2020年5月21日(木) 参議院 経済産業委員会
「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律案」「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律案」一括議題 参考人質疑
事業者・消費者保護を
参院経済産業委員会は21日、国内外の巨大情報通信(IT)企業に取引の透明化と国への定期報告などを義務付けるデジタルプラットフォーム透明化・公正化(DP)法案の参考人質疑を行いました。
日本共産党の岩渕友議員は、市場支配力の乱用や国際的な税逃れ、個人情報の悪用、ギグワーカーの活用などを背景に急成長してきたフェイスブックを含むGAFAなど巨大IT企業に対して国がやるべきことについて問いました。
福家秀紀駒澤大名誉教授は「日本の事業者と消費者を保護する視点で考えなければいけない」と答弁。巨大IT企業はグローバルにサービスを提供しているため、「法案にある仕組みでは非常に限られている」と指摘し、国際協調を考えていくべきだと答えました。
5G 恩恵大企業だけ
参院経済産業委員会は21日、通信基地局の早期開設に設備投資額の15%の法人税減税を行うなど5G(第5世代移動通信規格)の普及を後押しする5G促進法案の参考人質疑を行いました。日本共産党からは岩渕友議員が質問に立ちました。
岩渕氏は、「現状では財政基盤の弱い中小企業にとって5Gの導入が難しいなかで、同法案は大企業支援となるのではないか」と質問しました。東京大学大学院情報学環教授の中尾彰宏氏は、5Gの周波数を地方や中小企業が、有効に利用することが同法案の目的で、税制優遇や補助金をつけて研究開発を産学官ですすめるには必要な法律だとしつつ、「大企業だけのためになる可能性もなきにしもあらずだ」と答えました。
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東京大学大学院情報学環教授・中尾彰宏参考人 意見陳述
○参考人(中尾彰宏君) 東京大学の中尾でございます。よろしくお願いいたします。
私の方からは、5G、ビヨンド5G、これは6Gとも呼ばれていますが、技術への期待ということで御説明をさせていただきます。お手元の資料を御説明いたします。
冒頭、これ二ページ目になりますけれども、こちらに書いてございます五つのポイントが今日私から申し上げたいポイントとなります。
まず一点目が、超大容量、超低遅延、超多数接続という特徴を持つ5Gは、我が国において国家の屋台骨となる強靱なインフラを支える最重要の技術であると認識をしています。
二つ目、自営網のローカル5Gと地域に展開される公衆網の5Gは地域創生に寄与する重要な施策であって、特に規制緩和、利用周波数帯域の拡大、産官学連携による研究開発と社会実装の推進が必要であると考えています。
三番目、安全保障の観点からも、国策として研究開発を支援して、国際的にも競争力のあるインフラ開発技術の確立が望まれると考えております。
四番目、今日も皆さんマスクをしていらっしゃいますけれども、新型コロナウイルス感染症で大学でも遠隔通信の重要性が遠隔教育等で再確認された今、安心、安全かつ全国隅々まで行き渡る、堅牢で大容量の移動通信技術が必要であると考えます。
最後ですけれども、二〇三〇年頃を目指して実現されると言われていますビヨンド5G、6Gに向けて、既に国際競争が始まっています。5Gからビヨンド5Gに至る研究開発の推進が必要であると考えております。
それでは、この一つ一つについての根拠となる資料について御説明をしたいと思います。めくっていただきまして、三ページ目から御説明いたします。
まず、これは皆さん恐らく御存じだと思いますけれども、5Gにおける無線通信の変革、これは目標値が五つ掲げてありますけれども、ピークデータ帯域で二十ギガbps、これは一秒間に二十ギガビットを伝送する速度になりますけれども、これが、基地局当たり伝送能力が確保されると、ユーザー一人当たりの体感速度は今の大体約十倍になりまして、百メガbpsとなると言われています。右側、移動体速度、時速五百キロで走るリニア新幹線の中でも使えるようにならないといけないと。それから一番右下ですが、低遅延、これは無線区間で千分の一秒、一ミリセックの遅延で伝送が行われるという目標値になっています。左下、単位面積接続数当たり百万デバイスが一平方キロ当たり接続できるという、こういった目標値がITU―Rで決められています。
この真ん中のグラフは、中央が今のLTE、4Gと言われている通信の目標値でして、それに比べて一桁から二桁ぐらい目標値が大きく革新するというのが5Gの特徴となります。
下のページ、四ページ目ですが、5Gにおけるこれらの目標値を達成するべき通信を使いまして、三つの代表的な通信クラスが定義されています。
一つ目、大容量、二つ目、超信頼超低遅延、最後が超多数デバイスですけれども、先ほど御説明した目標値を照らし合わせますと、大容量でいいますと、先ほどの体感速度、それから超低遅延、それから超多数デバイス、デバイス数ですね、こういったものが言われております。ですので、一般に5Gと言われますと、大容量、超低遅延、超多数デバイスが接続というふうに言われているのは、この通信のKPI、目標値によって説明がされます。
続きまして、次のページですけれども、このような5Gなんですが、日本では5Gの周波数の割当てが既に終わっておりまして、三月から既に商用化されております。この詳しいところは資料を見ていただければと思いますけれども、三・七ギガヘルツ帯、四・五ギガヘルツ帯に加えまして、二十八ギガヘルツ帯という、まあ一般にミリ波と言われているところが新しく使われるということになっています。
次のページ。こういった周波数を使いまして、商用化に至る道筋が書かれています。
過去三年間にわたりまして、二〇一七年、一八年は主に通信事業者を中心とした実証実験が行われてまいりました。ICTインフラの八つの課題を、領域を設定しまして、この中でいろいろな実証実験を確かめて、ユースケースを確認してまいりました。二〇一九年に地域に速やかに5Gを展開しようという閣議決定がございましたので、二〇一九年は、地域から出された利活用アイデアの実証が大きく行われました。こうした三年間の実証実験を踏まえた上で、今年の三月から5Gのサービスが開始している状況となります。
次のページですけれども、5Gの実証実験の実施例はこのように全国津々浦々、いろいろな場所でいろいろな課題で実証実験が行われてまいりました。この一つ一つは今日御説明する時間がありませんけれども、私が取り組んだ三つの例について御紹介をいたします。
それでは次のページですが、こちらは広島県の実験ですけれども、広島県ではカキ養殖が盛んに行われています。漁業従事者の労働力の負担削減に向けた取組の一つとしまして、カキ養殖におけるカキの生育状況を、そこまで船で行って確かめるのではなく、船に搭載した5G通信機に接続された水中ドローンを使いまして、自動でカキの生育状況を捉え、水中ドローンを低遅延で操作することによって、これを陸地にいます漁業従事者がリアルタイムで確認をできるというようなアプリケーションの検証を行いました。
