2019年11月14日(木) 参議院 経済産業委員会「梶山経産大臣の所信的挨拶への質疑」
「台風被害と東電人べらしの問題について」
岩渕友議員は14日の参院経済産業委員会で、台風15号などで鉄塔や電柱の倒壊・損壊による大規模停電が発生したことを受け、国の責任をただしました。
岩渕氏は「台風が頻繁に上陸する九州、沖縄、四国電力では強度が高い電柱を使うなどの対策が取られている」と紹介。「大規模停電は命と暮らしに関わる大問題。これまでの延長線でない対策、検討が求められる」と語りました。
岩渕氏は、鉄塔や電柱の老朽化が懸念されるにもかかわらず、東電が電柱の取り換え本数を減らすなどでコスト削減していると指摘。「安全性に影響がないか、国が検証するべきだ」と迫りました。梶山弘志経済産業相は「法令を順守した上でのコスト削減は民間企業として合理的だ」と強弁しました。
岩渕氏は東電が送配電に関わる人員を、直近で2016年度比で約85%まで削減していると告発。東電は経産相が認定する福島第一原発事故後の事業計画で大幅な人員削減を進め、送配電事業の合理化で年平均約1200億円をねん出し、廃炉資金に充当するとしています。
岩渕氏は「熟練技術者が減り、質的劣化が起きていないか。国の責任で把握する必要がある」と述べました。
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質問資料1 全国の鉄塔・電柱の建設数【PDF版】【画像版】
質問資料2 東京電力および東京電力HDの社員数【PDF版】【画像版】
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○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
相次ぐ台風と大雨で犠牲になられた方々、被災をされた方々にお悔やみとお見舞いを申し上げます。
台風と大雨は、店舗や工場、機械設備の浸水など、商工業にも深刻な被害をもたらしました。中小企業関係被害額は、十月二十九日現在、福島、宮城、長野、栃木の四県だけでも四千七百六十七億円に上っております。
福島県内で被災をされた業者の皆様から話をお聞きをしてきました。自宅も店も機械も浸水をした、借金をしてまで商売を続けようと思えない、このままだと町がなくなってしまうという方。地域に店の明かりをともしたいと思い、やっとのことで店を再開、消費税が一〇%になって土日の客が減った、さらに、お客さんも被災をして、今後どのぐらい客が来てくれるのかは未知数だというレストランの方。台風と大雨で二度被災をされた方や、東京電力福島第一原発事故で避難をした先で営業を再開したのに今回の台風や大雨で被災をされたという方もいらっしゃいます。事業再開の見通しが立たない中小・小規模事業者の方々も多くいらっしゃる中で、力尽きそうな思いでいる事業者の方々が事業の再開や再建を諦めることがない、意欲が湧くような強力な後押しが求められています。
そこで、大臣にお伺いするんですけれども、中小・小規模事業者は日本の経済を支える屋台骨です。八日に閣議決定をされた政策パッケージで幾つかの補助金が措置をされました。使いたい事業者がしっかり活用することができるように、実態やニーズに応えて柔軟に対応するということでいいと思うんですけれども、大臣に確認をします。
○国務大臣(梶山弘志君) 今回の一連の災害の被災地向けの生活、なりわい支援パッケージは、こうした取組を中心に、国が最大限全力で支えてくれると被災事業者にはっきり伝わる対策を盛り込んでおります。国で決めたパッケージのみならず、県、市町村、中小企業団体とも連携を取っているということで、国の政策が取り上げられていますけれども、例えば従来の債務がある、そういう、今後また債務を抱えると大変なことになる、また、その与信の枠があるのかどうなのかというような問題もあります。グループ補助金の中でも四分の一は自己資金ということになる、その自己資金の調達もどうしたらいいのかというような悩みもある。それらも含めて、国、県、市町村、そして中小企業団体も含めた形で連携をしながらやっていこうということで申し合わせているところであります。
具体的には、特に被害の大きい宮城、福島、長野、栃木では、被災事業者がグループで工場、店舗などの復旧を行う際に、その費用の四分の三を補助する先ほど申しましたグループ補助金。また、店舗改装、事業再開時の広告宣伝など様々な費用を補助する持続化補助金。さきに述べた四県は上限二百万、その他は百万円を補助するという形になっております。
これらの補助金については、東日本大震災から復興途上にある宮城県、福島県の一定の要件を満たした被災事業者が負担のない形でなりわい再建に取り組めるように、特別な支援制度の枠組みも措置をしているところであります。
