2019年6月13日(木) 参議院 経済産業委員会 独占禁止法改正案 対政府質疑
「カルテル・談合の防止を/GAFAによるデータ市場独占の規制を」
(議事録は後日更新いたします)
独占的地位を使って不当に競争を制限するなどの違法行為を働いた企業に対し、日本当局が科した課徴金の総額が欧米当局に比べて著しく低く、2017年度では米国の罰金の0.6%、欧州の制裁金の0.4%だったことがわかりました。独占禁止法改正案を審議した13日の参院経済産業委員会で日本共産党の岩渕友議員が指摘しました。
同法案は課徴金制度の一定の強化を行う一方、課徴金の算定率は対象商品・役務の売上高の10%のまま変えません。岩渕氏は算定率が不当利得の平均値(13.5%)にも及ばないと指摘し、違反を抑止できる水準に引き上げるべきだと主張しました。宮腰光寛内閣府特命担当相は「必要に応じて見直しを検討する」と答えました。
欧州委員会は買い物検索で自社サービスを優遇したなどの理由でグーグルに巨額の制裁金を科しています。岩渕氏は「日本ではなぜできないのか」と質問。独禁法が定める「優越的地位の乱用」以外にも「私的独占」や「不公正な取引方法」などにあたるのではないかとただしました。
杉本和行公正取引委員長は実態調査を進めていると答弁。データ市場を独占するデジタル・プラットフォーマーが競合他社を排除・拘束した場合、「競争者に対する取引妨害」や「拘束条件付き取引」、「私的独占」が問題になることもありえるとの考えを示しました。
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○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
独占禁止法の改正案についてお聞きをいたします。
まず、課徴金制度について伺います。
本法案で、中小企業算定率を適用する事業者が実質的な中小企業に限定をされるということになります。中小企業算定率は一九九一年に行われた改正で設けられたもので、中小企業の算定率は四%となっています。
それでは、中小企業とは一体どういう定義なのかというと、中小企業基本法の資本金三億円以下、従業員三百人以下を援用しているということで、大企業の子会社であるとかグループ会社にもこの中小企業算定率が適用をされるということになります。
この中小企業算定率が適用をされている中小企業のうち、大企業の子会社やグループ会社が何件あるでしょうか。
○政府参考人(菅久修一君) お答え申し上げます。
平成二十一年度から二十七年度までの間でございますが、大企業グループに属しているにもかかわらず中小企業算定率が適用された事例は、事業者数にして延べ四十三件でございます。
○岩渕友君 実際の中小企業算定率の適用事例が独占禁止法研究会の報告書の中にも掲載をされていますけれども、この中身を見ますと、住友電気工業グループであるとか昭和電線ホールディングスグループだとか、あとは古河電気工業グループ、こうしたところが名前を連ねております。
大企業の子会社など、実質的には中小企業と言えない事業者にまで中小企業算定率が適用をされているこの実情を踏まえて、今回の本法案の中では、中小企業算定率を適用する事業者を課徴金制度の趣旨、目的に合致する範囲に限定されることになると、これは当然のことだというふうに考えています。
また、これまで、早期離脱に対する軽減措置が講じられていましたけれども、研究会の報告書を見ますと、適用実績を見ると、入札資格の喪失によって違反行為に参加できなくなった場合など、自発的に違反行為をやめたものではない事業者に対する適用例がほとんどだというふうにして、見直しが必要だということが報告書の中で指摘をされていました。
実際、この報告書の中に適用事例が一覧表になってあるんですけれども、それを見てみますと、指摘されているとおり、違反対象事業を譲渡したためとか、ほかの同種案件の立入検査があったため違反行為を取りやめたものなどがいろいろ書かれていて、ちょっと自発的とは言えないという実態があります。早期離脱も今回の改正で廃止となりますけれども、これも実態に合ったもので、廃止は当然だというふうに考えます。
本法案では、割増し算定率の適用が検討をされています。繰り返し違反及び主導的役割に対する割増し算定率は、現行ではそれぞれ原則一五%で、いずれにも該当する場合は原則二〇%ということになっております。