この例は、細かい点はこの下の方に書いてある説明をお読みいただければと思うんですが、特に強調したいのが赤字で書いてございますところでして、一次産業における遠隔監視、遠隔制御に、5Gそれからローカル5Gの大容量かつ低遅延通信の有用性を確認したということになります。
次のページが、これが水中ドローンを活用した漁場遠隔監視の実証実験の様子ですけれども、まず最初、これスマートフォンの画面ですけれども、水中ドローンを操作しながら、遠隔操作をしながら遠隔監視を高精細の画像によって行うという例でして、この実証実験を通して漁業従事者からは、非常にこれで労力が削減できるという意見をいただいているところになります。
その下が実際の漁場でして、こちらはNTTドコモと共同でやっている実験ですが、漁場のカキいかだの近くに5Gの移動局、それから陸地に基地局を設置しまして、ここで映像とそれからドローンの低遅延の制御を同時に行うという実験を行いました。
それでは、続きまして、次のページですけれども、こうした5Gを使った取組、それから次のお話でもありますように、ドローンも使ってカキの養殖場を確認するといったスマート化が地方でかなり有益性を確認していただいたところになります。
続きまして、二つ目の実験ですけれども、こちらは、今度は陸上になりますけれども、国内初の5Gドローンを用いた4K映像のリアルタイム伝送に成功したという実証実験になります。
皆さん御存じのとおり、ドローンは高精細な映像を捉えることが可能ですけれども、これは全て録画でやっているところになります。これが5Gの大容量伝送を使いますとリアルタイムに伝送が行えまして、地上の物体を高精細な映像で確認をすることが可能になります。
次のページを見ていただきますと、これは広島県の瀬戸内海に架かる橋を横断するサイクリングしまなみというイベントですけれども、これは四年に一回、八千人のサイクリストが参加するイベントになります。当然、こういった場所ではいろんな危険があるわけですけれども、公共安全のために、空からリアルタイムで高精細映像によってこの参加者の安全をモニタリングするというユースケースが考えられます。こちらの実験で、大規模イベントにて公共安全のために、5Gドローンによるリアルタイム高精細映像による遠隔監視の有用性を確認することができました。
下の映像は、その実際、この画面には約三千名が映っておりますけれども、この会場にいる三千名のサイクリストを高精細映像によって確認をすることが可能となりました。
最後の実験ですが、次のページ行っていただきまして、こちらは北海道の新冠町になります。
こちらで競馬の軽種馬を育成しているんですけれども、今度は8Kのライブ映像を活用しまして、これもドローンで5Gから伝送する。それから、厩舎にいる馬、ここに二百五十頭ぐらいおりますけれども、それを5Gで東京都心にいながら確認をすることができる。これは、馬主さんは大体都市部に住んでいらっしゃる方が多いので、遠隔でこのような馬の様子を、健康状態を遠隔監視できるというのは有用なアプリケーションと考えられています。
このように、地方産業での高精細映像遠隔監視にドローンと5G、ローカル5Gの大容量通信の有用性を確認したということになります。
次のページが実際の馬の映像ですけれども、ちょっとこれはビデオで確認をされるとよく分かるんですが、馬の毛並みの一本一本、それから、下におがくずがまいてありますけれども、おがくずが風で舞う様子、ここまでが高精細な映像で確認ができます。これも非常に評判の良いアプリケーションということになります。
以上、アプリケーション例、ユースケース例、特に地域創生に関わるところを御紹介いたしました。
ここから少しローカル5Gについてお話をします。
これまでは、公衆網の5G、通信事業者が行う5Gについての話でしたが、実際にこういった地域創生のための課題解決はローカル5Gが非常に有効であると考えられています。二〇一九年の十二月に制度化されました。こちらに挙げてある地域の企業、自治体、それから大学、我々のような様々な主体が、自らの建物それから敷地内でスポット的に柔軟に構築できる、しかも最新の5Gシステムが構築できるということで期待を集めています。
その次のページにありますように、周波数は、キャリア、通信事業者が使っているところから少し上あるいは間の領域を使いまして、ここと干渉しない形で利用が可能となっています。
こうした自営網のローカル5G、それから地域に展開される公衆網の5Gは、地域創生に寄与する重要な施策であると考えられまして、特にこの周波数帯域の利用拡大、それから規制緩和、産学官連携による研究開発と社会実装の推進が必要であると考えています。
続きまして、次のページですけれども、こうした5G、それからローカル5Gの推進をしていくためには移動通信のインフラを整備しないといけないわけですけれども、この移動通信のインフラ機器市場の状況、ここでは未来投資会議の資料を引用しておりますけれども、左側が国内の携帯電話の基地局市場、右側が世界の移動通信のインフラ機器市場となります。
左側を見ていただくと、富士通、NECといった国産企業が並んでおりますけれども、右側、世界で見ますと、富士通やNECのマーケットシェアというものは非常に小さくなってございます。このように、国産の企業が国家の屋台骨を支えるインフラの機器の市場をまだ世界では支え切れていないという点が挙げられます。国内でも、左側を見ていただくと、海外の列強がシェアを伸ばしているという状況になっています。
安全保障の観点からも、国策として研究開発を支援しまして、国際的にも競争力のあるインフラ開発技術の確立が望まれると考えております。
最後のページですが、これは冒頭の一枚のスライドと同じですけれども、一言で申し上げますと、この五つのポイントを意見として提出しまして、特定高度情報通信技術活用システムに関する法案、こちらを強く支持する次第です。
以上、私からの意見となります。
東京大学未来ビジョン研究センター特任教授・鈴木真二参考人 意見陳述
○参考人(鈴木真二君) 東京大学未来ビジョン研究センターの鈴木真二です。
先ほど中尾先生からお話もありました、ドローンに関する、ドローン本体のお話を今日はさせていただければと思っております。
お手元に資料があるかと思いますが、これに従いましてお話をさせていただきます。「ドローンによる「空の産業革命」への期待と課題 セキュアなドローンとその活用に向けて」ということでお話をさせていただきます。
一枚めくっていただきますと、二枚目ですが、ドローンは小型の無人航空機ということになりますが、この無人航空機自体には非常に長い歴史があるわけでございます。その最初の大きな利用は、第二次世界大戦中に標的機、地上から飛行機を狙って撃つ場合の標的機としてこの遠隔操作の無人航空機というのが造られたわけであります。主にアメリカ、イギリスが中心でしたけれども、日本でも開発されたことがございます。戦時中に九千機ほど造られて、大きな産業にもなったということでございます。
こうしたターゲットドローンは今でも利用されているわけでありますけれども、いわゆる産業利用、民間の利用という意味では、農薬散布に遠隔操作のヘリコプターが日本で初めて開発されまして、民生利用のドローンという意味では日本が世界に先駆けていたという状況がございます。
