2020年5月12日(火) 参議院 経済産業委員会
「割賦販売法改正案」
通販決済 規制さらに
クレジットカード会社など分割払いサービス事業者を規制する割賦販売法の改正案が12日、参院経済産業委員会で全会一致で可決されました。
改正案は、新たに10万円以下の分割後払いを提供する事業者の登録制度を創設します。これにより、インターネット通販で商品を受け取ってからコンビニエンスストアなどで料金を支払う「立て替え払い型後払い決済サービス」事業者のうち一部が規制されます。
日本共産党の岩渕友議員は、今回の改正案でもクレジットカードを使わない1回払いであれば規制されない仕組みだと指摘。「消費者保護の観点からさらなる規制が必要だ」と主張しました。梶山弘志経産相は「課題の把握に努めて対応する」と答えました。
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質問資料① 立替払い型後払い決済サービスの流れ【PDF版】【画像版】
質問資料② 主な立替払い後払い決済サービスと割販法登録状況【PDF版】【画像版】
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○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
法案の質疑に入る前に、大臣、通告していないんですけれども、新型コロナウイルスの対策で持続化給付金のことについて一言お聞きしたいんです。
私のところにも連日のようにいろんな声が寄せられています。申請しようと思ったんだけれども、売上げが四五%減だと、苦しいのは同じなのに五%の違いでもらえないのはおかしいじゃないか、こういう声や、ウエブ申請といっても、その環境がない、やり方が分からない、十万円、十五万円で申請を請け負うという話もあったんだけれども、自分でできるやり方だったらば、それは自分でできるから問題ないんだと。今日の議論の中で、サポート会場が今日から設置されているということなんですけれども、郵送申請もできるようにしてほしいと、こういうお声もありました。そして、雑所得や給与所得で申告している場合も対象にしてほしい、こういう声もありました。いずれも切実な声です。
迅速な支給と同時に、誰一人取り残さないということが非常に重要だと思うんですけれども、こうした寄せられている声にすぐに応える必要があるのではないでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 持続化給付金、四月三十日に補正予算が成立をして、五月一日から受付ということで、第一弾で五月八日に支払が行われ始めているということであります。できるだけ多くの方を支えるという中で、昨年、一年前の同じ月よりも五〇%減っている月があれば、その任意の月で結構ですよというような捉え方もしているわけでありますが、今までに例のない給付という形で、かなり厳しい方を中心にこれを給付をしようということで五〇%という線を引かせていただきました。
ただ、五〇%にまだ行っていない方、頑張っておられる方に対しては何もないのかというと、そうではなくて、持続化の補助金もあれば、いろんな道もあるということで、いろんな提示をその相談窓口等でまたやり取りをすることになっておりますし、商工会、商工会議所等でもそういった別の手だても含めて指導をしているところであります。
申請につきましては、まずは迅速にということで、事業を個人若しくは、又は法人で営んでいる方が中心ということで、それを見極めるのには確定申告書の事業収入というのが一番ということで、そういったことを要件にさせていただきました。
フリーランスの議論をずっとしておりますけれども、フリーランスの方は雑所得であるとか給与所得で計上をしている方もおいでになるということなんですが、雑所得というのは、所得税法の分類に入らないもの、九つの分類に入らないものが全部雑多で入ってきているものです。そういう雑所得という範疇ということでもあり、それらをまた選別をすることが必要になってまいります。
雑所得の方全てを救済するというわけに、そこに入れるというわけにはいかないということで、その選別の時間が掛かるということで、今回、これが別に、その要件に入っていないわけでありますけれども、この給付が始まってみて、コールセンター等にいろんな声が寄せられております。
SNSでもそういった声も寄せられているという中で、先週末、第一回目の支給が始まったときからちょっと検討始まって、今週末までにしっかりとした結論、方向性を出していこうということで今検討をしているということで、もうしばしの御猶予をいただければと思っております。
あっ、支援か、支援の方です。
○岩渕友君 郵送申請も是非検討いただきたいと、現場の声に応えていただきたいということを強く求めておきたいと思います。