研究会では、企業グループ単位での繰り返し違反について三つ書かれているんですけれども、一つ目は、昨今はグループ単位でのコンプライアンスが求められていること。二つ目に、諸外国では繰り返し違反に対する割増し算定率はグループ単位で適用されていること。三つ目に、課徴金減免制度でも同一企業グループ内の複数の事業者による課徴金減免共同申請が認められていることなどから、企業グループ単位で繰り返し違反の割増し算定率を適用する制度を導入することを検討することが適当と考えられるというふうにされています。
日本における企業グループ単位での繰り返しの違反事例が何件かということと、不当利得の平均値が幾らなのか、お答えください。
○政府参考人(菅久修一君) お答え申し上げます。
〔委員長退席、理事浜口誠君着席〕
平成十六年度から平成二十六年度までの間でございますが、企業グループ単位で見た場合、繰り返し違反に該当する事業者が含まれる事件、これが九件でございます。また、この不当利得の平均値は二一・九%でございました。
○岩渕友君 今二一・九%とありましたけれども、不当利得率の平均値が高くなっています。
それで、諸外国では繰り返し違反に対する割増し算定率が企業グループ単位で適用をされていると。日本においても企業グループ単位で割増し適用するべきではないかと思うんですけれども、どうでしょうか。
○政府特別補佐人(杉本和行君) 今般の課徴金制度の見直しにおきまして、企業グループ単位での違反行為についても抑止効果を及ぼすこととしております。
具体的には、過去十年以内に完全子会社が課徴金納付命令等を受けている場合、課徴金納付命令等を受けた違反対象事業を承継している場合も、繰り返し違反に対する割増し算定率を適用することにしております。
他方で、今回、違反事業者の完全子会社が過去に納付命令を受けた場合に限定しております。一方、完全親会社が過去に納付命令を受け、その後完全子会社が命令を受ける場合を対象としていないのは、違反行為による利得と課徴金による不利益を確実に認識できるのが違反事業者の財務及び事業の方針を把握している完全親会社と考えるからでございまして、このため、この点については慎重な制度設計としているところでございます。
○岩渕友君 範囲を広げて、グループ全体への適用というのを今後も検討するべきだということを指摘をしておきたいと思います。
次に、宮腰大臣に確認なんですけれども、現行の課徴金制度の目的、これを確認します。
〔理事浜口誠君退席、委員長着席〕
○国務大臣(宮腰光寛君) 独占禁止法における現行の課徴金制度の趣旨、目的は、違反行為に基づく不当利得相当額をベースとしつつ、不当利得相当額以上の金銭を徴収する仕組みにより、行政上の措置として違反行為を抑止するために、違反事業者に対して金銭的不利益を課すものであります。
○岩渕友君 今答弁の中に違反行為を抑止するためのものだという文言ありましたけれども、目的はこの違反行為の抑止だということです。
課徴金の基本算定率は原則一〇%となっています。けれども、二〇〇四年から二〇一四年度の措置事案における不当利得の平均値は一三・五%と推計をされています。現行の課徴金制度では平均的な不当利得さえも徴収することができないということです。これでは違反やってくださいと言わんばかりじゃないのかと、違反をした方が得だということになってしまうんじゃないかと思うんですね。
今日午前中の参考人質疑でも、早稲田大学の土田参考人から、この一〇%ということについてはもうちょっと上げてもよかったんじゃないのかという意見があったり、消団連の浦郷参考人からも一〇%では十分ではないと、引き続き検討してほしいと、こういう意見もありました。
それで、資料の一を御覧いただきたいんです。これは日本とアメリカとそしてEUの課徴金、罰金、制裁金の比較をグラフにしたものです。これを見ていただければ分かるように、アメリカとEUとそして日本との差がもう非常に大きくなっているということが一目で分かると思うんですね。
それで、宮腰大臣にお伺いするんですが、この制裁金の水準が諸外国と比較して余りにも低いんじゃないかと思うんですけれども、見解をお聞きします。
○国務大臣(宮腰光寛君) 我が国で課された課徴金の額は、その総額、また一事業者当たりの平均額共に、EUや米国に比べると低い水準となっております。
