査未実施の危機対応貸付け全件につきまして、やはり外部の専門家のチェックを受けるなどにより客観性を十分に確保した調査を継続するよう命じておりまして、その具体的な改善計画について六月九日までに提出するように求めておるところでございます。
そういう意味で、この外部の専門家、客観性をまさに保つための外部の専門家チームの編成につきましては、現在検討中と伺っておるところでございます。
○岩渕友君 外部の専門家のチェックということではなくて、やっぱり第三者の目でしっかり調査をするということが必要だということを指摘をしておきたいと思います。
この第三者委員会の調査の結果、危機対応業務の要件に該当しない口座の数、これを改めて確認をいたします。そして、既受領利子補給額及び補償金額は大体どうなっているでしょうか。
○政府参考人(宮本聡君) お答え申し上げます。
四月二十五日に発表されました危機対応貸付け全体の一二・六%を対象としたこの第三者委員会の調査によればということでございますが、疑いがあるものも含めて九百一件の口座について試算表等の改ざんが行われたことが確認されております。このうち、危機対応業務の要件合致が確認できない四百二十三件の口座に対して支払われた利子補給金は約一・六億円、それから補償金は約六千万円となってございます。
○岩渕友君 お配りをしている資料の①を御覧ください。危機対応業務の概要についてということで、危機対応業務に係るお金の流れですけれども、政府から日本政策金融公庫に、そして公庫から商工中金に、商工中金から中小企業にというふうになっております。
これ国費が投入をされています。大臣の冒頭の報告の中では、危機対応業務の要件合致が確認できない口座について、利子補給金や補償金は商工中金から日本政策金融公庫に対して返還を行う必要があると承知をしているとのことでした。これ当然返還をするべきだというふうに思いますけれども、同時に、借り手が不利益を生じるようなことがあってはならないというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(宮本聡君) お答え申し上げます。
御指摘のとおり、要件合致が確認できていない口座に支払われた利子補給金それから補償金等については、商工中金から日本政策金融公庫に対して返還する、こういうことを予定してございます。また、その際、これも委員御指摘のとおり、実際に貸付けを行いましたお客様方には御迷惑を掛けるわけにいきませんので、ここについては不利益にならないように、しっかりした対応を取るように商工中金に命じているところでございます。
○岩渕友君 今の答弁のようにしっかりとした対応が求められております。
今回の不正行為に危機対応業務が使われましたけれども、そもそも危機対応業務は中小企業の事業継続、改善にとって重要な役割を果たしております。この危機対応業務の目的について御説明ください。
○政府参考人(宮本聡君) お答え申し上げます。
危機対応業務は、一般の金融機関が通常の条件により、内外の金融秩序の混乱又は大規模な災害、テロリズム若しくは感染症等による被害に対処するために必要な資金の貸付け等を行うことが困難な場合に、指定金融機関が日本公庫からの損害担保等を受けて中小企業に貸付けを行い、危機時の中小企業の資金繰りを支援する業務と理解しております。
○岩渕友君 今答弁があったように、この危機対応業務は、業績が悪化をして民間金融機関から資金の調達が困難で資金繰りに支障を来している中小企業が低利で資金調達を行えるように支援をする仕組みだと。そして、内外の金融秩序の混乱や大規模災害などの危機のときに、一般の金融機関が通常の条件による貸付けなどを行うことが困難な場合に、危機に対処するために必要な資金供給が確保される仕組みだということで、言わば金融のセーフティーネットと言える政策金融の一つであります。
この中小企業のための商工中金ですけれども、二〇一五年五月十八日の決算委員会で我が党の大門実紀史参院議員が、中小企業協同組合に大企業が加入をして商工中金から融資を受けているんだという問題についてただしました。
資料の②を御覧ください。これは商工中金による一部上場企業向けの貸出残高の状況です。二〇〇九年以降、貸出残高は二倍以上になっていると。しかも、危機対応から通常融資はどんどん増えているということなんですよね。
