2019年11月28日(木) 参議院 経済産業委員会「情報処理促進法改正案」
「楽天市場送料無料問題について」
日本共産党の岩渕友議員は28日の参院経済産業委員会で、インターネット通販大手の楽天が楽天市場の出店業者に、一律に送料負担を押し付けようとしている問題を追及しました。
楽天は2020年初めから「送料無料ライン」を導入し、利用者の購入金額が3980円以上の場合、送料を楽天ではなく出店業者に負担させる計画です。優越的地位を利用して取引相手に不当な不利益を与える、独占禁止法上の「優越的地位の乱用」に当たる疑いがあります。
公正取引委員会の実態調査によると、楽天市場の出店業者の9割以上が「規約を一方的に変更された」などと答えています。
出店業者からの不満などについて公取委の杉本和行委員長は、情報提供窓口などを通じて「認識している」と答弁。岩渕氏が「楽天による送料無料の押し付けは是正させるべきだ」とただすと「独禁法に違反する事実に接した場合には、厳正に対処する」と答えました。
岩渕氏は「事前に是正することが必要だ」と強調。出店業者は中小業者が多いため「このままだと送料分を商品代金に上乗せせざるを得なくなり、消費者の利益も損なうことになる」と主張しました。
また岩渕氏は「楽天をめぐる問題はこれだけではない」と指摘。「規約・ガイドライン」に反すると点数が累積され「年間違反点数が100点になると違約金は300万円」などの実態を示し、公取委に是正を求めました。
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質問資料 通販サイト出店事業者へのアンケート結果【PDF版】【画像版】
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法案への反対討論
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○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
本法案は、政府調達におけるクラウドサービスの安全性評価を行う機能をIPAに追加するとしています。
これに関わって、大臣は、衆議院の質疑の中で我が党の笠井亮議員が、政府調達におけるクラウド導入に向けた採用基準にデータセンターを国内に設けることを条件にするべきではないかと、こういうふうに質問をしたのに対して、データセンターの国内設置が一律に求められるようなことにはならないと考えていると答弁をしています。
そこで、総務省にお聞きをします。グーグルやアマゾンのサーバーは国内に設置されているでしょうか。
○政府参考人(竹村晃一君) お答えいたします。
グーグル及びアマゾンに関しまして、電気通信事業法の規律対象となる他人の通信を媒介するサービスについては、国外にサーバー等を設置して日本国内向けのサービスを行っているというふうに承知をしております。
○岩渕友君 これ、国外にサーバー等が設置されているということで、通信の秘密を遵守する義務を含んでいる電気通信事業法の規律が及ばないということになって、非常に重大だということです。
次に、経産省にお聞きをします。このグーグルやアマゾンのクラウドサービスのサーバーは国内に設置されているでしょうか。
○政府参考人(西山圭太君) お答えを申し上げます。
今お尋ねのAWS及びグーグル社の公表情報によりますと、クラウドサービスの利用におきましては、利用者の方が選択をすれば日本国内に設置されたサーバーを利用することができるという選択肢が用意されているというふうに承知しております。
以上です。
○岩渕友君 今の答弁でも分かるように、選択できるということなので、このクラウドサービスのサーバーは国内にも設置をされているということになります。
ところが、総務省に確認をしたところ、国内にサーバーが設置をされていても、クラウドサービスは電気通信事業法の対象にならないということでした。通信の秘密、そして安全性が守られる法の担保がないということになります。
政府調達において、先日の参考人質疑で、参考人の皆さんにこの問題をお聞きをしたわけですけれども、サーバーの設置は、原則からいえば国内の方が望ましいという回答であるとか、安全保障とデータの置き場所という観点でいえば国内にある方が安全だと、こういうようなお話がありました。
政府調達におけるクラウド導入に向けた採用基準として、サーバーの国内設置を最低限の条件にする必要があるということを改めて強く求めたいというふうに思います。
次に、デジタルプラットフォーマーについてお聞きをいたします。
インターネット通販会社の楽天は、今年の八月一日に、利用者が購入をした金額が三千九百八十円以上の場合は送料をゼロにするんだと、ゼロ円にするんだということを発表しました。これ、誰が負担をするのかということなんですけれども、この送料は出店事業者が負担をするということで、死活問題だと、こういう怒りの声が出店事業者の皆さんから上がっています。
そこで、公正取引委員長にお聞きをするんですけれども、この問題、独占禁止法の優越的地位の濫用に当たるのではないでしょうか。
○政府特別補佐人(杉本和行君) そのような報道があったことは承知しておりますが、個別の事案についてはお答えするのを差し控えたいと思います。
