2019年12月3日(火) 参議院 経済産業委員会「一般質疑」
「浄化処理汚染水問題について」
日本共産党の岩渕友議員は12月3日の参院経済産業委員会で、浄化処理汚染水の保管について、東京電力まかせにせず国が責任をもって検討すべきと求めました。
東電福島第一原発事故によって発生したトリチウムを含む放射能を帯びた汚染水の取り扱いについて、2018年8月に全国3カ所で行われた説明・公聴会でタンク保管の継続を求める意見が相次いだことを受けて、経済産業省内の小委員会で現在も議論が続いています。
岩渕氏は、小委員会におけるタンク保管の継続検討は、東電からの報告を聴取するのみだったことをあげ、国が技術的な検討を行っていないと指摘。報告に対する原子力市民委員会の見解を紹介し「東電の報告をうのみにしている」と批判しました。
また岩渕氏は、東電がこれまで重大なトラブルを次々と起こしていることを示し「東電まかせにせず、国が責任をもって検討すべき」と主張。梶山弘志経産相は「小委員会でしっかりとした議論をした上で結論を出していく」と答えました。岩渕氏は「浄化処理汚染水を海に流さないためにあらゆる方法を検討するとともに、国会も含めて国民的な議論を行うこと」を求めました。
岩渕氏は、原子力規制委員会が東日本大震災被災原発である女川原発二号機の新規制基準「適合」の審査書案を了承したことをあげ、「再稼働は中止すべき」と強調しました。
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○岩渕友君 次に、放射能汚染水をめぐる問題についてお聞きします。
九月十日、当時の原田環境大臣が、東京電力福島第一原発事故により発生をした汚染水浄化後の処理水について、思い切って放出して、それを希釈するという選択肢しかないという発言をしたことに対して、福島県内外から批判の声が上がって、その影響は韓国も含めて国外にも及びました。
全国漁業協同組合連合会の幹部が環境省を訪れて、発言は絶対に許されない、全国の漁業者を代表して断固反対するとともに撤回を求める、本格操業の再開を心待ちにしている地元漁業者の不安、国内外での風評被害の広がりなど、我が国の漁業の将来に与える影響は計り知れないという抗議文を提出するなど、厳しく批判をしました。
この発言に対する大臣の認識をお聞きします。
○国務大臣(梶山弘志君) 御指摘の原田前環境大臣の発言につきましては、あくまでも個人的な意見として述べたものと認識をしております。個々の意見に対するコメントは差し控えたいと考えております。
経済産業省としましては、多核種除去設備、いわゆるALPS等で浄化処理した水の取扱いを議論する小委員会において丁寧な検討、議論を行った上で、政府としての結論を出していく方向であります。
○岩渕友君 原田前環境大臣の発言は、生活となりわいの再建に懸命に取り組んでいる被害者の努力を踏みにじるものです。また、今大臣がおっしゃったように、浄化処理汚染水をめぐっては、経済産業省で、小委員会で議論が重ねられている最中なわけで、結論は出ていないんですよね。こうした議論も踏みにじる暴言だと言わなくてはなりません。
時間が来ておりますので、続きはまたこの後質問をしたいと思います。
以上です。
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
先ほどに続いて、放射能汚染水をめぐる問題についてお聞きをしていきます。
経済産業省が設置をしている多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会ありますけれども、この小委員会が設置をされた目的について、まずは確認をします。
○政府参考人(須藤治君) お答え申し上げます。
多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会は、多核種除去設備等で浄化処理された水、いわゆるALPS処理水でございますけれども、その取扱いについて、風評に大きな影響を与えることから、技術的な観点に加え、風評被害など社会的な観点も含めた総合的な検討を行うことを目的として設置されたものでございます。
なお、検討に当たっては、ALPS処理水について技術的な検討を行ったトリチウム水タスクフォースで取りまとめられた知見を踏まえることとされております。
以上でございます。
○岩渕友君 今答弁があったように、技術的な観点だけではないと、科学的なということもあると思うんですけど、社会的な観点が重要だということです。だからこそ、小委員会の中で議論がこの間ずっと重ねられてきているということだと思います。
九月八日に行われた第十三回のこの小委員会で、東京電力から貯蔵の継続についての報告がありました。これは、昨年の八月三十日と三十一日に全国三か所で行われた小委員会の説明・公聴会ありましたけれども、この説明・公聴会の中で、海洋放出に反対をする意見であるとか、タンク保管の継続を求める意見が相次いだからだということでよろしいですね。確認をします。
○政府参考人(須藤治君) 今先生から御指摘ございましたように、昨年八月に説明・公聴会行っております。この中で、大型タンク等による長期保管を検討すべきであるといった処理水の長期保管や保管方法についての御意見もいただいております。
