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(エネルギーの使用の合理化等に関する法律の一部を改正する法律案)
日本共産党の岩渕友議員は5日の参院経済産業委員会で、東京電力福島第1原発事故に対する国と東電の責任をただしました。
岩渕氏は「第5次エネルギー基本計画」案で明記した2030年度の電源構成比率での原発「20~22%」が、福島第2原発と柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働を前提にしている問題を追及。世耕弘成経産相が「どの原発を動かすか積み上げたものではない」と釈明したのに対し、「国は、福島第2原発を他の原発と同列に扱うことはできないと言ってきたが、福島県民には再稼働させようしているとしか思えない」と厳しく批判しました。
また、岩渕氏は、東電が日本原子力発電(原電)東海第2原発(茨城県)の再稼働への資金支援を表明している問題で、5月30日の原子力規制委員会で出た「国の支援で経営再建中の東電に他社の支援が許されるのか」などの厳しい意見を示し、「これが福島の声、国民の声だ。原電支援は絶対に許されない」と述べました。
東電の小早川智明社長が明らかにした商工業の営業損害に対する一括賠償後の追加賠償の実績は、4月末時点で受け付けずみの約600件のうち合意は1件のみ。「東電の戦術はあきらめさせることだ」などの地元業者の声を紹介し、「他の原発の資金支援よりも賠償、廃炉の責任を果たせ」と東電、世耕経産相に迫りました。
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省エネは、エネルギー政策を考える上で重要な柱です。世耕大臣もまずは徹底した省エネだというふうに言っておられますけれども、今日は、エネルギー政策全体を考えながら、大臣の認識もお聞きをしていきたいと思います。
まず初めに、先日の当委員会で我が党の辰巳議員が、三月三十日に東京電力が日本原電の要請を受けて資金支援を行う意向があると回答した問題について質問をいたしました。東海第二原発の再稼働に必要な新規制基準に対応した工事費一千七百四十億円について資金支援を行うという内容です。福島県内では、そんなお金があるんならちゃんと賠償してほしい、廃炉、汚染水のめども立たず、県民が生活となりわいの再建ができずに苦しんでいるのに、事故を起こした東電がほかの原発のために資金支援をするなんて許せない、こうした怒りの声が上がっています。
東京電力の小早川社長にお聞きをするんですが、こうした声をどう受け止めているでしょうか。
○参考人(小早川智明君) 当社は、今年の三月十四日に日本原電から、東海第二発電所の新規制基準対応工事を実施するため資金調達を行う際に、資金支援をする意向を有している旨を書面で表明するように依頼を受けました。これに対し、当社は、お客様に低廉で安定的かつCO2の少ない電気をお届けすることが電気事業者としての大きな責務であると考えております。その責務を全うするための電源調達手段として東海第二発電所からの受電は有望であると執行側で判断し、三月三十日に取締役会への報告を経て、会社として東海第二発電所に対する資金支援の意向を文書で提出したものでございます。
電気の小売が全て自由化されておりまして、価格やお客様の御選択も全て市場に委ねられていく中で、当社は、有望な電源を調達し、経済事業を通じて資金を確保することにより福島への責任を全うしていく所存でございます。新々総合特別事業計画の趣旨にも合致しているものと考えております。
○岩渕友君 こうした福島県民の声をどう受け止めるのかということについては、正面から答えないわけですよね。
原子力規制委員会にお聞きするんですけれども、五月三十日に小早川社長を呼んだ臨時会議で、東京電力による日本原電への資金支援についてのやり取りが行われています。規制委員会が東京電力を厳しく批判したと報道されていますけれども、委員からどんな意見が出たのかを紹介してください。
○政府特別補佐人(更田豊志君) お答えいたします。
五月三十日の原子力規制委員会臨時会におきまして、小早川社長を始めとする東京電力経営層と、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた姿勢、同社柏崎刈羽六、七号機における安全対策、そして日本原電東海第二発電所への資金支援に対する考え方等について意見交換を行いました。
先生御指摘の東京電力による日本原電への資金支援につきましては、日本原電に対する資金支援は確約と言えるものなのか、そして、日本原電に対して資金支援を行うことで、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業、これをやり抜くことがきちんとできるのか、また、柏崎刈羽原子力発電所六、七号機の安全対策に支障が出ることはないのかといった指摘を原子力規制委員会から行ったところであります。
このほか、全体を通じまして、東京電力福島第一原子力発電所のいわゆる処理済水の扱いに象徴されるように、東京電力が国の対応を待ち、自ら先頭に立つ覚悟が見受けられない、すなわち、事故を起こした当事者としての主体性が見て取れないといった点を申し上げたところであります。
○岩渕友君 この臨時会議の中で、伴委員から、社会に対する説明責任があるだろう、電源調達の一環と言うけれども、支援を行わないとしたらどういうデメリットがあるのか、どういうメリットが発生をするのか、どのくらいの範囲ならペイをするのか、リスクはどうなのか、経営判断の一環とだけ言われても納得いかないという意見が出たというふうに聞いているんですけれども、これ、そのとおりでよろしいですか。規制委員長。
