テーマ:電気料金高騰をまねいた大手電力による市場独占
関西電力による顧客情報の不正閲覧が2019年11月から22年12月の3年間で約16万4000件に上りました。27日の参院経済産業委員会で、日本共産党の岩渕友議員の質問に対して経済産業省が明らかにしました。関電が営業目的で利用した不正閲覧は5万4774件に上ります。
顧客情報の不正閲覧はすべての電力大手で行われていました。関西、中部、中国、九州の4電力会社はカルテルを結び、電気料金を上昇させていました。岩渕氏は不正閲覧された情報がカルテルに利用されたのではないかと追及。経産省の電力・ガス取引監視等委員会の新川達也事務局長は各電力会社が公表した現在の情報では承知していないと述べるにとどまりました。
岩渕氏は、電力大手のカルテルや不正閲覧は「電力システム改革の根幹を揺るがす大問題だ」として、関電とともに他の電力大手に対する徹底的な全容解明を要求。西村康稔経産相は新たな調査に後ろ向きの姿勢を示しました。
岩渕氏は電力大手の報告をうのみにするのかと批判。全国の消費者、事業者、新電力から怒りの声が上がっていることを示し、「電力大手の不正問題の徹底解明なしに電気料金の値上げは許されない」と強調しました。電力大手の所有権分離に踏み出すべきだと主張しました。
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2023年4月27日(木) 参経済産業委員会 一般質疑 岩渕質問
○岩渕君 日本共産党の岩渕友です。
初めに、東京電力福島第一原発事故によって今も発生し続けている汚染水をめぐる問題について質問をします。
先日開催をされたG7気候・エネルギー・環境大臣会合を受けて、西村大臣が記者会見で、処理水の海洋放出を含む廃炉の着実な進展、そして科学的根拠に基づく我が国の透明性のある取組が歓迎をされると、こういうふうに説明をしたのに対し、同席をしていたドイツのレムケ環境・原子力安全相が、原発事故後、東電や日本政府が努力してきたことには敬意を払うが、処理水の放出を歓迎するということはできないと発言をしたことが報道をされています。大臣は会見後、報道陣に対して、言い間違いで、歓迎に全部含めてしまったと述べています。
報道では、実際に共同声明にこの海洋放出を歓迎するという文言を盛り込もうとしたというふうにされていますが、これは事実でしょうか。大臣、伺います。
○国務大臣(西村康稔君) まず、汚染水ではなくてALPSで処理した処理水でありますので、そのことは是非御理解をいただきたいと思いますが、2016年の北九州でのエネルギー大臣会合で、この福島第一原発について、廃炉、このときは汚染水対策という表現ですけれども、着実に進展していることを歓迎するという表現がなされたところであります。私ども、これをベースに、議長国としてどういう表現がいいか、そのことについて議論を重ねたところであります。
具体的なやり取りはコメントは控えたいと思いますけれども、今回の閣僚声明においては、まず、廃炉の着実な進展や科学的根拠に基づく我が国の透明性のある取組が歓迎されるということが書かれております。それと同時に、ALPS処理水の海洋放出がIAEAの安全基準及び国際法に整合的に実施され、人体や環境にいかなる害も及ぼさないことを確保するためのIAEAの独立したレビューを支持するということが書かれておりますので、この表現を私がすればよかったんですけれども、言い間違えをしまして、御指摘のように、私の表現は、そうですね、海洋放出、ALPS処理水の海洋放出を含むということでたしか申し上げたと思いますので、それが私の言い間違えであったと。この海洋放出についてはIAEAのレビューが支持をされたということであります。
そして、まさにG7でも歓迎された科学的根拠に基づく透明性ある取組を今後も継続してIAEAによるこの安全性レビューに万全の対応を行うということでしっかりと応えていきたいというふうに思いますし、ドイツの閣僚もこのまさにレビューを支持するという声明については合意をしているところでありまして、放出に反対しているということではございません。
○岩渕君 この海洋放出そのものを歓迎するというような文言を盛り込もうとしたのであれば、これ重大な問題だということを指摘しなくちゃいけないんですよ。それは、政府と東電が福島県の漁業者と関係者の理解なしにはいかなる処分もしないというふうに約束をして、漁業者始め海洋放出に反対だという声は上がり続けています。
3月に行われた全国の世論調査では、政府と東京電力の説明は不十分だという回答が88%にも上っています。この間、全国でも、福島県内でも行われている世論調査はいずれも海洋放出に対する賛否は拮抗をしていて、全国的な世論調査では、分からないという回答が5割を超えているんですね。国民的にも理解が得られているとは到底言えないです、言えない状況です。こうした下で海洋放出を強行するということは、将来に禍根を残すことになります。