いずれにしましても、しっかりとみんながそれぞれの地域も含めて被災者のことを見ていく、そして再建の意欲がある人たちにはしっかりと応援をしていく、そういった形で最後までこちらも注視をしながら対応してまいりたいと思っております。
○岩渕友君 今紹介をいただいたように、対策パッケージではグループ補助金だとか持続化補助金が措置をされています。
昨年の西日本豪雨では、こうした補助金を活用して車とかパソコンなどを購入しようというときに、復旧が目的だから同程度の状態のものを探すように言われて探すのが大変だったという声が出されて、今回も同じようなことが起きると困ると、こういうような声が寄せられているんですね。
同程度の復旧ということではなくて、現場の実態に合わせて柔軟な対応をすべきだと思うんですけれども、どうでしょうか。
○政府参考人(前田泰宏君) お答えいたします。
御指摘のとおり、平成三十年七月豪雨においてグループ補助金と持続化補助金を措置しております。
そのとき、グループ補助金は原則として施設及び設備の復旧に要する経費を対象とするために、今も御指摘いただきましたように、同等性ということを言っておりましたけれども、事業者御自身がこの同等性を証明するんだということの運用をしておりましたけれども、それに負担が重いということがありましたものですから、実はその設備のメーカー側に修理不能であることの証明とか、入替え設備が同等であることの確認書を提出すれば足りるというふうに運用を緩和したところでございます。
さらに、その復旧のみならず、そのグループ補助金の中で、事業の再開、売上げ回復を促すために、従前の施設等への復旧では事業再開や継続、売上げ回復が困難な場合には、製造ラインを新製品に対応できるように転換するなどの新しい新分野についても施設等の整備に係る費用を補助対象としているというところでございます。
それで、今パソコンと車両というお話ありましたけれども、この三十年の七月の豪雨から、業務用のパソコンと車両につきまして、新たにこれをグループ補助金の対象にしたというのも運用の緩和でございます。
それから、持続化補助金につきましても、事業者の事業再建に向けた幅広い経費を対象としておりまして、原状復旧を要件としておりませんので、店舗が被災した事業者が新たに移動販売に取り組む場合の費用なども補助対象としております。
いずれにいたしましても、現場の声を聞きながら、より使いやすい形で、あるいは分かりやすい形でお伝えしていきたいというふうに思っております。
○岩渕友君 今お話しいただいたような中身をちゃんと現場に徹底するということが非常に大事なんだというふうに思うんですね。
それで、災害対応として、今回対策パッケージに災害対応としては初めて自治体連携型の補助金が盛り込まれています。グループを組まなくてもいいということだったり、工場や店舗、備品などにも活用できる補助金だということで期待の声も出ています。補助の上限なども含めて自治体が主導で決めるということなんですけれども、必要な事業者が活用できるように、自治体任せではなくて周知徹底をしっかりやってほしいということをまずは求めたいんです。
そして、あわせて、自治体が積極的に施策しようと、行おうとすると予算が足りなくなる可能性があるのではないかと、こういう心配の声がもう既に寄せられているんですよね。こうした懸念に応える予算措置が必要なのではないでしょうか。
○政府参考人(前田泰宏君) お答え申し上げます。
自治体連携型補助金は、被災の中小企業・小規模事業者の再建を行う都県に対して国庫補助を行うことで負担を緩和をして、都県がしっかりと再建支援に取り組んでいけるように支援していくものでございまして、これは初めての措置ということもございますので、私どもの地方局の職員を派遣したりして一緒にこの要綱等を作り上げていくということをしたいと思いますのと、事業者を中心とする、あるいは支援団体に対してきめ細かい説明会を行うなど、丁寧に丁寧に、スピードを上げながらでも丁寧にやっていきたいと思っております。
それから、予算の話でございますが、今回一応予備費ということで緊急的に必要となる経費を計上したものでございますので、今後、被災自治体もよく連携をして、今後必要なことがありましたら、それもちゃんと手当てしていくように検討していきたいと思っております。
○岩渕友君 ありがとうございます。
加えてなんですけれども、衆議院の経済産業委員会で我が党の笠井亮議員が、被災をした消費税一〇%に対応するいわゆるPOSレジの問題で、国が肩代わりするぐらいの支援策が当然必要だということで質問をしました。私自身も、このPOSレジ被災への対応をしてほしいという声をいろいろなところでお聞きしているんですよね。梶山大臣が、どういう手だてが可能なのか検討していると、こういうふうに答弁していただいていますけれども、これ検討をしっかりやっていただきたいということを私からも求めてだけおきたいというふうに思います。
