テーマ:地域と共生する再エネ推進を
(議事録は後日更新いたします)
住民合意の要件化を 再エネ地域トラブルに岩渕氏
日本共産党の岩渕友議員は22日の参院経済産業委員会で、無許可の山林開発による太陽光発電など、地域住民が懸念する再生可能エネルギー事業への厳格な対応を求めました。
岩渕氏は、経産省が把握する再エネに関わる地域トラブルのうち9割以上が太陽光発電で、直近の11年間で林地開発の許可は1900件以上、約1万7000ヘクタールにのぼり、無許可の林地開発が2022年度に17件も確認されていると指摘。「こうした実態について把握していたのか」とただしました。斎藤健経済産業相は「把握していた。必要な措置を検討している」と説明しました。
岩渕氏は、宮城県丸森町で計画中のメガソーラー事業をめぐり、21年5月の国会質問で「贈賄で逮捕者を出すような事業はFIT(固定価格買取制度)認定を取り消すべきだ」と追及して以降、事業者への処分は行われておらず、地元住民が「厳格な処分がなければ住民の生命や生活環境が侵害されかねない」と訴えていると追及。経産省は「昨年のFIT法改正で事業規律を強化し、計画中の事業に対しても必要な処分は行う」とし、斎藤経産相は「地域との共生をはかることは重要」としながら、丸森町内の事業については答弁を避けました。
岩渕氏は「住民合意をFIT認定要件とし義務化すべきだ」と強く求めました。
2024年3月22日(金) 参議院 経済産業委員会
「2024年度当初予算案 予算委嘱審査」
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
世界を覆う気候危機に対して、日本は、自ら掲げる主力電源化にふさわしい再生可能エネルギーの導入率と目標が求められています。ところが、諸外国と比較をするとどちらも低くなっているんですね。
COP28で掲げられた再エネ設備3倍化に賛同した国としても、その再エネ導入拡大のために予算と政策を総動員するべきです。同時に、再エネ導入の障害になっている問題の解決が求められていますけれども、その一つである地域との共生とは相入れない事業者の問題について、当委員会でも何度も質問をしてきました。今日は、その問題について聞いていきたいと思います。
再エネに関わる地域とのトラブルの実態について、相談件数や主な相談内容について紹介をしてください。
○政府参考人(山田仁君) お答え申し上げます。
FIT制度の導入後、再エネ比率は、震災前の約10.4%から2020年度には約21.7%まで倍増しております。
自治体や住民の方々からの懸念事例の相談を受け付けるために、2016年の10月から、資源エネルギー庁のホームページ上に不適切案件に関する情報提供フォームを設置しているところでございまして、この2023年11月末までに1038件の相談を受け付けております。そのうち9割は太陽光発電事業に関するものでございます。
主な内容といたしましては、柵塀、標識の未設置やメンテナンス不良といった適正な事業実施への懸念、また、周辺地域との、周辺地域の住民とのコミュニケーションが不十分といった地元理解への懸念、構造強度の不安やパネル飛散等の安全確保への懸念となってございます。
このように、再エネ発電設備の導入に伴う地域住民の懸念が顕在化しているものと承知をしてございます。
○岩渕友君 相談件数の9割が太陽光発電ということでしたけれども、この太陽光発電に係る林地開発の実態について、認可件数と面積について、直近の数字と
FIT制度が導入をされた2012年度以降の合計を紹介してください。
○政府参考人(長崎屋圭太君) お答えいたします。
2022年度における太陽光発電に係る林地開発許可の件数は102件、面積は594ヘクタールとなります。
また、2012年度から2022年度までの件数を申し上げますと、累計で1916件、面積は累計で1万6883ヘクタールとなっております。
○岩渕友君 とにかく膨大な面積なんですよね。
それで、資料一に、件数と面積の推移をグラフにしたものを付けています。
太陽光発電の無許可の開発も確認をされているというふうに聞いていますけれども、実態がどうなっているのか、直近の2022年度について紹介をしてください。
○政府参考人(長崎屋圭太君) お答え申し上げます。
太陽光発電に係る林地開発のうち、許可を受けずに行われた開発行為は、2022年度で17件ございます。これらに対しまして、都道府県が延べ18回の行政指導等及び1回の監督処分を行っているところでございます。
○岩渕友君 同じく、条件違反等の実態がどうなっているのかを紹介してください。
○政府参考人(長崎屋圭太君) 林地開発許可の許可条件に違反する等の違反があった開発行為につきましては、2022年度で24件ございまして、これらに対しまして都道府県が延べ33回の行政指導等を行っているところでございます。
