2020年3月10日(火) 参議院 経済産業委員会「梶山経産大臣の所信的挨拶に対する質疑」
「新型コロナ被害 中小業者守る対策を」
岩渕友議員は3月10日の参院経済産業委員会で、政府のイベント自粛要請等により、中小事業者や日本経済に甚大な被害が出ていることについて、必要な対策をするよう求めました。
岩渕氏は宮城県内の温泉ホテルで3、4両月の宿泊予約のうち1200人のキャンセルが発生し売り上げが7割以上減ったことを紹介。「切迫した中小業者の実態にどう応えるか」と迫り、梶山弘志経済産業相は「資金繰り等に最善の努力をする。従来の法律の枠を超え、解釈も含め検討する」と答えました。
岩渕氏は政府の資金繰り支援は、第2弾の緊急対策含めて1.6兆円規模にすぎないと指摘し、リーマン・ショック時(2008年)の信用保証枠の総額30兆円規模に増やすなどの財源措置を求めました。
収入がなくても、事業者は家賃や社会保険料など固定費を支払わなくてはなりません。岩渕氏は「これまでも納付の猶予や延滞料の免除を行ってきた。今回もやるべきだ」と強調。これに対し梶山経産相は「運用にあたって厚生労働大臣と話をしてみる」と表明しました。
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質問資料 社会保険料の換価の猶予の申込件数と執行状況(申請型および職権型)【PDF版】【画像版】
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○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
新型コロナウイルスをめぐって、政府によるイベントの自粛要請、さらには安倍首相による一斉休校要請で大混乱となって、国民の暮らしはもちろんですけれども、中小業者にも、そして日本経済にも甚大な影響が出ております。一斉休校要請の翌日から、お昼どきは満席だったけれど、お客さんが全く来なくなったという山形県内のレストランや、三、四月の宿泊予約のうち千二百人のキャンセルが発生、売上げは例年の七割以上減少、このままでは倒産する同業者も出てくるという宮城県内の温泉ホテルなど、先が見えない不安や怒りが寄せられております。
北海道中小企業家同友会が五日に発表をした緊急アンケートの調査結果では、現時点で既に影響が出ている四三%、今後影響が出る可能性がある四六%で、合わせると八九%となって、さらに、道内全ての企業に影響が及んでいるという結果が出ております。
さらに、先ほど紹介ありましたけれども、東京商工リサーチの直近の調査では、大企業、中小企業合わせて、既に影響が出ている、今後影響が出る可能性があると答えた企業が全体の九五%に上りました。今や全ての中小業者に影響が及んで、既に関連倒産が出ているということですけれども、このままでは多くの事業者が倒産、廃業に追い込まれることになる切迫した事態となっております。
先日、中小企業家同友会全国協議会の広浜会長から、一社も潰さない覚悟で臨んでほしいんだと、こういう要望をいただきました。こうした声や切迫した中小業者の実態にどう応えるでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 先ほど来私どもも答弁しておりますけれども、全国で千五十か所の相談窓口へいろんな声が寄せられております。具体的に、一つ一つの相談についても目を通しているところでありますけれども、特に規模が小さくなればなるほど、また観光に頼っている地域であればあるほど、その苦しさというのは大きくなっているものだと思っております。
そういった、コロナ感染症の感染拡大防止のための措置とはいえ、個人の活動が縮小している、企業の活動が縮小している、そういった中で企業の資金繰り等に最善の努力をしてまいりたいと思っておりますし、そういった声の中から、どうすれば助けられるかということも含めて、従来の法律の枠を超えたり、従来の枠、法律の解釈も含めて今検討をしているところでありまして、今日夕方に対策本部にて第二弾の緊急対応策が出ますけれども、それでまた時期が長くなるんであれば、なって影響があるんであれば、さらにまた次の対策も含めてやれることは全てやるという思いで対応してまいりたいと思っております。
○岩渕友君 今大臣からも、従来の枠を超えたという話がありました。安倍首相も、これまでの前例にとらわれない強力な支援策というふうに言っています。この言葉のとおり、従来の枠を超えた対策、そしてそれを担保する抜本的な財政措置が不可欠です。