それで、台風、そして大雨によって停電が発生をしています。特に台風十五号では、千葉県で送電用の鉄塔二基が倒壊をして、約二千本の電柱が破損、倒壊をしました。最大供給支障戸数は約九十三万四千九百戸に上っていて、千葉県では約六十四万戸が停電、復旧までに二週間以上、住民生活やなりわいなど被害はあらゆるところに及んでいます。昨年、関西などを襲った台風二十一号でも、最大で約二百二十万世帯が停電をしました。現場で復旧に当たられた関係者の方々に敬意を表したいというふうに思うんですね。
ここ数年、台風や大雨が頻発をしていて、今後も地球温暖化の影響で大規模な台風発生の頻度が増加すると、こういうふうに言われていて、想定外だというふうには言えない状況になっています。
鉄塔や電柱など電気設備の技術基準ですけれども、風速四十メートル毎秒ということになっていますけれども、この基準を見直す必要があるのではないでしょうか。
○政府参考人(小澤典明君) お答えいたします。
今回の台風十五号では、委員御指摘のように、千葉県君津市において鉄塔二基が倒壊、それから電柱、これは東京電力管内でございますけれども、千九百九十六本が損壊したということでございます。
経済産業省としては、こうした倒壊、損壊事故の原因究明と再発防止策の検討のために、今月五日から新たなワーキンググループ、これは鉄塔及び電柱の損壊事故調査検討ワーキンググループと申しますけれども、これを設置いたしました。現在、鉄塔の損壊現場への立入調査も含めまして、鉄塔、電柱の損壊原因の調査、さらには現行基準の適切性などについて検討を進めているところでございます。
今後、このワーキンググループにおける検討結果等を踏まえまして、技術基準の見直しも含めた必要な対策の検討を行っていく考えでございます。
○岩渕友君 ワーキンググループの中では、あらゆる災害に耐え得る強度設計を検討するのは不可能だとか、風の強さを決めるのは難しいと、風圧荷重をただ上げればいいわけではないと、こういった否定的な意見も出されたというふうに読んでいます。
昨年の北海道胆振東部地震や相次ぐ台風、豪雨災害での大規模停電などを受けて行われている電力のレジリエンスワーキンググループでの議論を踏まえて、送電線や配電線、電柱など設備の総点検が行われました。総点検の結果、健全性に問題がある設備がないということが確認をされたというふうになっているんですけれども、その後も大規模停電起きているわけなんですよね。
事故の原因として倒木であるとか飛来物が挙げられていますけれども、台風が頻繁に上陸をしている九州や沖縄、四国電力などでは、強度が強い電柱を使ったり、根入れを深くするとか、径間を縮めるとか、場所によっては二本の電柱を鉄材で強化すると、また、強風に耐え得る低風圧電線を使用する、こういった対策が取られていて、だから電柱が軒並み倒壊するということがあり得ないと報道でも紹介をされています。電気設備の技術基準についても、自主基準で九州電力は風速五十メートル毎秒だと、沖縄電力は六十メートル毎秒だというふうにしています。
大規模停電はやっぱり命や暮らしに関わる重大な問題ですので、これまでの延長線ではない対策、そして検討が求められているのではないでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 昨年の台風二十一号や二十四号、そして北海道の胆振東部地震に伴う停電に続き、今年もまた台風十五号等によって大規模な停電が発生したことは大変重く受け止めているところです。大規模停電を繰り返さないために、停電プロセスを徹底的に検証し、その原因を究明した上で適切な再発防止策を実施することが重要と認識をしております。
今年の台風十五号、十九号による停電においても、現在、専門家による公開のワーキンググループにおいて、徹底的な検証や再発防止策の検討を行っているところであります。具体的には、ワーキンググループでの検討に基づいて今月六日に公表をされた中間論点整理では、関係省庁との連携した無電柱化の推進、鉄塔、電柱の技術基準の見直しを含めた検討などの対策が今後検討すべきものとして整理をされたところであります。
年内の最終取りまとめに向けて引き続き検討を行い、今回の停電を適切に踏まえた再発防止策を実施をしてまいりたいと考えております。
○岩渕友君 お配りしている資料の一を見ていただきたいんですけれども、全国の鉄塔、電柱の建設数ということで、鉄塔や電柱などの設備の建設が六〇年代、七〇年代から本格的に行われています。電柱の寿命は決められていないということなんですけれども、建設から五十年以上たっている設備もあって、老朽化が心配をされています。
さらに、専門家の方からは、電柱には電話やテレビや光ケーブルや信号ケーブルなどが次々添架をされていて重くなっていると。倒壊をした電柱の安全率が不足となっていないか調べる必要があるんじゃないかと、こういったお話もお聞きをしました。
