2020年6月2日(火) 参議院 経済産業委員会
「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」
分散型電源最優先に
日本共産党の岩渕友議員は2日の参院経済産業委員会で、分散型電力システムの推進を盛り込んだ電気事業法等改定案をめぐり、停止中の原発による送電線容量の空押さえなどで地域分散型の小規模電源の導入が進んでいないと指摘しました。
岩渕氏は、北海道上士幌(かみしほろ)町がバイオガス発電の活用で停電時に電力供給する体制を構築する計画を検討していたものの、町の財政的な負担が大きく困難な状況にあるとして、政府の支援を求めました。
資源エネルギー庁の松山泰浩省エネルギー・新エネルギー部長は同事業の課題が蓄電池の導入コストの高さだとして、「予算を活用し、取り組みを支援したい」と答弁。梶山弘志経済産業相は「蓄電池の精度向上やコストダウンにむけた開発事業などに取り組む」と語りました。
岩渕氏は、北海道鶴居村では送電線の空き容量不足のためバイオガス発電計画を見送った事例を紹介。停止中にもかかわらず北海道電力泊原発のための送電線容量が押さえられていると指摘し、「解放すべきだ」と迫りました。梶山経産相は「原子力を含む既存の電源が保持する送電線網(容量)を合理的に活用することが重要だ」と述べました。岩渕氏は「再エネの主力電源化を図るなら原発による送電線の空押さえを止め、小規模電源の最優先接続に転換すべきだ」と強調しました。
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質問資料 北海道電力系統図と主なバイオガスプラント【PDF版】【画像版】
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○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
持続化給付金をめぐる業務委託が不透明とされている問題について、事業者の方々の実態がもう切迫をして、給付が遅れてもう悲鳴が上がっている中で、一体どうなっているのかと怒りの声が上がっています。真相を一刻も早く明らかにして、そして一刻も早い給付を求めて、法案の質疑に入りたいと思います。
本法案は、自然災害の頻発と激甚化、再エネの主力電源化を進めるために強靱かつ持続可能な電気の供給体制を図ることが必要だとして、送配電の増強、運営についてこれまで以上に国の関与を強くするというものです。
東京電力福島第一原発事故、北海道胆振東部地震でのブラックアウト、台風などによる長期停電を受けて、原発、石炭火力の大規模集中型電源から再エネ中心の分散型電源へと転換することの重要性は明らかです。
資料を御覧ください。これ、北海道電力系統図と主なバイオガスプラントを示したものです。二〇一八年十二月のこの経産委員会で、地産地消の再生可能エネルギーの重要性について、北海道十勝の鹿追町でお聞きした話を取り上げました。そのときに示した資料に新しい情報を加えたものです。
鹿追町は、酪農などが盛んで、家畜の排せつ物をバイオガス発電に活用して、余剰熱でチョウザメの飼育などを行って、できた有機肥料は畑に使うということで、ここは畑作も盛んなんですけれども、一石何鳥にもなっているという話です。自分たちの町で使えるだけの発電をしているのに、その電気はブラックアウトのときに使えなかったと、こういったお話もお聞きをしました。
本法案では、災害に強い分散型電力システム構築に向けた措置を進めるとしています。この間、ドイツのシュタットベルケのような地産地消の再エネ導入に取り組んでいる福島県喜多方市と会津電力、大規模太陽光発電施設の設置を望まないことを宣言した福島県大玉村で話も伺ってきました。
今日は、十勝管内の上士幌町での取組についてお聞きします。
ここでは、既に行っているバイオガス発電を活用して、停電時に町内の電力を自前で供給するマイクログリッドを構築しようと計画をしていたんですけれども、非常時のためだけに町単独で膨大な投資を行うのは困難だと判断をしたと地元の議員から聞きました。この事業は、二〇一八年度の補正予算のマスタープラン作成事業で採択をされた事業なんです。これ、実現に向けた課題についてどのように認識をしているでしょうか。
○政府参考人(松山泰浩君) お答え申し上げます。
経済産業省では、近年増加をします災害時等に電力のレジリエンスを強化するという観点から、地域の再エネ発電設備等を活用して、災害時にも自立して電力供給できる地域マイクログリッドの実現を目指した事業を行ってございます。これが今委員御指摘の平成三十年の補正予算の事業から始まっているわけでございますが、この中では、地域の自治体、あと再エネの発電事業者、それとその地域の送配電事業者による連携した取組が必要になるわけでございまして、この方々が一体となって地域にマイクログリッドを構築するのを支援申し上げる、そういった事業でございます。
御指摘の北海道の上士幌町につきましても、当該地域における、この地域はバイオガスのプラントがございますものですから、この発電プラントを活用いたしまして、地域のより強靱なマイクログリッドをつくるためのマスタープラン作りということに対して経産省も支援を行ってきたところでございまして、現在はこの作られたマスタープランを基にいたしましたシステム構築に向けた具体的な検討が進められているというふうに承知しております。
このマイクログリッドの構築というときに必要となってまいりますのは、このグリッド、この地域のグリッドの中での電力の需要と供給を一致させるための調整力として活用する蓄電池が不可欠になるわけでございますが、この導入コストが高い水準にあるというのは課題の一つだと認識してございます。