全国商工団体連合会から話をお聞きしました。石川県内の温泉旅館は、消費税増税によって忘年会や新年会など例年を下回って、今度は新型コロナウイルスの影響で二月、三月で五百五十名のキャンセルが発生、今後更に増える予想。銀行からの借入れは金利だけの支払にしてもらい、仕入先や取引業者には手形、先日付小切手を発行しているけれども決済が厳しい。既往債務の借換え融資を受けて何とか続けていきたいけれども、据置期間の金利支払もきつい状況だという声が寄せられています。地元の信用金庫にセーフティーネット融資が使えないか切り出したところ、新たな融資はできないとその場で即答をされたということです。
麻生大臣が金融機関に資金繰りで万全の対応を要請していますけれども、実態は融資できないとその場で返事をされてしまうと。こうした実態にどう対応をしていくんでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 個別の事情もあろうかと思いますけれども、麻生大臣、そして私の連名で、民間金融機関、そして政府系金融機関に条件変更等の対応についてしっかり柔軟に行うようにという文書を出させていただきました。
そして、条件変更というのは、支払の条件の変更であったり、また据置期間を置いたり、そういったことになろうかと思いますけれども、できる限りそういう対応をしてほしいと。そして、もし銀行法によって、これは財務省、金融庁の方ですけれども、銀行法によってその報告も上げるようにということを指令を、命令をしているところでもあります。
○岩渕友君 既に要請はしているということなんですけれども、やっぱり引き続き強く要請してもらいたいということなんです。この旅館は、多くの旅館が廃業、倒産をする中でも頑張ってきたところなんですね。こうした事業者を守らずにどうするのかということが今まさに問われているというふうに思います。
先日、総理は、大変厳しい状況に置かれている全国の中小・小規模事業者の皆さんにしっかりと事業を継続していただけるように、資金繰りについては前例にとらわれず強力な支援策を講じると言いました。特別貸付制度の創設ということになっていますけれども、それだけではなくて、既往債務について、元本、金利を含めた返済猶予等の条件変更への迅速かつ柔軟な対応、融資審査では、融資先の赤字や債務超過、貸出条件の変更といった形式的な事象のみで判断するのではなくて、事業者の実情に応じて最大限の配慮を行うことなど、これを徹底して、困っている事業者が使えるように更に踏み込んだ対応を政府を挙げてやるべきだということを、これ強く求めたいと思うんですね。
それで、第二弾の緊急対応策が間もなく発表をされるということなんですけれども、財政規模が余りにも少ないんじゃないかと、小さいんじゃないかと。これで柔軟に対応しろといってもできないということだと思うんですね。信用保証枠をリーマン・ショックのときのように三十兆円規模に増やす、こうした大胆な措置が必要です。
リーマン・ショックのときに緊急保証制度における財源措置が幾らだったか、お答えください。
○政府参考人(前田泰宏君) お答え申し上げます。
二〇〇八年のリーマン・ショックを契機とした緊急保証制度におきましては、平成二十年度の第一次補正予算では四千億円、第二次補正予算では三千八百九十一億円、平成二十一年度の第一次補正予算では一兆五百三十六億円、平成二十一年度の第二次補正予算では九千七百八十三億円の措置をしたところでございます。
○岩渕友君 今おっしゃっていただいたとおりで、合わせると二兆八千二百十億円ということになっているんですね。これだけの財源措置がされていたということなんです。
それで、資金を借りられたとしても、保証料の負担そのものが重くのしかかっているということで、これ大臣にお聞きをするんですけれども、セーフティーネット保証の四号、五号で利子や保証料の補助をやるべきではないかということが一つ。
そしてさらに、足利市では中小企業への緊急特別融資制度というのが創設をされて、利子分と保証料は市が全額補助を決めたと。さらには、仙台市などでは保証料の全額補給を決定したということが発表をされました。こうした対策があちこちの自治体で行われているんですよね。
自治体が行う融資への利子や保証料の補助に対して財政的な支援を行うべきではないでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 保証料補助を行う自治体に対してのみ財政措置を行うことは、他の支援策を講じている地方公共団体との公平性や信用補完制度の持続可能性の観点も踏まえて慎重な検討、公平性という点で慎重な検討が必要だと思っております。