昨今のドローンのブームは、こうした飛行機やヘリコプターのようなタイプではなくて、複数のプロペラをモーターで回すことによって自由に空を飛ぶいわゆるマルチコプターというものが、二〇一〇年にフランスのパロット社、二〇一二年に中国のDJI社から発売され、世界中に大きく広がったという状況がございます。これを支えている技術は、どちらかというとPCですとかスマートフォンの技術でありまして、軽量のバッテリー、リチウムイオンバッテリー、それから半導体センサー、CPUはもちろんですけれども、GPSによる位置捕獲技術、WiFi、ブルートゥースのような無線技術、こうしたタブレットとかスマートフォンの技術がベースになっており、その生産拠点は中国にあるという状況になっております。
次のページ御覧ください。
このドローンが空の産業革命を開くということで期待されているのは、様々な産業分野で活用ができるということが期待されているということがございます。空撮の分野が当初から使われておりますけれども、上空から撮影が行えるということで、報道、番組、宣伝、こうしたものはもちろんですけれども、最近では、上空から撮影した写真を合成して地上の3Dモデルが安易に作れるということで測量とか点検に使われるようになってきており、さらには、警備、捜索といったような分野でも活用が始まっております。
次に、このドローンを使って物を運ぶということが大きく注目されるようになってきております。物流はもちろんですけれども、災害時の緊急輸送、またケーブルの敷設、こういったところで既に活用が始まっているところであります。
先ほどお話しした農薬散布は上空から物を落とすというミッションになりますけれども、農薬以外に消火剤をまくといったようなことでも活用が期待されております。
次の中継は、まだ実用化は始まっておりませんけれども、通信の中継、また遠隔操作の無線の中継といったところで今後の活用が期待されております。右にちょっと小さな写真がありますけれども、ソーラーパネルを無人機に搭載して成層圏を長期間飛び続けることで中継基地としようというような試みが世界中で研究が始まっております。
また、最後のサンプリングは、今、福島で放射線の計測等で既に使われているところでございます。
次、お願いいたします。
このドローンの技術は急速に拡大しているということが言えます。
右にある表は、米国連邦航空局が発表した例であります。我が国ではまだドローンの登録制度が始まっておりませんので、どのぐらいの数が使われているかということを確実に把握することはできませんが、米国では二〇一五年に登録制度が始まり、百十万台が小型無人機として米国で使われているということが把握されました。そのほとんどはホビー用途でありますけれども、産業利用は四万台、それを操縦するドローン操縦士が二万人登録されました。米国FAAはこのとき五年後の予測値というのを出しておりますけれども、特に注目いただきたいのは、産業利用が十倍、それを操縦する人が十倍から二十倍必要になると、こういったデータを予測値として出しておりますが、現状のデータでもそれをほぼ裏付ける結果が出ております。
我が国の状況ですけれども、これは右下がドローンを使うその売上高というのを記載しておりますけれども、非常に大きな伸びを示しており、それから今後も伸びるということが想定されております。大きな売上げはサービスというところになるわけでありますけれども、左にあります分野別のグラフを見ていただきますと分かるように、当初は先ほどお話ししましたような農業利用が多かったわけでありますけれども、今は点検というのが非常に拡大しつつあり、今後更に物流利用が期待できるということが予測されているところでございます。
次、お願いいたします。
こうしたドローンの利用が広がる一方で、事故や不正利用というのも目立つようになってきております。
最初の事例は、ちょっと前の事例ですけれども、二〇一四年、湘南国際マラソンでドローンが墜落して、けがが起きた。また、二〇一四年、これは名古屋市のテレビ塔を夜空撮するドローンが墜落したということで、こうした事故が起きております。
また、最近では、空港がドローンの飛行によって遮断される、閉鎖されるということが世界的に課題になっております。大きな事例としましては、二〇一八年十二月にロンドンのガトウィック空港で二、三日空港が閉鎖して非常に大きな経済的な影響を与えたと言われております。また、我が国でも昨年十一月、関空に着陸中のパイロットがドローンらしきものを発見し、一時間ほど運航が停止されたと、こういうことが起きております。
ドローン、簡単に飛ばせるがゆえに、様々な事故や不正利用ということも起きてきているということが言えるかと思います。幸い、ドローンの墜落によって死者が起きるということはまだ発生しておりませんけれども、これは気を付けなければいけない事例かと思います。
次、お願いいたします。
このように、ドローンは非常に簡単に飛ばすことができるゆえに産業利用が期待されているところではありますが、やはりきちんと管理をしなければいけないということで、世界的にその規制が整備されつつあります。
我が国では、二〇一五年に首相官邸の屋上で不審なドローンが見付かったということを契機に航空法が改正されて、ドローンの管理が始まりました。これは、ドローンを飛ばすために、自由に飛ばせる空域と、許可申請、国土交通大臣の許可を得なければ飛ばすことができない空域の設定、そして、その飛ばし方のルール化ということがまずは行われたというところでございます。また、その翌年には、小型無人機等飛行禁止法により、重要な施設の周囲では飛行してはいけないという、いわゆる飛行禁止法というのが制定されました。
一方で、ドローンには産業を開く、新しい産業を開くということが期待されておりますので、その活用のために環境整備をしていこうということで、官と民が協力してこれに取り組むという官民協議会が設置されまして、毎年ロードマップを作って発表しております。
右にあるものは当初作られたものでありますけれども、初期の目標は二〇一八年にドローンで物流を行えるような環境整備をしようということで、これはまだ人がほとんどいない無人地帯でのドローン物流ということになりますけれども、二〇一八年にその目標が達成されました。
今掲げられている新たな目標は、二〇二二年を目途に有人地帯でのいわゆる目視外飛行、いわゆる物流等で使えるようにということで、新しい法制度の準備を官と民が共同して行っているという状況でございます。
次、お願いします。
こうした状況の中、欧米では更なる規制強化と新たなインフラ整備というのが始まっているところでございます。
右の絵にありますのは、FAA、アメリカの連邦航空局が今年から制度化しようということで準備をしているもので、ドローン登録制度はもう既に始まっているわけですけれども、上空を飛んでいるドローン、ナンバープレートを付けているわけなんですけれども、上空を飛んでいますとそのナンバーは把握できませんので、上空から電波を自ら発信して自らの所有者とそれから位置を知らせるという、いわゆるリモートIDというものの搭載が義務付けられようとしています。
さらに、ドローンをコントロールする基地局とそれからインターネットを接続することによって、その飛行情報を共有することで安全な運航を行おうという運航管理システムですね、UTMと呼ばれておりますが、こういったものも義務付けようということで準備が進んでおります。