先ほど紹介した質問では、中小企業の相互扶助を目的としていることに鑑みて、中小企業協同組合に大企業がかなりの数入っているということは必ずしも正常とは言えないんだ、こういう答弁があったわけなんですけれども、中小企業支援が本来の役割だということから考えると、こうした状況は不正常な状況ではないでしょうか。
○政府参考人(宮本聡君) お答え申し上げます。
商工中金法では組合及びその構成員が融資対象として規定されておりまして、そういう意味でいいますと、大企業であっても組合の構成員であれば融資を受けること、これ自体は可能でございます。
こうした大企業への融資も、当該企業のニーズに応えることは、ある意味、所属する組合の活動を下支えし、中小企業との取引等を通じまして、多くの中小企業の経営の安定あるいは地域経済の維持発展、こうしたものにも資するという観点から、商工中金の目的に沿った仕組みとして限定的に対応しているところであります。
ただ一方で、組合の方の基になります中小企業等協同組合法、こちらがございまして、ここでは、中小企業の相互扶助といった法律の目的に合致する場合には大企業が加入することを排除しておらず、ただ、例外的にやはり大企業が入ってくる場合もあるんですが、その際に、例えば理事会の決議等を経て組合が判断するわけですが、大企業を含めた事業者の加入に関しては理事会の承諾を得る旨を定款で定めるよう、こういうふうに示しておりますし、また、同法では、大企業が一つでも加入した場合には公正取引委員会への届出を義務付けるというようなこともございます。
こうした形で、基本的に組合という形の中では中小企業の発展ということがメーンに据えられていることは確かでございます。
○岩渕友君 大企業は日本政策投資銀行からの融資を受ければいいわけで、大企業がこの中小企業向けの商工中金の融資枠を使うのはおかしいということだというふうに私考えるんですね。可能だけれども、やっぱり不正常だということだと思うんです。これ、きちんと調査をする必要があるということを指摘をしておきます。
現在、危機対応業務を担う金融機関に指定をされているのは、中小企業向けでは商工中金だけになっています。この間、政府は危機対応業務に民間金融機関の参入を促すんだというふうに言い続けておりますけれども、これは今一体どうなっているでしょうか。
○政府参考人(宮本聡君) お答え申し上げます。
現時点において危機対応業務を行う指定金融機関となっている民間金融機関は存在しない状況であります。そういう意味でいうと、危機があった場合の資金繰り支援に万全を期すという意味では、商工中金が一定の役割をいまだに果たしているというところでございます。
もちろん、なるべく多くの民間金融機関がこの危機対応業務を行う指定金融機関になっていただく、その環境を整えるというのが、これが政府の役割だと思っていますので、例えば、これまでも、指定金融機関になるための申請手続の簡素化、あるいは危機対応業務の実施要領のひな形の公表などの業務内容の明確化、さらには関係省庁とこうした民間金融機関との意見交換の場をつくる、その他、商工中金自身が民間金融機関との間でいろんなノウハウの共有をする、こうしたことを重ねまして、少しでも民間金融機関が危機対応業務に積極的になっていただけるよう取組を続けておりますし、引き続き続けていきたいと思っております。
○岩渕友君 危機対応業務に参入をしている民間金融機関は存在していないということで、この民間金融機関が危機対応業務に参入しない理由をどのように把握していますか。
○政府参考人(宮本聡君) お答え申し上げます。
私どもが民間金融機関からお聞きしているところによりますと、まず、大規模な景気変動や自然災害の際における投融資、これは通常の金融のリスク、リターンの分析ではなかなか測り切れないというもので、通常の融資とは異なるノウハウが必要になってくる、それからまた、金融対応業務に必要なシステムを構築してこれを常時稼働させる、そのためのコストが掛かる、こうした理由がございまして、なかなか積極的に指定金融機関に手を挙げてこれないというふうに伺っているところでございます。
○岩渕友君 今の答弁聞いても、民間金融機関はこの危機対応業務に参入をする見通しは立っていないということだと思うんですね。この商工中金の完全民営化は、リーマン・ショックそして東日本大震災を受けて期限を先延ばしすることになって、前回、二〇一五年の法改定のときには期限の定めが削除をされております。