東京電力は、管轄地域に約六百万本の電柱があります。電柱の取替え時期の研究を行って新たに取替え評価基準を制定をして、年間取替え本数を四〇%削減をして、年間約百億円のコスト圧縮を実現したというふうにホームページで掲載しているんですね。
ただ、コスト圧縮と言われても非常に心配だと。コスト圧縮によってその設備の安全性に影響が出ていないか、これ、東京電力任せにするんではなくて、国が検証するべきじゃないかと思うんですけれども、大臣、どうでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 電気事業者が電力設備の安全を確保することは電気事業の大前提であると認識しております。このため、電気事業法において、国の定める技術基準に適合するよう設備を維持すること、国に提出した保安規程に基づき必要な保守点検を行うことなどが義務付けられているところであります。
御指摘の設備の取替え基準見直しについては、電気事業法に基づく技術基準に適合した上での措置であると承知をしております。法令を遵守した上でのコスト削減は、民間企業である以上、合理的なことであると認識をしております。
なお、万が一にも電気設備の安全性に疑義があれば、国は立入検査を行い、必要に応じて技術基準に適合するよう命令を行うこととしております。さらに、技術基準そのものについても、必要に応じて見直しを行っているところであります。
引き続き、電気事業法に基づいて電気事業者の取組をしっかりと確認をし、電気設備の安全確保に万全を期してまいりたいと考えております。
○岩渕友君 そのコスト圧縮というのが非常に心配だということがあるわけですよね。だから、しっかり検証、調査してほしいということなんです。
それで、送配電に関わる人員が減っているということで、現場の巡視作業が下請業者に投げられて、巡視作業の精度について責任がどうなっているのか心配だと、こういう声もお聞きをしているんですね。
資料の二を見ていただきたいんですけれども、メンテナンスで重要なマンパワーがどうなっているのかということで、それで、この資料二は、東京電力及び東京電力ホールディングスの社員数なんです。全社員数のピークは一九九五年度で、四万三千四百四十八人です。事故があった二〇一一年度に三万八千七百一人いた従業員は、二〇一八年度には二万八千九百三人にまで減っています。送配電網の保守点検を行うパワーグリッドの従業員は、分社化した二〇一六年度を一〇〇とすると、二〇一八年度には八四・七%と、減っている割合が最も大きくなっているんですね。
熟練の技術者が減っている、技術の継承ができているのか、質的な劣化が起きているのではないかと懸念をする声も聞いています。電気の安定供給は命や暮らしに関わる問題なので、それを支えている現場の実態について、国の責任で把握する必要があるのではないでしょうか。大臣、お願いします。
○国務大臣(梶山弘志君) 御指摘の内容につきましては、東京電力に改めて聞いたところ、人員の減少は、主に他会社への業務の移管や設計業務等の外製化、管理部門の一元化等によるものであり、安定供給に必要な技術者や作業員などの人員はしっかりと確保をし、必要な研修や訓練を実施していると確認をしたところであります。
その上で、政府としても、安定供給の確保に必要となる現場の技術の継承は重要な課題であると考えておりまして、必要に応じて東京電力に対して適切に指導をしてまいりたいと考えております。
○岩渕友君 何で東京電力の従業員が減っているのかということで、東京電力が原発事故を受けて経営の合理化を進めてきています。そのことが大きな理由となっているわけなんですけれども、結局は、電気の安定供給に必要な人員を削減することにこれ政府がお墨付きを与えているということになるんじゃないかと。こうした方針を見直す必要があるんだと思うんですね。
廃炉優先だというふうに言いながら、第一原発では工事や作業のミスが今相次いで起きています。原子力規制委員会の更田委員長が電気や品質管理などを行う要員が足りているのか懸念があるということで、六日の原子力規制委員会の会合の中では、現場の検査官から、現場に目が行き届いていなくてトラブルが多発しているとか、東電職員に余裕がないといった報告が行われてもおります。
政府が再稼働方針の下で東京電力が再稼働を進めると。さらには、日本原電への資金の支援も決定すると。でも、その一方で、送配電事業や廃炉事業の人員が削減をされていると。さらには、関西電力で役員が元助役から多額の金品を受け取っていた原発マネー還流疑惑も起きていますけれども、その大本にも原発再稼働政策があるんだということです。
○委員長(礒崎哲史君) 申合せの時間が来ておりますので、おまとめください。
○岩渕友君 はい。
関西電力任せじゃなくて、国が全容解明に責任果たすべきだと、さらには原発ゼロと再エネの転換を求めて、質問を終わります。