(このページに資料があります)
(議事録は後日更新いたします)
未稼働の泊原発に巨額投資 再エネ中心の分散型電源への転換を
日本共産党の岩渕友議員は12月4日の参院経済産業委員会で、北海道胆振東部地震後に全道停電に陥った北電に責任はないとしている世耕弘成経産相に対し、「被害を受けた道民の立場に立った検証が必要」と厳しく批判し、非常時にも活用できる再エネ中心の分散型電源への転換に本気で取り組むよう迫りました。
岩渕氏の質問に対し、環境省は、北海道が太陽光、風力、中小水力、地熱の合計で全国の4分の1強もの発電ポテンシャルを有するとの推計を明らかにしました。十勝管内では、道内の4割にあたるバイオガス発電が稼働し、新たな建設計画もあります。北電から「送電線の空き容量がない」と接続を拒否され計画が中断しており、十勝の関係協議会、JA北海道中央会、道市議会議長会などが国、北電に対し、送電網の増強を求めています。 岩渕氏は視察した鹿追町の取組も紹介しながら、「このままでは再エネ導入は進まない。国がイニシアチブを発揮して送電網を増強すべき」と強く求めました。世耕大臣は「バイオガス発電は酪農地域の課題解決のためにも重要。農水省と連携して導入をすすめたい」、「再エネを用いた分散型エネルギーシステム構築は、地域活性化にもつながる」との認識を示しました。同時に、送電線の増強については、託送制度の見直しも検討課題と述べました。
岩渕氏は、2012年5月の泊原発停止以降、北電が2014年度の発電部門への設備投資額の約7割を再稼働のために使い、「それ以外に、発電していないのに、原子燃料費として毎年150億円から200億円を使っている」と資料を示し、「原発の再稼働に固執する国のエネルギー政策が問われている」、「原発ゼロの決断、再エネ主力電源化にふさわしい政策へ転換すべき」と主張しました。
(画像をクリックやタップすると、質問資料が別ウィンドウで開きます)
(ボタンをクリックやタップすると議事録が開きます)
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
九月六日に発生をした北海道胆振東部地震は道内に甚大な被害をもたらしました。全道停電、ブラックアウトによって、道内に二十四ある店舗を休業、被害額は一千四百万円に上る深刻な被害という飲食店、牛を守るため家族五人で手搾りを始め、震える手で七時間掛けて搾った、生乳を廃棄せざるを得ず、私たちが仕事をした分も牛が頑張った分も全部無駄になってしまったという酪農家の方もいらっしゃいます。
ブラックアウトは、暮らし、医療、福祉、生産、加工、流通、農業、観光業など、あらゆる分野に大きな被害をもたらし、その影響は今も続いています。
世耕大臣は、有識者の検証の結果、北海道電力には責任はない、納得できなければ訴訟ということになると衆議院の質疑で答弁をしておりますけれども、被害に遭った道民の立場に立っているとは思えない発言だと思います。
道内では、技術的な検証では道民は納得しないといった声が上がって、北電がなぜ一極集中を続けたのか、この経営判断が妥当だったかと指摘をする専門家の方もいらっしゃいます。生命、暮らし、財産に関わる重要な問題であり、国の責任も問われています。道民の立場に立った検証が必要だということを厳しく指摘しておきます。
今回のブラックアウトによって分散型電源の重要性、これが改めて明らかになったと思います。
そこで、大臣にお聞きしますけれども、この分散型電源の重要性ということについてどのように認識していますか。
○国務大臣(世耕弘成君) 前半の部分は何か答弁の必要はないということでよろしいですか。言いたいことはいろいろあるんですけれども、じゃ、御質問のところだけ答えたいと思います。
再生可能エネルギーなど分散型エネルギーは、非常時にも活用できるエネルギー供給源を確保するという点や地域活性化にも資する点から重要なエネルギー源だというふうに考えています。経産省としても、これまで、地産地消型エネルギーシステムの構築など、分散エネルギーについて支援を行ってきているところであります。
ただ一方で、太陽光や風力といった再生可能エネルギーは、これは天候、日照条件などの自然環境によって発電量が変動するという特性がありますので、常に安定した供給力として見込むことは困難でありまして、火力発電など他の電源とバランスの取れた導入を広域で図っていくことが必要だと考えています。
また、十一月二十七日に開催されました重要インフラの緊急点検に関する関係閣僚会議においても、災害に強い再エネを導入促進するため、地域の再エネ利活用モデルの構築や他の電源離脱などによって周波数が低下しても発電を維持できる機能の強化などの対応策についても取りまとめたところであります。