こうした御意見も踏まえまして、第十三回の小委員会においては、今後の貯蔵の見通しやタンクの増設余地も含めて貯蔵継続のメリットやデメリットを御議論いただきました。その中で御議論いただいたものでございます。
以上でございます。
○岩渕友君 今答弁いただいたように、公聴会の中でそういった意見が出てきたということが発端になっています。
公聴会の中では、長期保管を行えば放射線量が減衰をして、そのことによって処分量を減らすことができるんじゃないかと、こういった意見であるとか、タンクの建設は本当に限界なのかと、長期保管を検討するべきだと、こうした意見が相次いで出されました。さらに、試験操業という形で地道に積み上げてきた福島県水産物の安心感をないがしろにして、魚価の暴落、漁業操業意欲の喪失を招く、福島県漁業に致命的な打撃を与えるといった、漁業者を始めとして多くの方が海洋放出など環境への放出について反対の意見を示しています。
この公聴会での意見を受けて、第十三回のこの小委員会、同じ小委員会の中で、東京電力は、そのほかの保管方式の検討ということで、浄化処理汚染水を貯蔵するタンクの型式の変更について、具体的に言いますと、大容量タンク、そして地中タンク、洋上タンクについて検証した結果をこの小委員会の中で報告をしています。
これらの方法について、国は技術的な検討は行ったのでしょうか。
○政府参考人(須藤治君) 今御指摘ございました第十三回のALPS小委員会における東京電力の報告でございますけれども、東京電力においてタンクメーカーへのヒアリングあるいは現地調査などを行っておりまして、広く工学的な知見に基づいて検討した結果を報告したものと承知してございます。小委員会におきましては大型タンクによる貯蔵と、報告したものと承知をしております。大変失礼しました。
以上です。
○岩渕友君 今の答弁のように、東京電力があくまでも検討したものを報告しているんだということです。これ、つまりは、東京電力からの報告をうのみにしているということなんですよね。
この東京電力の報告を受けて、原子力市民委員会というところが見解を示しております。例えば、東京電力は、大容量のタンクにするという案の設置工事期間について、一基当たりの設置に三年、設置後の漏えい検査等に一年を要するんだと、こういうふうに説明をしているんですけれども、これに対して、間延びしたスケジュールだと、製油所などの通常プラント建設における大規模貯蔵タンクの標準工程は、組立てと検査に約一年、設計や調達、許認可と同時進行が可能な地盤改良や基礎工事を含めても一年半から二年あれば数基建設する期間として十分なんだと、こういう指摘を行っています。
また、その東京電力が、タンクが破損をした場合、一基当たりの漏えい量が膨大になると、こういうふうに述べているんですけれども、これに対しては、原油備蓄等で培われてきた大型タンク技術はその堅牢性においても十分な信頼を置けるだろうと、こういう見解も示しているんですよね。
こうしたいわゆる専門家の意見を踏まえた検討に、東京電力のその報告、なっているんでしょうか。
○政府参考人(須藤治君) 先ほどもお答えを申し上げましたとおり、様々なヒアリングあるいは現地調査を行ったものでございます。
小委員会におきましては、今タンクについての御指摘ございましたけれども、大型タンク、タンクの容量を増やすということかと思いますけれども、大型タンクによる貯蔵と現行のタンクによる貯蔵では単位面積当たりの貯蔵量が変わらないといった、こういったような技術的なことも小委員会で御議論をいただいております。
こういった技術的なことも含めて小委員会で議論をいただきながら、丁寧に検討を進めていくという状況でございます。
○岩渕友君 今の答弁聞いても、結局はうのみにしているということなんですよね。
それで、多核種除去設備に関わって、法律に基づく報告義務があるトラブル、この件数が何件になっているか、答えてください。
○政府参考人(山形浩史君) お答えいたします。
お尋ねのALPSの事故、トラブルについてでございますけれども、二〇一一年の東京電力福島第一原子力発電所事故以降、原子炉等規制法に基づき報告されたものはございません。
また、原子力災害特別措置法に基づく東京電力の応急措置に関する報告総件数ですが、ALPSに関する報告も含め、二〇一九年十一月末時点で二万五百件程度ございます。この中から、二〇一九年のALPSに関する応急措置の報告は、漏えいなど、これ続報などがございますので延べ件数でございますが、延べ二十六件でございます。
なお、原子力規制委員会、当該報告の内容について確認するとともに、必要に応じて現場確認を実施するなどの対応を行ってございます。
○岩渕友君 今答弁いただいたとおり、これだけのトラブルが起きているということなんですよね。
しかも、この公聴会が行われた直前に、東京電力は、汚染水を浄化した後の水にトリチウム以外の放射性物質も残留しているんだということを明らかにしました。けれども、公聴会の資料では基準を超えていない二〇一四年四月二十日から二十八日のデータが使われていたということがあって、これだったら公聴会の前提崩れているじゃないかと、改めて検討をやり直すべきだ、こういう意見まで出たんですよね。
