2021年6月3日(木) 参議院 経済産業委員会
「産業競争力強化法等改正案」
日本共産党の岩渕友議員は3日の参院経済産業委員会で、「脱炭素」を口実に原発を推進しようとしている政府の姿勢を批判し、再生可能エネルギー・省エネルギー中心の政策へと転換するよう主張しました。
岩渕氏は、昨年12月に決定された「2050カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、原子力を「確立した脱炭素技術」としていることを厳しく批判。梶山弘志経産相が今年4月、「原子力を含む脱炭素電源を最大限活用していく。現在6%の比率をエネ基(エネルギー基本計画)に定める2割程度まで高めていくことは必要不可欠」と強調していることをあげ、原発の40年間運転ルールの延長を前提としているのではないかと追及しました。
梶山経産相は「仮定のもと計算すれば30基程度は(稼働させることが)必要だ。一部40年以上の運転延長は不可欠だ」などと答弁しました。
岩渕氏は「結局、原発の運転延長、新増設・更新(リプレース)ということになる」と政府の姿勢を批判。屋根置きや営農型の太陽光発電など、今ある再エネ・省エネ技術を普及することでカーボンニュートラルの大部分が実現できるとの研究もあると指摘し、再エネ・省エネ中心のエネルギー政策へと転換するよう主張しました。
質問資料1 国内原発の将来の設備容量の見通し 【PDF版】/【画像版】
質問資料2 発電エネルギー技術のコスト比較(米国) 【PDF版】/【画像版】
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2021年6月3日(木) 参議院 経済産業委員会
「産業競争力強化法等改正案」
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
本法案は、グリーン社会への転換のために税制措置などを講じるというふうにしています。
本法案にある非化石エネルギー源に含まれる電源とは何かということをまず最初に確認をしたいと思います。
○政府参考人(新原浩朗君) お答えをいたします。
今回の改正法案に規定する非化石エネルギー源の電源とは、太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、原子力発電といった化石燃料以外のエネルギー源を用いた電源を指すものでございます。
ちなみに、税制の適用要件はこれよりちょっと狭くなっております。
○岩渕友君 今答弁いただいたように、つまりは非化石エネルギー源に原子力発電も含まれているということです。
政府は、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けて、再エネの導入と同時に原子力を始めあらゆる選択肢を追求するんだというふうにしています。原子力は、第五次エネルギー基本計画では実用段階にある脱炭素化の選択肢の一つだと、こういうふうに位置付けられています。そうなんですけれども、去年の十二月に決定をされた二〇五〇年のカーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略では、確立した脱炭素技術であるというふうになっているんですね。
これ、原子力が確立した脱炭素技術と位置付けられたのはいつからなのか、そして、この実用段階にある脱炭素化の選択肢の一つということと確立した脱炭素技術とでは、これ違うと思うんですけれども、この確立した脱炭素技術というのはどういうことなのかを大臣、教えてください。
○国務大臣(梶山弘志君) 御指摘の、原子力が再エネとともに確立した脱炭素技術であるという表現は、昨年十一月の総合資源エネルギー調査会の資料において初めて提示をしたものであります。現行のエネルギー基本計画でも、原子力は実用段階にある脱炭素化の選択肢として位置付けられております。
二〇五〇年カーボンニュートラルを目指し、電力部門の脱炭素化を進めていく必要がある中で、既に商用化され、技術的に確立した原子力や再エネといった脱炭素電源の選択肢と、次世代技術やサプライチェーン構築が必要となるCCSや、カーボンリサイクルと組み合わせた火力発電や水素発電などの脱炭素電源の選択肢とは位置付けが異なることを示すために用いたものであります。審議会の委員からは、この考え方について異論はなかったと報告を受けております。
エネルギー基本計画の見直しに向け、各エネルギー源の特性を含めたエネルギー政策全体についても集中的に議論を深めて結論を出してまいりたいと考えております。