経産省としても、再生可能エネルギーの活用を拡大しながら、電力供給システムの強靱化に向けた対策の具体化に速やかに着手していきたいと思います。
○岩渕友君 分散型電源、非常に重要だということだと思うんですよね。
苫東厚真火力発電所の設備利用率は、二〇一〇年の六四%から一三年に八五%まで増加をしています。地震発生直前、北海道電力管内では、その約半分の電力をフル稼働に近い苫東厚真に頼っていました。
経産省は、東京電力福島第一原発の事故を受けて、大規模電源の集中リスクの対応策ということで、再生可能エネルギーの活用も含めた分散型エネルギーの活用を拡大させることが重要だというふうに述べていました。けれども、大規模集中から分散型電源への転換が進んでこなかったのは、先ほど紹介したような苫東厚真のような状況を見れば明らかです。大臣が非常時にも活用できるという話ありましたけれども、この非常時にも活用できる分散型電源への転換に本気で取り組まなくてはなりません。
そこで、環境省にお伺いするんですけれども、北海道には分散型エネルギーとして有効な再生可能エネルギーのポテンシャル、これがどのくらいあるでしょうか。
○政府参考人(森下哲君) お答え申し上げます。
環境省では、再生可能エネルギーの導入ポテンシャルの推計につきまして、現時点で算出されます全ての自然エネルギーから、現在の技術水準では利用困難なもの、それと法令や土地用途等による制約があるもの、これらを除外する形で推計を行ってございます。この調査によりますと、北海道の再生可能エネルギーによる発電のポテンシャルでございますけれども、太陽光、風力、中小水力、地熱の合計で全国のポテンシャルの四分の一強を占めるというふうに推計をされております。
○岩渕友君 四分の一強ということで、非常に大きいということだと思うんですね。道の資料でも、環境省の調査を基にして、風力発電で全国一位とか中小水力発電で全国一位とか、非常に再生可能エネルギーのポテンシャルが北海道は高いということです。
先月、十勝の鹿追町に伺って、バイオガス発電所を見てきました。鹿追町は、畑作農家が百戸、酪農家が百戸あって、乳牛、育成牛、肉牛合わせて三万頭の牛が町内にいます。家畜の排せつ物などのバイオマス資源を発酵させることによって発生をしたバイオガスを利用して発電、売電をして、余剰熱を活用してチョウザメの飼育であるとかマンゴーの試験栽培も行われておりました。廃棄物の処理を行い、エネルギーが生産をされて、二酸化炭素を削減するので温暖化対策にもなって、できた有機的な有機質の肥料を畑作に活用する、一石何鳥にもなる発電方法です。
北海道におけるバイオガス発電の重要性、地産地消の再生可能エネルギーの重要性について、大臣、どのように認識しているでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) まず、エネルギーの地産地消は、地域資源の有効活用や、新産業や雇用の創出を通じた地域活性化に寄与すると考えています。再生可能エネルギーは、こうしたエネルギーの地産地消につながるものとして大変重要なものだと思っています。
今年七月に決定しましたエネルギー基本計画において、バイオマス発電は、地域での林業や畜産業などと併せた多面的な推進等によって、分散型エネルギーとして重要な役割を果たす可能性があるとしているところであります。また、御指摘の北海道におけるバイオマス発電は、酪農業からの家畜排せつ物を用いたバイオガス発電への投資が活発であると認識をしておりまして、農林水産省等の関係省庁とも連携しながらバイオガス発電の円滑な導入を支援してまいりたいと考えています。
○岩渕友君 今答弁あったように、地域活性化にも非常に有効だということですし、鹿追町のこのバイオガス発電のような取組というのは地域の課題を解決させるのに非常に有効だということを示していると思います。
そこで、資料一を御覧ください。
これは、北海道電力系統図と主なバイオガスプラントを示したものです。十勝管内は、二〇一三年度、その全域がバイオガス資源を活用した事業で地域活性化を目指す、国のバイオマス産業都市に認定をされました。現在は、道内の四割に当たる三十三基のバイオガス発電が稼働をして、このうち二十七施設が売電を行っています。ところが、十勝管内でのバイオガス発電施設の建設計画が、少なくとも三十基分中断をしています。それは一体どうしてかというと、送電線への接続ができない、これが理由となっています。
北海道電力から接続可能ですよと回答を受けた計画も、日高幹線の空き容量がゼロになったというふうに伝えられて、中には高額な増額費用が掛かるんだと言われた案件もあります。この日高幹線、資料一にも書かれていますけれども、ここは基幹線なんですが、一回線しかありません。基幹送電線で一回線しかないのは全国でも三幹線しかないというふうに聞いております。
