テーマ:原発の寿命規定を削除し、60年超運転を可能にする改悪
(議事録は後日更新いたします)
日本共産党の岩渕友議員は23日、参院経済産業・環境両委員会の連合審査会で、原発推進等5法案について質問しました。原子炉等規制法(炉規法)で定めた原発運転期間の制限規定を削除し、所管を原発を利用する経産省に移すことを「法の趣旨も解釈もねじ曲げるものだ」と批判しました。
原発の運転期間は現行、原子力規制委員会が所管する炉規法で「40年」と定められています。岩渕氏は、2012年に策定された同法の解説が「原発事故があって、経年劣化などにより安全性のリスクが増大し、リスク低減のために、運転期間の制限を設けるとしている」と指摘しました。
また、「40年」は原発事故を受け、「討論型世論調査」など国民的な議論で当時の民主、自民、公明など与野党の議員立法として盛り込まれたものだと述べ、「運転期間は、利用政策の判断ではなく、立法政策の場の国会が決めることだ」とただしました。
規制委の山中伸介委員長は「運転期間については意見を述べる立場にない」と言い訳に終始しました。
岩渕氏は、同連合審査会に先立つ22日、福島県の大学名誉教授や市民団体などが福島での地方公聴会開催を求める要望書に触れ、吉川沙織経産委員長に同地での開催を求めました。吉川委員長は「検討する」と答えました。
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2023年5月23日(火) 参議院 経済産業委員会、環境委員会連合審査会
「原発推進等5法案(GX電源法)」
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
昨日、この法案審議に関わって、福島における地方公聴会の開催についてという要望書が届けられました。ここにいらっしゃる委員の皆さんのところにも届いておられる方がおいでかと思うんですけれども、福島大学の名誉教授や脱原発福島県民会議の共同代表、福島復興共同センター代表委員の方々などの連名の要望書ということになっています。
要望書の中には、政府答弁では福島原発事故に対する真摯な反省が繰り返し引き合いに出されているが、原発事故を受け続けてきた福島県民にすら法案に関する説明や意見聴取が行われておらず、被害者を置き去りにしていることにも等しいと、こうした重要な指摘が行われています。
これ、東京電力福島第一原発事故の反省、そして教訓というのであれば、被害者の声を聞くべきだというふうに思います。
委員長、福島における地方公聴会の開催を求めたいと思います。
○委員長(吉川沙織君) ただいまの件につきましては、経済産業委員会の理事会で協議いたします。
○岩渕友君 今日は、原発の運転期間について質問をいたします。
原子炉等規制法の43条の3の32は、原発の運転期間について、原則40年、1回に限り20年を超えない期間延長できるとして、延長に当たっては原子力規制委員会の認可を得ることとしています。
運転期間の制限について、内閣官房が2012年7月に策定をした原子力規制委員会設置法解説では、炉規法の解説を行っています。その趣旨について何と書いてあるか、該当部分を紹介してください。
○政府特別補佐人(山中伸介君) お答えいたします。
平成24年7月に内閣官房原子力安全規制組織等改正準備室が作成した原子力規制委員会設置法解説の該当部分を読み上げます。
運転開始から長期間経過した原子力発電施設については、経年劣化に対する懸念など、国民や関係自治体にも様々な議論があり、また、一般的に、設備、機器等は、使用年数の経過に従って、経年劣化等によりその安全上のリスクが増大することから、こうしたリスクを低減するという趣旨から、本条は、運転することができる期間を制限するものである。
以上でございます。
○岩渕友君 資料の1を御覧ください。
今日いろいろ何度も議論もされていますけれども、今紹介をいただいた部分に下線を引いております。経年劣化などによって安全性のリスクが増大をするから、リスクを低減するために運転期間の制限を設けるということです。そういう中身です。
そこで、山中委員長にお聞きするんですけれども、この炉規法では、この炉規法では、運転期間は40年と決めている、40年と決めているということでいいですね。確認をします。