外国の競争法においては違反行為者に対して制裁金や罰金等の措置がとられますが、その額の算定に当たり、不当利得相当額にとらわれず、競争当局等が広範な裁量によって決定することが許容されております。このため、事案によっては高額になる場合があると承知をしております。
他方、先ほどもお答え申し上げましたけれども、我が国の課徴金制度は、違反行為に基づく不当利得相当額をベースとし、不当利得相当額以上の金銭を徴収するものであるため、EUや米国とは算定方法が異なっております。
我が国の独占禁止法については、違反行為の実態に応じ、違反行為の抑止に必要な水準とする観点から見直しが行われてきております。今後もその必要に応じて見直しを検討していくこととなるというふうに考えております。
○岩渕友君 実態を踏まえて検討していくということだと思うんですけれども、衆議院の参考人質疑で、研究会のメンバーである泉水参考人から、消費者や社会に利益以上の損害を与えることがしばしばあるので、それらも含めて本人に負担させなければ十分抑止できないのではないかということで、委員の中から一〇%を超えて引き上げるべきだという主張が出たと、こういう発言がありました。また、不当利得に拘泥してそれで抑止力を弱めているという面があるので、不当利得と切り離して、どのような措置が抑止力を高められるのか、高めるのかという観点で、今回見送られたものも含めて迅速に導入してほしいと、こういう意見も述べられています。
このように、課徴金制度の性格について、東京高裁の二〇一二年十一月三十日の判決ではどう述べているのか、これ報告書でも紹介をされているので、その部分を読み上げてください。
○政府参考人(菅久修一君) お答え申し上げます。
委員御指摘の東京高裁判決でございますが、これでは、独占禁止法の課徴金制度につきまして、「違反行為者が得た不当な利得の剥奪を直接の目的とするものではなく、飽くまでも違反行為の摘発に伴う不利益を増大させて、その経済的誘因を減少し、違反行為の予防効果を強化することを目的とする行政上の措置」というふうに示しております。
○岩渕友君 基本算定率が一〇%になった以降も繰り返し違反が見られています。現行の水準では、違反を抑止する、これに必要十分なものとは言えないと思います。違反行為を抑止できる算定率に引き上げるべきだということを指摘しておきたいと思います。
次に、課徴金減免制度、リニエンシーに関わってお聞きをします。
この制度は、カルテルや談合を行っていた事業者が違反行為を自主的に公正取引委員会に報告をしてきた場合に、その時期や順序に応じて本来課せられる課徴金を減免するというものです。
この課徴金減免制度が導入をされた趣旨、そして目的について、宮腰大臣に確認をします。
○国務大臣(宮腰光寛君) カルテル、入札談合は、発覚しにくく、摘発が困難であるという特性があります。このため、平成十七年の改正で、現行の課徴金減免制度、リニエンシー制度を導入をいたしました。その趣旨は、違反事実を自ら申し出た事業者に対して課徴金を減免することにより、事業者が違反行為から自発的に離脱しようとするインセンティブを付与し、違反行為の発覚、摘発を容易にすることで、事件の真相解明を効率的、効果的に行うというものであります。
○岩渕友君 今、真相解明という言葉がありましたけれども、実態解明機能、そして公正取引委員会の執行力を強化するための制度だということです。
この制度がどのぐらい適用をされているのかということで、二〇〇六年から二〇一七年までの法的措置の件数と、そのうち課徴金減免制度が適用された件数が何件あるのか、お答えください。
○政府参考人(南部利之君) お答えいたします。
課徴金減免制度が導入されました平成十八年一月以降平成二十九年度末までにおきましては、不当な取引制限に対する法的措置の件数が百六十二件、また、同期間におきまして課徴金減免制度が適用されたことが公表されている事件数が百二十九件となります。
○岩渕友君 今の数字を聞いても分かるように、約八割で制度が適用をされているということになります。これは、事業者が自主的に自らの違反行為を申し出る機会として機能しているということを示しているのではないかと思います。違反行為の排除に貢献をしているということになります。
