2020年6月4日(木) 参議院 経済産業委員会
「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」
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質問資料① スマートメーターデータから推定可能な個人に関わるデータ【PDF版】【画像版】
質問資料② グリッドデータバンク・ラボ【PDF版】【画像版】
質問資料③ スマートメーターデータと他データとの組み合わせ例【PDF版】【画像版】
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○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
本法案では、災害時などにおける電力データの提供義務化と併せて、これまで禁止されていた平時の電力データ活用も解禁するとしています。
法案の内容に係る検討が行われた今年二月の持続可能な電力システム構築小委員会中間取りまとめでは、電力データの活用について支持する意見があった一方、消費者は自らの個人情報がどのように活用されるのかということに不安を感じているとの意見があった、このため、電力データの活用に当たっては、消費者保護に万全を期す仕組みづくりが重要であると、こういうふうに書いてあります。
資料一を御覧ください。全世帯に設置が進められているスマートメーターのデータによって、この丸で囲ってあるところを見ていただきたいんですが、推定可能な二次データとして世帯構成、家族人員ごとの在宅状況、活動状況、ライフサイクルなどが可視化できるということで、電力データは個人情報、プライバシーそのものです。中間取りまとめでも述べているように、消費者団体関係者から強い懸念が出されています。
そこで、大臣にお聞きをするんですけれども、個人情報の利用に同意をした結果、当初の目的以外に個人情報が利用されることや、別の第三者に情報が提供されているようなことにならないのか。また、高齢者からの同意取得に当たって不招請勧誘のような行為が生じないか懸念される、こういった意見が出ていることを踏まえて、どのように個人情報の保護、そして消費者保護を図るのでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) まず、大前提として、電力データを取り扱う事業者に対しては、個人情報保護法の個人情報を保護するための法令の規定が適用されることになっております。
その上で、今回の法案では、個人情報の保護に更に万全を期す観点から、情報利用等を適正に行う中立的な組織として、認定電気使用者情報利用者等協会を国が認定した上で、個人情報を含む電力データの提供は、この認定を受けた協会を介してのみ行うことができる仕組みとしているところであります。
さらに、情報利用等の適正化を図るために、今回の法案上、同協会には電力データの利用者に対して指導、勧告を行う権限を付与していることに加えて、国は必要な場合には同協会に対しても改善措置命令を行うことができ、命令違反の場合は認定を取り消すことも可能な仕組みとしております。
これらの法的な枠組みを適切に運用することにより、電力データの利用と個人情報の保護の両立に万全を期してまいりたいと考えております。
○岩渕友君 今大臣の答弁の中にもありました認定電気使用者情報利用者等協会、ちょっと長いので認定協会というふうに言いますけれども、これ中立的な組織だと今答弁にもありましたけれども、電力データを保持している東京電力など、一般送配電事業者と情報を使いたい事業者でつくる団体です。消費者団体から、中立的な組織が利益を出すこと、情報提供先を増やすことを優先して情報提供先の適格性の判断などが適切になされないようなことにならないか、こういった懸念が出ていますけれども、これ当然のことだと思います。
電力データの活用については、スマートメーターを始めとした全国での電力設備データ活用を推進するということで、二〇一八年十一月に東京電力パワーグリッドとNTTデータが設立したグリッドデータバンク・ラボ有限責任事業組合というものが既に様々な検討を進めているんですね。
資料の二を御覧ください。
これがグリッドデータバンク・ラボについて示したものになっています。これを見ていただければ分かるように、各大手電力、三井住友銀行などの金融機関、損害保険会社、三菱地所などの不動産関係や電通など既に百二十社が参画をしているということなんですけれども、そこで大臣にお伺いするんですが、実質この団体が認定協会の主要メンバーになるのではありませんか。
○国務大臣(梶山弘志君) 委員の御指摘にありますその大手電力三社を始めとする民間企業や自治体など、約百二十社のデータ利用希望者が参画するグリッドデータバンク・ラボ有限責任事業組合においては、電力データの活用方法について様々な検討が行われていると承知をしております。
まさに法案を御審議いただいているところでありますが、現時点で確定的なことをお答えすることは困難でありますが、仮にこの組合に参画する企業が中心となって認定電気使用者情報利用者等協会の認定申請をしてくるのであれば、候補の一つになり得ると考えております。
○岩渕友君 候補の一つになり得るんだということでした。
グリッドデータバンク・ラボは、二〇一九年六月二十六日の電力・ガス基本政策小委員会で、電力統計データの利用者と提供者でデータ提供方法の具体化について議論を深めるよう整理されたことを踏まえて、電力データ活用検討委員会を発足させて検討を進めて、今年二月に電力データ活用促進に向けた今後の進め方について提言をまとめているんです。