○政府特別補佐人(更田豊志君) はい、そのような意見が出たと承知をしております。
○岩渕友君 この伴委員の意見というのはまさに国民の疑問だというふうに思います。
東京電力による資金支援については、東電に他社の原発を支援する余力があるのならば、賠償や廃炉に回すべきだと毎日新聞が社説に書いたり、外部への資金提供には違和感が残る、これは日経新聞の社説です。廃炉を始め福島の事故処理に専念すべきだ、北海道新聞も社説で書くなど、批判が相次いでいます。
先ほども言ったように、伴委員が言った話というのはまさに国民の疑問だというふうに思うんですけれども、これ、東京電力の小早川社長に聞きますが、この疑問に分かるように答えていただきたいんですけれども。
○参考人(小早川智明君) 先ほどからの繰り返しになりますが、当社は、お客様に低廉で安定的かつCO2の少ない電気をお届けするという電気事業者としての責務を全うするための電源の調達手段として東海第二発電所からの受電が有望であると、こういうふうに判断したものでございます。
こうした取組によってしっかりとお客様に低廉で安定的な電気をお届けすることにより、経済事業を通じて資金を確保することで福島への責任を全うしていくことが可能になると考えております。
趣旨としましては、新々総合特別事業計画の趣旨に合致しているものと考えております。
○岩渕友君 今の答弁では全くよく分からないんですよね。
それで、経産省に聞くんですけれども、東京電力の日本原電への資金支援は、新々総特のどこに書いてあるでしょうか。
○政府参考人(村瀬佳史君) お答え申し上げます。
まず、新々総合特別事業計画ですけれども、これは、賠償や廃炉など事故の責任貫徹に向けた取組の内容ですとか、経営健全化の取組内容や資金収支に関する計画、その他事業運営の方針等について定めているものでございます。したがいまして、個別具体の経営判断についてその全てを網羅的に盛り込む性質のものではございません。
そのような中で、東海第二発電所からの受電、それから同発電所の再稼働に対する資金的な協力については、新々総特において直接の記載はないという状況でございます。
○岩渕友君 記載はないということなんですよね。
この新々総特には、「福島原子力事故への対応こそが東電の原点であり、福島への責任を果たすために東電が存続を許されたということは今後も不変である。東電は、この使命を肝に銘じ、福島を始め被災者の方々が安心し、社会の理解を得られるよう万全を期すとともに、廃炉も含めた事故の責任を全うしなければならない。」とあります。東京電力の日本原電への資金支援は、計画にも反するものであるし、社会の理解を得られるようなものではありません。
経産省に聞くんですけれども、原子力損害賠償・廃炉等支援機構では、この東京電力の日本原電の資金支援についてどのように議論をしているでしょうか。
○政府参考人(村瀬佳史君) 廃炉機構の議論の状況についてお尋ねいただきました。お答えいたします。
原子力損害賠償・廃炉等支援機構におきましては、重要な意思決定を行う場である運営委員会においては、東海第二発電所に関する御指摘の件についての議論は行われていないというふうに承知してございます。
○岩渕友君 運営委員会で議論されていないと。もう議論もされていないのかと、とんでもないことだと思います。
東京電力に確認をいたします。
最新の原発事故賠償金の累計支払額と支援機構を通じて交付を受けた資金の総額は幾らになっているでしょうか。
○参考人(小早川智明君) 御質問にお答え申し上げます。
原子力損害賠償・廃炉等支援機構からの資金交付額については、平成三十年五月末時点での資金交付額は累計で八兆六百六十六億円となります。また、平成三十年六月一日時点で、除染等でお支払いした費用を含めお支払いした賠償金の総額は八兆二千億円となっております。
○岩渕友君 今のをお聞きいただいても分かるように、東京電力は機構から交付を受けた資金をそのまま右から左に流している、こういう構図になっているわけです。
そこでお聞きするんですが、大臣は辰巳議員の質問に、東電経営陣が経営健全化に取り組む立場から、経営上のメリット等を総合的に勘案し判断したものと考えているというふうに答弁をしております。
じゃ、メリットって一体何なのか、伴委員の話にもあったように、デメリットだってあるんじゃないのかと。これ、大臣の答弁もよく分からないんですけれども、どうでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 東京電力が、経営判断に当たってあるいはその説明に当たっては、廃炉と賠償の責任貫徹にどのように貢献をしていくかという観点が最も重要だというふうに思っています。新々総特においても、廃炉や賠償の費用の捻出に向けて経営改革をやり遂げて企業価値を高め、国民負担の抑制と国民還元を実現するというふうにされているわけであります。
経営陣は、こういった新々総特の趣旨も踏まえて、低廉で安定的かつCO2の少ない電気を供給していく上で東海第二発電所からの受電は有効であるということ、そして、こうした電源構成上の事情だけではなくて、この受電による経営上のメリットの実現も含めて、経済事業を通じて資金を確保して福島への責任を全うしていくという理由から資金的な協力を判断したものというふうに承知をしております。
今回の資金的な協力も含めて、東京電力個社の経営判断に関して国が具体的な指示を行うべきではないと考えていますが、経産省としても、今後とも、東京電力の経営陣が福島の責任の貫徹を最優先するという経営方針を厳守して経営判断を行い、その説明責任をしっかりと果たしていくよう指導してまいりたいと考えています。
○岩渕友君 今の答弁でも、先ほどお話ししたような国民の疑問に本当に答えているのかというふうに思うんですね。