また、こうしたエリアの中でこの需給調整をするわけでございますが、現在の仕組みの中では、一般送配電事業者の配電網による電力需給調整というのは、一般送配電事業者がそのエリア全体で調整をしていく、そのルールの下でやっていくという仕組みになっているものですから、地域の特徴ですとか実情に応じたルールの形成、調整というのには様々な調整が必要になってくると、そこに課題があるものというふうに認識してございます。
経産省としましては、こういった事業の構築、実現に向けまして、現在の予算支援等を通じて取組を応援してまいりたいと考えてございます。
○岩渕友君 災害に強い分散型の電力システムの構築ということであれば、こういう事業を進めなくてはならないと思います。
先ほど、蓄電池の導入コストの話もあったんですけれども、大臣も、この間、蓄電池の導入を進めることは再エネの主力電源化に向けて重要だと前向きな答弁を行っています。この蓄電池に係る費用や障害になっている問題などの解決が必要なのではないでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 再エネを入れていくために、蓄電池と、あとネットワークをどうするかという課題があると思っております。
一つに、その蓄電池、今委員の御指摘があるわけですけれども、分散型エネルギーシステムの鍵となる蓄電池の導入コストが高い水準にあるという課題、今、現時点ですね、一般送配電事業者の配電網による需給調整は、制度上柔軟な運用が難しいという課題がございます。
このため、市場の拡大による蓄電池の導入コスト低減を図るために、地域マイクログリッドの構築を支援する予算措置や、蓄電池等の遠隔統合制御の技術実証事業など先進的な取組を進めるとともに、蓄電池の更なる性能の向上やコストダウンに向けた改革的電池の技術開発事業のほかに、実証事業を通じた蓄電池の導入促進にも取り組んでいるということでありまして、まだまだちょっと技術開発が必要な部分があるということなんですね。
例えば、私もちょっと調べてきたんですけれども、今、蓄電池の値段、大体キロワットアワー当たり十三万円ぐらいと言われております。これを半分ぐらいにしないとなかなか競争力が出てこないということを言われておりまして、中間の目標もございますけれども、そのためにどういう実証実験をしていくか、メーカーと組んでどうしていくかということ、これ大きな課題ですので、再生可能エネルギー入れていくためにも、強靱化をするためにも、やはりこういった課題を解決していかなければならないと思っております。
委員おっしゃるように、マイクログリッドを分散型電源にするためには、それぞれ役割分担があるということで、地域で誰か一人がやろうと言えばできるということではなくて、役割分担で調整、出力の調整したり、また、いざというときに分散型ということで大きな系統の電源を切ったりとかということにもなりますし、また、系統に電池をつなぐ際の認証というものもありますので、そういった認証も簡素化できるようにとは思っていますけれども、ある程度、品物が、品質が均一してこないとなかなか難しいということもありますので、そういったことに向けて、技術開発も含めてしっかり取り組んでまいりたいと思っております。
○岩渕友君 地域分散型電源を推進するためには、とにかく障害取り除かなくてはなりません。
北海道は、再エネのポテンシャルが非常に高いんですね。全国の四分の一を占めていますけれども、送電線の空き容量がないということを理由にして、今も生かせないままというふうになっています。それが先ほどの資料のとおりなんです。
北海道地方環境事務所の調査では、鶴居村で計画をしていたバイオガス発電が送電網空き容量不足のため見送ることになったということなんです。先に送電線を押さえた電源が優先をされて、原子力発電は稼働していなくても送電線は押さえられたままです。
大臣は、既存の送電網をできる限り活用するんだと答弁しています。泊原発は現在稼働をしておりません。泊原発が押さえている分を開放するべきではないでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 再エネの更なる導入拡大のためには、原子力を含む既存の電源が保持している送電網をできる限り合理的に活用していくことが重要であります。そのため、系統が混雑しているときには出力制御を受けるといった一定の条件の下で、新たな電源の送電網への接続を早期に認める仕組みとして、ノンファーム型接続の導入を今進めているところであります。
昨年九月に千葉エリアにおいてノンファーム型接続の仕組みが初めて導入をされ、仮に再エネを五百万キロワット追加した場合でも、出力制御時間は相当程度低い想定であることが確認をされたと聞いております。同様の取組は、今年の一月に茨城県の鹿島エリア、また北東北エリアにおいても実施をされて、北東北エリアでは約四百万キロワットの再エネの接続が可能となったところであります。
ノンファーム型接続の仕組みは再エネの導入加速化に資するものであることから、特定の地域での対応に限定せずに、北海道エリアを含む全国に広げていくことが重要であると考えており、来年中の、二〇二一年中の全国展開に向けて経済産業省としても取組を進めてまいりたいと思っています。
空いているところは使えるということなんですね。そして、そこがもし優先権があるものが通ったときにも、今まで以上にその空きをどうするかという精緻な計算をしていって、できる限り使っていただくという方針でやらせていただきたいと思っております。