本法案で、事業者の実態解明への協力度合いに応じて減算率を付加する調査協力減算制度が導入をされることになります。現行では申請順位に応じた減免率となっていると。調査開始前であれば、申請順位一位は全額免除、二位は五〇%、三位から五位は三〇%、六位以下はなしと、固定された減免率ということになっています。これが協力減算制度では、一位の全額免除はそのままですけれども、二位は二〇%、三位から五位は一〇%、六位以下は五%という減免率をベースにして、違反行為の実態解明への事業者の協力度合いに応じて最大四〇%という幅のある減算率が加わるということになります。これ、協力度合いが高ければ、申請順位が六位以下の事業者であっても二位の事業者を上回ることができる、こういうことになります。申請順位が下位の事業者にこそインセンティブが働くということになるのかなと思います。
杉本委員長に確認したいんですけれども、これ、申請の早さではなくて協力度合いが評価をされるということは、実態解明機能を高める狙いがあるということでいいですね。
○政府特別補佐人(杉本和行君) お答えさせていただきます。
現行の課徴金減免制度は、法令が規定する一定の事項を報告しさえすれば、その内容にかかわらず一律に一定の減免率が得られることになっております。このため、減免申請したものの、必要最低限の報告しか行わず、非協力的な対応を取る事業者が少なからず発生するという問題が生じているわけでございます。
今回の改正におきましては、減免申請順位に応じた減算率に加えて、事業者の調査協力の度合いに応じた減算率を付与することにより、事業者の調査協力インセンティブが高まり、事業者と公正取引委員会の協力による効率的、効果的な真相解明、処理につながると考えております。
公正取引委員会としては、このような調査協力減算制度を活用しつつ真相解明を進め、カルテルや入札談合等の違反行為が行われた場合には引き続き厳正に対処してまいりたいと思っておりますので、こういった制度は私どもの効果的、効率的な事案解明につながると考えておるところでございます。
○岩渕友君 調査協力減算制度のガイドラインの策定に当たってはパブリックコメントが行われるというふうに聞いていますけれども、このガイドラインの策定過程が公平であること、そして透明性が必要です。加えて、制度についても公表や検討を行って、国民に明らかにするということが必要になってきます。
本法案には、アメリカで協調的法執行と呼ばれる、規制対象となる企業の協力を得て法執行を進めるという手法、考え方が含まれています。独占禁止法の第二十八条では、「公正取引委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行う。」というふうに規定をされています。公正取引委員会が事業者の言いなりになるようなことがないように、なれ合いになるようなことがないようにしなければならないというふうに思います。
次に、秘匿特権について伺います。
本改正の施行と併せて運用で措置するというふうにしているのが、いわゆる弁護士、依頼者間の秘匿特権です。これは、協力の度合いに応じた減算率を付加したものを効果的に機能させるために認めるというものです。
中小企業団体からはこの秘匿特権の拡大に慎重な検討を求める声が出ています。消費者団体の皆さんからも強い懸念が寄せられています。複数の事業者が行うカルテルや談合とは異なって、事業者が単独で一方的に行うものにまで認められるということになれば、違反事実が明らかにならないんじゃないかというような、そういう懸念が寄せられているわけですね。
そこで、確認をしたいんですけれども、秘匿特権の対象は、カルテル、そして談合といった不当な取引制限に限定されるということでいいですよね。
○政府特別補佐人(杉本和行君) 独占禁止法で禁止しているカルテル等の不当制限、不当な取引制限は、これは秘密裏に行われるものでありまして、物証に乏しく、違反行為を明確に示すようなものを得ることは困難でございます。
こうした不当な取引制限に固有の事情に鑑みまして、今回の法改正によりまして、公正取引委員会に対する事業者の調査協力インセンティブを高めるため、事業者の自主的な調査協力度合いに応じて課徴金の減算額が決定されるような、課徴金減免制度が見直されることとなりますれば、調査協力を行うか判断をするために、また調査協力を効果的に行うために外部の弁護士に相談するという事業者のニーズがより高まると考えられるところでございます。