朝日新聞は四月十一日付けの社説で、福島第一原発の事故を起こし、政策支援と巨額の国民負担で生かされている東京電力に、存在意義が揺らぐ他社を助ける資格があるのかと指摘をしています。
東京電力の第一の責務、巨額の国費投入を見れば、これ誰もが思うことです。こうした厳しい批判の声にどう答えるのかというのを大臣にもう一回答弁お願いします。
○国務大臣(世耕弘成君) 東京電力は、まず何よりも被災者の皆さんに対する賠償金のお支払、そして福島の復興への貢献をしっかりと行う、原発の廃炉、福島の復興の責任を果たすことが重要だと思っています。その上で、経営の健全化を成し遂げて、国民負担の抑制や国民還元を実現をして、福島への責任を果たしていくことが求められるわけであります。
今回の経営陣の判断は、経営の健全化によって費用を捻出して福島への責任を貫徹するという観点から行われたものだというふうに承知をしているわけであります。
また、この判断によって賠償や廃炉などの責任貫徹に支障が生じる具体的なおそれが生じている状況にはなく、国が具体的な指示や指導を行うべきとは考えていません。むしろ、東京電力が責任を果たすべき主体として、自らしっかり判断して説明を行っていくことが重要だと考えています。
○岩渕友君 経営の健全化と言うわけですけれども、そこにやっぱり皆さん疑問を持っているし、じゃ、福島の責任貫徹していると言うけれども、本当にそうなのかということを福島県民思っているわけですよね。だから、福島県民の中に怒りの声が上がっているということです。
じゃ、本当に福島の責任貫徹しているのかということをこれから見ていきたいと思うんですけれども、規制委員長はもう退席をいただいて結構です。
○委員長(浜野喜史君) 更田委員長、御退席いただいて結構でございます。
○岩渕友君 では、賠償の実態がどうなっているのか、これまで繰り返し取り上げてきた商工業の営業損害賠償の実態について確認をしていきます。
四月五日の質疑で、商工業の営業損害賠償について、二倍相当一括賠償と追加賠償の実態について東京電力に聞きました。二〇一八年二月末時点で追加賠償の請求が約五百件、合意はたった一件しかないということが分かりました。
最新の実績がどうなっているのか、商工業の営業損害賠償について、現在の受付件数、合意件数、二倍相当一括賠償の件数は避難指示区域内と区域外でそれぞれ何件になっているのか、二倍相当一括賠償された事業者の中で追加的損害の賠償請求の受付件数と合意件数を、東京電力、答えてください。
○参考人(小早川智明君) 御質問に御回答申し上げます。
二〇一八年五月七日時点における商工一括賠償の受付件数の総数は約一万五千七百件あり、そのうち合意件数の総数は約一万四千六百件となります。避難指示区域内の受付件数は約七千四百件あり、そのうち合意件数は約七千二百件となります。合意いただきました約七千二百件につきましては、全て年間逸失利益の二倍相当額での合意となります。避難指示区域外の受付件数は約八千三百件あり、そのうち合意件数は約七千四百件となります。合意いただきました約七千四百件のうち、年間逸失利益の二倍相当での合意件数は約三千二百件となります。
なお、一括賠償後の追加賠償につきましては、平成三十年四月末時点でございますが、約六百件の御請求をいただいており、そのうち一件合意しております。
○岩渕友君 資料一を御覧ください。
追加賠償については、受付件数は前回よりも増えているにもかかわらず、合意件数は相変わらず一件しかありません。しかも、福島県内の事業者からは、この一件の追加賠償は賠償ではない、移転補償にすぎないという話が今出されているんですね。事業者の方々は追加賠償は一件も行われていないという認識だということです。
福島県の商工会連合会からは、二倍相当の賠償を受けた事業者には追加賠償ができる旨のはがきが届き、こちらから送ってくれと言わないと請求書は届かない。追加賠償の請求をすると膨大な量の文書が送られてきて、賠償できないとなる。反論するにも大変なエネルギーが要るし、ほとんどの事業者は意欲をなくし、諦めている。東電の戦術は諦めさせることなのではないかという声。避難区域内を中心に廃業が続いている。この一年で見ても百十九事業者。このまま賠償がなくなれば更に廃業が続くという声。さらに、東電は事業者の経営状況をよく知っているのに、一方では努力していないといって賠償を打ち切っているのは非常におかしい、こういう声も上がっています。
大臣にお聞きします。
大臣は、東京電力が個別の状況をしっかりと踏まえて丁寧に対応するよう指導していると言ってきました。けれども、賠償の実態は良くなるどころか悪くなるばかりです。このまま賠償がなくなれば廃業が続く、こういう声も出ている状況をこのまま放っておくわけにはいきません。国が賠償の実態を把握して、実態に合った賠償を東京電力にやらせる必要があります。どうでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 商工業の営業損害については、東京電力は将来にわたる損害として、個別事情を確認の上、事故との因果関係がしっかりと確認をされれば、年間逸失利益の二倍相当額を一括で賠償するということになっているわけであります。
経産省としては、被害者の方々の置かれた状況は様々でありまして、東京電力が個別の状況をしっかりと踏まえて丁寧に対応するよう指導してきているところでありまして、東京電力においても、個別の請求者への電話連絡や御訪問などを自ら行って、直接御事情をお伺いする取組を強化しているというふうに認識をしています。今後もこうした取組を通じて、被害者の方々に寄り添った取組を行っていくよう指導をしてまいりたいと思います。
