テーマ:電力価格高騰を招いた大手電力による不正閲覧・カルテル問題
(議事録は後日更新いたします)
大手電力7社の顧客情報不正閲覧、7年間で76万件/岩渕議員告発
大手電力会社が一般配送電事業者の保有する新電力の顧客情報を不正に閲覧していた問題で、日本共産党の岩渕友議員は9日の参院経済産業委員会で、閲覧件数が2016年4月1日から7年間で少なくとも76万件に上っていることを告発しました。
数字は内閣府の有識者会議が今月2日に発表した調査結果を基に算出。不正閲覧を行ったのは東北・中部・関西・中国・四国・九州・沖縄の7電力会社です。西村康稔経産相は「電気事業の中立性、信頼性に疑念を抱かせるもので、極めて遺憾だ」との認識を示しました。
電力事業では、再エネなど新電力も利用する送配電事業の中立性確保のため、親会社が送配電子会社の情報を営業に利用することを法律で禁じています。
岩渕氏の質問で経産省の新川達也ガス・電力取引監視等委員会事務局長は、不正閲覧をした関西電力社員の37.4%が営業活動に用いたと明らかにしました。
岩渕氏は、営業活動への流用を明らかにした関電以外にも流用があり、経産省が調査していない事業者向け「高圧契約」の顧客情報や16年以前にも不正閲覧があるのではないかと追及。西村経産相は「できるだけ幅広く調査してもらう」と答弁しました。
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2023年3月9日(木) 参議院 経済産業委員会
「電力価格高騰を招いた大手電力による不正閲覧・カルテル問題」
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
生活や事業活動にとって欠かすことのできない電気の料金高騰によって、命や経済活動にも関わる深刻な事態になっています。さらに、東京電力など七社が電気料金の値上げを申請しています。
一方で、大手電力による不正問題が次々と明らかになっていまして、電気料金の値上げについて各地で行われた公聴会の中では、度重なる不祥事に強い憤りがある、値上げは許されるのか、こうした厳しい意見も出されています。
資料の1を御覧ください。大手電力の不正問題について示した図式です。
電力大手が、一般送配電事業者が保有をする新電力の顧客情報を不正に閲覧をしていたという問題が相次いで発覚をしております。不正閲覧が行われていた電力会社名と閲覧者数、閲覧された顧客数と期間について、その概要についてお答えください。
○政府参考人(新川達也君) お答え申し上げます。
一般送配電事業者が保有する新電力の顧客情報を不適切に閲覧していたとされる大手電力会社は、電力・ガス取引監視等委員会が実施しているこれまでの調査では、現時点で、関西電力、東北電力、九州電力、四国電力、中部電力ミライズ、中国電力及び沖縄電力の7社となっております。
このうち関西電力を例とした場合、2022年9月12日から同年12月12日までの3か月間におきまして、726名の関西電力社員により1万4805件の新電力の顧客契約情報が閲覧されていると承知をしております。
これに加えて、経済産業省が保有する再生可能エネルギー特措法に関する業務システムにつきまして、一般送配電事業者に付与したID、パスワードの漏えいが全ての一般送配電事業者において生じていると承知をしております。
○岩渕友君 お答えはなかったんですけれども、非常に多くの件数、閲覧されているわけなんですよね。
それで、個人情報保護委員会の調査の中では、少なくとも約76万件の顧客情報が閲覧をされていたということが明らかになっています。これだけの顧客情報が不正に閲覧をされていたという大問題なんですよね。
しかも、関西電力ですけれども、不正に閲覧した情報を新電力から顧客を奪うために営業に使っていました。閲覧をした情報に対する営業活動への流用について、電力・ガス取引監視等委員会に関西電力が回答をした内容について、その該当部分を紹介してください。
○政府参考人(新川達也君) 電力・ガス取引監視等委員会が実施した報告徴収に対して、関西電力からは、社内における閲覧者アンケート及びヒアリングの結果、新電力顧客情報を閲覧していた社員及び委託先社員700名中、97.4%に当たる262名が託送システムを通じて閲覧した新電力顧客情報を営業活動に用いたことがあると回答がなされております。