したがいまして、お尋ねの制度は、このようなニーズに対応しまして、新たな課徴金減免制度をより機能させる等の観点から整備するものでございますため、その対象を同制度の対象違反行為であるカルテル等の不当な取引制限の行政調査手続としているところでございます。
我が国ではいわゆる秘匿特権を認める明文上の規定はなく、このような中で、今般、法改正に合わせて、独占禁止法上の固有の事情に鑑み、カルテル等の不当な取引制限の行政調査手続に限定したものでございます。
○岩渕友君 衆議院の参考人質疑で、泉水参考人が、今後は公正取引委員会規則での運用により経験を蓄積し事例を積み重ねて、生じる課題を解決していくということになる、その蓄積の上において、独占禁止法上のいわゆる単独行為について、そしてさらには、我が国の司法制度全体における秘匿特権の制度設計の在り方や運用の在り方について慎重に検討していくということだというふうに述べているんですね。
この秘匿特権が今までになかった、これまでになかった制度だということで、今後の在り方として、拡大ありきということではなくて検証、総括されることが必要だと考えますが、どうでしょうか。
○政府特別補佐人(杉本和行君) お尋ねの制度の対象範囲の拡大につきましては早急に検討することとしておりますが、この検討に当たっては、本制度の運用開始後の状況を踏まえまして、中小企業に不当に不利益を与えることにならないよう、また他法令への影響を及ぼすことがないように十分留意することが必要だと思っております。
仮に本制度の対象範囲を独占禁止法の全ての違反行為類型に拡大した場合、例えば、特に中小企業が被害者であることが多い違反行為類型でございます優越的地位の濫用においては、新たな課徴金減免制度のような調査協力インセンティブを高める制度が整備されていないため、従前と比較しまして審査期間の長期化を招くことが想定され、被害を被っている中小企業の利害の迅速な確保が困難となるおそれがございます。
また、カルテル等の不当な取引制限が新たな課徴金減免制度の対象になっているといった独占禁止法固有の事情を離れて、対象範囲を独占禁止法の他の違反行為類型に拡大したり犯則調査手続にも拡大した場合には、本制度は一般的、普遍的なものとして位置付けられることとなります。しかし、その場合には、我が国ではいわゆる弁護士・依頼者間秘匿特権を認める明文上の規定はないこととの整合性が問題になるほか、他の行政調査手続や司法手続に及ぼす影響についても懸念されるところでございます。
このように、本制度の対象の拡大を検討するに当たりましては、以上のような懸念を踏まえつつ、運用開始後の状況を慎重に検証、評価して対応することが必要になると考えております。
○岩渕友君 十分留意する必要がある、検証が必要だということでしたけれども、拡大ありきということがあってはならないし、検証、総括が必要です。
消団連が三月十二日に出している独占禁止法改正を求める意見、今日の午前中の参考人質疑でも資料として配られていましたけれども、あの中で、消費者関連法の執行は現状でも不十分であり、秘匿特権的な制度が拡大することで消費者利益が損なわれることにつながるおそれも十分想定されることから、秘匿特権的な制度が拡大することには反対だという意見がありました。こういう意見をよく聞いていただきたいというふうに思います。
資料の二を御覧いただきたいなと思うんです。これは、日本経団連の歴代役員企業のカルテル、そして談合事件及び課徴金等の一覧ということで、二〇〇九年度から二〇一八年度までの十年間をまとめたものです。この、じゃ、歴代役員というのは誰のことを言っているのかというと、会長、副会長、議長、副議長ということなんですけれども、こういう一覧表です。経団連の役員企業によるカルテルや談合事件が後を絶たないという残念な事態が、見ていただければ分かるように続いています。特に現会長の出身企業である日立製作所のグループ企業が目立っているということです。