それぞれの自治体でそういう形を取っているということは市のその産業を守っていこうという意思の表れだと思っておりますけれども、私どももやれることはしっかりとやろうと思っておりますけれども、この保証料に関してはいろんな段階があって出しているということで、保証の金額に関しては、これはなかなか難しいんではないかなと思っております。
○岩渕友君 先ほどもお話をしたように、負担そのものが重いということなので、慎重な対応ということなんですけれども、このことも併せて是非検討していただきたいということなんです。
それで、売上げがないのに固定費は出ていくわけですよね。出血を止めなければ死んでしまうと、こういう訴えが届いています。そのとおりだというふうに思います。
六日に大臣から公益社団法人リース事業協会に対して、リースの支払猶予について柔軟かつ適切な対応を要請するという文書が発出されています。これ、猶予じゃなくて、リース代や家賃など直接補助してほしいという要求も大きいものがあるんですよね。
無利子というふうに言っても、融資は返さなくちゃならないし、災害が相次ぐ中でこれ以上の借入れをちゅうちょする中小業者も少なくないというのが実態です。直接の損失補填をやってもらわなければもう事業を続けられないと、こういう声も届いておりますので、この直接補填を是非とも検討していただきたいというふうに思います。
それで、社会保険料が納められない、何とかしてほしいという悲痛な訴えもあちこちで寄せられているんですよね。
今日資料お配りをしているので、資料を見ていただきたいんですけれども、これは社会保険料の換価の猶予の申込件数と執行状況の表にしたものなんですけれども、これ、年を追うごとに増えているとはいえ、国税と比較してみると、国税、例えば二〇一八年度は六万件を超えているんです。だから、そのことと比べると桁違いに少ないというのが実態なんですね。今ある制度の活用というのは重要なので、大いに周知徹底をしていただきたいんです。
同時に、通常の対応ではなくて柔軟な対応が必要になってきます。事業者の方からは、新型コロナウイルスにより売上減で社会保険料の支払が厳しくなって延期を求めたんだけれども、関係ないというふうに言われたと。もう一回話をすると、話は分かったけれどもどうにもできないと、もう財産調査を始めるんだということで、一方的な回答に困惑しているという声が寄せられています。
こういう対応は直ちにやめさせるべきだと思うんですけど、大臣、いかがでしょうか。大臣に。やめさせるべきだということで。
○委員長(礒崎哲史君) どなたがお答えになりますか。
○政府参考人(日原知己君) 厚生年金保険料等の納付が困難な事業主の方々に対しましては、申請に基づきまして厚生年金保険料等の納付を猶予するなど、事業主の皆様の状況に応じた納付の仕組みがございます。新型コロナウイルス感染症の影響を受けた場合につきましても、この仕組みをより活用いただきますように、日本年金機構のホームページなどにおきまして一層の周知を図っているところでございまして、この仕組みの活用により柔軟に対応してまいりたいというふうに考えております。
それから、ただいま御指摘をいただきました差押えの点でございますけれども、今御説明をさせていただきました納付を猶予する仕組み、これを御活用いただいた場合には、その猶予が認められた期間中につきましては財産の差押えも猶予されるということになってございます。
○国務大臣(梶山弘志君) 厚労省はこういう見解ですけれども、厚労省のこの納付期限の延長の措置が講じられているということは承知をしております。申請に基づいて厚生年金保険料等の納付を猶予するなど、事業主の方々に状況に応じた納付の仕組みがあることと承知をしておりますけれども、事業主の方にこれらを周知してもらうためのしっかりと広報もしてまいりたいと思いますし、経産省のパンフレットでは厚労省関係の雇用調整助成金に関してもこれも書いてあります。
こういったものも経済産業省のパンフレットやホームページを見れば分かるようにということで次の改定のときに直させていただきたいと思いますし、中小企業関係、企業関係の問題については個々のホームページで分かるようにしてまいりたいと思っております。
○岩渕友君 今答弁いただいたんですけど、通常の対応じゃなくて、やっぱり柔軟な対応必要だということなんですよね。これ、このままになれば差押えということになっていくわけですよね。コロナウイルスの問題で本当に皆さん大変な思いをしているので、こういう対応でいいのかということがやっぱり問われているんだと思います。
