2021年6月10日(木) 参議院 経済産業委員会
「外国為替及び外国貿易法第十条第二項の規定に基づき、北朝鮮を仕向地とする貨物の輸出及び北朝鮮を原産地又は船積地域とする貨物の輸入につき承認義務を課する等の措置を講じたことについて承認を求めるの件」
日本共産党の岩渕友議員は10日の参院経済産業委員会で、東京電力福島第1原発事故に伴う廃止措置について、政府が廃炉完了の状態すら明確にせず、スケジュールありきで汚染水の海洋放出を急ぐのは許されないと批判しました。
岩渕氏は、梶山弘志経産相の「(廃炉の)具体的な絵姿を示せる状況にない」という答弁をあげ、日本では事故原発の廃炉完了要件が法律で定められていないと指摘。旧ソ連のチェルノブイリ原発事故の場合、核燃料デブリの取り出し・原子炉解体など「廃炉完了状態」や、安全重視の「約100年」の工程を法定していると紹介し、「最終的な姿とそこに至る過程について、地元をはじめ国民的な議論で明確に法定すべきだ」と求めました。
梶山経産相が「現時点では新たな法整備が必要とは考えていない」と答えたのに対し、岩渕氏は、海外の事故炉を参考にしたとする政府に法定化を重ねて要求。「廃炉を急ぐことが海洋放出決定の強行などにつながっている」とただしました。
岩渕氏は、デブリの温度が十分に下がっているという専門家の試算や、冷却に水ではなくガスを用いる「空冷方式」という提案を示し、汚染水を発生させない対策が重要であると強調しました。
(ボタンをクリックやタップすると議事録が開きます)
2021年6月10日(木) 参議院 経済産業委員会
「外国為替及び外国貿易法第十条第二項の規定に基づき、北朝鮮を仕向地とする貨物の輸出及び北朝鮮を原産地又は船積地域とする貨物の輸入につき承認義務を課する等の措置を講じたことについて承認を求めるの件」
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
本件は、二〇〇六年七月に北朝鮮による弾道ミサイル発射及び同年十月の核実験を契機に実施されてきた我が国独自の北朝鮮に対する制裁措置の延長に当たって国会承認を求めるものです。北朝鮮に対する輸出入禁止措置について、北朝鮮を対話の場に復帰をさせて、問題の平和的、外交的解決を図るための手段として必要であるという立場から、我が党は賛成をするものです。
北朝鮮は、前回、一九年四月のこの本措置の延長後も、一九年五月から十一月にかけて十三回二十五発、二〇年三月に四回八発の弾道ミサイルなどを発射をして、今年三月には新型弾道ミサイル二発を発射しています。これは、弾道ミサイル技術を利用したいかなる発射やその他のいかなる挑発も禁じた国連安保理決議に違反をして、航空機と船舶の航行の安全を脅かすものです。
北朝鮮は、核戦争抑止力を更に強化して最強の軍事力を育てると公言をしていて、弾道ミサイルの発射は核兵器開発と結び付いた軍事行動です。北朝鮮が取っている国際社会の批判を無視した挑発姿勢を見れば、本措置は引き続き必要だというふうに考えています。
今年の五月二十一日に米韓の首脳会談によってバイデン米大統領と文在寅韓国大統領が発表した共同声明ありますけれども、二〇一八年に南北の首脳会談で署名をした板門店宣言やシンガポールでの米朝共同声明など、これまで南北間や米朝間で結ばれた合意を基礎とした外交と対話こそが朝鮮半島の完全な非核化の実現と平和の確立のために不可欠だと再確認したことを強調をしています。
そこで、外務省に伺うんですけれども、この米韓の共同声明についてどのように評価をしているでしょうか。
○大臣政務官(中西哲君) 第三国間のやり取りについてコメントする立場にはありませんが、北朝鮮への対応については、これまでも日米、日米韓で緊密に連携してきています。例えば、先月の日米韓外相会合においては、北朝鮮の完全な非核化へのコミットメントを再確認し、北朝鮮に対して国連安保理決議の下での義務に従うことを求めることで一致しました。
政府としては、北朝鮮が過去に約束したことを踏まえ、完全な非核化に向けて具体的な行動を取るよう求めていくことが重要と考えており、引き続き、日米、日米韓で緊密に連携していきます。
○岩渕友君 今答弁にあったように、引き続き、日米、日米韓で緊密に連携をしていきたいということでした。
この南北首脳会談や米韓の首脳会談で結ばれた合意を基礎とした外交と対話が求められていると思うんですね。同時に、二〇〇九年四月に六か国協議から離脱を表明した北朝鮮をこの六か国協議という枠組みに復帰をさせる努力をどういうふうに行っていくのか、中国とかロシアも含めて対話の枠組みをどう構築していくのか、国連安保理決議の完全な履行をどう働きかけるのかということが重要になっていると思います。
大臣に伺うんですけど、そのために日本政府はどうするのか問われていると思うんですけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 我が国では、国連安保理北朝鮮制裁委員会や同委員会の専門家パネルの作業に積極的に協力をしてきているところであります。関係国に対し様々なレベルでの決議の完全な履行を働きかけ、安保理決議の実効性の向上に取り組んできております。日本政府としても、各省庁それぞれの役割分担において、一つの方針の下にしっかりと取り組んできているということであります。