本法案ですけれども、審査手法の高度化への対応だということで、与信に必要な支払可能見込額について、今の計算式に代わってAIなどによる分析、算定が可能となります。その際に、産構審の小委員会の中間整理では、指定信用情報機関の信用情報を使うことは義務としないと、こういうふうにしていたんですけれども、使用と登録が義務付けられて、さらに大臣への定期報告も義務付けられるということになりました。
その経過と意義について、簡潔に説明をしてください。
○政府参考人(藤木俊光君) お答え申し上げます。
この法律改正に当たりましては、産業構造審議会の割賦販売小委員会で御議論を約一年にわたって行っていただきました。その中で、昨年六月に取りまとめた中間整理においては、こうした蓄積されたデータ等を用いた限度額審査については、それが適正に運用される場合には必ずしも指定信用情報機関の信用情報を使用せずとも利用者の支払可能な能力を判断することができるという実務の実態もあるということで、この使用義務を課さないというような考え方の整理がなされております。同時に、この中間整理の中でも、こうした使用・登録義務の制度見直しに当たっては、指定信用情報機関の信用情報の使用・登録義務を引き続き課すべきではないかという意見もあって、こういったことを踏まえて整理する必要があると両論を御紹介しているところでございます。
その後、令和元年、昨年の八月でございますが、消費者委員会から、こうした信用情報の使用義務や登録義務を課さないということについては慎重な検討をすべきであり、指定信用情報機関の運用やシステムの在り方を見直すということによって対処することが可能であるか検討すべきだと、こういった御意見もいただいたところでございます。
こうした消費者委員会の御意見、それからその他関係者からの御意見を踏まえ、秋から再開いたしました割賦販売小委員会で再度検討を行ったところ、指定信用情報機関の運用改善を行うということを前提にこの使用義務を課すということによって、使用義務それから登録義務を課すということにしたところでございます。
○岩渕友君 一方、小委員会の報告書では、この使用・登録義務について段階的な見直しを検討するというふうにあるんですね。これ、義務付けの重要性から考えて、見直し検討するということではなくて、残すべきだということを指摘しておきたいと思うんです。
EC市場の拡大に伴って多様な決済手段が提供をされています。本法案では、少額の分割後払いサービスの提供事業者について登録制度を創設するということです。少額であっても利用を重ねれば額が大きくなって、リスクが増大をする可能性が当然あるわけですね。とりわけ若年層はこの少額サービス利用へのハードルが低いということで、若年者保護の観点が重要になってきます。
このEC市場の拡大に伴ってクレジットカードショッピングの信用供与額は増加をしています。日本クレジット協会の統計によれば、二〇一四年は四十六・三兆円だったんですけれども、二〇一八年には六十六・七兆円になっています。統計では、年齢別、収入別といった数値は公表をされていないんですね。
二〇二二年の四月から成年年齢が引下げになるということもあって、若年層の保護の観点から考えても、国の責任でこれ詳しい実態を明らかにする必要があると思うんですけれども、どうでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 委員御指摘のとおり、若年層の過度のクレジットカード利用についての課題は認識をしております。特に、民法改正により成年年齢が二十歳から十八歳に引き下げられることも踏まえて、政府において若年者のクレジットカード取引の一層の健全性確保を行うこととしていることであります。
現在、割賦販売法の認定割賦販売協会である一般社団法人の日本クレジット協会においては、日本のクレジット統計を毎年発行しており、年間の信用供与額のほか、性別、年代別の契約数などの調査結果を公表をしております。その上で、特に未成年者等の若年者によるクレジットカードの取引の課題を把握するために、経産省では、日本クレジット協会を通じて各カード会社における取組状況について実態調査を実施をしているところであります。最近では、三十年の四月にこれを行ったところであります。
この調査では、若年層との契約におきまして、利用限度額を少額に設定しているか、限度額三十万円以下の除外規定にかかわらず支払可能見込額調査を実施しているか、親権者を連帯保証人としている又は同意を得ているか等の各カード会社の取組を調査し、実態を把握しているところであります。
経産省としては、引き続き適切な消費者保護を図る観点から、若年者のクレジットカードの利用に係る状況を把握し、必要な対応を図ってまいりたいと思っております。
○岩渕友君 インターネット通販における決済手段の一つに立替払型の後払い決済サービスというのがあります。資料一を御覧ください。これがこのサービスの流れなんですね。
国民生活センターは、今年の一月二十三日に、消費者トラブルから見る立替払型の後払い決済サービスをめぐる課題という特別調査の結果を公表しています。