中国からのインバウンドに特化をして貸切りバスを配車、運行してきた千葉県の業者は、二月一日以降、仕事はゼロ、バス十二台、ドライバー十一人を雇用、収入がなくても給与は全額補償、雇調金を受けても四割は事業者負担だと。で、乗務員の仮眠室の賃料や事務所の家賃や保険料など、もう固定費は容赦なく出ていく、社会保険料は分割納付は認められるけれども延滞金まで取られる、何とかしてほしいと、こういう訴えも寄せられています。
これまでも、社会保険料の納付の猶予や延滞料の免除、行ってきたはずなんです。これ今回も同様の対応を行うべきだと思うんですけれども、どうでしょうか。
○政府参考人(日原知己君) ただいまお話のございました厚生年金保険料等の納期限の延長でございますけれども、こちらにつきましては、甚大な災害時におきまして、その災害により納付等の行為をすることができないと認められる際に、地域やその期限を一律に指定をいたしまして、全ての事業所に対して実施をしているというものでございます。
他方、先ほどお答えをさせていただきました申請に基づきまして厚生年金保険料等の納付を猶予する仕組み、こちらにつきましては、厚生年金保険料等を一どきに納付することによりまして事業の継続が困難になるなどの場合に、個々の事業所の申請により活用いただける仕組みでございます。特定の地域に影響を限定することが難しく、また、事業所によっても影響の状況が様々であるという今般の状況につきましては、この仕組みの活用により対応していきたいというふうに考えてございます。
○国務大臣(梶山弘志君) 今厚労省からお話あったこの仕組みの運用に当たってですけれども、厚生労働大臣とちょっと話をしてみます。
○岩渕友君 是非ともお願いしたいと思うんですけれども。これまでも、今話があったように、甚大な災害などには対応してきたと、だけれども、経済状況の悪化なんかには対応していないという話もあって、ただ、その関係機関と調整していただくということなので、是非こういう現場の実態踏まえていろいろやり取りお願いしたいというふうに思います。
それで、今は納付の猶予や延滞料の免除ということだったんですけれども、中同協からは、社会保険料の免除、もうそこまでやってほしいんだという要望も出されたんですね。それだけ現場は切迫した状況だということをこれ表しているんだというふうに思うんです。
こうした中小業者の実態について、関係団体からは、この中小企業の逼迫した状況と要望を把握をして緊急施策に反映をさせるために、中小企業の声を聞く機会を設けてほしいと強く要望をされました。千五十か所の相談窓口を設けていると、いろいろな団体の皆さんからも話聞いているんだというふうに思うんですね。なんだけれども、これまで聞くことができてこなかった団体も含めて、幅広い中小企業団体の声、これ是非聞いていただきたいんですよ。これをすぐやるべきだというふうに思うんですね。これが一つ。
そして同時に、いろんな施策が決まっても最新の情報がすぐに伝わらないんだと、何かほかのものを見て初めて知ったと、こういう声もいただいているんです。日々対策が更新をされているので、いろいろ大変だという状況は分かるんですけれども、中小業者団体にすぐ伝わるように改めるべきではないかと思うんですが、どうでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) いろいろな団体の意見を聞いた方がいいのではないかという御意見でありました。中小企業家同友会全国協議会とも三月四日に担当課長が面談を行って、資金繰り支援等を中心とした御要望をいただいたと承知をしております。この一回だけではなくて頻繁に聞く機会を設けたいと思いますし、そういった声を生かしてまいりたいと思います。
また、各役所、縦割りではなくて、今回の対策に関しましてはしっかりと連携をしていこうということで、企業の関係の融資や保証に関しては、経済産業省のホームページでも全てほかの役所のものも分かるように努めてまいりたいと思いますし、現時点でも先ほど申しました雇用調整助成金などは入っているということであります。これからもその努力をしてまいります。
○岩渕友君 引き続き現場の声をよく聞いていただければというふうに思います。
かつてない被害が広がる中で、地域経済の崩壊、底割れを防ぐために、国家的危機だと言っているわけですから、政府は必要なことは何でもやるという観点でフリーランスや個人事業主への対応も検討しているということだったですけれども、損失補償なども含めて抜本的な支援を政府に検討することを求めて、質問を終わります。