その下にあります絵は、アメリカの航空宇宙局、NASAが描くドローンの運航管理システムでありますが、無人航空機と有人航空機が同じ空域を共有することによって安全に空を活用していこうということで検討が進んでいるところで、我が国でもNEDOのDRESSプロジェクトでこうしたシステム、またドローン本体の研究開発が進んでいるところでありますけれども、今後ともこうした研究開発体制を維持していくことが必要になります。
ドローンの本体がインターネットに接続して使うという状況が今後生まれてくることになりますが、これは新たなセキュリティーの課題を生むということでもございます。
次、お願いいたします。
これは御参考までにリストアップしているものでありますけれども、米国では非常に、安全保障上の視点、またセキュリティーの高い利用ということに関しては、そのデータの流出ということに関して非常に神経をとがらせておりまして、様々な法案が提出されており、そして海外のドローンの使用に関する規制も始まっているところでございます。
次、お願いいたします。
このドローンの利用の際のセキュリティー上の課題というものにどういうものがあるかというのをここではリストアップし、その対応、対策ということも一例として示しております。
まず、ドローンがインターネットに接続することによって様々なデータ、それから飛行の履歴、飛行ログといいますけれども、こういったものが流出する可能性がある。これについては、そうした重要な領域を飛ぶドローンに関しては飛行の特定、そしてデータ流出に関するセキュリティー対策と認証、データの暗号化、こういった技術や法制度、こういったものが求められます。
また、ドローンは無線で遠隔操作を行いますので、外部からの電波妨害や乗っ取りを受ける可能性があるということで、これに対する対策ということをきちんと立てる必要があります。また、ドローン本体、また地上局にはCPUが搭載されますので、それらにマルウエア、ウイルスが組み込まれていないかということも確認が必要になります。
そして、上空から撮影した様々なデータ等には個人情報が含まれますので、これらの管理をどうするかということ。そして、将来的には、先ほどのようなUTM、リモートIDに対するセキュリティー管理ということが求められるわけでございます。
最後のページですが、今回の法案によってドローンセキュリティーに対する対策ということが確実なものになることによって、我が国でのドローン利活用が進むということを大変期待しているところでございます。
最後の絵は、ドローンがどのように活用されるかというところを概念的に描いたものでございますが、まず農林水産利用というようなもの、そして、空撮利用は既に始まっているところでありますけれども、将来的には過疎地、離島への輸送、またインフラの点検、そして都市部では緊急事態時の輸送、そして、例えばAEDの輸送等の利用が期待されているところでございます。こうしたドローンの利活用によって、高齢化する社会、また災害時の対応ということを頑固なものにする、そして生活の利便性、地方の活性化を高めるということが期待できるわけであります。
こうしたセキュアなドローンの開発、日本が本来得意とするところでございますので、小型無人機、ドローンの世界への提供ということも新しい産業として期待できるところでございます。
以上で私の発言を終わりたいと思います。ありがとうございました。
東京都立大学大学院法学政治学研究科教授・伊永大輔参考人 意見陳述
○参考人(伊永大輔君) おはようございます。東京都立大学に所属しております伊永大輔と申します。
本日は、法案審議における貴重な申述の機会をいただきましたので、デジタルプラットフォームをめぐる規制の必要性やその在り方について、私の専門である独占禁止法、競争政策の観点から意見を申し上げたいと思います。
まず、私の現状認識について述べさせていただきます。
デジタルプラットフォーマーと呼ばれる巨大IT事業者によるデータの独占が社会的関心を集め始めたのは二〇一七年頃からでした。これは、この時期、我が国において既存業種の垣根を越えたデジタル経済が一層進展したことへの反動、反作用でもありました。技術革新に支えられた新しいビジネスモデルの進展は、既存の事業者にとって競争上脅威となる反面、国民全体に広く便益をもたらす点で社会に大きなメリットももたらしたと言えます。
デジタルプラットフォームは、都心よりも地方で、大企業よりも中小企業に、よりその恩恵をもたらします。例えば、これまで広告宣伝や営業担当部門に十分な人員や資金を回すことができなかった中小企業であっても、インターネットを通じて日本中あるいは世界中の消費者を相手に商売を展開することが可能になりましたし、小さな地域市場で事業活動をしていた企業は、良い製品、サービスをつくれば、地域を超えて販売網を拡大できるというメリットを享受できるようになりました。今や日常生活に不可欠なインフラの一つとして存在するデジタルプラットフォームは、社会的にも重要な役割を果たしていると言えます。
このようなデジタルプラットフォームの良い面をくじくことなく、最大限その機能、能力を発揮し続けてもらうというのがこの分野における規制の基本的視座だと私は考えています。
一方、デジタルプラットフォームには負の側面もあります。昨年十月に公表されました公正取引委員会の実態調査によりますと、年々市場が拡大しているオンラインモールやアプリストアにおいて多くの競争政策上の問題が報告されております。例えば、規約を一方的に変更された上で手数料を引き上げられたり、新しい決済システムに移行させられたりといった事例や、検索結果や手数料などについて自社や関連会社を優遇した運用がなされたといった事例を始め、様々な問題が表面化してきているところだと認識しています。
こうした事例が生じている背景には、プラットフォーム事業者間の競争が活発でないとか、取引が不透明でブラックボックス化しているであるとか、取引先事業者との間に情報格差があって力の不均衡が生じているとか、そのような指摘がなされているところであります。
このような事態に対し、公正取引委員会も積極的な独占禁止法の執行に力を入れております。二〇一七年のアマゾンジャパンに対する最恵国待遇条項をめぐる事件を始め、二〇一八年にアップルのアイフォン携帯電話の契約をめぐって、あるいは本年の楽天による送料無料化などについて、独占禁止法上の懸念を解消させる措置をとらせてきたと承知しております。
他方、公正取引委員会による行政処分は、通常、裁判所による司法審査の対象となるものであり、厳格な法運用がなされております。そのため、法執行において柔軟な対応が取りにくく、事件の調査にはどうしても時間も人も掛かってしまいます。プラットフォームという多数の当事者を結び付けて取引を行うビジネスモデルにおいて、独占禁止法を適用する上でも多くの事実関係を調査する必要があり、一筋縄ではいかないことが多いことは想像に難くありません。
それでは、独占禁止法以外の法律で規制することは可能かという点につきましても、市場構造全体が劇的に変わるようなデジタル経済の実装に対し、これまでどおり規制の枠を当てはめようとしてもうまくいくとは限りません。デジタルプラットフォームは、既存の事業概念の枠を超えて活動を展開しておりますので、事業法では対応できないことが多く、現在のところ有効な規制は独占禁止法以外に余り存在していないと言えます。