相談件数の推移、相談内容を簡単にお知らせいただきたいということと、あと、後払い決済サービスの法規制がどのようになっているかということについてお答えください。
○政府参考人(坂田進君) お答え申し上げます。
国民生活センターで受け付けた消費生活相談のうち、立替払型の後払い決済サービスに関するものとして本年五月十日までに登録された相談の件数は、二〇一四年度四件、二〇一五年度十六件、二〇一六年度七十四件、二〇一七年度二百十八件、二〇一八年度二百三十六件、二〇一九年度四百七十三件となっており、近年増加傾向にあります。
主な相談内容としては、主に定期購入を始めとする通信販売において、未成年者が親の承諾なく商品を購入したケースなど商品が高額で支払うことができないというもの、知らないうちに代金の支払者として設定されており身に覚えのない請求書が送られてきたというもの、商品が届かず販売店とも連絡が取れないにもかかわらず請求を止めてもらえないというものなどがあると承知しております。
二点目の点でございますが、消費者が利用する決済手段に関連する主な法律としては割賦販売法及び資金決済法がございますけれども、立替払型後払い決済サービスには基本的にはそのどちらも適用がないと承知をしております。
○岩渕友君 相談件数は増加しているんだけれども、法の規制がないということなんですね。
資料二を見ていただきたいんです。これは主な後払い決済サービスと割販法上の事業者登録状況などをまとめたものなんです。法規制がないということで、過剰与信の防止や苦情処理、加盟店調査などが事業者の自主的な取組に任されていると。消費者保護ルールに穴が空いた状態になっています。
本法案で、後払い決済サービス業者のうち少額の分割後払いサービスについては規制が導入されるということになるんですけれども、規制がないままのサービスが依然として残されたままということになるわけなんですね。
これ、後払い決済サービスについて国が実態把握しっかり行うべきではないでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 最近の決済テクノロジーが進展する中で、日用品や食料など少額の商品の支払を後払いで行いたいという消費者ニーズに対応した多様なサービスが登場しております。また、蓄積されたデータ等を用いて従来より精度の高い限度額の設定が可能となり、一層の利用者の拡大が見込まれています。
そこで、こうしたサービスを利用する消費者を保護する観点から、本法改正において、特に、少額後払いサービスのうち分割払のサービスを行おうとする事業者を少額包括信用購入あっせん業者として位置付けて、登録制度を創設をいたしました。これによって、消費者がより安全、安心に決済していただける環境が整備されるものと考えております。
割賦販売法の規制対象となっていない立替払の後払い決済サービスについては、委員御指摘のとおり、消費者の支払能力を超えた請求がなされている等の問題が増えていると指摘があることを認識をしております。
苦情相談件数は、割賦販売法の規制対象としている後払いサービスの方が圧倒的に多いと認識しておりますけれども、経済産業省としても、消費者庁等の関係省庁とも連携をし、立替払型の後払い決済サービスの苦情の状況についても注視をしながら課題の把握に努めていって、しっかりとした対応をしてまいりたいと思っております。
○岩渕友君 消費者保護の観点から、更なる規制が必要だということも求めておきたいと思います。
最後に、マンスリークリアについても聞きたいんです。
前回改正の審議のときに、抗弁の接続を認めるように求める意見が出されて、当時の世耕大臣が、消費者被害できる限り防止するためにあらゆる方策について検討すると答弁しているんですね。その後、この問題、どのように検討されているでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 翌月一括払いのマンスリークリア取引は、割賦販売法の対象となる分割払ほどの誘引性がないこと、これらの取引と比べて消費者相談の発生率も低いこと、追加的な規制が課された場合の負担が消費者に転嫁され利便性が損なわれる可能性があることから、平成二十八年の改正時には抗弁権の接続等の規制の適用対象とはしないこととしました。
他方、平成二十八年改正において、悪質加盟店の是正、排除を目的として、マンスリークリア取引も含めた調査等を加盟店との契約会社に義務付けたところであります。これによって、マンスリークリアの消費者トラブルの未然防止、消費者保護は一定程度図られるものと考えております。
現在、クレジットカードの利用件数全体が大きく伸びている中、マンスリークリア取引の相談件数も増えていますが、直近においても、マンスリークリア取引の消費者相談発生率は分割払の三分の一と低い状況にあります。