道東地域における送電系統が脆弱だということで、十月に帯広市や十勝の町村会、十勝管内の農業団体や商工団体などの関係機関が十勝バイオガス関連事業推進協議会というものを設立をいたしました。新たなバイオガスプラントの設置が難しくて、規模拡大を目指す畜産業に大きな弊害になっているということで、地域経済全体にも大きな影響が及ぶこのバイオガスプラントによる再生可能エネルギーの活用策を官民挙げて取り組むことを目的に設立をされました。
そこで経産省にお聞きするんですけれども、この協議会からの要望を経産省も受けていると思います。この要望にどのように対応されるのでしょうか。
○政府参考人(松山泰浩君) お答え申し上げます。
今委員からお話ございました十勝バイオガス関連事業推進協議会からは、十一月二日に資源エネルギー庁の方に御要望書を頂戴してございます。
政府といたしましては、これまでFIT制度を通じまして、制度創設以来、メタン発酵ガスという区分を設けまして、バイオガスの導入に向けてより手厚く支援を進めてまいったところでございます。これを受けまして、十勝地区では、この御要望書の中にもございますけれども、現在バイオガスプラントが三十三基に拡大しているというところでございます。
他方で、これは御要望の内容そのものでございますが、これから先に更に拡大していくとなります場合、これは既存の系統についてはどうしても上限、制約がございますので、特に十勝から道東に向けての幹線、送電線が弱い状況の下では、地域の事業者の声を踏まえますと、系統制約の克服について着実に取組を講じていく必要があるというふうに認識してございます。
他方で、系統の増強ということになりますと、これはコストの負担の問題がございますし、時間の掛かる問題もございます。現在、まず具体的な対応策として考えておりますのは、まずは既存系統を最大限活用していくべく、一定の条件の下で系統への接続を認めます日本版コネクト・アンド・マネージという仕組みにつきましての具体化を進めていくとともに、長期間系統の容量を抑えている未稼働の問題というのがございます。この問題に対する対応策を進めていく考えでございます。
また、地域の分散型のシステムという意味で申し上げますと、大規模停電などの災害時に、まさに今回様々な問題が生じましたけれども、蓄電池などを組み合わせまして地域の再生可能エネルギーを利活用できる分散型のモデルの構築についても取組を進めてまいる予定でございます。
○岩渕友君 エネルギー基本計画では、小規模な再生可能エネルギー源を組み合わせた分散型エネルギーシステムの構築を加速していくように、個人や小規模事業者も参加しやすくするための支援を行っていくとあります。地域の特性を生かした再エネの導入は地域を活性化させる大きな力になると。けれども、十勝管内だけではなくて、資料の一にもあるように、道内のほとんどの送電線に空きがなくてつなげないというふうにされています。
これに対して、JA北海道中央会や北海道の市議会議長会なども、北海道電力に対して送電網の増強を求めています。
次に、資料二を御覧ください。
北海道電力はこうした資料を示しながら、再エネ電源は送電線につなげないんだというふうに説明しているんですよね。この資料を見れば、北海道での再エネのポテンシャルは高いんだけれども、これ、ポテンシャルは高いけど生かすことできないということになってしまうと思うんですよね。
そこで大臣にお聞きするんですが、再エネの主力電源化に本気で取り組むということであれば、北海道の高い再エネポテンシャルを生かすために国がイニシアチブを発揮して送電網の増強を進めるべきではないでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 再生可能エネルギーを導入、拡大していくためには、やはり系統制約を克服していくことが非常に重要であります。
送電線の増強ということですが、これ増強するには一定の時間と費用が掛かるため、まずは今ある系統を最大限活用すべく、一定の条件の下で系統への電源の接続を認める仕組みであります日本版コネクト・アンド・マネージのまず具体化を進めていきたいと思います。これはまさに国の審議会での議論を踏まえて今順次実施をしているところであります。