秘匿特権というんですけれども、そもそもはカルテルや談合をしなければいいじゃないかということです。経済団体や企業が自浄能力を発揮するのが当然だと思うんですけれども、宮腰大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(宮腰光寛君) 独占禁止法は、公正かつ自由な競争の促進を通じて国民経済の民主的で健全な発達及び消費者の利益の確保を目的とする法律であり、これに違反する行為は許されないものであると考えます。そのため、事業者は公正かつ自由な競争を阻害する行為、なかんずく、独占禁止法違反行為に対する自浄能力を発揮すべきであると考えます。
今般の改正は、事業者の公正取引委員会による調査に協力するインセンティブを高めることによりまして、事業者と公正取引委員会が対立した関係ではなく、協力して独占禁止法違反行為を排除することを後押しするものであります。そのため、今般の改正は、事業者のコンプライアンス体制の整備を促し、自浄能力を高めることに資するものと考えております。
また、公正取引委員会は、事業者におけるコンプライアンスの状況について数次にわたる実態調査を行って、コンプライアンスの実効性を高めるための方策を提言をいたしております。また、独占禁止法上の指針など種々のガイドラインの整備により独占禁止法上の考え方を明確にするなど、従来からコンプライアンスに関する事業者の取組の支援、唱道活動に積極的に取り組んできていると承知をしております。
法案が成立した場合におきましても、公正取引委員会において、引き続き、事業者のコンプライアンスを向上させ、自浄能力を高めるべく、適切な対応を行うものと承知をしております。
○岩渕友君 カルテルや談合をした事業者の防御権を強める必要があるのかと、抑止効果、事件の真相解明機能とのバランスで考えられる必要があると思います。秘匿特権はあくまで実態解明機能を損なわない観点から考えられるべきものだということです。
最後に、GAFAと呼ばれる巨大デジタルプラットフォーマーに関わってお聞きをします。
資料の三を御覧ください。これは、GAFAへの競争法当局による主な規制の動きです。
この一番上のグーグルのところを見ていただければ、二〇一七年の六月に欧州委員会はグーグルに対して、買物検索で自社サービスを優遇したということで二十四・二億ユーロ、これは日本円にすると約二千九百億円ということだそうですが、制裁金を支払うように命令をしました。
それで、資料の一をちょっともう一度見ていただきたいんですけれども、資料一に示したグラフの二〇一七年度のところのEUの制裁金のところにグーグルとあるんですけれども、これが、この中にその二十四・二億ユーロが含まれています。このグラフを見ていただければ分かるように、かなりの部分を占めているということになります。
グーグル、これだけではなくて、二〇一八年七月には、その下にあるように、スマホメーカーに対してアンドロイドOSと自社検索アプリやブラウザアプリの違法な抱き合わせを要求して、市場支配的地位を濫用したとして四十三・四億ユーロの制裁金の支払命令を受けていると。さらに、二〇一九年の三月には、市場支配的地位を濫用して、競合他社が第三社のウエブサイトに検索連動型広告を掲載することを妨げたとして十四・九億ユーロの制裁金の支払命令を受けるということになっています。
こうしたグーグルの中身を受けて、五月の日本経済新聞で京都大学の川浜昇教授が、これらは支配的地位をてこに隣接市場での競争を制限し、排他契約や抱き合わせを通じて参入などを阻止する行為であり、市場支配的地位の濫用の排除型に属すると、日本の独占禁止法上も規制されているというふうに述べています。
そこで、杉本委員長にお聞きするんですけれども、この紹介をしたようなグーグルの例というのは日本でも同じことが起きているんじゃないかと思うんですけれども、EUでは制裁金を科していると。では、日本ではどうしてできないのでしょうか。
○政府特別補佐人(杉本和行君) お尋ねございましたいわゆる巨大プラットフォーム、GAFAに対しまして、公正取引委員会では、アマゾンが取引先との契約で価格等の同等性条件を定めていた件や、アップルが大手携帯電話会社との取引で端末購入補助等につき事業活動を制限した件などについて、積極的に調査を行ってきたところでございます。
これらの事案では、審査の過程におきまして、調査の対象である事業者から契約の一部を改定する等の申出がございました。公正取引委員会は、その内容を検討いたしまして、独占禁止法に違反する疑いが解消されることを確認しており、また、法運用の透明性や事業者の予見可能性を高める観点から、事案の概要については公表しているところでございます。