なお、ここでの営業活動とは、新電力顧客を獲得する能動的な対応だけではなく、新電力顧客からの問合せ対応やウェブ受付等の受動的な対応を含めた全般の活動という定義にて調査がされていることを確認をしております。
○岩渕友君 そうはいうんですけれども、実際に顧客を獲得する能動的な対応もされていたというのは事実なわけですよね。
大臣に伺うんですけれども、この不正閲覧問題について大臣の認識を伺います。
○国務大臣(西村康稔君) 御指摘の大手電力におけます一連の情報漏えい、あるいは不正閲覧、これはまさに小売電気事業者間の公正な競争や一般送配電事業の中立性、信頼性に疑念を抱かせる極めて遺憾なことだというふうに認識をしております。現在、こうした事案について、事案の事実関係の確認や原因分析のための調査を実施している段階でありますので、まずはその結果を精査をしていきたいというふうに考えております。
その上で、電力・ガス取引監視等委員会や資源エネルギー庁の有識者会議におきまして、この電力システム改革の趣旨に照らしながら本件を評価をするとともに、再発防止という観点から既に議論を開始してもらっております。結論ありきではなく虚心坦懐に議論していただき、そうした議論も踏まえてしっかりとした対応を検討してまいりたいというふうに考えております。
○岩渕友君 関西電力以外の事業者は、営業活動に利用したという認識は持っていないというふうに回答をしているんですね。
ところが、この間、電力料金の問題めぐっていろいろお話伺っているんですけれども、東北電力管内にある病院からは、新電力と契約をしていたんだけれども、東北電力が営業を掛けてきて、勉強しますと、電気料金安くしますと、こういうふうに言って、新電力ではとても追い付かないような、そういうプランを提案されて乗り換えることにしたと、そういったお話があったんです。
これ、営業活動への利用状況について、関西電力についてももっともっと調査する必要があると思いますし、関西電力以外の電力会社についても徹底的に調査するべきだと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君) 一般送配電事業者におけます一連の情報漏えい事案につきましては、現在、電力・ガス取引監視等委員会が報告徴収や立入検査によって事案の解明を進めているところであります。
関西電力は、社員等が閲覧した新電力の顧客情報を営業活動に使用したと認めておりますけれども、その他の事案についても閲覧した状況を電力・ガス取引監視等委員会が詳しく調べているところであります。
なお、電力・ガス取引監視等委員会が調査状況を同委員会の有識者会議に報告した際には、複数の有識者から、営業活動に用いたという認識があるかどうかにかかわらず、新電力が閲覧できない情報を業務に利用することは、公平な競争の観点で疑念は拭えないという厳しい意見があったと聞いております。
電力・ガス取引監視等委員会の調査結果やこうした有識者会議での議論を踏まえて、再発防止策含め、しっかりと対応していきたいと考えております。
○岩渕友君 その調査についてもうちょっと立ち入って伺いたいなと思うんですけれども、さっき紹介した病院というのは低圧ではなくて高圧なんですよね、契約の中身としては。なので、低圧の状況調べるのは当然なんですけど、高圧についても調査する必要があるというふうに思うんですね。
それで、3月2日に内閣府のタスクフォースが公表をした大手電力会社による新電力の顧客情報の情報漏洩及び不正閲覧に関する提言というものがあるんですね。これによると、2016年の小売全面自由化以前の顧客リストを使ってアウトバウンド営業、新電力の顧客に電話を掛けて勧誘するとか、そういったことを実施していたんだというふうに指摘をされているんです。なので、この高圧の部分や、2016年以前、小売自由化が始まった2000年以降ということですよね、ここも含めて徹底的に調査するべきだと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○政府参考人(新川達也君) お答え申し上げます。
本件事案につきまして、我々、報告徴収や立入検査等も使いましてしっかりと調査をしてまいりたいと思っておりますし、御指摘の高圧の状況につきましても可能な限り調べていきたいと思っております。2016年以前の状況につきまして、ログが残っているかということで調べにくい部分もあるとは思っておりますけれども、可能な範囲でしっかりと調べていきたいというふうに思っております。