4月8日に福島市内で行われたふくしま環境フォーラムというものがあるんですが、ここの中では、復興と廃炉について、福島県民、地元自治体、研究者、政府と東京電力などが入った円卓会議を立ち上げて集中的な議論を行うべきじゃないかという提案がありました。お互いが対等な立場で話し合う、こうしたことこそ今必要なんじゃないでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君) 東京電力福島第一原発の廃炉、汚染水、処理水の対策とそして福島の復興は、私どもにとってもう最重要課題だというふうに認識をしております。この廃炉を着実に進め、そして福島の復興を実現するというためには、もうタンクもいっぱいになってきておりますALPS処理水の処分、これは決して先送りできない課題だというふうに認識をしております。
そして、この処分方法の決定に当たっては、専門家が6年以上にわたる検討を行い、海洋放出が現実的な手段であると評価をされたところであります。その上で、繰り返し多くの場所で説明や意見交換を実施し、いただいた御意見も踏まえて、2021年の4月に政府として海洋放出を行う方針を決定したところであります。
そして、その方針決定以降も、このことについては、まさに地元自治体や各種団体の代表者が参加をしております廃炉・汚染水・処理水対策福島評議会あるいは福島県原子力発電所の廃炉に関する安全確保県民会議を始めとして、安全性の確保や風評対策に対する説明や意見交換、これをこれまで1000回以上、福島県におきましても500回以上実施をしてきているところであります。
また、福島県内の住民を対象に福島第一原発を視察いただき、車座で意見交換を行う視察・座談会、あるいは地元イベントのブース出展を通じた直接かつ双方向のコミュニケーション実施など、地元の皆さんを始めとする多くの声を伺うための意見交換の場を積極的に設けてきているところであります。
引き続き、様々な媒体、機会を活用した国民の皆様への丁寧な情報発信、正確な情報発信、また地元の方々への丁寧な説明、意見交換、これは重ねていきたいというふうに考えております。
○岩渕君 いろいろ答弁あったんですけれども、反対だという声上がり続けているわけですよ。説明は不十分だというふうに多くの皆さんが声上げているわけですよね。海洋放出は当面凍結をして、やっぱり対等な立場でお互い議論し合うということが必要だということを強く求めておきます。
次に、大手電力会社のカルテル、不正閲覧をめぐる問題について質問をします。
この問題、当委員会でも、そして本会議でも取り上げてきました。カルテルについては、公正取引委員会が3月30日に関西電力を除く3社に、課徴金としては過去最高額となる1000億円を超える課徴金の納付を命じています。
資料を御覧ください。これは、公正取引委員会が作成した資料を基に作成した資料です。この資料で示されているカルテルの構図について、簡潔に説明してください。
○政府参考人(田辺治君) お答えいたします。
公正取引委員会は、令和5年3月30日に、旧一般電気事業者らによる独占禁止法違反行為に対しまして、排除措置命令及び総額で約1000億円の課徴金納付命令を課したところでございます。
本件違反行為は、平成29年秋頃以降、関西電力が中部電力管内、中国電力管内及び九州電力管内に所在する顧客に対する営業活動を開始したことなどにより価格競争が激化し、電気料金の水準が低下したということが背景となっております。
これら旧一般電気事業者は、それぞれ電気料金の水準の低落を防止して自社の利益を確保する必要性を認識し、平成30年夏頃以降、関西電力と中部電力等、関西電力と中国電力、関西電力と九州電力等のそれぞれの間で役員級の者が面談するなどして、平成30年秋頃までには相手方の供給区域での顧客獲得競争を制限することに合意したものでございます。また、当該合意の実施によりまして、これら旧一般電気事業者らは、自社の供給区域において電気料金の水準を維持又は上昇させていたということでございます。
○岩渕君 3月30日に、電力・ガス取引監視等委員会、電取委ですね、の委員長が談話で、独占禁止法違反、電気事業の適正な運営や健全な発達を阻害するもので、電気事業法の精神に反すると述べているとおり、電力システム改革の根幹を揺るがすこれ大問題です。
公正取引委員会が3月30日に電取委に対して情報提供を行っています。その理由と提供された情報の幾つかを紹介してください。
○政府参考人(田辺治君) お答えいたします。
ただいま御指摘の情報提供につきましてですけれども、電気の小売供給市場における競争の適正化を図る観点から、今回の事件審査において把握した情報を電力・ガス監視等、あっ、電力・ガス取引監視等委員会と共有することを目的としたものでございます。