○岩渕友君 先ほど紹介した事業者の皆さんの実態から考えれば、今の答弁では納得できないということですよね。
浪江町の住民約一万五千人が精神的賠償の増額を求めてADRに仲介申立てを行って、仲介案が示されていたにもかかわらず、東京電力はこれを拒否して、仲介が打ち切られることになりました。浪江町の馬場有町長は、東電には原発事故の原因者、加害者としての意識が一かけらもないと言わざるを得ないと厳しく批判しています。
同時に、賠償の在り方をめぐっては国の責任も問われています。馬場町長は、さらに、国の対応もおかしい、原発依存の政策が抜けない、ほかの電源とのベストミックスなんて違う、原発の危険性を認識して、再生可能エネルギーに早く移行し、脱原発を進めるべきだと述べています。
五月十六日に第五次エネルギー基本計画案が示されて、現在パブリックコメント中です。この計画案では、エネルギー選択を構想するに際して常に踏まえるべき点があるとして、第一に、福島原発事故の経験、反省と教訓を肝に銘じて取り組むことが原点であるという姿勢は一貫して変わらないとしています。そこに続く部分で、発生から約七年が経過する現在も約二・四万人の人々が避難指示の対象となっているとあります。
先日の参考人質疑で龍谷大学の大島教授から、約二・四万人の人々が避難指示の対象とされているけれども、福島県の発表でも四万六千人の方々が避難をされており、明らかに過小評価を、誤解を招くような表現ではないかと非常に懸念をしていると、こういう指摘がありました。これ、私も同じ思いです。
それで、この計画案ですけれども、原発事故の被害の実態をしっかり反映させるべきだというふうに思うんですね。原発事故の経験、反省と教訓が原点だというのであれば、この計画案に被害の実態をきちんと反映させるべきだと。計画案では、原子力、石炭火力を重要なベースロード電源だと位置付けて、二〇三〇年の電源構成比率は前回と変わらず、原発は二〇から二二%となっています。
大臣は、稼働率を八〇%と仮定し機械的に計算すると、二〇三〇年時点で運転開始から四十年未満の原発が全て稼働すると一七%、加えて、二〇三〇年時点で運転開始から四十年以上経過している原発が全て運転延長すると二八%、よって、二〇%の達成は可能だと答弁をしています。この答弁の基となっている資料を要求して、出てきたものから作成をしたのがお配りしている資料の二です。試算には、東京電力福島第二原発も柏崎刈羽原発も、建設されていない原発も入っています。
これまで大臣は、福島第二原発はほかの原発とは同列に扱うことができないと言ってきました。機械的な試算だと言うんですけれども、これだったら同列と同じじゃないかと。同列に扱わないということと矛盾しているんじゃないでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) これは、二〇から二二という比率は、どの原発をどう動かしてということを積み上げたものではありません。これはあくまでもトップダウン方式で、まず自給率を二五%まで改善をする、電力コストを、策定当時ですから、二〇一三年度よりも引き下げるということ、そして欧米に遜色のない温暖化ガスの削減目標を掲げると、この三つのパラメーターを一番どの比率でやれば一番バランスよく実現できるかということを考えたわけであります。再生可能エネルギーをたくさん入れればCO2は減りますけれども、コストは上がります。火力発電を増やしていけばコストは下がるかもしれませんが、CO2の発生量は増えるわけであります。
実は、今言った三つを同時に解決できるのが原発ということになるわけですけれども、一方で、原発の依存度は、これは可能な限り低減させるという大きな方針も決まっている。そういったバランスの中で何%なのかという議論を検証した結果、二〇から二二%というエネルギーベストミックスの中での原発の依存度、これは震災前の三割よりも大きく低減をさせるという数字が出ているわけであります。
その数字が、じゃ、本当に裏付けがあるのかというのを逆に裏側から機械的に計算をしたときに、四十年たっていない原発を全て稼働させれば一七%、六十年まで延長するとしたら、それを足せば二八%ということで、その間に二〇から二二という数字が入るので、この二〇から二二という数字は実現可能な数字であるという我々は後からの説明をさせていただいているわけであります。
したがって、福島第二原発について私が今まで申し上げてきた、福島県民の皆さんの心情を考えると他の申請中の原発と同列に扱うことはできないということとは全く矛盾はしておりません。
○岩渕友君 ほかの原発とは同列に扱わないと言いながら実際試算の中には組み込まれているということになれば、福島県民は、国は再稼働させようと考えているんだと思いますよ。
昨日行われた福島県の町村議長会、今日開催された福島県町村会では、県民が強く求める第二原発の廃炉を国の責任により決定すること、これを求める特別決議が上げられました。福島県議会では、原発事故後、福島第二原発全基廃炉を求める意見書が四回、しかも全会一致で可決されています。同様の意見書や決議は県内五十九ある全ての市町村で可決をされています。
福島第二原発の廃炉は福島県民の総意です。加えて、柏崎刈羽原発については、新潟での世論調査でも約七割が再稼働に反対をしているという結果が出ています。国民世論に今の話は反しているということになって、全く納得できないと。
世耕大臣はこの間の質疑で、ランニングコストを含めて考えると、先ほども言っていましたけど、イニシャルコストとバックエンドの費用を含めても、単位当たりの発電のコストというのは原発はどうしても安くなると答弁をしています。