○岩渕友君 可能な限りということだったんですけれども、徹底的にやっぱり調べる必要があるんだというふうに思うんですね。
それで、先ほど紹介したタスクフォースの提言では、大手電力の小売部門が、送配電部門が有する競合他社の顧客情報を不正に閲覧をすれば営業活動に利用し得ると。それは、新電力が大手電力の小売部門と競争することを著しく困難にする。その結果、新電力が不当に撤退を余儀なくされたり、電気料金が高騰したりした可能性も否定できないというふうにしているんですね。実際に、2021年4月時点で新電力は706社だったわけですけれども、2022年だけで146社が倒産、廃業、若しくは事業撤退に追い込まれているというのが実態なんですね。
先ほどのタスクフォースの提言について、更に言えば、大手電力が不当な利益を得ていた疑いがあるということだと思うんですよ。なので、できる限り、可能な限りということなんですけれども、ちょっと大臣、改めて、この高圧の部分、そして2016年以前も含めて徹底的な調査をするべきではないでしょうか。大臣からも答弁お願いします。
○国務大臣(西村康稔君) 繰り返しになりますけれども、まさにこの送配電事業の中立性、信頼性に疑念を生じかねる、抱かせる極めて遺憾な事態だと、事案だというふうに考えております。
その上で一点、新電力、小売の新電力が多く撤退した理由については、様々理由があると思います。特定の電源を持たずに市場で調達していた事業者にとってみれば、調達価格が非常に上がりましたので、約束していた安い価格での提供ができなくなったということもあると思いますので、この一連の燃料価格が上がっていることも背景にあるということだと思いますが。
いずれにしましても、この市場にどのような影響を与えたのかどうか、これはまず電取委の方でしっかりと調査、立入検査も含めて調査をしてもらって、御指摘のようにできるだけ幅広く調査をしてもらって、その結果をしっかりと精査をして、それを踏まえて、また有識者の御意見なども踏まえて適切に対応していきたいというふうに考えております。
○岩渕友君 大臣が会見の中で、電力システム改革の土台に課題が生じているんじゃないかというふうに述べられているんですよ。まさにそういうことが起きているということだと思うんですよね。なので、求めたその高圧や、2016年以前も含めて調査するという答弁だというふうに受け止めましたので、徹底的に調査して明らかにしていただきたいということです。
それで、関西電力は、不正閲覧で入手した顧客情報を営業に使っていただけではないわけですよね。カルテル問題の当事者でもあります。
そこで、公取の委員長に伺うんですけれども、課徴金減免制度というものについて紹介をしてください。
○政府特別補佐人(古谷一之君) 独占禁止法に基づきます課徴金減免制度ですけれども、事業者が、自ら関与したカルテル、入札談合につきまして、その違反内容を公正取引委員会に自主的に報告をした場合には、課徴金を免除又は減額する制度がございます。
具体的には、公正取引委員会の調査開始日以前に課徴金減免申請を行った事業者のうちで最初に申請をしてきた事業者については、課徴金が全額免除となる法制度になっております。その後の順位の申請につきましては、申請順位に応じて、さらに加えて、事業者の協力が事件の真相の解明にどの程度資したかという程度に応じてそれぞれ減算率を定めておりまして、それを適用して減算をするという仕組みになってございます。
○岩渕友君 この事業者用電気の販売をめぐってカルテルを結んだということで、公正取引委員会が中部電力と中国電力、九州電力に対して、独占禁止法の不当な取引に当たるとして課徴金納付を命じる処分案を通知したというふうに報道をされています。
エネルギー政策研究所というところが発行するEPレポートというものがあるんですけれども、この昨年12月11日付けのレポートによれば、関西電力がカルテルの首謀者だというふうにして、関西電力が中部電力、中国電力、九州電力のエリアで安値攻勢を仕掛けて、ある程度の顧客を獲得した上で、3社にお互いのエリアを越えて顧客を獲得しないように申し合わせていた疑いがあるというふうにしているんですね。それにもかかわらず、今御紹介をいただいたように、課徴金減免制度があるということで、違反を真っ先に自主申告して課徴金を逃れたということで怒りが上がっているというふうにEPレポートの中に書かれているんですね。こうした事態というのは規制なき独占の弊害そのものだということだと思うんです。