現在もプラットフォーム企業の実態調査をやっているところでございまして、今後とも、デジタルプラットフォーマー等ITデジタル関連分野において独占禁止法に違反する行為があった場合には、これに対しては厳正に対処してまいるという姿勢は崩しておらないところでございます。
○岩渕友君 三月三十日付けの週刊ダイヤモンドであるとか六月六日付けの読売新聞で、杉本委員長がインタビューに答えていらっしゃいます。このことに基づいたやり取りがおとといの質疑の中でもあって、委員長、答弁されているんですけれども、個人情報は重要な財だと。プラットフォーマーと個人の間にも取引が生じるということで、これまで企業間取引にのみ適用されてきた優越的地位の濫用をプラットフォーマーと個人の関係でも活用していく方針だというようなことがあったんですね。
午前中の参考人質疑で土田参考人が、これは非常に画期的なことだというふうに述べておられたんですけれども、こういう見解を持っているということでいいでしょうか、確認をします。
○政府特別補佐人(杉本和行君) これまで優越的地位の濫用規制というのは事業者間取引にのみ適用されてきておりまして、事業者と消費者との取引について適用された例はございません。しかし、公正取引委員会としては、デジタルプラットフォーマーと消費者との取引に対して優越的地位の濫用の規制を適用することは、独占禁止法を執行していく上で排除されないと考えているところでございます。
デジタルプラットフォーマーがサービスをたとえ無料で提供している場合でありましても、消費者はデジタルプラットフォーマーに対して情報を反対給付していると言えるわけでございまして、こうした情報は投入財として位置付けられ、サービスの対価として見られるものでございます。デジタルプラットフォーマーは、こうした情報を投入財として活用しましてターゲット広告を打つ等のビジネスモデルを構築しているところでございます。したがいまして、デジタルプラットフォーマーと消費者は取引をしていると認めることが可能であると考えているところでございます。
その上で、適用に当たりましては、デジタルプラットフォーマーの取引上の地位が消費者に優越していると言えるかどうか、デジタルプラットフォーマーが消費者に対して不当に不利益を与えていると言えるかどうか、デジタルプラットフォーマーの行為が競争に悪影響を与えていると言えるかどうか、すなわち公正な競争を阻害するおそれがあると言えるかどうかという点について、個別のケースに応じて判断していく必要があるんじゃないかと考えているところでございます。
公正取引委員会としては、これらの論点を含めて、デジタルプラットフォーマーと消費者との取引に対して優越的地位の濫用規制を適用することについての基本的な考え方を整理しているところでございます。
○岩渕友君 今、優越的地位の濫用についていろいろ聞いたし答弁いただいたんですけれども、これだけではなくて、先ほど紹介をしたグーグルの事例のように、市場全体に影響を及ぼしているということであれば私的独占というようなものに当たるんじゃないかということも考えられますし、ほかにも不公正な取引方法だとか抱き合わせ、条件付取引とかいろんなものに当たるということが考えられると思うんですけれども、委員長、見解をちょっとお聞かせください。
○政府特別補佐人(杉本和行君) 独占禁止法の適用に当たりましては、行為者の市場における地位や行為の態様など、認定された事実に基づき適切な規定を適用することになります。
デジタルプラットフォーマーの行為に適用される規定は、したがいまして優越的地位の濫用に限定されるものではございません。例えば、デジタルプラットフォーマーの運営事業者が自らもデジタルプラットフォームにおいて商品を販売を行う際に、競合する商品を販売する利用者を不当に排除している場合だとか、デジタルプラットフォームの運営事業者が利用事業者との間の契約において価格等に関する同等性条件を定めることによりまして利用事業者の事業活動を不当に拘束する場合、こういった場合には競争者に対する取引妨害とか拘束条件付取引として問題となる場合があると考えられるところでございます。
また、これらの行為は不公正な取引方法ということでございますが、行為者の市場における地位によっては私的独占となる場合もあると考えております。