そのため、独占禁止法を中心とした事後規制によって一つ一つ事例を積み重ねてルールを形成していくというのが基本となるわけですが、一方で、それだけでは今困っている事業者、消費者に対して十分に対応できないという現実が残ります。そこで必要となるのが、公正な競争に悪影響を与える行為を事前に抑止するとともに、先進的な取組を促進するといった規制の枠組みになると思います。
本法案でも示されておりますこの規制枠組みは、特定デジタルプラットフォームに対し、契約条件の開示や変更の事前通知を義務付けたり、自主的な手続、体制の整備を行うよう義務付けたりしており、こうした義務を契機として先駆的な取組の促進を図ることが規定されております。
EUにおきましても、この夏に施行が予定されておりますオンライン公正透明化規則で同様の規制枠組みがございまして、本法律案が実現すれば、日EUで規制の歩調がそろうことになります。
また、事業者の創意工夫を最大限尊重しつつ消費者の利益を確保するためには、より柔軟な形でのルール形成も重要な役割を果たすことになると考えております。
具体的には、モニタリングレビューという事業者による報告とその評価を通じた官民の継続的なコミュニケーションによって、具体的にどのような形で問題となっているかが共有され、その問題に対して自発的な解決に向けた取組を行うよう促す枠組みが本法律案に盛り込まれております。
オンラインモールやアプリストアの運営事業者に対し定期的な報告を求め、その評価を通じた問題解決を行うというのは、デジタルプラットフォーマーの自主的、自発的な取組を促しつつ、更なる改善を求めるという成果を得るための現時点における最善策ではないかと考えております。これは、動きの速いデジタル市場を規制当局がしっかりと把握する上でも有効な枠組みでもあります。多方面からの情報収集により把握した問題、課題をプラットフォーマーと共有しながら、自主的な課題解決を見出し、これを他のプラットフォーマーにも広げていくという好循環を取引慣行に組み込んでもらうためです。
もとより、優れたビジネスモデルとは、ユーザーや取引相手の権利を尊重し、その価値を真摯に受け止めることができたその先にあることは明らかです。こうした信頼を勝ち取ろうとする企業姿勢を評価し、具体的な取組を加速させることは、ユーザーの自主的かつ合理的な選択を確保し、公正な取引環境を実現する上でも重要な意味を持ちます。プラットフォーマーにとっても、デジタル経済における競争は、透明な取引条件に基づき、契約トラブルを未然に防止しつつ、ビジネスモデルへの安心感、信頼感を高める具体的対応を後押しするものが望ましいはずです。
私は、こうした取組を積極的に促すに当たっては、法律に違反するかどうかといった単線的、一方的な捉え方をするよりは、法令遵守は当然のこととして、それとは別に、多様なユーザーの価値観に応えていくといった双方向の複線的な考え方が有効な場面ではないかと思っています。
巨大IT事業者が率先して信頼できる透明な取引慣行を築くことによって、現在は不信感が募っているデジタルプラットフォームをより公正で透明な競争環境に変えていくことは、ユーザーや取引事業者に選ばれるプラットフォームになっていくためにも重要なことです。そのように考えますと、現時点ではモニタリングレビューを通じた共同規制が一つの有効策として機能していくことが期待されると考えております。
最後に、デジタルプラットフォームをめぐる規制の在り方について、二点申し上げておきたいと思います。
一点目は、プラットフォームを介した取引の透明化は、取引事業者にとって取引するかどうかの選択肢を実質的なものにするために必要なことでありますが、それと同時に、デジタルプラットフォーマー当事者にとっては、競争者に取引先事業者を奪われないよう、自らがより良い選択肢となるための不断の努力を促すという点が重要だということです。取引透明化によって独占禁止法違反を未然に防ぐだけではなく、プラットフォーム間の競争を活性化する効果が生まれることを過小に評価すべきではないと考えています。
プラットフォーマーに対する競争の圧力は、様々な苦情や紛争の迅速な解決につながるだけではなく、取引先事業者との相互理解を促進するインセンティブをもつくり出します。また、プラットフォームは、モールの規模やアプリの品ぞろえによって多数のユーザーを引き付けるというネットワーク効果を重要視していますので、プラットフォーム間の競争が活発化すれば、今よりもユーザーの選択肢も広がりを持つようになるという副次的な効果も期待されます。
このような競争の持つプレッシャーがデジタルプラットフォーム分野において非常に重要な役割を果たすことになると考えています。
二点目は、取引の公正化についてです。
取引先事業者からの搾取といった濫用行為が不公正であることについては多くの賛同を得られると考えておりますが、こうした搾取濫用もデジタルプラットフォームの問題として常々報告がされているところです。搾取濫用を直接規制することはもちろん重要ですけれども、取引の透明化、情報の開示を通じて、取引上、搾取しにくくする方向にも働くという点も指摘しておく必要があろうかと思います。デジタルプラットフォーマーも社会的評判からは無縁ではいられず、搾取の事実は根拠ある悪評として取引先事業者から敬遠されるもととなるからです。
激しく移り変わるデジタル市場に公正な競争条件を整備することは容易ではありませんが、取引条件やそのプロセスを透明化すること自体が公正につながる要素を多く含んでいるということを踏まえますと、このような透明化した取引方法が商慣習として定着するということは公正な競争環境への大きな一歩となります。
本法律案をきっかけとして、我が国においては、巨大IT事業者が積極的に優れた取引慣行を形成しようとすれば、それが業界のスタンダードとして市場に埋め込まれ、多くのプラットフォーム事業者が自発的に行うようになる可能性があります。こうした一つのムーブメントを引き起こすためには、まずはオンラインモールとアプリストアにおける巨大IT事業者を巻き込むところから始めることにも理由があると考えております。
以上になります。
御清聴いただき、どうもありがとうございました。
駒澤大学名誉教授・福家秀紀参考人 意見陳述
○参考人(福家秀紀君) 駒澤大学名誉教授の福家でございます。
本日は、法案の審査に当たり意見を述べる機会を与えられたこと、大変光栄に存じます。
早速、お手元にある資料に沿って説明させていただきたいと思うんですけれども、一枚紙でどんな項目について触れるか、参考資料の方で市場の現状、幾つかデータをまとめておりますので、こちらに併せて御覧いただければと思います。
まず、デジタルプラットフォームの現状認識なんですけれども、この法案の規律対象としているのは両面市場におけるデジタルプラットフォームであると理解をしております。デジタルプラットフォームには出品事業者と一般利用者という二つのタイプの顧客が存在をして、プラットフォームは、この両者の間の間接的なネットワーク効果を利用してビジネス展開をしているのではないかと思います。