経済産業省においても、輸出管理当局間において、様々な機会を捉えて、関係国に対し北朝鮮制裁履行に関する働きかけを行っているところでありまして、例えば、アジアを中心とした約四十の国・地域、国際機関等から約二百名が参加するアジア輸出管理セミナーを毎年開催をしております。アジア諸国の輸出管理当局に対し、輸出管理制度の構築や運用能力の向上を支援をしているところであります。また、直近では、二〇一八年及び二〇二〇年に開催したセミナーにおきまして、国連北朝鮮制裁パネルの専門家を招聘し、各国・地域の輸出管理当局に北朝鮮による調達活動に関する情報を共有をしたところであります。
経済産業省としましても、引き続き、関係省庁と緊密に連携しつつ、国際社会と連携、協力をしながら関連安保理決議の実効性の向上に取り組んでまいりたいと考えております。
○岩渕友君 北朝鮮を六か国協議などの対話の場にやっぱり復帰をさせて、平和的、外交的な解決を図るために政府としてもイニシアチブを発揮していただきたいということを強く求めておきたいと思います。
次に、東京電力福島第一原発事故をめぐる問題について聞きます。
五月十七日の決算委員会の中で、この福島第一原発の廃炉の最終的な姿について大臣といろいろやり取りをしました。あのときに、大臣からは、この廃炉の最終的な姿について具体的な絵姿を示せる状況にはないんだと、こうした答弁がありました。
規制委員会にお聞きするんですが、日本では、事故を起こした原発、特定原子力施設の廃炉完了要件が法定されているのかどうか、教えてください。
○政府参考人(金子修一君) 御指摘のように、原子炉等規制法による福島第一原子力発電所に係る規制では、その廃止措置完了のあるべき具体的な絵姿を定めているわけではございませんけれども、一方で、その廃止に当たっては、施設の解体、あるいは保有する核燃料物質の譲渡し、核燃料物質による汚染の除去、核燃料物質によって汚染されたものの廃棄などの措置を講じなければならないこととしておりまして、これらの措置が進んで、敷地内の土壌や施設が放射線による障害の防止を必要としないような状況になりましたら、廃止措置の終了を確認するという基準になってございます。
○岩渕友君 基準はあるんだけれども法定はされていないという答弁だったかと思います。
それでは、世界の事故を起こした原発はどうなっているかということで見ていきたいと思うんですけど、一九八六年に事故を起こしたチェルノブイリの原発は、九八年に成立をしたチェルノブイリ廃炉法で、廃炉完了の定義をデブリの取り出しや原子炉解体や環境上安全な状態の達成というふうにこれ法律で決めているんですね。さらに、事故直後に建設をされた石棺をそのまま放置するということも禁じているんです、法律の中で。これ、私も非常に驚いたんですけど、石棺そのままにするわけではないんだということなんですね。
外務省に伺うんですけど、これ、事故によって壊れた四号炉を覆っている石棺の上に新しいシェルターが建設をされたわけですけれども、このシェルター建設の目的が何なのか。そして、日本はこのシェルターの建設費などを拠出しているんですけれども、その総額が幾らになるか、教えてください。
○政府参考人(池松英浩君) お答え申し上げます。
チェルノブイリ原発四号炉の新シェルターの建設は、汚染物質の漏えいを防止するとともに、異常気象のような外部の影響からの保護や安全な作業環境の提供を目的とするものであります。日本政府は、チェルノブイリ・シェルター基金に累計で約百億円を拠出しております。
○岩渕友君 漏えい防止であるとか安全な作業を行うためにということだったんですけれども、石棺が老朽化するだとか倒壊する懸念というのがあって、例えばG7の会議なんかでも、その新しいシェルターを建設するプロジェクトが必要じゃないかということで採択をされて、だけれども、その内部の石棺の解体だとかデブリの撤去までは含まれていなかったということでウクライナの議会が成立させたのがチェルノブイリの廃炉法なんですね。その今お話にあったチェルノブイリの基金で、シェルターの基金は約百億円だと。これだけではなくて、安全を向上させるための基金が約五十億ぐらいあると思うんですね。だから、トータルでいうと大体百五十億ぐらいは拠出をしているということになるんです。
さらに、廃炉プログラム法というものがあって、これで工程が決められていて、直近三十年から五十年間をデブリ取り出しに向けた準備期間というふうに位置付けていて、全体の工程は約百年掛かるというふうにしているんです。事業者の判断でデブリの取り出し時期を前倒しすることはできないし、完了状態とともに安全重視の長期工程も法律でこれ定められているんですね。これは何のためにしているかというと、作業員の被曝のリスクを減らすということが目的になっています。このチェルノブイリ廃炉法では、廃炉に関わる作業員の待遇も通常の原発の従業員以上だと、健康診断だとか放射線管理も国の予算で行うというふうに定められているんですね。