その後、最大約二万倍に当たる放射性物質が検出をされて、浄化されたはずの汚染水約八十九万トンのうち、八割超に当たる約七十五万トンが基準を上回っていたということも分かりました。
十一月十四日にも、東京電力は、第一原発の地下水バイパスでくみ上げた水に含まれるトリチウム濃度の公表データについて、二〇一八年の十二月十三日から二〇一九年十一月八日までに公表した資料のうち、十九日分、計九十二か所に誤りがあったと、こういう発表もしているんですね。担当者が資料作成時に過去のデータをコピーする範囲などを誤ったのが原因で、別の社員による確認も不十分だった、これが原因だというんですけど、こういうトラブルも次々起きているわけなんですよ。
これ、検討を東京電力任せにするんじゃなくて、国が責任を持ってこの検討を行う必要があるんじゃないでしょうか。大臣にお聞きします。
○国務大臣(梶山弘志君) いろいろな資料については提出をいただいております。その上で、小委員会で議論をしております。ここには専門家もおります。そして一般の方もおいでになる。一般の方もおいでになるということは、風評に対する被害の重大さということも含めて議論をしていくということで、そういう形でやっているところであります。
ですから、この小委員会でしっかりとした議論をした上で結論を出していくということになると思います。
○岩渕友君 確かに、いろんな立場の方が参加をされていて議論をしていると。だけど、公聴会の中で、やっぱりそのタンク保管継続してほしいと、海洋放出は心配だと、こういう声が上がって、それで議論するということになったわけですよね。
それが、東京電力がこれだけトラブルを起こしていて、その報告うのみにして、東京電力の報告聞いていると、もうまるでタンク駄目だという理由を探しているような、そういう報告なわけですよ。これ、国がやっぱりしっかり検討を行うべきだということを強く求めたいと思います。
浄化処理汚染水を海に流さないためにあらゆる方法を検討するとともに、国会も含めて国民的な議論を行うということを改めて求めたいと思います。
次に、女川原発をめぐる問題についてお聞きをいたします。
十一月二十七日、原子力規制委員会は、東北電力女川原発二号機について、再稼働に必要な新規制基準への適合を認める審査書案を了承しました。これに対して宮城県内では、防潮堤を越える津波が来れば再び想定外でしたとなるのか、絶対に安全とは言えず不安は消えないなど、不安と怒りの声が上がっています。
女川原発は東日本大震災で被災をした原発です。地盤が一メートル沈下をして、二号機の原子炉建屋では一千百三十か所でひび割れが見付かりました。十三メートルの津波による浸水被害もありました。外部電源五系統のうち四系統が遮断をされるなど、重大事故と紙一重という深刻な事態になりました。
宮城県の女川原子力発電所二号機の安全性に関する検討会でも、再稼働に耐えられるかどうかが繰り返し議論になってきました。女川原発は牡鹿半島のほぼ真ん中にあって、地震や津波で道路が使えなくなれば陸の孤島になってしまいます。牡鹿半島の東の端にある石巻市の寄磯地区は、女川原発から東に約二キロ、事故が起きれば原発に向かって避難をすることになって、その上、約九十世帯が暮らす中で集落に通じる道は一本しかないというんですよね。
こんなことでどうやって避難をするのかと。避難できないんじゃないでしょうか、大臣。
○国務大臣(梶山弘志君) まず、原子力発電所の再稼働について申し上げますと、安全性につきましては、事故の教訓を踏まえて設立された原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認められたものについては、その判断を尊重してまいります。
地元の理解を得ていくことについては、事業者が自らしっかりと地域に向き合い、信頼を積み重ねていくことが最も重要であります。事業者が真摯に努力を続け、地域との信頼関係を築いていくべきであります。
政府も、エネルギー政策における原子力の意義を含め、丁寧な説明を尽くしていく、その中で、避難計画につきましても、関係自治体と連携をしながら政府を挙げて策定を支援し、具体化、充実化に取り組んでいくという方針でございます。
○岩渕友君 とても避難が現実的とは思えるような状況にないと思うんですね。
今年の二月に、女川原発再稼働の是非を問う住民投票条例制定を求めて、県民投票を実現する会が県に提出した署名は十一万一千七百四十三人分に上ったわけですよね。これ宮城県内だけじゃなくて、福島県内でも、東北で再稼働を進めるなんて、認めるなんてあり得ないと、隣県であっても被災者はとてもじゃないけど納得できないよと、こういう怒りと不安の声が上がっています。これ当然のことだと思うんですね。
大臣に聞くんですけれども、女川原発の再稼働はやめさせるべきではないでしょうか。
○委員長(礒崎哲史君) 時間ですので、お答え、簡潔に願います。
○国務大臣(梶山弘志君) 先ほども申しましたように、政府の方針に揺るぎはありません。ただ、避難計画は実効性があるものをしっかり作っていくということであります。昼夜の違い、天候の違い、そして様々な条件が異なるという、変わるわけですから、そういったものに対応できるような避難計画を作っていく、そして御理解をいただいていくということであります。
○岩渕友君 原発ゼロ、地域主体の再生可能エネルギーへの転換を求めて、質問を終わります。
以上です。