この資料については、昨年、シカゴ大学、ここはどちらかというと市場原理主義の立場に立って規制緩和政策を推奨してきた経済学者が多いのですけれども、その重鎮の一人であるスティグラーという先生が設立した研究センターも、この市場は先行してビジネス展開をした事業者による寡占化、独占化の傾向が強いということから、一定の規制が必要であると提言しております。事実、プラットフォーム市場におきましてはGAFAの影響、GAFA、アメリカのIT四社ですけれども、グローバルに大変大きいものがございます。
参考資料の表紙の次に表一というのがございますけれども、事業規模、これはもう日本の楽天とかヤフーに比べて比較にならないほど大きいと。しかも、収益性、まあ収益性を見る資料はいろいろありますけれども、売上高営業利益率で見てみますと、アルファベットは二一・一%、アップル二四・六、フェイスブック三三・九というふうに、まあアマゾンは小売業ですのでこれほど高くはないんですけれども、非常に高い収益性というものを誇っております。
アマゾンは、ついでに触れさせていただきますと、アマゾンウェブサービスというクラウドのサービスで営業利益の六割を稼いでいる、こういう構造になっているわけでございます。
したがいまして、次のページに表の二というので営業キャッシュフローを挙げておりますけれども、いずれも非常に潤沢なキャッシュフローを持っています。楽天と比較しますと、楽天はこれらに比べると数%にすぎないわけです。
これだけ豊富なキャッシュフローを何に使っているかというのが、一つが、次のページにございますGAFAの研究開発費です。アルファベットが二兆八千億、アップル一兆七千億、フェイスブックは一兆四千億というふうに、日本で最大のRアンドD費用を使っているトヨタですら一兆一千億ですので、これをはるかに上回る研究開発費を使用しておるということで、もうこれらの企業は、今あるサービスに加えて、いろんな分野の企業を買収する、あるいは新規分野の技術開発を進める、こういうことで更に有利な地位に立ってきているわけでございます。
というふうに考えていきますと、なかなか、我が国の大手のプラットフォーム事業者といっても、これに対抗するのは大変難しいんではないかということで、表の四、次のページにありますけれども、スマートフォンでは日本のメーカーはもう影も形もないと言っていいかと思うんですね。表の五がクラウドの世界シェアですけれども、これで見ても、アマゾン、マイクロソフトあるいは中国のアリババ集団といったところがシェアを占めていて、日本の企業はここに出てこない。
こんなことでございますので、特に法案で目指すべきは、特定の企業を指定するわけではないんですけれども、GAFAといったような米国のIT企業が非常に強い市場支配力を持っている、こういう市場支配力から出品事業者あるいは一般利用者をいかに保護するのかということを考えていくことが重要ではないかと思います。
もちろん、楽天の送料無料化問題ありますように、我が国の市場において一定の影響力があるプラットフォームの規制、必要ですけれども、私の問題意識としては、こういう米国の主要なIT企業が革新的なサービスの提供で消費者の利便の向上、これに寄与したことは非常に評価したいと思うんですけれども、他方では、具体的な市場支配力の濫用とか国際的な税逃れ、あるいは、フェイスブックは極端ですけれども、個人情報の悪用、あるいはアマゾンとかウーバーに見られますように、ギグワーカーの活用といった形で労働者の使い捨ても、成長にあるということは否定できないと思うんです。
このように考えますと、本法案が立案されたということは非常に貴重なことだということで評価には値すると思いますけれども、具体的な中身についてやはり足りないところがあるんではないかということで、あと七項目ほど申し上げたいと思います。
二番目が、項目にあります規律対象の明確化と拡大ということなんですけれども、この法案の定義だと両面市場を対象にしているということだと解されるんですけれども、この定義では、参考資料の一番最後にアマゾンの直販比率という資料がございますけれども、これは、アマゾン自身がサイトで販売しているものと、ファーストパーティービジネスと称していますが、それからマーケットプレイス、他社の商品を扱うというこの二つに分かれるんですけれども、近年、マーケットプレイスでの取扱いが増えてきておりますけれども、アマゾンは基本的には直販を中心にしたサービスであったわけですね。これは、この法律でいうと、両面市場に当たらないから網の目から漏れているんではないかというふうに考えられます。
EUにおきましては、オンラインの仲介サービス事業者、ここでいうプラットフォーム事業者と並んでオンライン検索事業者も規制対象になっているということで、グーグルの検索サービスなんかも射程に入れているわけですけれども、日本はこれが入らないのではないかと考えると、規制対象が非常に狭いんではないかと。その拡大、明確化を図っていく必要があるんではないかというふうに考えております。
法案では、売上総額などから見て、大規模なオンラインモール、アプリストアを政令で特定デジタルプラットフォームとして指定するということで、報告などについて詳細な規律が規定されていますが、この政令がどうなるかということにもよるんですけれども、余りに大きいところで切ると規制対象が少なくなり過ぎるし、逆に、小さいところまで入れますと届出などの義務に加えていろんな義務が課せられているので過剰な負担になるんじゃないか。
この法案では内外無差別に適用するとされておりますけれども、じゃ、売上高ってどうなるんだろうと。日本の売上高が、アマゾンのように公表されているものもありますけれども、把握が困難なものもあると。EUなどは、基本的にはEU向けにサービスを提供している事業者の全世界での売上高ということから規制を考えておりますので、こういったことも考えられようかというふうに思うわけです。
同時に、どこまで届出義務を課すかということにも関わるわけですけれども、小規模な海外の事業者も全て日本向けにサービス提供していればここに届出義務があるんだというふうに考えるのもいささか非現実的という、この両面、二つの側面があろうかと思います。
三番目に、具体的な禁止行為、それから罰則の問題ですけれども、基本的に共同規制の考え方に沿って取引の透明性、公正性の向上を図るという考え方のようですが、そのために、取引条件などの情報の開示と自主的な手続、体制の整備、それから運営状況のモニタリングというのが規律の三つの柱になっているかと思いますが、開示すべき項目は挙げても、そこで何が禁止されているのかということは明確になっておりません。EUではそれを具体的にかなり書き込んでおりますので、同じ共同規制といってもかなり濃淡があるのではないか、それでいいのかなというのが問題意識です。
イノベーションが期待される分野、流動的な市場だと、それはそのとおりなんですけれども、かといって、基本的に禁止しなければいけない行為、これは存在すると思うんですね。
昨年の公正取引委員会の報告書においても競合商品の取引拒絶だとかいろんなことが指摘されておりますけれども、こういう問題行為は禁止するんだということを明示しておく必要があるんではないか。事業者の自主性に任せるというのは、いささか抑止効果の面で限界があるように思います。GAFAのように、市場でもう大きな地位を占めてしまった企業に対してこれが効果があるかというのはいささか疑問に思っております。