公正取引委員会といたしましては、今後とも、事案ごとの特性を踏まえまして、独占禁止法違反行為に対しては厳正に対処してまいりたいと考えているところでございます。
○岩渕友君 今の答弁にあったとおり、いろんな可能性があるということだと思います。もちろんケースに応じてということだと思いますけれども、いろんな可能性があるということだと思います。
最後に、EUでは、昨年五月に施行された一般データ保護規則で、忘れられる権利であるとかデータポータビリティーが盛り込まれるということになりました。
個人情報を守る制度があってこそ、デジタル市場の健全な発展につながると考えます。このことを述べて、質問を終わりたいと思います。
○浜口誠君 私は、ただいま可決されました私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・国民の声、立憲民主党・民友会・希望の会、国民民主党・新緑風会、公明党、日本維新の会・希望の党及び日本共産党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
一 公正取引委員会による実態解明と一般消費者の利益、及び減免申請を行う事業者の予見可能性を確保する観点から、新たな課徴金減免制度における事業者が自主的に提出する証拠等の評価方法について、ガイドラインにおいてその明確化を図ること。特に、カルテル・入札談合の対象商品・役務、受注調整の方法、参加事業者、実施時期、実施状況等の評価対象となる情報について、評価方法の考え方や具体例を分かりやすく明示すること。また、制度の運用状況を検証しつつ、適時適切にガイドラインの見直しを行うこと。
二 新たな課徴金減免制度において、事業者の調査協力度合いに応じた減算率を適用するに際しては、より高い減算率を得ること等を目的として事実を歪曲した資料の提出や供述調書の作成により迅速な実態解明が阻害されることがないよう留意すること。
また、調査協力や供述内容等により、従業員が事業者から不当に不利益な取扱いを受けることのないよう、企業コンプライアンスの向上に対する支援を充実するなど、適切な対応を行うこと。
三 いわゆる弁護士・依頼者間秘匿特権に関して規則・ガイドライン等を整備するに当たっては、対象となる範囲、要件について、国際水準との整合性を可能な限り図るよう留意した内容とするとともに、新制度の運用を検証しつつ、その在り方の検討を継続すること。
四 秘匿特権について、事業者と弁護士との間の相談に係る法的意見等についての秘密を実質的に保護できるよう、公正取引委員会における判別手続と審査手続を明確に遮断する等、適正手続を確保する制度を本法施行までに整備すること。
また、手続の透明性、信頼性及び事業者の予見可能性を確保するため、秘匿特権に関する運用事例を定期的に公表するよう努めること。
五 経済活動のグローバル化や多様化、複雑化の進展を踏まえ、競争政策や競争法の国際調和を更に進めるとともに、国際市場分割カルテルなど、日本国内で売上額が生じない事業者に対する課徴金の賦課等についても、引き続き検討を行うこと。
六 デジタル・プラットフォーマーをめぐる取引環境に関するルール整備に当たっては、寡占・独占による弊害が生じないよう、イノベーションの促進と利用者の保護等に配慮しつつ、取引環境の透明性・公正性の確保、データの移転・開放等の在り方等に関する調査・検討を早急に進め、国際的にも整合性のある適切な競争環境を確立すること。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○委員長(浜野喜史君) ただいま浜口君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(浜野喜史君) 全会一致と認めます。よって、浜口君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、宮腰内閣府特命担当大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。宮腰内閣府特命担当大臣。
○国務大臣(宮腰光寛君) ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。