○岩渕友君 資料の二を御覧いただきたいんです。
これは、太陽光発電設備に関わる林地開発の違反行為の件数と是正措置別の件数をまとめたものなんですけれども、この無許可の開発がこんなにあるのかということで、私すごく驚いたんですよね。
この無許可の開発が最も多い2016年度は35件、そのうち復旧命令が4件、中止命令が1件というふうになっています。条件違反等については、2018年度、最も多くて37件、行政指導等は52件、そのうち9件に復旧命令が出されているということなんですね。
それで、大臣にお伺いをするんですけれども、無許可の開発がこれだけあるというのは、ちょっと実態が深刻だというふうに思うんです。再生可能エネルギーを所管する経済産業省、こうした実態について把握をしていたのでしょうか。
○国務大臣(齋藤健君) 太陽光発電設備の森林法違反に関する事実関係、これにつきましては経済産業省としても把握しておりまして、こうした実態も踏まえて、林野庁も含めた関係省庁が共同で再エネの適正な導入管理に関する検討会も実施をして、必要な措置をそこで検討しているという、そういう実態にもあります。
○岩渕友君 いろいろな対策も取っているということなんでしょうか。
○政府参考人(山田仁君) お答え申し上げます。
今ほど大臣から申し上げましたとおり、検討会の実施をして必要な措置を検討してきておりますけれども、具体的には、事業規律の強化を図る観点から、森林法等の許可の取得を再エネ特措法上の申請要件とする省令改正、これを昨年の10月に施行するとともに、関係法令違反の疑いがある事業者に対して交付金の一時停止措置などを盛り込んだ改正再エネ特措法を本年4月に施行する予定となってございます。
○岩渕友君 総務省の政策評価審議会で、太陽光発電設備の導入に関する調査というものを行っているんですね。
今日は総務省に来ていただいています。その目的と概要について説明をしてください。
○政府参考人(菅原希君) お答えいたします。
御質問のございました調査は、太陽光発電設備等について、地域と共生を図りつつ適正な導入が円滑に進められるための仕組みや運用の改善策などを検討するため、太陽光発電設備等に関するトラブルの発生状況や現場での対応の実態などを調査しているものでございます。
具体的には、土砂等の流出、雑草の繁茂、柵塀の未設置などのトラブルが発生している市町村を対象に調査を実施するとともに、把握した現場の実態を踏まえ、経済産業省に対しトラブルへの対応状況等の調査を行っておりまして、今月中に調査結果の取りまとめを行いたいと考えてございます。
○岩渕友君 調査結果取りまとめるということなんですけれども、取りまとめた後は、経産省との関係ではどういうふうになるんでしょうか。
○政府参考人(菅原希君) お答えいたします。
私どもで取りまとめた結果につきましては、経産省に対して、物によっては勧告、そうでない場合は通知という格好で改善を求める、そういうことにしてございます。
○岩渕友君 今答弁があったように、物によっては勧告であるとか通知も行われるということですけれども、これ、勧告というようなことになれば非常に重いということになるわけですよね。その勧告や通知も踏まえて改善を是非求めていきたいと、ここで強く求めておきたいというふうに思います。
それで、これまで、巨大な風力発電の集中立地の問題を始めとして、全国でこの再生可能エネルギーをめぐるトラブル、たくさん私も直接聞いてきて、この問題を当委員会でも取り上げてきたわけですね。事業者のもうけ本位であるとか、地域住民との、皆さんとの共生とはとても言えないような再エネ事業計画の切実な実態について、これ早急に対応が必要なんじゃないかということを求めてきたわけです。
その中で、環境アセス逃れの対応であるとかFIT認定前の林地開発許可の義務化など、少しずつではあるんですけれども、事業規律は強化されつつあります。けれども、再エネの特措法に基づく認定取消しの件数、今何件になっているでしょうか。
○政府参考人(山田仁君) お答え申し上げます。
再エネ特措法では、FIT・FIP制度の認定を受けた事業者が関係法令の遵守などの認定基準に適合しなくなったときは認定を取り消すことができるとしております。この規定に基づき、関係法令違反として認定を取り消しているものは31件でございます。
○岩渕友君 今、31件というふうに紹介がありました。
それで、これまで取り上げてきた問題の中に、宮城県丸森町というところで計画をされているメガソーラー事業の問題についてがあるんです。