それで、公取委員長にもう一問お伺いしたいんですけれども、その電力会社のカルテルをめぐる問題について、影響について調査するべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府特別補佐人(古谷一之君) 御指摘ありました電力会社のカルテルにつきましては、現在私ども審査継続中でございます。処分が確定しているという段階ではございませんので、具体的な事実関係についてはコメントを差し控えますけれども、一般論として申し上げて、カルテルを持ちかけた違反行為者が課徴金減免制度の適用によって課徴金を免れるということが、法制度としてはそういう仕組みになっておるわけですけれども、課徴金減免制度によりまして秘密裏に行われたカルテルなどが摘発をされて事実関係の解明につながると。それは、市場における競争が回復されるという効果は大きいというふうに私ども認識をしておりまして、その点は御理解をいただきたいと思います。
○岩渕友君 影響、非常に大きいので、是非調査をしていただきたいというふうに思っています。
それで、先ほど紹介をした内閣府のあのタスクフォースの提言の中では、欧州では送電事業を資本面で切り離す所有権分離が一般的だということで、所有権の分離にも踏み出すべきではないかということであったり、さらに、その提言の中では、電取委が不正を見抜けなかったということを指摘をしていて、欧米では規制機関が独立をして厳しい市場監視機能があるということで、その電取委を三条委員会にするべきではないかというような提言もあるんですね。
電力システム改革がうまくいっていないことのツケを国民に押し付けることがあってはなりません。資源エネルギー庁が出している資料の中でも、電気料金の推移は、この一年間で家庭向け料金は約3割、産業向け料金は約5割が上昇をしています。政府が実施をしている電気代の抑制策は2割から3割程度の抑制にとどまると。電力会社の値上げ申請で、まあ圧縮が検討されているとはいえ、3割から4割の値上げが申請をされているということになっています。総理は、物価高騰に対して前例のない思い切った対策だというふうに述べています。
大臣に伺うんですけれども、そうであるならば、政府の責任で電気料金を実質負担増にならない水準まで引き下げていくと、で、負担抑制の追加策を直ちに行うべきだと思いますが、いかがかということと、その物価高騰の影響の深刻さ、そして今日議論してきた大手電力の不正も明らかにならない中で電気料金の値上げは凍結をするべきではないでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君) 電気料金の負担軽減策についてでございます。
今、もう先ほど来御議論ありますので、補正予算で認められました、着実に2月分から負担軽減、取り組んでいるところでありますけれども、総理から更に指示がございました。総合経済対策の執行状況や現場の意見も聞きながらしっかりと検討していきたいと思いますが。
御指摘の一般送配電事業者による情報漏えい事案については、もう先ほど来繰り返しておりますが、極めて遺憾なことであります。今後、電取委の調査結果を踏まえ厳正に対応していきたいと思いますし、カルテルにつきましても、今公取委員長から答弁ありましたけれども、独禁法に基づく公正取引委員会の処分が決定した後、当省としても適切に対応してまいりたいと思います。
なお、規制料金の値上げ申請につきましては、燃料価格の高騰などを背景としておりますので、電気事業法に基づいて定められた手続、申請ルールに従い、燃料価格の見通しなど、しっかりとその辺りも見極めながら、厳格かつ丁寧に審査を行っていきたいというふうに考えております。4月という日程ありきではなく、厳格に丁寧に審査を行っていきたいというふうに考えております。
○岩渕友君 追加策や電気料金の値上げの凍結、これ求めておきます。
最後に、資料の2を御覧いただきたいんですけれども、2011年からの11年の原発の維持費をグラフにしたものです。国民負担は少なくとも23.5兆円と言われています。原発を再稼働すれば電気料金が安くなるというふうに言われていますけれども、原発コストが電気料金を底上げをしています。電気料金そのもの分かりにくいという声もたくさんありますので、電気料金についても徹底的に明らかにするべきだということを求めて、質問を終わります。