○政府特別補佐人(山中伸介君) 原子炉等規制法では、40年に一度限り運転の延長が認められ、20年間延長が認められ、60年という制限を設けてございます。
○岩渕友君 40年というふうに決めているんじゃないですか。
○政府特別補佐人(山中伸介君) お答えいたします。
原則40年と決定して、あっ、決めております。
○岩渕友君 40年というふうに制限しているということなんですよ。それが、先ほど紹介をいただいたように、安全のリスクが増大するから、リスクを低減するために運転期間の制限を設けたと、それが40年ということです。
なぜこの運転期間の制限を設けたのかということで、その背景にあるのは、何といっても東京電力福島第一原発事故があったからということですよね。それで、改めて事故後のことを思い返してみたいなというふうに思うんですけれども、事故の後、当時の政府は、2030年時点の電力供給に占める原発の割合を0、15%、20から25%という3つシナリオをつくって、パブリックコメントしたり、討論型世論調査、こうしたものを行ったりしたんですよね。その結果として、過半の国民は原発に依存しない社会の実現を望んでいるというふうにまとめて、2030年代に原発稼働ゼロを可能としようというふうにしました。こうしたことがあって、あの炉規法の中で運転期間は40年と決めているということです。で、日本の多くの原発は40年の設計寿命で建設をされていると、これは政府も認めているわけですよね。
そこで、ちょっとお伺いしたいんですけれども、運転期間というものについて、この40年ということを覆す新たな知見があるのかということなんです。規制委員会の議論では、石渡委員が、この改変は科学的、技術的な新知見に基づくものではないと、安全側への改変とも言えない、審査を厳格に行えば行うほど、より高経年化した炉を運転することになると、こういうふうにして反対をしましたよね。
これ、運転期間は40年ということを覆す新たな知見があるのか、山中委員長にお伺いをしたいと思います。
○政府特別補佐人(山中伸介君) お答えいたします。
一般論として、必要な対策が講じなければ、経年劣化により、安全上のリスクは年数を経るごとに徐々に大きくなるものと認識しております。そのため、適切なタイミングでその都度、規制基準への適合性を確認することが重要であると考えております。
これまでの運転開始後40年時点での60年を見据えた劣化評価においては、いずれも60年時点で基準への適合性が確認されており、運転開始後60年の時点で運転を制限されなければならないという科学的、技術的な知見はございません。すなわち、40年や60年で運転ができなくなるという寿命といったものではないと考えております。
なお、一律の運転期間の制限が必ずしも科学的、技術的な観点から定められたものではないということは、先ほど紹介させていただいた解説においても、原子炉の運転開始後40年までは安全上全く問題がなく、40年を経過すると急に危険になるものではない、また、加えて、メンテナンスの状況、原子炉の設置された年代等、個々のプラントに施設の状況が異なるとも言えるとも記載がございます。
また、米国においては、運転が認められる期間が運転認可後40年を超えない期間として定められていること等も1つの参考としつつ、ただし書では、この年限については、科学的、技術的な要素ではなく、発電の減価償却期間を設定されたものであると記載されてございます。
○岩渕友君 今委員長が紹介をした解説の中には、こんなふうに書いてあるんですよ。それでもなお、40年という年限で運転の期間を制限すると規定をしたのは、経年劣化による安全上のリスクを低減するという趣旨からである、こういうふうに書いてあるわけですよ。
だから、先ほど話をしたように、炉規法で何で40年と決めたのかというのは、それは、原発事故があって、そうした下で安全上のリスクが、安全性のリスクが増大をするから、リスク低減させるために運転期間の制限を設けたんだと、そういうことなわけですよ。何も原発の寿命云々のことじゃなくて、運転期間の制限設けたということがこれ非常に重要なことだということなわけですよ。
総理も、2月の衆議院の予算委員会の答弁の中で、今回の原子力発電の高経年化に関しては、新たな科学的あるいは技術的知見の存在を踏まえて改正するものではないというふうに言っているんですよね。だから、新たな科学的、技術的な知見はないということですよ。