具体的には、旧一般電気事業者らが自社の供給区域外の顧客に営業活動を行う際に、仁義切りなどと称して、当該顧客に営業活動を行うことなどに関する情報交換を慣習的に行っており、また当該情報交換は、代表者、役員級、担当者級といった幅広い層で行われていたことですとか、旧一般事業者、旧一般電気事業者の中には、自社又はその販売子会社の小売価格及び自社の販売子会社に対する卸供給をする価格を、当該販売子会社以外の新電力に卸供給を行う価格よりも安価に設定した者がいたことなどの情報を提供したところでございます。
○岩渕君 今答弁にあったように、その中身というのはとんでもない内容なんですよね。
いわゆる電力自由化の目的である電力の安定供給、電気料金上昇の抑制、需要家の選択肢の拡大と事業者へのビジネスチャンスの創出、この全てに反することが行われているということなんですよ。
さらに、大手電力による新電力の顧客情報の不正入手、営業利用の問題が明らかになっています。この問題について、電取委の委員長は、3月31日に、一般送配電事業者の中立性、公正性を疑わせる、小売電気事業者間の公正な競争を揺るがしかねない、極めて遺憾。徹底した対策を講じ、電気の利用者や新電力からの信頼を取り戻すべきとして、発足以来、初めて経産大臣に勧告を発出しました。
不正入手をした新電力の顧客情報がカルテルでも活用されていたのではないか、電取委は事実関係を把握しているでしょうか。
○政府参考人(新川達也君) お答え申し上げます。
大手電力各社による一連の情報漏えい、不正閲覧事案は、その中立性、信頼性に疑念を抱かせるものであり、極めて遺憾であると考えております。
当委員会の調査結果によれば、新電力顧客情報の不正閲覧事案において、不正に閲覧した情報を基に営業活動を行った事業者は関西電力のみであると承知をしております。
その上で、関西電力においては、2019年11月から2022年12月までの約3年間に低圧の需要家の顧客情報を営業活動に用いる目的で閲覧していた事業者がいたものの、2022年4月から2023年1月のおおむね過去9か月の間に特別高圧、高圧の需要家の顧客情報を営業活動に用いる目的で閲覧していた事業者はいなかった旨を公表しているものと承知をしております。
他方で、公正取引委員会による命令がなされたカルテル事案は、2018年11月から2020年10月の間の約2年間の間に特別高圧及び高圧の需要家を対象に実施されたと認定されているものと承知をしております。
そのため、新電力顧客情報の不正閲覧事案に関し、不正に閲覧した新電力顧客情報をカルテル事案に用いていたかどうかについては、現在判明している情報に基づく限りでは承知をしていないという状況でございます。
○岩渕君 地域に根差した再エネ電力に取り組む団体や新電力から、これまでの大手電力による取戻し営業や、2022年の市場価格の高騰時、電取委の調査では不正はないという報告が繰り返されていたというふうに指摘をされているんですね。
カルテル、顧客情報の不正入手、利用が大手電力全体で行われていたにもかかわらず、電取委は不正を見抜くことができませんでした。電取委は経産省の八条委員会にすぎず、独立した調査権限持っていません。大手電力の報告をうのみにしたと、こういう疑念を持たれかねないということですね。
さらに、関西電力が4月の19日に新たに2019年11月から2022年12月の3年間、営業目的で家庭向け新電力の情報を不正閲覧していたということを公表しました。
この期間に何人の社員が何件閲覧をし、そのうち新電力から関西電力への切替えは何件だったのか、また、企業向けの特別高圧や高圧の不正閲覧件数は何件だったのか、お答えください。
○政府参考人(新川達也君) お答え申し上げます。
関西電力が本年4月19日に公表したところでは、低圧の新電力顧客情報については、2019年11月から2022年12月までの約3年間において、1606名の従業員が15万3095件の契約を閲覧をしており、このうち62名については営業目的で閲覧していたと承知をしております。また、営業目的で閲覧していた62名が同期間中に閲覧していた5万4774件の契約のうち、その後、新電力から関西電力に切り替えられた契約件数は3911件だったと聞いております。
特別高圧、高圧の新電力顧客情報については、関西電力が本年4月19日に公表したところでは、閲覧された画面ごとに調査期間の若干の違いがあるものの、2022年4月から2023年1月のおおむね過去九か月間において、2010名が1万940契約の閲覧をしており、いずれも営業目的で閲覧した従業員はいなかったと承知をしております。
○岩渕君 関西電力の深刻な問題が次々明らかになっていると。関西電力は、これまで営業目的で閲覧していた件数を4332件と発表していたんですが、その12倍もの件数を不正に閲覧していたということになるわけですね。違法性を認識していた社員も多数いる上に、役員が組織性は否定できないと述べています。