なお、一般論として申し上げますと、自己の取引上の地位が出店者に優越しているオンラインモール運営業者が、オンラインモール利用の拡大を図るために、取引の相手方に対して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えるようなやり方で取引条件を変更するような場合には、優越的地位の濫用として独占禁止法上問題となるおそれが多いと考えております。
○岩渕友君 今、委員長も報道でこういうことがあったということは承知しているというお話もありました。
それで、この問題について出店事業者の方たちからお話をお聞きしました。楽天の三木谷社長は、店舗のほとんどはこの送料無料の問題について納得をしているんだというふうに言っているんですね。なんですけれども、この楽天には、出店事業者向けの掲示板、出店事業者だけが書き込んだりできる掲示板でRON会議というものがあるんです。この中でも、この三木谷社長の発言を引いて、ほとんどと言うけれども一体誰のことを言っているんだということを楽天に問う書き込みがあったそうですけれども、これに対して楽天からの回答はないんだということです。
この問題をめぐって、RON会議の中で行われたアンケートでは、十月三十一日時点で反対が千九百四人、そして賛成は六人という結果になっていて、反対をするのが多くの事業者の声ということになっています。楽天に出店する事業者というのはもう全国にいるわけなんですよね。なので、この問題の影響というのは非常に大きいものです。
ところが、楽天が行った出店業者向けの説明会で、離島や遠隔地の注文は赤字になるじゃないかと、こういった意見が出たのに対しても、それならキャンセルすればいいじゃないかという回答を楽天が行ったということでした。
この問題、その後、送り先が沖縄や離島の場合は九千八百円以上で送料無料ということに変更をされたそうなんですけれども、沖縄、離島の場合だけ九千八百円以上にするのはおかしい、こういう声や、沖縄の業者が沖縄県内に商品を送る場合も九千八百円以上ということになるじゃないかということで、これ矛盾しているんじゃないのかという声が上がっています。
プラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応したルール整備を進めるに当たって、公正取引委員会は、特に問題点の指摘が多いオンラインモール及びアプリストアにおける取引に係る独占禁止法、競争政策上問題となるおそれのある取引慣行等の有無を明らかにするということで、今年の一月からデジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査を行っています。公正取引委員会が設置をした情報提供窓口には、九月三十日時点で九百十四件の情報提供がありました。オンラインモールとアプリストアの運営事業者、利用事業者からも聞き取りが行われています。
そして、今日、資料をお配りしているので見ていただきたいんですけれども、今年の二月から三月までにかけて行われたオンラインモールの出店事業者アンケートの結果が四月に中間報告という形で公表をされております。これを見ますと、この資料にあるように、規約を一方的に変更をされた、規約変更に不利益な内容があった、通販サイトからの説明に納得できなかったなど、いずれも楽天が九割を超えて圧倒的に多い状況ということになっているんですね。
そこで、公正取引委員長にお聞きをしたいんですけれども、楽天に出店をしている業者の方々もこの窓口に情報提供をしたというふうにお聞きをしています。送料無料問題も含めたこうした実態、問題について、委員長、当然把握をされていますよね。
○政府特別補佐人(杉本和行君) 委員の御指摘にございましたように、オンラインモール及びアプリストアにおける事業者間取引を対象にしたデジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査を行いまして、本年十月三十一日に報告書を公表したところでございます。
本報告書を取りまとめるに当たりまして、情報提供窓口における情報提供の募集やアンケート調査及びヒアリング調査を行っておりまして、そこに寄せられたオンラインモールやアプリストアを利用する事業者のデジタルプラットフォーマーに対する不満や指摘は認識しているところでございます。
この報告書におきましても、運営事業者が規約を変更し、利用事業者が運営事業者に支払う手数料を引き上げる、また、新しいサービスの利用を義務化してその利用手数料を設定することなどがあり、「このような規約の変更により、自己の取引上の地位が利用事業者に優越している運営事業者が、正常な商慣習に照らして不当に、利用事業者に不利益を及ぼす場合には独占禁止法上問題(優越的地位の濫用)となるおそれがある。」と記載しているところでございます。
○岩渕友君 今の答弁でも、様々な問題について委員長も把握しているということです。
これ、楽天による出店事業者への送料無料の押し付けということになると思うんですけれども、是正させるべきではないでしょうか。委員長に聞きます。
○政府特別補佐人(杉本和行君) 個別の事案についてのお答えは差し控えたいと思いますが、公正取引委員会といたしましては、独占禁止法に違反する事実に接した場合には厳正に対処してまいりたいと考えているところでございます。