この運転期間の定めについてですけれども、山中委員長は、令和2年7月29日の規制委員会の見解を持ち出して、運転期間の定めは利用政策の観点であると、規制委員会が判断するものではないと、こうした答弁を繰り返しています。実際、今日もそういった答弁がありました。
そこで、委員長に伺いますけれども、運転期間は利用政策として判断をするものなのでしょうか。2020年12月3日の衆議院の原子力特で当時の更田規制委員長がどのような答弁を行っているのか、この該当の部分について紹介をしてください。
○政府特別補佐人(山中伸介君) お答えいたします。
更田前委員長の国会答弁の該当部分を読み上げさせていただきます。まさに、私たちは、原子力規制委員会が申し上げていることであります、40年を変えるのは国会で御審議いただくこと、御議論いただくこと、また、時計の進め方を決めるのは国会でお決めいただくことで、繰り返し、運転停止期間は時計の針を止めるべきではないかと問われてきたことに対して、それはできないと一貫して答弁してまいりました、まさに立法の御議論であろうというふうに認識しております。以上でございます。
○岩渕友君 これも今日、委員会でいろいろ議論されていますよ。
それで、この同じ質問のやり取りの中で、更田前委員長は、運転期間は立法政策の場において決められるべきだということがこの見解の最大のメッセージだ、こうした答弁も行っているんですね。つまり、運転期間は、規制委員長が、山中委員長が言うように利用政策の判断ではなくて、立法政策の場で決めることだと、つまりは国会の中で決めることだということになるわけですよ。ところが、山中委員長は、利用政策の判断だという答弁、今日もやっているわけです。
こうなってくると、この更田委員長の、規制委員会の見解と違うということになるんじゃないですか。
○政府特別補佐人(山中伸介君) お答えいたします。
令和2年の見解におきまして、運転期間については、発電用原子炉施設の運転期間についての立法政策として定められたものであるとし、さらに、発電用原子炉施設の利用をどれぐらいの期間認めるかとすることは、原子力の利用の在り方に関する政策判断にほかならず、原子力規制委員会が意見を述べるべき事柄ではないとしております。
更田前委員長は、運転期間延長認可制度が、平成2年4月当時の国会審議において、安全性に関する科学的、技術的な観点のみならず、政策上の判断も含めた幅広い観点から議論されたことも含めて、見解に当たる立法政策として定められたという点について言及されたものと理解しております。私としても、更田前委員長と同じ趣旨であり、見解にもある原子力の利用の在り方に関する政策判断をという言葉を分かりやすく利用政策の判断と発言したものでございます。したがいまして、更田前委員長の答弁と私の発言には相違がないと考えております。
○岩渕友君 委員長、同じ趣旨だと言うんだったらば、この運転期間の問題を経産省に任せていいということにはならないんじゃないんですか。これ、利用政策の判断じゃないということでいいんですか。つまり、経産省に任せない、任せては駄目だということでいいんですか。
○政府特別補佐人(山中伸介君) 運転期間については、これは私どもが意見を述べる立場ではないということは、どこが担当するか、あるいはどなたが担当されるかということについても意見を述べる立場ではない、あるいは利用期間を短くするか、あるいは長くするかについても私どもは意見を述べる立場にはございません。
○岩渕友君 委員長が言う利用政策の判断というのは経産省が判断するということなんじゃないんですか。
○政府特別補佐人(山中伸介君) 私が利用政策と述べておりますのは、利用を推進をする、あるいは利用を縮小する、両方の立場を考えまして利用政策という、そのような述べ方をさせていただいております。
○岩渕友君 今回、まさに法案の中で、利用する側の経産省がこの運転期間の問題決めるということになるわけですよ。さっきも議論ありましたけど、炉規制法からこの運転期間削除されて、電気事業法に移管されるということになるわけですよね。そもそもこの原子炉等規制法に原発の運転期間は原則40年というふうに盛り込まれたのは、民主党、自民党、公明党の共同提案を行ったからなんですよ。これ、議員立法として盛り込まれたという経過があるわけですよね。その成り立ちを見ても、利用政策ではないということなんですよ。