この提言の中で、統計データに関する残課題、残る課題に加えて、今後検討が進む個人データも含めた電力データ活用に係る実務課題について、専門的知見を有する第三者である有識者、データ提供者である一般送配電事業者及びデータ利用者による検討、議論の場として、本検討委員会を今後も継続するというふうにしているんです。提言を見ても、グリッドデータバンク・ラボが認定協会に移行していくということが想定をされます。
二〇一八年九月十八日に開催をされた電力・ガス基本政策小委員会では、日本全体的には個人情報保護にセンシティブになり過ぎているところもある、確かに気を付けないといけないけれどもネガティブにならずに進めてほしいと、こういった意見であるとか、データの加工方法やプラットフォームといった外部の方々に使い勝手のいいような統一的な仕組みをつくってほしいと、こういった意見が出されているんですね。
この認定協会は中立的な組織だというんだけれども、こうした議論から、個人情報そのものである電力データを活用したい事業者、提供したい送配電事業者の使い勝手がいいプラットフォームができるということになるのではありませんか。
○国務大臣(梶山弘志君) 個人に関する情報はあくまでも個人に関する情報ということで、これはしっかりと守っていかなければならないと思っております。
匿名加工した情報、そして統計情報という形で提供するという形になると思いますけれども、これには個人が特定できないような加工をしてあるということですので、こういったものをデータ、ビッグデータとしてどう活用していくか、統計データとしてどう活用していくかというのは、皆さんそういう認識はあると思っております。
中立性ということでありましたけれども、利用者等協会というやつができますけれども、利用者等協会は、電力データの活用が適切になされるように中立性を保持、確保しつつ、消費者保護や情報セキュリティー対策に万全を期すことが重要であります。その趣旨に照らせば、協会がその業務において、個人情報の保護に関する十分な知見、体制を備えていないことや、特定の事業者の利益を追求するようなことがあってはならないことであると思っております。
このため、今回の法案においては、協会の認定に当たっては、中立性が確保されているか否かも含めて、国がその適切性を確認をすることとしております。それに加えて、必要があれば協会に対して、先ほど申しましたように、改善措置命令や認定の取消しを行うことができる仕組みとしております。
さらに、協会には第三者諮問委員会を設置をさせることとして、消費者保護や情報セキュリティー対策の観点から、電力データ提供に係るプラットフォームを適切に運用しているかどうか、また、電力データを利用しようとする者からの申請に対しデータ提供の可否を審議することを想定をしており、これらの措置を国が定める審査基準において明記する予定であります。
こうした仕組みを適切に運用することにより、電力データ利用に係る運営の中立性や消費者保護に万全を期してまいりたいと思いますし、恣意的に個人情報が出ることは必ずやっぱり避けなければならない。それと併せて、情報のセキュリティー、その物理的なことも含めてしっかりとやっていかなければならないものだと思っております。
○岩渕友君 二〇一八年五月十八日の電力・ガス基本政策小委員会では、電力データについて、ニーズという観点でも個人情報の方がいろんな意味でこれを活用する可能性はある一方、そのために超えるべきハードルも高いという議論がありました。けれども、今回の改定で一気に解禁することになってしまいます。
昨年、リクナビが就活生の閲覧履歴等から内定辞退率を算出して採用企業に販売していた問題が明らかになって、衝撃が広がりました。このデータを購入したのがトヨタや三菱電機を始めとする名立たる大企業三十五社。情報提供先の適切性、提供情報の適格性の判断は非常に難しいものがあります。そもそも、日本の個人情報保護制度が脆弱であるということに加えて、今国会で改正案が提出されている個人情報保護法では更なる個人情報の利活用を推進する新制度が盛り込まれていて、プライバシー侵害のおそれが高まります。
さらに、二〇一八年九月十八日の電力・ガス基本政策小委員会では、統計加工化された情報については電気事業法との関係でも問題にならないと整理することが適当とされています。これ聞いて驚きました。
グリッドデータバンク・ラボが二〇一九年七月に総務省のビッグデータ利活用推進のための連携会議でプレゼンしたときに、電力データは電気利用をする全世帯の情報を網羅するために、ほかのデータと重ね合わせた分析をすることで、ほかのデータがカバーしていない領域を推測するなど、情報の土台としての活用が期待されるとしています。
資料の三を見ていただきたいんですけれども、同意は要らないとしている匿名加工情報や統計情報のデータも、その他のデータと掛け合わせることで個人情報に近づくと。
そこで、大臣に聞くんですけれども、個人情報保護について、どんな歯止めがあるでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 個人情報の漏えいリスクについては、まずは個人情報保護法に基づいて適切に管理されるべきものと理解をしております。委員も御承知だと思いますけれども、匿名加工情報や統計情報の形であれば、特定の個人を識別することができないために、電力データの利活用を進めたとしても個人情報が漏えいするリスクはないと考えております。