しかし、参考人質疑で大島教授は、新規の原発は安全規制が強化された結果、建設費用が二倍から三倍になっている、福島原発事故以前の原発を建てることを想定して計算していると述べておられました。原発事故の処理費用はどんどん膨らんで、日本経済研究センターは七十兆円にまで膨らむのではないかという試算をしています。大島教授は、これ以上経済に見合わないような電源というのはないと考えている、もし本当に見合うのであれば、それは事業者が払うべき、原子力だけが国家が特別な仕組みをつくるというのは、国家に寄りかかった電源としか見ることができないと述べておられましたけれども、そのとおりです。
一方、再生可能エネルギーの比率は二二から二四%となっています。参考人質疑でも、目標が低過ぎる、こういう意見が相次ぎました。再生可能エネルギーの大量導入の障害となっている問題、これを解決する必要があります。その一つが、先日、福島県いわき市で進められている風力発電事業、この問題取り上げましたけれども、この事業について取り上げたように、大規模な事業について、地元住民無視で強引に進められていることが挙げられます。
この間、再生可能エネルギーをめぐって住民の理解が得られず撤回した事業について、経産省、紹介をしてください。
○政府参考人(高科淳君) お答えいたします。
住民の理解が得られずに撤回した再エネ事業につきましては、網羅的に把握しているわけではございませんけれども、例えば、太陽光発電事業につきましては関東地方にあるメガソーラー案件、あるいは風力発電事業につきましては東北地方にあります陸上風力案件などが、景観への影響の点で住民の理解が得られず、発電事業者が事業を撤回したという情報を得ているところでございます。
○岩渕友君 いずれも住民の理解が得られずに撤回をすることになったと、住民の理解が非常に重要だということです。
資料の三を御覧ください。
和歌山県海南市下津町大窪に、株式会社ユーラスエナジー有田川が運営する有田川ウインドファームという風力発電があります。この一帯に一・三メガワットの風車が十基あって、二〇〇九年八月から稼働をしています。この地域では四十七世帯百十人の方が暮らしていらっしゃいます。風力発電による低周波によって二世帯が引っ越しを余儀なくされています。この問題について、日本共産党の雑賀県議が議会でずっと取り上げております。この事業に関わって、雑賀県議に届いた事業者と地元自治会区の間で交わしている覚書案を入手をいたしました。驚くべき内容ですので、紹介をいたします。
事業者は、二〇〇九年九月一日から二〇一七年八月末までの八年間について、区費として合計○万円を支払うものとする、大窪区は、覚書締結後は事業者が風車を常時運転することに同意し、事業者又は第三者に風車の運転に関する苦情又は要求は行わないことに同意するとあります。また、覚書締結後、大窪区は構成員に風車の運転に関する苦情又は要求を事業者及び第三者に対して行わないようにさせるであるとか、覚書締結後に大窪地区の住民になった者に対しても本項の義務を課すものなどの項目があります。要するに、お金を渡して口封じをするというものです。
二〇一七年九月の和歌山県議会で雑賀県議が覚書の内容について知事の認識をただしたのに対し、知事は、何か民主主義とか人権とかないような国の話の約束事みたいな感じがいたしました、サインをしている人は拘束されるんでありましょうが、サインをしていないかもしれない人まで文句を言わせないとか、新しく来る人にも文句を言わせないとか、そんなことが法律的にあり得る話では日本ではありませんので、一体何なんだろうなというふうに思いました、こういう答弁を行っています。
こうした覚書の内容は住民の理解を得ることとは逆行する内容だと思うんですけれども、大臣はどのように思われますか。
○国務大臣(世耕弘成君) 私の地元の事案で、私も知らなかったんですけれども、最近ちょっと選挙区へ帰れていないのでと焦っているわけですが。
再生可能エネルギーの発電事業の実施に当たっては、長期安定的に発電事業を行うために、地域住民の、地域の理解を得ながら事業を進めていくことが重要だというふうに思っています。
FIT制度の開始以降、地域住民とのトラブルによって計画の撤回を余儀なくされる事態が発生していることを踏まえて、昨年四月に施行された改正FIT法では、地域住民と適切なコミュニケーションを図ることについて新たな努力義務として求めておりまして、必要に応じて経産省から事業者へ指導を行うことになっています。
一方で、地域住民との具体的なコミュニケーションの方法については、各地域の実情に応じてそれぞれ検討されるべきものでありまして、議員御指摘の有田川風力発電事業の覚書の件について個別にコメントをすることは適切ではないというふうに思っております。
いずれにしても、事業者が地域との共生を図って適正に再生可能エネルギー発電事業を行っていくよう、引き続き取り組んでまいりたいと思います。
○岩渕友君 これはあくまでも覚書案ですが、経産省からの聞き取りに対して、事業者は区費を払っているというふうにしているんですね。地元からは、要望を聞いてもらえない、こうした声も上がっています。知事が答弁で言っているように、余りにもひどい内容なんじゃないのかなと。どんな事情があっても、こんな内容の覚書を交わそうとすることがあってはなりません。
大臣に伺うんですが、その地域住民の方々からは、当初から要望をされていた夜間の風車停止、被害者への補償、風車の撤去など、切実な要望が上がっています。覚書で住民を縛るのではなくて、こうした一つ一つの要求や要望に事業者は誠実に応えるべきではないでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 繰り返しになりますけれども、再生可能エネルギー発電事業の実施に当たっては、やはり長期で安定的に発電事業を行うためには、地域の御理解をいただきながら事業を進めていくことが重要だと思います。このため、改正FIT法では、地域住民との適切なコミュニケーションを図ることについて新たな努力義務にさせていただいているところであります。