したがって、今回の法改正においても、マンスリークリア取引については引き続き抗弁権の接続等の規制の適用対象とする必要はないと認識していますが、今後とも、この取引に係るトラブルの状況をしっかりと注視をし、消費者保護と消費者利便の観点から必要な対応はしっかりと行ってまいりたいと考えております。
○委員長(礒崎哲史君) お時間ですのでおまとめください。
○岩渕友君 はい。
抗弁の接続など早急に検討することを求めて、質問を終わります。
○委員長(礒崎哲史君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
割賦販売法の一部を改正する法律案に賛成の方の起立を願います。
〔賛成者起立〕
○委員長(礒崎哲史君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
この際、浜野君から発言を求められておりますので、これを許します。浜野喜史君。
○浜野喜史君 私は、ただいま可決されました割賦販売法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・国民の声、立憲・国民.新緑風会・社民、公明党、日本維新の会、日本共産党及び碧水会の各派並びに各派に属しない議員安達澄君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
割賦販売法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
一 蓄積されたデータ等を活用した新たな手法により与信審査を行う包括信用購入あっせん業者の認定制度の創設に当たっては、利用者への過剰与信防止の実効性が十分に確保されるよう、その審査手法の妥当性・透明性・公正性等について事前及び事後のチェックを適確に行える規制体制を整備すること。その際、新たな与信審査において用いられる利用者の個人情報がその利用目的との関係で適正に取り扱われているか等についても、適切に指導監督を行うこと。
二 利用者への過剰与信防止・多重債務防止の観点からは、指定信用情報機関への情報集約が重要な機能を果たしていることに鑑み、その運用・システムに係る利便性の改善やコスト低減への取組等を更に進めること。
三 少額の包括信用購入あっせんを行う事業者の登録制度の創設に当たっては、キャッシュレス決済手段の多様化や成年年齢の引下げも踏まえ、消費者保護の観点から、特に若年層を中心とした消費者教育や、消費生活相談員の拡充を始めとした消費者相談体制の充実に努めること。また、書面交付の電子化に伴い、事業者に対し、利用者に分かりやすく効果的なプッシュ型の情報提供が行われるよう促すとともに、利用者に対しても、契約内容、利用情報、催告通知を確認することの重要性について啓発活動を推進すること。
四 近年、割賦販売法や資金決済法の適用のない立替払い型の後払い決済サービスに関し、国民生活センターへの相談件数が増加していることに鑑み、消費者トラブル防止に向けた事業者による自主的な取組・対応を促進するとともに、その実態を踏まえつつ、個別方式のクレジットに係る二か月内払いの取引について加盟店とのトラブル防止のための対策を講じること。
また、クレジットカード決済を利用した二か月内払いの取引に係る消費者トラブルの増加に対し、事業者による自主的取組の実態把握を確実に行い、カード発行会社から加盟店契約会社等への苦情伝達の連携や苦情に対する対処の在り方など必要な対策を講じること。
五 海外の加盟店契約会社等を経由する不適正な取引の排除等に向けて、クレジットカード番号等取扱契約締結事業者の登録義務の履行状況を適切に把握し、違反事業者の速やかな是正に向けた取組を進めること。
六 決済関連法制の横断化に向けては、AI・ビッグデータやブロックチェーンといった近時の技術革新の進展及び国際的な動向等を踏まえ、利用者・事業者双方にとってシームレスで利便性の高い制度となるよう、関係省庁間で緊密に連携し、その具体的な検討を更に進めること。その際、消費者保護の観点からは、規制のすき間が生じることのないよう、その制度設計に特に留意すること。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○委員長(礒崎哲史君) ただいま浜野君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の起立を願います。
〔賛成者起立〕
○委員長(礒崎哲史君) 全会一致と認めます。よって、浜野君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、梶山経済産業大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。梶山経済産業大臣。
○国務大臣(梶山弘志君) ただいま御決議のありました本法律案の附帯決議につきましては、その趣旨を尊重してまいりたいと考えております。