この問題、何度か取り上げているんですけれども、2021年の5月に決算委員会の中で質問をして、当時は梶山大臣が経産大臣だったわけですけれども、このときに、アセス逃れの防止を強化する見直しというものが約束をされました。
その際に、私の方から、地域住民への説明もまともに行わないとか、贈賄で逮捕者まで出すような事業だったんですけれども、FIT認定を取り消すべきではないかというふうに大臣に迫ったところ、大臣からは、事業の体制とか逮捕者との関係などを詳細に確認を行って、必要に応じて適切に対応したいというふうな答弁があったんですね。
ところが、その後も事業者に対する処分がないということで、地元ではいろいろな団体の皆さんが会をつくっているんですけれども、その地元の団体の代表の方が経産大臣宛てに何度も要請を行っているんです。その要請の中身を見てみると、厳格な処分がなければ住民の命が守れない、生活環境が侵害されかねない、ここまで住民を苦しめる行為をしてきた者に何の処分もしない県と経産省は問題だ、目を覚まして厳正な処分をしてほしいというふうに訴えていらっしゃいます。まさに、命であるとか生活環境に関わる重要な問題で、地元の皆さんにとってはもう切実な問題なんですよね。
再エネ特措法上のFIT・FIP交付金の一時停止だけではなくて、計画中の事業者に対しても必要な処分を行うべきだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○政府参考人(山田仁君) 再エネの導入につきましては、地域との共生を図ることが大前提だということは理解をいたしております。
これまでも、地域住民と適切なコミュニケーションを図ることを努力義務とするほか、関係法令の遵守を始め、事業の円滑かつ確実な実施を認定基準として求めております。
こうした認定基準に違反した場合には、運転の開始前の案件についても指導、改善命令を行っているところでございます。また、関係法令遵守がなされていない場合などは、認定取消しなど厳格に対応しております。
加えて、本年4月には、安全面を含めた事業内容に関する周辺地域の住民への説明会の開催などを認定要件とすることとし、地域住民に対し適切かつ十分な説明がなされない場合には認定を行わないでありますとか、関係法令に違反する事業者に対して交付金による支援を一時停止するとともに、違反が解消されず認定取消しに至った場合には違反期間中の交付金による支援額の返還を命じるなどの措置を盛り込んだ改正再エネ特措法を施行する予定でございます。
○岩渕友君 住民の皆さんの声が本当に切実なので、大臣、今のやり取りちょっと聞いて、大臣からも一言是非いただきたいなと思うんですけど、いかがですか。
○国務大臣(齋藤健君) 個別の案件については、ちょっと精査しないと答弁できないんですけれども、本年四月以降には改正再エネ特措法が施行されまして、より一層踏み込んだ、住民への説明会の開催が認定要件になるなど、対応がなされていくのではないかなと考えています。
○岩渕友君 この問題を初めて質問してから三年になるわけですけれども、迅速に処分が行われなければ開発が進んでいってしまうんですよね。こうしたことが再エネ事業への不信につながるということだと思うんです。
地域と共生する再エネをスローガンで終わらせないためには、住民合意をFIT認定の要件として義務化するべきだと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(齋藤健君) 当然のことなんですけど、再エネの導入に当たって、地域とのコミュニケーションの中で適切かつ十分な説明を尽くして、地域との共生を図りながら進めていくということ、これは重要なことであります。
このため、先ほども少し申し上げましたが、本年4月1日に施行される改正再エネ特措法では、FIT・FIP認定の際に周辺地域の住民へ向けた説明会の開催などを認定の要件として求めることとしています。
御指摘の地域住民の同意につきましては、この認定要件を検討する審議会においても議論となりましたが、事業者の財産権や営業の自由の制約の程度が大きく、慎重であるべきという結論となったことを踏まえて認定要件とはしていないと、そういう経緯がございます。
引き続き、説明会の開催などの認定要件を厳格に審査することで、地域と共生した再エネの導入を図っていきたいと考えています。
○岩渕友君 海外では、大規模な再エネ事業を進めるときには、住民が納得するまで公開討論が行われるなど、その事業計画段階から重要なステークホルダーとして組み込まれているというんですね。地域と共生し得ない再エネ事業者に対しては迅速な処分を行うこと、市民参加で利益を生む仕組みを検討するべきだと求めて、質問を終わります。
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