○岩渕友君 東京理科大の橘川教授は、三月三十一日付けの北海道新聞で、いつ動くか分からない原発のために送電網の容量を空けっ放しにしておくのは経営的に見て無駄だと、発送電分離を機に北電が泊の呪縛から抜け出せるかどうか注目したいというふうにコメントしているんですね。再エネの主力電源化図るというのであれば、送電線の原発による空押さえやめて、再エネ、とりわけ小規模電源の最優先接続、最優先給電に転換をするべきです。
法案では、第五次のエネ基計画に基づいて、送配電網の増強を二〇五〇年まで見据えて計画的に進めるためだということで、将来を見据えた広域系統整備計画の策定を電力広域的運営推進機関、OCCTOですね、の業務に追加をして、法文上明記しています。
OCCTOは、本来、新電力や再エネ電源などを含めて公正公平な系統接続や送配電事業を推進する公共的、中立的な機関であるべきです。ところが、その実態どうなっているかというと、OCCTOの事務局職員は約百七十人、その約六割が電力会社からの出向者となっています。その公正性と中立性に強い疑問があるわけですね。これでどうやって新電力への公平性を担保するのか。
OCCTOの体制整備と公平性、中立性確保のために、欧州のように、厳格な人的規制、不公正な取引防止に関する規制まで定めた権限の強い独立規制機関にするべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) OCCTOは二〇一五年に設立をされているわけでありますが、そこの人員というのに求められる要件というのは、かなり専門性の高い者が、技術的な要素が高い者が求められるということで、当面、電力会社からの出向者に頼っているところもありますけれども、プロパー職員での新卒や中途での採用を進めて出向職員を減らしていくための取組を今強化をしているところであり、私もそれは確認をしているところであります。
中立性、公平性というものを高めるための取組をしていくという中でしっかりと対応してまいりたいと思いますし、ある程度の年限が来たときに、そういう組織がどうあるべきか、総括、検討をした上で、どう変えていくべきかということもしっかりと見据えてやってまいりたいと思っております。
○岩渕友君 そもそも、四月一日から発送電分離が始まりましたけれども、その持ち株会社方式などの法的分離ではなくて、ヨーロッパのように発電会社と送電会社、完全に分離して、資本関係まで断ち切る所有権分離こそ必要だというふうに思うんですね。
本法案で、OCCTOへの業務が追加をされると。膨大な業務に加えて、追加される業務の中には交付金の交付なんかも含まれていて、大きなお金を扱うことになるわけなんですよ。そういうことから考えても、やっぱり公平性、中立性を確保するということが非常に重要になっていますし、自主的な取組の難しさと限界が関電の原発マネーの還流問題でも明らかになっているということで、完全に独立した機関が求められているということを述べておきたいと思います。
最後に、二〇二一年度以降のインフラシステム輸出について、今後の方向性を検討する有識者会議の中間取りまとめが経産省から公表をされました。世界から批判が集まっている日本の石炭火力発電の輸出を今後も推進する姿勢は変わらないと。会議のメンバーには、海外での石炭火力発電事業なども行うJERAの社長なども入っています。
コロナ禍の下で、世界の三百五十の医療団体がG20の首脳に宛てて、健全な復興の実現を求める公開書簡を発表しました。化石燃料から再エネへと訴えていて、石炭火力推進の日本政府の政策転換を迫っています。
石炭火発の輸出をやめるように見直すべきではないでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 石炭火力は、CO2排出量が多いという環境面の課題がある一方で、世界には、経済発展に伴うエネルギーの需要増大に対応するために、経済性や、自国内に資源が賦存することなどから、石炭エネルギー、石炭をエネルギー源として選択せざるを得ない途上国が存在するという現実があります。まだ電力にアクセスをしていない人というのは、世界中で八億人ぐらいいるんですね。こういった人たちをいかに電力にアクセスをさせるか、そしてそういった生活をさせるかということも非常に大きな課題であると思っております。
先日、中間取りまとめを行いました経済産業省のインフラ海外展開懇談会でも、エネルギー転換、脱炭素化に向けた政策形成に建設的な関与をしながら、石炭をエネルギー源として選択せざるを得ないような国に限り支援を行うことが我が国の目指すべき方向性ではないかとの御意見をいただいたところであります。
大事なことは、我が国が世界の二酸化炭素の実効的な排出削減に貢献をするという視点であります。石炭火力輸出支援については、次期インフラシステム輸出戦略骨子策定に向けて関係省庁で議論をし、結論を得ることになっておりますけれども、石炭火発だから手を引くということになって……
○委員長(礒崎哲史君) 時間が来ておりますので、簡潔に願います。
○国務大臣(梶山弘志君) ごめんなさい。
ほかのところが石炭火発をまたそこに設備をする可能性もあるという中でどうするのか。八億人という電力にアクセスしていない人たちをいかに電力にアクセスさせるかという視点で、石炭は駄目だというだけではなくて、より効率的なものをつくるということも一つの視点だと思っております。
○委員長(礒崎哲史君) おまとめください。
○岩渕友君 はい。
原子力、石炭火力をベースロード電源とするエネ基計画の見直し、そして石炭火発を海外に押し付けるインフラシステム輸出の見直しを求めて、質問を終わります。