○岩渕友君 先ほどお話があったように、いろんな問題が出されているわけなんですよね。これ、やっぱり事前に是正するということが必要だということになると思うんです。
それで、出店事業者の皆さんというのは、中小事業者の方たち、そして家族でやっているような小規模な事業者の方たちが多くいらっしゃるわけなんですよね。納得がいかないなと思うようなことがあっても、生活が懸かっているのでもう言われたとおりにせざるを得ないと、泣き寝入りせざるを得ないというのが現状です。このままだと送料分を商品代金に上乗せせざるを得ないと、こういうような事態にもなりかねない、そうなれば消費者の利益も損なうということになるわけですよね。
同じことを大臣にもお聞きしたいんですけれども、この楽天による出店事業者への送料無料の押し付け、これ是正させるべきではないでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 独禁法の適用につきましては、公正取引委員会で判断されることであります。
個別の案件については答弁することは差し控えたいと思っておりますが、一般論として、デジタルプラットフォーマーと中小企業等の取引先企業との間において必要な情報提供や十分な意思疎通が図られることが重要と考えております。
先ほど委員からルールの整備の必要性についても言及がありましたけれども、デジタルプラットフォーム企業と取引先企業等との取引の透明性や公平性を高めるための法案については、デジタル市場競争本部の下、関係省庁と連携をしてまいりたいと思っております。
○岩渕友君 デジタルプラットフォーマーと利用事業者との間にはやっぱり大きな格差があるわけですよね。先ほどもお話をしたように、非常に中小業者の方であるとか小さい事業者の方たちも多いと。このままだったら、もうやめざるを得ないというような方たちもいらっしゃるわけなんですよね。
楽天をめぐる問題というのは、これだけではないんです。違反点数制度というものがあって、楽天が決めた規約ガイドラインに違反をすると交通違反のように点数がどんどん累積をされていって、その点数によってランキングの掲載が制限をされるとか、検索の表示がダウンさせられると。順番がダウンさせられるとか、そういった制限が掛けられるんですよね。年間累積違反点数が七十五点以上からは違約金が課せられて、百点になると違約金は三百万円にもなると。それだけじゃなくて、最悪の場合は原則契約解除と、もう退店ということになっちゃうんですよね。
商品の背景を白抜き画像に変更しなければ罰金だと、こういうふうに言われて、やむなく二十数万円も掛けて直したとか、何千点もの商品の画像を徹夜で全部直したと、こう言っている業者の方たちもいらっしゃるんですね。このように、規約を一方的に変えられるという話もありました。あらゆることに手数料が掛かっていて、ある業者の方は年間売上げの二〇%近くが手数料だと、こういう話もありました。こうした実態がほかにもあるということなんです。
引き続き、この楽天を含めて、デジタルプラットフォーマーに関わる問題取り上げるということを述べて、質問を終わります。
○岩渕友君 私は、日本共産党を代表し、情報処理促進法改正案に反対の討論を行います。
AI、IoTなど新たなデジタル技術は、人類の社会進歩と平和、福祉の向上を目指し、あらゆる人々の社会参加が可能な未来をつくり出すためにこそ役立てられるべきです。ところが、デジタルトランスフォーメーションを推進するとする本法案は、以下、重大な懸念と問題点があり、賛成できません。
第一に、米国基準に準拠して、情報処理推進機構、IPAが設計するアーキテクチャーは、既存の事業分野に横串を刺して規制のアップデートを図り、新しいビジネスモデルを創出するといいますが、結果として、消費者保護や安全の確保を後回しにし、個人情報を含むデータ利活用ビジネス優先となる懸念があるからです。
プライバシー権の保護、個人の尊厳の観点から個人情報の自己コントロール権を保障したEUの一般データ保護規則に比べて極めて脆弱な日本の個人情報保護制度の下で、これ以上個人情報をデータビジネスに差し出すわけにはいきません。
第二に、本法案に基づき来年秋に導入する政府調達におけるクラウドサービス事業者の採用基準として、サーバーの国内設置や通信の秘密遵守の義務を担保する保障がないからです。
海外クラウド企業の本国でシステム障害が起きた場合に、政府調達の信頼性や国民生活に重大な影響をもたらしかねません。これは、日米デジタル貿易協定にあるデータセンター等の現地化要求の禁止を先取りし、TPP協定をも超えて、公共政策を含め、例外なく個人情報の国境移転の自由を認めることになります。
第三に、サイバー攻撃に対して先制攻撃や武力攻撃も辞さないという米国の国家サイバー戦略に日本を深く組み込む懸念を払拭できないものだからです。今年四月の日米安全保障協議委員会、2プラス2でサイバー攻撃が日米安保条約でいう武力攻撃に当たり得ると確認し、当時の防衛大臣が自衛隊による武力行使があり得るとまで国会で明言していることは極めて重大です。
IPAは、既に内閣サイバーセキュリティセンター、NISCと一体的に政府機関の監視活動を行い、さらに、昨年から日米サイバー共同演習に関与するなど、米国の安全保障当局やサイバー軍との関係を深めています。今回、IPAに新たな機能を付与することは、米国のサイバー戦略に巻き込まれる危険を増幅させるものです。
以上申し述べ、反対討論とします。