この件に関する住民との詳細なコミュニケーションについてはちょっと私も承知をしておりませんけれども、経産省としては、事業者に対して、一方的な説明だけではなくて、地域住民の意見を聞いて誠実に対応することを求めているところであります。事業者が地域住民との適切なコミュニケーションを図っていない場合には、必要に応じて指導を行うことにしております。
いずれにしても、事業者が地域との共生を図って適正に再生可能エネルギー発電事業を行っていくよう、引き続き取り組んでまいりたいと思います。
○岩渕友君 コミュニケーションは大事だと、意見を聞いて誠実な対応をする必要があるというふうに今大臣おっしゃられていましたけれども、続けて大臣にお聞きするんですが、この資料三を見ていただければ分かるように、大窪区よりも風車に近い地区があるんですね。田角と大賀畑の地区ですけれども、こういったところも含めてほかの地区も騒音被害などが出て、町が聞き取り調査をしたというようなこともあります。同様の覚書が交わされているのではないか、こういう声も出ています。
実態について調査をする必要があるのではないでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 本当に繰り返しになって申し訳ないんですが、改正FIT法では、地域住民との適切なコミュニケーションを図ることについて新たに努力義務にしておりますし、一方的な説明だけではなくて、住民の意見を聞いて誠実に対応することを求めているところであります。
各地のトラブルなどの不適切案件については、エネ庁のウエブサイトに設置した情報提供フォームなどを通じて情報提供を受け付けていますけれども、この件に関しては情報提供はなかったという報告を受けているところであります。
いずれにしても、事業者が地域住民と適切なコミュニケーションを図っていない場合には、必要に応じて経済産業省から事業者へ指導を行うことにしています。
こうした対策を通じて、事業者が地域との共生を図って適正に再生可能エネルギー発電事業を行っていくよう、引き続き取り組んでまいりたいと考えます。
○岩渕友君 地元の経産局も含めて、いろいろな声が出ているということは把握しているんですよね。
再生可能エネルギーに関わってもう一つお聞きしたい問題があります。
五月十八日、外国資本の森林買収、去年は福島県が一件で全国最大というニュースが放送をされて、現地である福島県いわき市では驚きの声が上がっています。林野庁の調査で、昨年、全国の都道府県のうち、外国資本が買収した森林の面積が最も大きかったのは福島県のいわき市で九十ヘクタールだったことが分かりました。
林野庁にお聞きします。
外国資本による森林買収に関する調査、これは、いつ、どのようなきっかけで始まったのでしょうか。
○政府参考人(織田央君) お答えいたします。
外国資本による森林買収に関する調査でございますけれども、これにつきましては、外国資本による森林の取得に関しまして新聞報道等各方面で取り上げられまして、特に水源林の買収が目的ではないかといったような懸念が提起されたことを受けまして、平成二十二年以降、毎年、都道府県を通じて面積、目的も含めて調査を行い、公表しているところでございます。
○岩渕友君 先ほど紹介をした九十ヘクタールのいわきの森林は、パシフィコ・エナジーいわき合同会社というアメリカの企業が太陽光発電事業用地に利用するために買収をしたものです。住民説明会、開催されているんですけれども、九十八世帯中五人しか参加をしていません。多くの方は、報道があって、森林が買収されたこと、太陽光発電事業が計画されていることを知って驚いている、こういう状況です。
太陽光発電は環境アセスの対象になっていません。太陽光発電事業の環境保全対策に関する自治体の取組事例集を今リバイスしている最中ということなんですけれども、このリバイスの理由について述べてください。環境省。
○政府参考人(米谷仁君) お答えをいたします。
環境省では、大規模な太陽光発電事業に伴う環境保全上の問題への対応を検討している地方自治体の皆様の業務の参考にしていただくため、地方自治体の取組事例集を平成二十八年四月に公表しております。現在、この事例集について新しい状況の変化などについて更新の作業を行っており、更新を実施しましたら、これを公表し、普及を図ってまいりたいと考えておるところでございます。
○岩渕友君 住民とのトラブルがいろいろあって、自治体で条例作っているところが増えている、だからリバイスするんだということだとお聞きをしています。
二〇一七年六月、全国市長会から、既存の法令の対象とならない行為の規制として、太陽光発電施設の土地利用について、より小規模な開発についても開発許可の対象としたり、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法において防災、安全の確保、景観への配慮、周辺環境の保全、施設の適正な撤去、廃棄の観点から基準を策定して許可するなど、法的規制を行うことと特別提言が出されております。
こうした要望を受けて、太陽光発電を環境アセスの対象に加えるべきではないでしょうか。環境省。
○政府参考人(米谷仁君) お答えをいたします。
先ほど御説明をしましたように、今地方自治体の取組事例集の更新を行っておりますが、これの適用の事例や太陽光発電施設の設置で生じる環境影響について更なる実態把握を進め、環境に配慮した太陽光発電の設置がなされるよう必要な対応を検討してまいりたいと思います。