○岩渕友君 そうなってくると、この確立した脱炭素技術というのは、これまでの実用段階にある選択肢の一つというのとは違って、ちょっと一段格が上がるというか、そういう意味にもなるんでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 今御説明した言葉のとおりでありまして、既に商用化されて技術的に確立した原子力や再エネといった脱炭素電源の選択肢と、次世代技術やサプライチェーン構築が必要となるCCSや、カーボンリサイクルと組み合わせた火力発電や水素発電などの脱炭素電源の選択肢とは位置付けが異なるということで、まだ確定していないというか、技術的に確立していないものとしているものという区別であります。
○岩渕友君 技術的に確立していないものとは違って、既に商用化されているしということなんですけれども、エネ基に書き込まれているのは幾つかの選択肢の中の一つということだと思うんですよね。
これ、確立した技術というと、私はやっぱり位置付けが上がったというふうな印象を受けるわけなんですよ。確立した脱炭素技術と言うんだけれども、あの東京電力福島第一原発事故を見れば、緊急事態宣言は今も発令をされたままですし、廃炉の見通しも立っていないし、何よりも、今も帰ることができない、ふるさとに戻ることができない方たちが、もう何万という方たちがいらっしゃるわけですよね。あれだけの事故が起きたと、そして甚大な環境汚染も引き起こしている中で深刻な被害も続いています。これで原発が確立した技術などとはやっぱり到底言えないというふうに思うんですね。
大臣は、四月の二十七日に福井県知事と行った会談の中で、将来にわたって原子力を持続的に活用していくんだと、こういった発言をされています。これは原発を使い続ける宣言というふうにしか聞こえないんですよね。
これでは、エネルギー基本計画にあるように、原発依存度を可能な限り低減すると、こういうふうに言っても、原発依存度を低減しようがないということだと思うんです。だから、原子力を持続的に活用する、一方では原発依存度を可能な限り低減すると、これ矛盾しているということになるんじゃないでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) カーボンニュートラルは簡単なことではなく、日本の総力を挙げて取組が必要であると考えております。そのため、再生可能エネルギーはもちろん、安全性が確認された原子力を含め、使えるものは最大限活用して、水素、アンモニアなど新たな選択肢も追求するというのが政府の基本的な考えであり、将来にわたって原子力を持続的に活用していくということはこうした趣旨で申し上げたものであります。
このため、必要な限りにおいて原子力を活用していくが、一方でカーボンニュートラルの実現へ徹底した省エネ、再エネの最大限導入等も進めてまいります。したがって、こうした取組と可能な限り原発依存度を低減するとの方針は必ずしも矛盾するものではないと思っております。再生可能エネルギーの比率が上がる、そして原発の比率は下がるということもあるわけでありまして、そういったことも含めた意味であります。
○岩渕友君 やっぱり、どう考えても矛盾しているなというふうに思うんですね。
それで、自民党の関係会議からも、政府にこの間相次いで提言や要望が出されています。その中には、次期のエネルギー基本計画に原発の新増設、リプレース、これを明記するように求める要望もあります。まさか、カーボンニュートラルだと、脱炭素だということを理由にして、この原発の新増設、リプレースを次のエネ基に書き込むことはないか、これを確認したいと思います。
○国務大臣(梶山弘志君) 原子力につきましては、まずは国民の信頼回復に努めて既存の原発の再稼働を進めることが重要であり、現時点では新増設、リプレースは想定していないというのが政府の考え方であり、これに変わりはございません。
その上で、タブーなしでしっかりと議論するという考えの下で、審議会において原発の新増設、リプレースも含め御議論をいただいているところ、また、党においても、自民党においてもそういった議論も行って提言をしているということでありますけれども、この議論は駄目だということではなくて、それぞれの考え方しっかり披瀝をしていただいて、そしてその上で総合的に考えていくということになると思います。
引き続き、エネルギー基本計画の見直しに向けて、様々な御意見に耳を傾けながら議論を深めて結論を出してまいりたいと考えております。
○岩渕友君 現時点では想定をしていないと言うんだけれども、一方では総合的に考えていくというふうな今答弁ありました。結局は書き込むということを否定はしていないということになりますよね。