そして、冒頭確認をしたように、運転期間は東京電力福島第一原発の事故を受けて、リスク低減するために安全規制として導入をされたものなんですよ。この本法案で、運転期間を制限する条文を規制委員会が所管する炉規法から削除をして、推進側である経産省所管の電気事業法に移すと、さらには60年超の運転も可能にするというわけですよね。これ、法の趣旨も解釈も根本的にねじ曲げるものになるんじゃないですか、委員長。
○政府特別補佐人(山中伸介君) お答えいたします。
原子力規制委員会の役割は、科学的、技術的な観点から安全面での基準を定めて、個々の施設がその基準に適合しているか否かを審査し、検査を通じた監視等を実施することでございます。
一方で、現行の運転延長認可制度は、運転開始後60年を迎えた原子炉について、規制委員会がたとえ安全面から基準に適合していることを確認したといたしましても事業者が運転することはできなくなります。つまり、この仕組みは、安全上の基準に適合した原子炉を更にどの程度の期間にわたり運転することを認めるかというものであり、もはや安全の観点ではなく、利用の在り方の観点の判断にほかならないと、原子力規制委員会では判断するものではないということでございます。
今般の利用の在り方としての運転期間を見直すのであれば、利用と規制の分離の観点から、利用側の法体系の中で運転期間を規定することは自然なことであると考えております。
いずれにいたしましても、国会で御審議をいただきお決めをいただくものであると認識しております。
○岩渕友君 そういうのをねじ曲げているというんですよ。そもそも何でこれが決められたかといえば、それは事故があったからじゃないですか。事故の反省も教訓もどこ行っちゃったんですか。
先ほど辻元議員の質問の中で、運転期間の定めは炉規法のままでいいじゃないかと、こういう質問があったわけですよ。私もそのとおりだなというふうに思いました。ところが、先ほどちゃんとした答弁なかったわけですよ。これ、運転期間の定めは炉規法のままでいいんじゃないんですか。
○政府特別補佐人(山中伸介君) 運転期間の定めに変更がない場合は、委員会でも、炉規法から、炉規法を変更することはないと、10月5日の議論で、12日の議論で結論を出しております。
ただし、運転期間については、既に、令和2年の7月の見解で原子力規制委員会が意見を申し述べる立場ではないという見解を決定しておりますので、運転期間についてどなたかが提案されれば、それはそこでお決めをいただくことで、それに対して、私どもは、運転期間がどのような定めになろうとも、高経年化した原子炉の安全規制を行うのが我々の務めであるというふうに考えております。
○岩渕友君 今の同じ質問を西村大臣にもしたいと思います。
○国務大臣(西村康稔君) 先ほども答弁させていただきましたけれども、この適合性審査というものを受けて、その合格をしないと、認可を受けないと原子力発電所は動かせないわけでありまして、最終的にこの認可を受けないと動かせないということは、最終的に運転期間を決めるのは原子力委員会であります。その期間を決めるのは原子力委員会です。
30年を超えて10年以内ごとに審査を受けるということになっています。世界中の国々は、上限を決めることなく、この仕組みでおおむねやっているものだと思います。それに加えて、我々は、福島の事故を踏まえて、あのときに法律で40年、20年、1回延長というのを決めましたので、我々は、利用政策の観点から、ほかの国と倣って、同じように長く、上限決めなくてもいいじゃないかという議論も審議会でありましたけれども、自己抑制的に、追加の、言わば追加のダブルの規制、二重の規制として40年と20年の1回延長という規制を入れているわけであります。
運転期間を除外する、カウントする部分がこれありますけれども、他律的な要因で決まっている部分、それを幾ら認めたとしても原子力発電所が動いている期間は最長60年であります。その期間は60年。60年でありますので、それの中で原子力規制委員会の審査を受けて認可をした期間だけ動かせるという仕組みになっておりますので、私は世界で最も厳しい基準だというふうに考えております。
○岩渕友君 どこが事故の反省であり教訓なんですか。今の答弁聞いても、炉規法のままでいいじゃないかという思い全然変わらないですよ。
法解釈を勝手にねじ曲げるなということを述べて質問を終わります。