ということで、大手のプラットフォーム事業者がこの法案の規律に従うか。罰金という面を見ましても、EUなどは競争法違反に対してグーグルに累計で一兆円近くの制裁金を科しているわけですけれども、これほどの規模の企業にとっては、この日本の法案に示されているような罰金というのは痛くもかゆくもないんじゃないかというような気がいたします。
事実、その次に考えなきゃいけないのは、一般利用者の保護に関する規律の明示ということでございまして、これはもう細かいところは省かせていただきますけれども、マスクの販売だとか、いろんなところでいろんな行為が問題視されているわけで、こういったことを禁止するという面で一般利用者を保護していくということが必要なんじゃないかと思います。
五番目は、先ほども申し上げましたけれども、GAFAなど海外の事業者に対する規律、これ本当に有効に働くんだろうかということですね。プラットフォーム事業者が守るべき指針が第七条で示されて、国内管理者の選定も義務付けられているわけですけれども、これ本当に守られるんだろうかという疑問がございます。
それから、六番目は個人情報の保護。もうこれはあらゆる機会に強調されておりますけれども、プラットフォームというのは出品者、消費者の個人情報を収集、分析して商品販売、広告販売に活用するという仕組みでありますので、ここに一つの枠をはめておくということが必要なんだろうと思います。
こう申し上げている私も、アマゾンなんかは非常に便利なので愛用しているわけですけれども、これ、利用規約というのがございますね。利用規約にいろんなこと書かれているわけですけれども、これに承諾しないとそのサービス自体が利用できないという仕組みになっておりますので、このことを考えていく必要があるんじゃないかと思います。
七番目は、ギグワーカーなど、アマゾンやウーバーですけれども、これ、個人事業者とされて、何か事故があったときにも、ウーバーなんかはこれは無視している、個人の責任だと言っているようなことがありますから、そこを保護していく必要があるんじゃないかと。
最後は、やはりこういったものをトータルで考えていくためには、一つの独立したデジタルプラットフォームを対象にした規制機関を設立をして、それからプラットフォームと事業者あるいは消費者との間の紛争の解決も図っていくというのも一つのアイデアではないかなというふうに私は考えます。
ということで、今のデジタルプラットフォームの現状というものを考えますと、やはり一定の規制、これは明確化していくことが必要なんじゃないかということを私としては強調させていただいて、陳述を終えさせていただきたいと思います。
御清聴ありがとうございました。
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
参考人の皆様、本日は貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。
早速質問したいんですけれども、初めに中尾参考人と鈴木参考人にお伺いをします。
ローカル5Gについてなんですけれども、現状では、財政基盤が弱い中小企業にとっては導入がなかなか難しいんじゃないのかなというふうに思うんですね。そういう状況の下で、法案が結局は大企業支援となってしまうのではないかということで懸念をしているんですけれども、お二人はどのように考えられるでしょうか。
○委員長(礒崎哲史君) それでは、先に鈴木参考人からお願いいたします。
○参考人(鈴木真二君) ちょっと私は5Gのことはよく存じませんけれども、ドローンに関しては、もちろん中小の方々一生懸命やっていらっしゃいますので、そんな御懸念はないかと思います。
○委員長(礒崎哲史君) 次に、中尾参考人、お願いします。
○参考人(中尾彰宏君) 岩渕先生、どうも御質問ありがとうございます。
ローカル5Gに関しては、おっしゃるとおり、コストの低廉化、ここが非常に今ボトルネックとなっている現状がありまして、これは研究開発等によって機器のコストが下がればよいかなと思います。ただ、運用の面とか最初の初期導入のコスト、それから、今後自分で機材を持った場合の固定資産税とか、そういったところの税制の優遇、これは、中小企業にとってはもう本当に必要な税制優遇だと考えています。
おっしゃられるように、大企業にとってのものになっていくのではないか。ここは、ローカル5Gが成功するか否かに懸かっていると思いますけれども、ローカル5Gの元々の目的、施策の目的というものは、5Gという国民の共通の資産である周波数を、これを大都市とか大企業だけではなくて、本当に地方で課題を持っている中小企業あるいは自治体、それから、実は我々もローカル5Gの免許を取得しようとしておりますけれども、大学等で研究あるいは教育に使っていくといったような、そういった目的で作られた、その周波数を有効利用しようとする、これが施策の目的となります。
ですから、こうしたところに入っていくために、税制優遇をしたり、あるいは補助金を付けて研究開発を産学官で進めたり、こうしたところは必須の法律ではないかなと考えております。
大企業のためになる、だけのためになる可能性はなきにしもあらずですが、ただ、ローカル5Gの目的に照らし合わせてうまく施策が進めば、この法律が有効に機能すると考えております。
以上です。
○岩渕友君 ありがとうございます。
次に、福家参考人にお伺いをします。
私は、この間、楽天の例えば送料無料問題なんかを始めとして、規約を一方的に変更したり、出品事業者さん、出店事業者さん、中小の事業者さん多いんですけれども、そういう事業者の方であるとか消費者に負担を強いるやり方が独占禁止法上の優越的地位の濫用に当たるんじゃないかということで、こういった問題についてもこの委員会で取り上げてきました。楽天は確かに問題はあるんですけれども、楽天とよく対比をされるアマゾンにもやっぱり問題があるというふうに思うんですよね。
それで、本法案の対象範囲ですけれども、オンラインモールとアプリストアだけだと。先ほどお話ありましたけれども、検索サービスやSNS、そしてアマゾンの直販が除かれるのではないかというお話がありました。網目から漏れているというお話がありました。
これ、なぜ適用にならないのかということも含めて、本法案における両面市場の意義と限界について更に詳しくお聞かせいただきたいんですけれども。
○参考人(福家秀紀君) 御質問ありがとうございます。
この法律自体が特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上ということを目指すとされておりますので、プラットフォームかどうかということが境目になると思うんですね。
じゃ、アマゾンを取り上げた場合にこれがどうなるかということなんですけれども、お手元にお配りしましたアマゾンのビジネス、彼らは二つに分けているわけですけれども、最後のページですね、直販、ファーストパーティービジネスというのとサードパーティービジネス、マーケットプレイスと分けております。