これ、原発事故による被害の実態は先ほど述べたとおりです。原発ゼロを願う国民世論も、あの福島の原発事故の後、広がってきています。先ほど大臣が、国民の信頼回復という話もありましたけれども、消費者代表とか各団体からも、少なくても国民の信頼が回復していない下でそうした議論は時期尚早じゃないかと、こうした意見も出されているわけなんですよね。
一方で、大臣は、この四月の二十七日の福井県知事との会談の中で、原子力を含む脱炭素電源を最大限活用していくと、現在六%の比率をエネ基に定める二割程度まで高めていくことは必要不可欠だと、こういうふうに強調されたというふうに報じられています。
これ、二割程度まで高めるということは何基原発稼働させることになるのか、そして、そうなれば今ある原発の運転延長が前提になるのではないでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 原子力発電所ごとの出力規模や実際の設備利用率も異なるために確定的なことは示すことはできませんけれども、現行のエネルギーミックスにおける原子力比率二〇%から二二%を達成するためには、例えば一定の仮定の下に計算すれば三十基程度は必要という計算になります。
○岩渕友君 今ある原発の運転延長も前提になるんじゃないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。
○政府参考人(松山泰浩君) お答え申し上げます。
現在のエネルギーミックスの中では二〇から二二%という数字をお示しして、今大臣から御答弁ございましたけれども、大体三十基程度というお話になってまいります。
これもう仮定の話なので何とも申し上げることはできませんけれども、現行の原子炉等規制法に基づきましては、四十年という運転期間を設けた上で、事業者から運転期間の延長の申請があった場合に限り、通常の審査に加えまして、劣化の程度ですとか保全計画の妥当性等を厳正に確認するなど追加的な審査を行った上で、これを認めるかどうかという判断をすることになってございます。
もちろん、三〇年におけるミックスを実現するためには、一定規模のこの延長運転ということも必要になってくるかということもあるわけでございますけれども、あくまでも安全第一で、規制委員会の審査の下で認められたものについて運転の延長が認められるものになるというふうに認識してございます。
○岩渕友君 一定程度の運転延長が必要になってくるというお話でした。
原発事故の後、原発の運転期間は原則四十年というふうにされてきました。国会の答弁でも、運転延長は極めて例外的なケースだというふうにされていたわけですけれども、高浜原発の一、二号機、美浜原発の三号機、そして東海第二原発の運転延長が認可をされて、高浜原発と美浜原発の再稼働に福井県知事が同意をするということになっています。これ、一回限り、六十年を超えない延長が可能だというふうにされているわけですけれども、財界は、米国では八十年まで延長申請したという例も挙げながら、六十年以上に延長する検討も求めています。
資料の一を御覧ください。
建設中を含む三十六基の原子力発電所が六十年運転するというふうに仮定をしても、自然体では、二〇四〇年以降、設備容量は大幅に減少する見通しというふうになっています。二〇五〇年の時点で、四十年運転のシナリオでは三基、六十年運転のシナリオでは二十三基が稼働ということになっているわけなんですよね。
このことを受けて、ちょっと大臣、改めてもう一回聞きますけれども、結局、こうした状況の下で原発の運転延長をすることになるんじゃないか、新増設、リプレースをすることになるんじゃないでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 二〇三〇年のエネルギーミックスの実現に向けては、既存の原子力発電所を再稼働し、設備利用率を向上させることに加えて、一部の炉については四十年超運転の原子力発電所の再稼働を進めることが不可欠であると考えております。もちろん、それぞれの原子力発電所について四十年超運転を進めるかどうかは、エネルギー政策の動向や自社の将来の電源構成の見通しなどを踏まえて各事業者が判断をするものであります。
その上で、原子炉等規制法に基づいて、事業者からの運転延長の申請があった場合に限り、通常の審査に加えて、劣化の程度や保全計画の妥当性を厳正に確認するなど追加的な審査を行うと承知をしております。こうした審査を通じて、運転延長の認可を受けた原子力発電所については、原子力規制委員会の厳格な判断を尊重した上で、地元の理解を得ながら再稼働を進めていくというのが従来からの政府の方針であります。