チェルノブイリの廃炉法が成立したのは、事故が起きてから大体十二年後ぐらいなんです。今、福島第一原発事故から十年ですよね。これ、最終的な絵姿を決めていない。中長期ロードマップありきということではなくて、廃炉の最終的な姿とそこに至る過程について、地元の皆さんはもちろん、そして国民的な議論を行った上で明確に法律で定めることが必要じゃないかと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) この件に関しましては、委員が先ほど御指摘あったとおり、五月十七日の参議院の決算委員会でも議論をさせていただきました。
福島第一原発の廃止措置が終了した状態については様々な御意見があると私どもも認識をしております。現時点では、原子炉内の状況や廃棄物の処理処分の方法など不確定な要素が多いために、具体的な絵姿をお示しできる状況になく、今後、更なる調査と研究を進めながら検討を深めていくことが必要と考えております。また、地域の将来像に関わることでもあるため、技術的観点に加えて、地元の皆様の思いも受け止めて検討し、さらにまた、情報も共有していく必要があると思っております。
なお、原子炉等規制法では、廃止に向けて必要となる措置とそれらが終了したことを確認するための基準を規定をしているところであります。したがって、まずは原子炉内の状況把握などを進めながら、地元の皆様の思いも受け止めて廃止措置が終了した状態を検討していくことが重要であり、現時点では、新たな法整備が必要であるとは考えておりません。
作業員の線量管理等もしっかりとやっていくということも含めて、中長期ロードマップに従って、また、これらが変更が必要なときには柔軟に対応してまいりたいと思っております。
○岩渕友君 福島第一原発事故の廃炉に関わっても、海外の事例をいろいろ参考にしていると、事故炉の状況を参考にしているというふうにも聞いているので、そう言うのであれば、例えばそのチェルノブイリ廃炉法みたいなことを検討するということが必要なのかなというふうに思っているんです。
廃炉を急ぐということが、海洋放出決定の強行などいろんな問題にもつながっているんですね。汚染水の発生も、この間いろいろやり取りしていますけれども、これを抑えるということにもつながる点では、その燃料デブリの冷却について、原子力市民委員会というところは、水で冷やす方法から窒素ガスなんかで冷やす空冷方式に変えれば汚染水の発生も抑えられるというふうに提案もしているんですね。
一号機から三号機のデブリの塊として最も重量があって発熱量が大きいのが、圧力容器を支える台座、ペデスタルというところの内側のデブリなんですけれども、そこのデブリの発熱量、そして内部の最高温度はどのぐらいだというふうに推定しているでしょうか。
○政府参考人(新川達也君) お答え申し上げます。
燃料デブリの温度につきましては、燃料デブリに触れた冷却水等の温度で管理をしております。季節変動はございますが、おおむね十五度から三十五度の間を推移をしていると承知をしております。
また、原子炉圧力容器の温度につきまして、底部で測定したものでは、二〇一一年十二月におおむね百度以下に下がったことで冷温停止状態に至っておりますが、その後も低下をし続け、最近では、季節変動はありますが、おおむね十五度から三十五度の間を推移していると承知をしております。
○岩渕友君 いずれにしても、下がってきているということだと思うんですね。
この原子力市民委員会では、東京電力とIRIDのデータなどを基にして試算を行っていて、一号機のペデスタルの内部で約三百四十度ぐらいじゃないかと。それで、圧力容器内では、デブリの量が最も多いのが二号機なんですけど、底の部分にあるデブリの最高温度が四百五十度以下だというふうに推定しているんですね。デブリの溶融温度は二千五百度ということなので、それと比べると低くなっているということで、安定状態を維持する方が危険性を高めるよりも得策だというふうな提言もされているんですね。
やっぱり、廃炉の最終的な姿も示さないままに、理解も納得も得ないまま急いで海洋放出を行うということはやっぱり許されないということで、スケジュールありきではなくて、いろんな議論も進めるし、廃炉とその過程について十分な議論するということを求めて、質問を終わります。
○委員長(有田芳生君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
外国為替及び外国貿易法第十条第二項の規定に基づき、北朝鮮を仕向地とする貨物の輸出及び北朝鮮を原産地又は船積地域とする貨物の輸入につき承認義務を課する等の措置を講じたことについて承認を求めるの件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(有田芳生君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。