○岩渕友君 再生可能エネルギーについて聞いてきたわけなんですけれども、住民とのトラブルがあちこちで起きていると。先ほど大臣が何度も答弁していただいたんですけれども、FITの事業計画策定ガイドラインでは住民とのコミュニケーションは努力義務になっていますけれども、今の議論をずっと聞いていると、これ努力義務じゃなくて義務にするべきじゃないのかなと思うんですが、どうでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 再エネについては、地域住民の理解を得ながら事業を進めていくことが重要だということを繰り返し申し上げてまいりました。
FIT制度の開始以降、地域住民とトラブルになる太陽光発電設備などが増加していることを踏まえて、昨年四月に施行された改正FIT法に基づいて策定をした事業計画策定ガイドラインにおいて、地域住民とのコミュニケーションを図ることを新たに事業者の努力義務として定めました。コミュニケーションを怠っていると認められる場合は、必要に応じて指導を行っているところであります。
義務化すべきではないかという、努力義務ではなくて義務化すべきとの御指摘でありますけれども、地域住民とのコミュニケーションの在り方は、これはもう各事案ですとか地域の実態に応じて丁寧に決められるべきだと考えていまして、国が一律にコミュニケーションを義務化をすると、例えばもう説明会を何回開催したとか、そういった形式的な要件を基準に義務を果たしているか否かを判断することになってしまうおそれがあるというふうに考えています。
したがって、国が一律に義務化するのではなくて、地域の特性や事情に合わせることにして、例えば自治体が定めた条例で、その条例に違反をした場合はFIT法に基づいて必要に応じて認定を取り消すといった形で対処することが最も適当だというふうに考えております。
○岩渕友君 先ほども紹介したように、何か起こらないと分からないというのが今の実態です。何か問題が起きて、分かったときにはもう既に遅かったということになりかねないわけですよね。
資料の四を御覧ください。
これ、福島県の再生可能エネルギー発電所導入計画です。外資資本が次々入ってきています。大規模の集中立地などに住民から不安の声が上がっています。一方で、原発の電気は使いたくないと、市民、地域で地産地消の再エネに取り組んでいるところでは着々と発電所を増やしています。こうしたことを踏まえて、地域との共生を図ることができる法整備が必要です。
次に、省エネについて質問をいたします。
エネルギーミックスにおける産業部門の省エネ目標は元々経済成長を見込んだもので、二〇三〇年度にかけてエネルギーが増加することを前提としています。最終エネルギー消費の動向で示されている二〇三〇年度省エネを徹底した産業界のエネルギー消費量の見込みは一億七千万キロリットルであり、直近の二〇一六年度の実績は一億五千九百万キロリットルで、既に達成済みということになります。経済成長とエネルギー消費量増加が比例するという考えから脱却をして、二〇三〇年度の産業部門の目標の深掘りが必要です。
本法案では、これまでは一千五百キロリットル以上の子会社が、全てが行っていたエネルギー使用に係る原単位や温室効果ガスの排出量などの定期報告を、グループ企業が一体的に省エネ取組を行うことについて認定を受けた場合は、親会社による一体的な定期報告が認められることになります。これに対して参考人質疑でも、一体化された合計使用量だけしか報告されないということになると、効果的な省エネ対策に必要な個別工場のエネルギー消費量が分からなくなると懸念の声が出されています。
これ、子会社ごとの定期報告をやらせるべきではないでしょうか。経産省。
○政府参考人(高科淳君) 認定管理統括事業者制度についてのお尋ねだと思いますけれども、この制度は、エネルギー消費効率の改善目標をグループ単位で達成することを認めるなど、省エネ法の義務をグループ単位で一体的に履行することを認めて、グループ全体として費用対効果の高い省エネ取組を促進するものです。
他方で、グループの親会社などが認定管理統括事業者に認定された場合でありましても、現行法の下で子会社が国に報告しております子会社の工場などにおける省エネ取組の状況につきましては、親会社であります認定管理統括事業者から引き続き報告させる予定でございます。
○岩渕友君 引き続き報告させるということでした。
定期報告の中身については、情報が公開をされていません。参考人質疑では、同業種で比較しても、エネルギー原単位は事業所ごとに大きく異なることがあり、情報公開することで事業者が省エネに取り組むインセンティブとなり、省エネ水準を底上げする効果が期待できるなど、情報公開によって省エネが更に進むという意見が述べられています。今後、情報公開を進めていく必要があると思います。
参考人質疑では、産業部門は乾いた雑巾ではないという声がありました。自然エネルギー財団の大野理事は、二〇一四年七月に行われた省エネルギー小委員会で提出された資料を示しながら、ボイラーなど屋外のパイプ類の断熱材が劣化し、熱が漏れて保温できずにエネルギー損失が生じ、それが製造業全体の消費エネルギーの一一%に当たることを紹介されていました。
ベンチマーク制度がありますけれども、あくまでも目標、目指すべき指標であって、達成が義務付けられていません。高炉製鉄のように、達成した企業が一つもないような状況が長い間続くということも起きています。企業任せでは省エネは進まないということです。
大野氏が東京都の取組について紹介をしていましたけれども、東京都では、二〇〇二年から都内の大規模事業所が省エネ対策、地球温暖化対策に自主的に取り組む制度を導入しましたが、実際にはなかなか進まず、省エネ対策の行き詰まりに直面をしていました。