その上で、次期エネルギー基本計画における原子力の扱いについては、様々な御意見に耳を傾けながら、議論を深めて結論を出してまいりたいと思います。リプレースと新増設については、現時点ではそのような考えはないということであります。
○岩渕友君 脱炭素を口実にして、老朽原発を稼働して原発を推進するということは許されないです。
資料の二も御覧ください。
再生可能エネルギー、コスト高いというわけですけれども、原子力や石炭火力のコストが高いというのが今世界の常識になりつつあります。これとは別に、米国政府の発表でも、洋上風力、バイオマスに続いてコストが高いのが原子力であって、その次が石炭火力ということになっています。国際エネルギー機関のデータによれば、再エネ、省エネの方が同じ投資額で化石燃料や原発よりも雇用創出数大きくなっています。
これ、再エネと省エネを徹底的に増やすべきです。革新的な技術がなくても、今ある技術を普及することで、原発を使わずに二〇三〇年にカーボンニュートラルの大部分ができるんだといった研究もあります。例えば、太陽光では屋根置きとか、あとソーラーシェアリングを増やすというものなんですけれども、こうした既存の技術の徹底活用を検討するべきではないでしょうか。
○政府参考人(茂木正君) お答えいたします。
我が国の太陽光発電の設備導入量、これは二〇一二年のFIT制度の導入以降、足下では世界第三位の水準でありますし、面積当たりでも主要国最大まで導入が進んでいます。今御指摘ございました、例えば太陽光ですと屋根への設置ですとか、それから営農型の太陽光発電、こういったものも進んできておりまして、こうしたものも含めて再エネの更なる導入拡大というのを進めていきたいと考えています。
これを導入拡大していくためには、やはり自然環境や地域との共生が図られた適地の確保、こういったものが重要でございますし、住宅の太陽光発電の設置拡大に資するような、例えばZEBやZEHといったもの、それからPPAという事業の普及の促進、それから農業政策とも整合したこれ土地利用制度の見直しと、こうしたことに取り組んでいく必要があるというふうに考えています。
経産省としても、関係省庁としっかり連携をして、こうした政策措置の強化を進めてまいりたいというふうに考えています。
○岩渕友君 今のような検討状況だということを踏まえて、さらに、例えばですけれども、太陽光発電のパネルの設置、屋根置きの設置と、その設置のための助成制度なんかをセットで組み合わせて行えば、再エネの導入も増えるし、同時に、大規模なものではないので、町工場であるとか地域の工務店といったいわゆる中小・小規模事業者の皆さんの仕事とか雇用を確保するということにもつながるんじゃないかと思うんですけど、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 再エネは、エネルギー安全保障にも寄与できる重要な脱炭素の国産エネルギー源であると考えております。二〇五〇年カーボンニュートラルや二〇三〇年の野心的な削減目標に向けて最大限導入していくことが基本方針であります。
委員御指摘のとおり、再エネ導入に当たっては地域の中小工務店等が活用される事例も多く、地域の中小企業に新しい仕事を生み出し、地域経済の活性化に資するものと認識をしております。また、地域における再エネの地産地消は、レジリエンスの向上にも資することから重要であります。このため、地域活性化等に資する先進的な再生可能エネルギー事業や普及啓発活動等に対しても、昨年度から経済産業大臣賞の授与を開始をしたところであります。こうした取組やFIT制度による導入支援等を通じて、地域に資する再エネ導入を促してまいりたいと思っております。
再エネ一〇〇%でもいけるという人たちがおいでになりますけれども、お話はいろいろ聞いております。聞いておりますけれども、現時点の技術ではなかなかやっぱり難しいというのが現実だと思っておりまして、技術開発の前提でそういったものができるか、あとはどれだけのその太陽光パネルが設置をできるのかというところで、日本ではもうかなりの分野で、部分で設置をしているところでありますけれども、今後どう設置するかということについては、今回のこの国会で通った改正の温対法などの中でポジティブゾーニングという、その地域からのそういう指定というものも非常に大きな役割を果たすものだと思っております。
○岩渕友君 新しく経団連の会長になった十倉氏が、カーボンニュートラルで新しい技術確立するためには五年から十年掛かると言っているんですね。なので、既存の技術、大いに活用をさせて、やっぱり再エネや省エネを中心のエネルギー政策へと転換するべきだということを述べて、質問を終わります。