この期限の定めが削除されたのは、危機対応業務が重要な業務だからなのではないでしょうか。答弁お願いします。
○政府参考人(宮本聡君) お答え申し上げます。
今委員御指摘のとおり、この民営化の期限が何回か、二回延期されているわけですが、その最後、平成二十七年の商工中金法の改正時点において、まさにこの危機対応業務を行う指定金融機関となっている民間金融機関が存在していないという状況を踏まえまして、こうした万全な体制がいつまでに整うかについて期限を示すことが困難であったということから、具体的な期限についてはこの度は明示していないというところでございます。
○岩渕友君 資料の③を御覧ください。政府系金融機関と民間金融機関による中小企業向け貸出残高の推移というものなんですけれども、これ見ていただければ分かるように、民間の金融機関の貸出しが落ち込んで谷になっているときには政府系金融機関が山となっていると。政府系金融機関は中小企業の資金繰りを下支えする役割を果たしているということは、これまでの経過を見ても間違いありません。
そこで、大臣にお聞きをするんですけれども、この商工中金の危機対応業務を含めて、政府系金融機関が果たしている役割について、大臣はどのように考えていますか。
○国務大臣(世耕弘成君) 中小企業という観点からいきますと、日本公庫や商工中金は、危機対応業務も含めて、信用リスクが高い場合や長期の資金など、民間金融機関では対応が困難な資金を中小企業に供給するという点で重要な役割を担っていると思っております。
特に、過去のリーマン・ショック、この資料でも赤のグラフがとんがっているところがリーマン・ショックのときなわけでありますが、リーマン・ショックや東日本大震災等の有事において民間金融機関のみでは中小企業の資金繰りが十分じゃなかったという経験からすれば、その重要性というのは非常に疑うところがないところだというふうに思っております。
○岩渕友君 非常に重要な役割を果たしているんだということです。危機対応業務を担う政策金融から商工中金が撤退するという方針は破綻をしているんだというふうに思います。
商工中金の不正問題における第三者委員会の調査では、不正行為の原因について、公的な性格を色濃く残す金融機関であり、事実上、自由に営利を追求することができるわけではない、しかし、株式会社である以上、営利を追求し、株主の利益の最大化を目指すことは当然に要求をされると分析をしています。結局、公的な役割と民営化は矛盾をしているんだということを示しています。
そこで、大臣にお聞きをしますけれども、この完全民営化の方針、これを見直す必要があるのではないでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) まず、全件調査による全容解明の結果を待ちたいと思いますが、それを踏まえて、商工中金における危機対応業務の運用、在り方について、またガバナンスを強化することはもちろんのこと、民営化をめぐる商工中金の在り方についても、この全件調査を踏まえて議論をしていきたいというふうに思いますが、官から民へという方針の重要性に変わりはないというふうに考えています。
経産省としては、引き続き、中小企業・小規模事業者の資金繰りを切れ目なく支援するという役割はしっかり維持しながら、できるだけ早期に商工中金が完全民営化できるような状況をつくってまいりたいと考えております。
○岩渕友君 第三者委員会による不正行為の原因分析では、株式会社として利益追求を要求されるところに危機対応融資を行わせれば、本来これを利益追求の手段とするべきではないという制度趣旨があったとしても、現場がこれを顧客にとって有利な商品の一つとして営業することになること、また、支店や課への割当てが営業ノルマとして認識され得ることは容易に想像ができるところである、制度の導入時にそのような状況が生じ得ることに思いが至らなかったとするならば、それは想像力の欠如とリスク認識の甘さとして批判されてもやむを得ないと、こういうふうに厳しく指摘をしています。
危機対応業務を担う政策金融から商工中金が撤退するという完全民営化は破綻をしています。中小企業の資金繰りを下支えする政策金融として位置付け直すべきだということを指摘をして、質問を終わります。