自主的な削減努力にとどまっていた制度を、省エネ法も上回る総量削減を大規模事業所に義務付ける制度が必要だという結論に至って、排出量取引制度を導入しました。一部業種では情報開示も行って対策が進んで、一五%から一七%の削減義務に対して、二〇一六年までに基準年比で平均二六%の削減を実現しています。東京都によれば、業務部門では、二〇〇五年比で、全国は一五%減のところ東京都では二五%減を達成するなど、大きな差が付いています。
そこで、大臣、東京都と同じように、国も総量規制で削減を義務付けるべきではありませんか。
○国務大臣(世耕弘成君) この排出量取引制度については、東京都のほか、EU、韓国などで導入事例があるわけであります。
ちょっと持っている数字は別になるんですけれども、東京都では、制度導入後二〇一四年度までに二〇〇九年比一三%の削減ができたというデータを我々は把握をしております。ただ、このうちどの程度が東京都の制度導入の効果なのかということについては、ちょっといろいろ議論があるわけであります。東日本大震災をまたいでいますので、その後の影響があったのではないかとか、LED照明の普及が一気に進んだ時期でもありますから、それが原因ではないかという分析もあります。
また、諸外国については、景気変動ですとか、あるいは産業の間の公平性を考慮した排出枠の設定が難しくて、その結果、価格の乱高下ですとか価格低迷ですとかクレジット供給不足などが発生して、市場が安定しないといった指摘もあるわけであります。
具体的には、EUにおいては、リーマン・ショック後の景気後退に伴って、排出枠が余って価格が二酸化炭素一トン当たり六百円程度に低迷をして、排出削減のインセンティブを奪う状況が続いたということですとか、韓国では、排出枠の割当てが少な過ぎて市場取引が停滞をしているといった事例もありまして、市場の不安定性が企業における長期投資を阻害する可能性ですとか、あるいは、これを安定化させようとすると行政コストの増大を招く懸念もあるわけであります。
こうした様々な分析も踏まえながら、排出権取引制度については、二〇一六年に閣議決定した地球温暖化対策の計画のとおり、産業に対する負担やこれに伴う雇用への影響、海外における動向と効果、国内において先行する主な地球温暖化対策の運用評価なども見極めて、引き続き慎重に検討を行いたいと思います。
○岩渕友君 自主的取組の結果がどうなっているのか、CO2の電気・熱配分前の排出量が初めて公表をされました。その中で、エネルギー転換部門の排出量と排出割合の推移はどうなっているでしょうか。
○政府参考人(小野洋君) お答えいたします。
四月二十四日に公表いたしました二〇一六年度の温室効果ガス排出量、確報値における電気・熱配分前のエネルギー転換部門からの二酸化炭素排出量及びその温室効果ガス排出量全体に占める割合について申し上げます。
一九九〇年度が三億四千八百万トンで二七・四%、二〇〇五年度が四億二千二百万トンで三〇・六%、二〇一六年度が五億七百万トンで三八・八%となっております。
○岩渕友君 エネルギー転換部門の排出量は今増加傾向にあります。二〇一六年度の排出量は前年と比べても六・九%も増加をしていて、全体の排出量を押し上げる結果となっています。
電気事業分野における地球温暖化対策の進捗状況の評価結果が今年の三月二十三日に公表をされています。その目的と進捗状況の評価が書かれているわけなんですけれども、目的については、パリ協定を受けて、CO2排出原単位の高い石炭火力については諸外国では官民ともに抑制する流れだと。そして、評価については、石炭火力発電について現時点で計画されている新設、増設計画が全て実行されると二〇三〇年度目標の達成は困難だと。電力業界の自主的枠組みである電気事業低炭素社会協議会は、今年度初めて会員企業の取組状況の評価を実施。この評価は、一年間の取組を各社が自らチェックしたことを協議会として確認したもの。定量的な目標設定を始め、具体的な評価基準を明確にしなければ、自主的枠組みの実効性には疑問。こういうふうに書かれております。
大臣にお聞きします。
評価でも自主的枠組みの実効性には疑問とありましたけれども、電力事業部門、産業界全体を見ても、自主的取組の限界を表しているのではないでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 産業界の温暖化対策への貢献は、自ら排出する温室効果ガスの削減だけではなくて、低炭素製品、サービスなどを開発、普及することなどもあって、自主的な取組や企業の自主性に委ねるということで、各主体が創意工夫によって優れた対策を選択できるというメリットがあるというふうに考えております。また、最近ではESG投資が拡大をして、環境問題への取組がマーケットから評価され、資金が集まり、次なる成長につながる、そして更なる対策が可能になるという好循環も生まれています。
こうしたことから、産業界の温暖化対策は引き続き強い義務を課して、国が直接管理をするというよりは民間の創意工夫を引き出しながら、自主的な取組によって成果を上げていくことが望ましいというふうに考えております。
○岩渕友君 それでは限界があるということだと思うんですよね。
今日、エネルギー政策を見てきたんですけれども、第五次エネルギー基本計画案では、再生可能エネルギーは火力に依存をしているとして脱炭素化電源ではないとし、原子力を低炭素の準国産エネルギー源としています。さらに、原子力をゼロエミッション電源と位置付けています。
しかし、福島原発事故による深刻な放射能汚染は環境に重大な影響を及ぼしています。再生可能エネルギーと同じ次元で扱うことはできません。原発ゼロは国民過半数を超える大きな世論になっています。
原発ゼロと再生可能エネルギーへの転換を求めて、質問を終わります。