このマーケットプレイス、サードパーティービジネスの方は、確かに出品者と消費者の間をアマゾンが仲立ちをしているわけだから、この法律の定義に当てはまると思うんですけれども、ファーストパーティービジネスというのは直販、要するにオンラインでの商品販売ということになるわけで、ここには両面市場の二つのタイプの顧客というのが存在しないで、プラットフォームとそれからそれの顧客の一般消費者というこの一つのタイプしか存在をしませんので、この法律の立て付けでいきますと、アマゾンの直販の部分というのは、これは対象にならないのではないか。
同じようなビジネスをしている事業者というのはたくさん存在するわけですね。オンラインで消費者向けに商品なりサービスを販売しているというところはたくさん存在するわけですけれども、そこはまた別の法律を作らないと、規制の対象にはなり得ないのではないかなというふうに考えるわけです。
一例を挙げますと、楽天の送料無料化というのがございましたけれども、楽天の場合は、アマゾンでいうとマーケットプレイスの方に該当しますから、この法律の規定に当てはまるわけですけど、アマゾンの場合は直販が相当のウエートを占めています。この部分というのは、アマゾンが送料も含めて自前、自分で価格を決定しているので、これはアマゾンの利用契約という範疇に落ちると思うんですけれども、楽天の場合は出品者が送料を決めているわけ、元々はですね。これを一律に幾らにしましょうと押し付けるというのは、これは出品事業者に対する優越的な地位の濫用になるケースもあるかと思うんですけど、アマゾンの直販の部分というのは、自分で仕入れた商品を消費者に提供しているわけですから、そこの送料というのは自分で決めるわけですから、そこは全くこの仕組みからいくと問題がないわけですね。
もちろん、アマゾンが巨大な事業者だということで、商品を仕入れるときに中小規模の事業者とどういう関係になるのかというのはあるかと思いますけれども、それはまた別の問題。あくまでこの法律の対象としているのは両面性市場ということですから、それに絞った仕組みを考えることになるんですけれども、オンラインでの商品販売と消費者の関係、これはまた別に検討が必要だろうというふうに考えております。
○岩渕友君 ありがとうございます。
続けて福家参考人にお伺いをするんですけれども、本法案が内外無差別に適用をするというふうにされております。今、GAFAが急速に拡大をしていると。このGAFAに対する実質的な規制に関する担保と仕組みについて伺いたいんですけれども、先ほどの話で、この資料も示していただきましたけれども、GAFAが日本のデジタルプラットフォーマーと比べて、例えば事業の規模であるとか収益性であるとか、もう桁違いだということが本当によく分かりました。
それで、GAFAが成長した背景ということについても少し触れておられたんですけれども、例えば個人情報を悪用するであるとか、ギグワーカーの活用などがあるというふうに述べておられたと。市場支配力の濫用であるとか国際的な税逃れということもあると思うんですけれども、こうしたことへの総合的な対策が求められているんだというふうに思います。
このGAFAの影響力と実力の巨大さについて更に詳しく教えていただきたいんです。その上で、国がやるべきことについて、参考人がどのようにお考えになるのかということを聞かせてください。
○参考人(福家秀紀君) お答えいたします。
ここでは私もGAFAだけを取り上げたんですけれども、実はもう一つ考えなきゃいけないのは、中国のBATHという巨大なプラットフォーム事業者も存在しますので、こちらのことも併せて考える必要があろうかと思うんですけれども。
GAFAの場合は、出発点というのは非常に革新的なビジネスモデルだったと思うんですね。グーグルの場合でも、検索サービス、これは非常に独自の仕組みでつくり上げてきた。それから、例えばフェイスブックにしても、SNSをああいう形でつくり上げてきたというのは非常に革新的なところだと思うんですけれども、これがどんどん拡大をするにつれて独占化の傾向が強まった。
さらに、その地位を守るために、いろんなことをしてきているわけですね。利益が上がるから、豊富な資金がございます。それを使ってRアンドDをやって、例えばアルファベット、グーグルの親会社はアルファベットですけれども、ユーチューブを買収するとか、携帯でスマートフォンのOSを開発する、いろいろあります、自動運転もやっていますよね。最近は、そういうふうに一つの市場で築き上げた力を利用して周辺市場にビジネス展開をしていると。
それから、フェイスブックにしても、インスタグラムとかワッツアップを買収したり、最近はリブラなんかも騒がれていますけれども、ああいったものまで先行して開発、ビジネス展開をしていくという余裕が、余裕といいますか、力が非常にあるわけですよね。それによって既存の市場でも寡占化、独占化した地位をそのまま継続していくというふうに一つの方向にまとめられてきていますので、もうここまで来ると、さあどうするかということが非常に難しいと思うんですね。
そこで、やはり先ほども申し上げましたように、じゃ、日本の事業者、それから消費者、これをどう保護していくんだという視点で考えなければいけないわけですけれども、なかなかそこは難しいと思うんですね。彼らは日本向けにだけ特化したサービスを提供しているわけではなくて、グローバルにサービスを提供しているので、世界中のサービスが一つのサービスだと言ってもいいわけで、それに対して日本だけが彼らを規律することができるか、この法案にありますような仕組みで何かできるかというと、非常に限られている。
そういう意味では、EUだとか周辺の国々と国際協調、じゃ、これにどう考えるかというような展開をしていくことも必要なんではないかというふうに考えております。
以上でございます。
○岩渕友君 ありがとうございます。
そうしたら、最後に伊永参考人にお伺いするんですけれども、今話があったように、GAFAの影響力が非常に大きいという中で、このGAFAに対する実質的な規制を行うために国がやるべきことについて、先ほども少しお話あったかと思うんですけれども、お聞かせいただけますでしょうか。
○参考人(伊永大輔君) 御質問ありがとうございます。
GAFAの力の強さに対してどのような牽制を加えていくかということだと思いますけれども、私は、この点につきましては競争という概念が一番有効だろうというふうに思っています。
GAFA、御承知のとおり、寡占化、独占化した市場におりますので、現在のところ、そんなに取引先相手の事情に考慮しなくても絶対取引をしてもらえるという、要は、避け難いトレーディングパートナーになっているわけです。これが別の選択肢が出てくると全く状況が変わってくるというふうに思います。先ほど中国の巨大ITの話もありましたが、こういった企業であっても、別の選択肢となれば、GAFAも競争の圧力にさらされることになりますので、現状のような立場ではいられないと思います。
具体的には、その取引先に対して搾取的な行為をしたり、それから、一方的な取引の変更であるとか規約の変更みたいなことをすると、別の会社に移られてしまう可能性があるわけですね。それによって力がそがれていきますので、そういった面では、我が国においてもどういうプラットフォーマーを育てるかと、それを牽制力として、競争相手としてどのように育て対抗させていくかということが国の課題として残っているかなというふうに考えています。
○岩渕友君 ありがとうございました。
以上で終わります。