大臣、この関西電力について、徹底的な全容解明を行うこと、そして、ほかの大手電力についても全容解明するべきではないでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君) まさに、御指摘のように、この一連の情報漏えい、不正閲覧事案、中立性、信頼性に疑念を抱かせる誠に遺憾なものだというふうに認識をしております。
各社に対しては、4月17日に業務改善命令等を行っております。その中で、事案の内容及び発生原因を調査し、社会に対して公表することを求めているところであります。
このため、今回の社内調査結果の発表も、そうした内容、命令の内容に沿ったものであり、関西電力が自らの口から事案の詳細を社会に対して丁寧に説明することが重要だというふうに認識をしております。
そして、今回の発表内容は、先ほどありましたけれども、関西電力は、既に電力・ガス取引監視等委員会に報告した事案について自主的に調査対象期間を拡大し公表したものと承知をしております。
同委員会の報告書に記載の数値とは異なりますけれども、同委員会が既に把握し報告書に記載した事実と質的に異なった事実が新たに判明したものではないというふうに認識をしております。
したがって、現時点で新たな調査を行う考えはないという認識でございます。
他の大手電力も含め、今後新たな事実を把握したと判断される場合には、同委員会により追加的な調査を行うものというふうに認識をしております。
○岩渕君 これで終わりにするわけにはいかないですよ。とんでもない話ですよ。これで不正の全てが明らかになったのか、関西電力以外の事業者は営業活動に利用した認識はないと言っているが本当か、とても信用できません。全容を徹底的に明らかにさせなくてはなりません。
こうした状況の下で、大手電力が電気料金の値上げを申請しています。でも、公聴会でも、全国の消費者、事業者、新電力からも怒りの声が上がっています。
河野大臣が、4月14日にこの問題について会見をしています。その内容について簡潔に説明してください。
○政府参考人(片岡進君) 4月14日の記者会見での河野大臣の発言についてのお尋ねでございますけれども、大臣からは、電力会社の相次ぐ不正事案の発覚により、小売電気事業者間で公正な競争が行われているのかどうかについて疑念が生じており、消費者からの信頼が損なわれている、経済産業省に対して、まずはこうした不正事案が料金に与える影響を検証する、また、これらの事案の発生を許してきた体制、仕組みはどう改めていくのか、しっかりと検討していただくことが不可欠だと申し上げており、仮に経済産業省において不正事案が料金に与える影響がないとするならば、その根拠を示して分かりやすく丁寧に説明をし、消費者の理解を得られるようにすることが必要であると発言しているところです。
○岩渕君 全国の消費者の声、事業者の声、そして河野大臣の発言も踏まえて、大臣、どう取り組んでいくんでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君) 情報漏えい、不正閲覧事件については、17日付けで関係各社に対して業務改善命令を行っているところであります。行為規制を含めたコンプライアンスの重視、遵守を内容とする内部統制の抜本的強化、そして託送情報に係る情報システムの共用状態の速やかな解消、いわゆる物理分割などを命じたところであります。
また、カルテル事案については、3月30日付けで公正取引委員会が関係各社に排除命令、排除措置命令などを行い、電力・ガス取引監視等委員会からも報告徴収を行っております。今後、そうした報告内容を精査、分析した上で、厳正に対応していきたいと考えております。
4月3日には、カルテル等に対する公取の処分、そして情報漏えい問題に対する勧告を踏まえて、関西電力ほか9社に対して補助金交付等の停止及び指名停止等の措置を行ってきているところであります。
このように、発生した事案に対し厳正な処分などを行ってきておりますし、現在、調査結果を踏まえながら、有識者会議におきまして再発防止策、そして競争促進策についても議論が行われているところであります。電力システム改革の趣旨に照らしながら、様々な観点を考慮しながら虚心坦懐に議論いただき、その結果を踏まえ、適切に対応していきたいというふうに考えております。
そして、値上げの申請についての審査でありますけれども、本日、電力・ガス取引監視等委員会におきまして査定方針案が示されております。まさに、トップランナー方式であるとか、最も高い水準で調達を進めていくとか、そういったことを含めて厳正な審査を行ってきた、その内容を反映しているものというふうに認識をしております。河野大臣の指摘なども踏まえながら、審査方針が発表されたもの、査定方針が発表されたものというふうに思います。厳正に審査をしていきたいというふうに考えております。
○岩渕君 時間を過ぎているのでまとめますが、検証、徹底的な検証が必要だと。検証なしに電気料金の値上げを認めるなどということは許されません。
物理分割という話ありましたけど、所有権分離に踏み出すべきだということを述べて、質問を終わります。