例えば、今年四月から、過去の実績を基に将来の電気の流れをより精緻に想定をして送電線の空き容量を算出する手法、想定潮流の合理化といいますが、これを導入することによって、八月末までの実績として新たに百十二万キロワット分の空き容量が増加するなどの効果が出てきていまして、今後更なる空き容量の増加が見込まれているところであります。また、仮に具体的にこの系統の増強が必要になった場合でも、従来から系統増強の工事費負担金を複数事業者で共同負担する電源募集プロセスによる系統増強を進めてきています。
さらに、今後、系統増強に係る費用を引き下げながら送電投資を進めるためには、例えば設備の仕様の共通化、これ今は九電力会社によってばらばらなんですけれども、送電設備の仕様を共通化していくことによって総工事費の低減を図る仕組みの構築ですとか、託送制度の見直しといった環境整備などの方策を国としても検討を進めていきたいと考えています。
○岩渕友君 先ほどから、増強するにはコストが掛かるんだという話いろいろ出ているんですけれども、安田陽京都大学大学院特任教授が二〇五〇年に再エネ導入率五〇%の想定で送電線増強の投資コストを試算した結果によると、託送料金増分は、二〇三〇年時点でキロワットアワー当たり〇・〇三六円、二〇五〇年時点で〇・〇八六円となっています。これ、東電管内で電気料金月五千五百円の家庭で計算をしてみると、二〇三〇年で一か月当たり七円弱、二〇五〇年で約十六円の増にしかならないということなんですよね。正味の電気料金は、再エネ電源の大量導入によって電力卸売価格が低下するということで、送電線増強を抑制するシナリオよりも低下する試算結果が出ています。
そもそも、原子力をベースロード電源として位置付けていることが再エネの導入を阻んでいます。泊原発は今稼働をしていません。実潮流での計算、再エネの優先接続を行うべきです。
資料三を御覧ください。
これは北海道電力の設備投資額と発電電力量構成比の推移なんです。泊原発への設備投資は非常に大きくて、二〇〇九年は設備投資額のうち七一%を占めています。二〇一二年に停止をして以降、安全対策として防潮堤などの建設を行って、二〇一四年には設備投資額は約七割を占めています。
さらには、原発が稼働していなくても原子燃料費が毎年百五十億円から二百億円掛かっているんですよね。設備投資額にこの原子燃料費を含めると、原子力への設備投資の割合は二〇〇九年で表のとおり七四・八%、一四年は七六・三%にも上ります。これだけのお金が泊原発に使われてきました。このお金を送電網の増強などに使えば、もっと再エネ電源に接続することができるじゃないかと。泊原発再稼働への固執は北海道電力の責任であるとともに、原発を重要なベースロード電源とする国のエネルギー政策の問題です。
原発ゼロの決断、そして再エネ、主力電源化にふさわしい計画の見直しを行うべきだということを指摘します。
最後に、電気料金の経過措置の取扱いについてお聞きをいたします。
電力小売の全面自由化に当たって、規制なき独占に陥ることを防ぐために、二〇二〇年三月まで全国で一般家庭などは規制料金が存続をします。
福島県の土地改良事業団体連合会から、農事用電力の利用実態や社会的、経済的意義などを踏まえて、経過措置の継続を求める旨の要望を受けました。
そこでお聞きするんですけれども、この農事用電力がどういう役割を果たしてきたのか、当事者からの意見を受けて、この経過措置の存廃について今後どのような検討がされていくでしょうか。
○政府参考人(小澤典明君) お答えいたします。
委員御指摘の農事用電力向け料金メニューでございますけれども、これ、農業生産に必要な農業用水の供給あるいは排水などを行うために用いられる電力用メニューとして、土地改良区を始めとする農業事業者の方々に利用されてきたものでございます。
二〇一六年四月の小売全面自由化に際しては、農事用電力を含みます低圧需要家向けの小売規制料金につきまして経過措置を講じ、適正な競争が確保されることにより、規制料金を撤廃しても需要家の利益が損なわれないと判断できるまでは規制料金を存続するというふうにしてございます。
こうした中、本年十一月に開催した審議会におきましては、農事用電力向け料金メニューの主たる利用者でございます土地改良区の皆様方から御意見をいただく機会を設けました。その際、農業用水は、農業生産のみならず、防火などの国土保全機能も有していることなどの説明をいただいたところでございます。
今後とも、この経過措置の扱いにつきましては、規制なき独占に陥ることのないよう、農林水産省等の関係省庁あるいは電力・ガス取引監視等委員会とも連携し、そして需要家、関係者の方々の御意見も引き続き丁寧にお聞きしながら、競争状況等を十分に見極め、慎重に検討を行ってまいりたいと考えてございます。
○岩渕友君 消費者団体からも、消費者、国民が不利益にならないようにというふうに意見が出されています。当事者の声をよく聞いて、実態に合った検討を進めるよう求めて、質問を終わります。