その上で、今回の法案では、国の認定を受けた認定電気使用者情報利用者等協会が、匿名化や統計化の処理を行うことなく、個人情報に該当する情報を需要家の同意を得ずに提供するなど、不適切な取扱いをするようなことがあれば、国が改善措置命令や認定の取消しを行うことができる仕組みとしているところでありまして、こうした仕組みも適切に運用しながら個人情報の保護に万全を期してまいりたいと思っておりますし、これらを構成するそれぞれの企業の信用問題にも関わることでありますから、個人情報を大切にしない企業の信頼というものがどういう形になっていくかということも考えながら、こういった運用を考えていかなければならないと思います。
○岩渕友君 電力データ提供に係るコスト試算では、データの匿名、統計加工なども含めて、システム構築費用について、三十分に一回連携で三十億から五十億円、こういった見積りがされているんですね。この費用の回収方法として、託送料金、それ以外の電気料金に上乗せできないかという検討がされているんですけれども、もうけ上げるために掛かる費用を電気料金として消費者に負担を押し付ける、これ、とんでもないことです。こういうことはやめさせるべきではないでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 利用者等協会や一般送配電事業者が電力データ提供のための要する費用は、御質問のシステム投資のような費用も含めて、受益者負担の観点から、そのデータを利用する者が負担する仕組みとするのが基本だと思っております。
他方、電力データ提供という新たな業務により一般送配電事業者に収益が発生することも考え得ることから、審議会においてはいろんな意見が出ているということであります。あくまでも審議会での議論ということでありますけれども、この法案の成立後、電力データの活用のニーズやシステム投資に必要となる費用の規模等を見極めた上で、有識者や消費者団体等の御意見も伺いつつ、詳細の制度設計を進めてまいりたいと考えております。
○岩渕友君 最後に、大臣にお聞きします。
一方で、本法案で創設する新たな託送料金制度では、消費者団体から収支悪化による安易な値上げの懸念があると指摘されているんです。
そこで、これは本当に消費者にとって重大な問題なので、消費者が広く参加できる公聴会を復活するべきじゃないかということと、少なくても消費者、国民に対して託送料金、データ、電力データ活用に係る利益や費用負担について、消費者委員会の意見を聞く仕組みで見える化するべきではないでしょうか。
○委員長(礒崎哲史君) 時間ですので、お答えは簡潔に願います。
○政府参考人(村瀬佳史君) はい。
お答え申し上げます。
先ほど大臣から御答弁いただいたとおり、法案の成立後、電力データ利用の活用のニーズですとか必要となるシステム投資の規模等を見極めた上で、消費者の団体等の方々の意見、それから有識者の方々の意見も伺いながら詳細設計を進めてまいりたいと考えてございます。
御指摘いただきましたように、こういった形で透明性を持たせていくのは大事なことでございますので、しっかりその議論の過程は公開してまいりたいと考えてございます。
○岩渕友君 以上で質問を終わります。
○岩渕友君 私は、日本共産党を代表し、エネルギー供給強靱化法案に反対の討論を行います。
東電福島第一原発事故を契機とした電力システム改革から七年、原発と石炭火力の大規模集中電源から再エネ分散型電源への転換の重要性は、北電ブラックアウト、台風等の長期停電を受け、いよいよ明らかになりました。
ところが、本法案は、第五次エネルギー基本計画の具体化を図って原発と石炭依存を将来にわたり固定化し、費用負担を消費者に転嫁するとともに、再エネ導入の抑制になりかねないもので、国民の願い、気候変動への対応、国際的潮流に逆行しています。
反対理由の第一は、将来を見据えた広域系統整備計画策定をOCCTOの業務に追加することで国の関与を強め、原発と石炭火力発電をベースロード電源とする第五次エネルギー基本計画に基づく大規模集中型の送配電網増強を進めるものだからです。
第二は、新たな託送料金制度は、電力会社が必要な設備改修を怠ってきたツケを電気料金として国民に転嫁し、安易な値上げにつながりかねないものだからです。電気料金の四割を占める託送料金には、既に多額の原発費用が転嫁されている上、原発の廃炉費用や賠償負担金も上乗せされます。さらに、電力データ活用のシステム構築費用の押し付けが懸念されます。公聴会を復活することを始め、消費者、国民に見える化すべきです。
第三は、平時のビジネス活用を解禁する家庭の電力データは個人情報そのものであり、脆弱な個人情報保護制度の下では本人の承諾なしに大企業のもうけ本位の活用が懸念され、断じて容認できません。
第四は、電力市場の環境整備も不十分なままFIP制度に移行することは、市民、地域主体の再エネ事業を阻害しかねないからです。また、再エネ導入に必要な送電網の増強、接続を拒んできた電力会社の責任を問わず、系統増強費用を再エネ賦課金として国民に転嫁することも許せません。原発による送電線の空押さえをやめ、再エネ、とりわけ小規模の最優先接続、最優先給電に見直すべきです。
第五は、JOGMEC法改正は、石炭開発を拡大し、LNG需要をビジネスチャンスとする巨大企業の投資リスクを国に肩代わりさせるものだからです。
市民、地域主体の再エネ導入推進こそが、災害にも強く、再エネの主力電源化に向かう道です。EU並みの導入目標を掲げ、原発ゼロ基本法案、分散型エネルギー四法案の実現を求め、反対討論といたします。
○委員長(礒崎哲史君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
これより採決に入ります。
強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案に賛成の方の起立を願います。
〔賛成者起立〕
○委員長(礒崎哲史君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。